僕は、羊水に揺られて夢を夢を見る。外は、激しい憎しみの世界なのに。

蘇 陶華

文字の大きさ
2 / 2

戦禍に咲く恋

しおりを挟む
誰かが、暗闇の中で、叫んでいた。

もう少し、静かにしてくれ。

僕は、じっと闇を堪能していた。

目を覚ましたくない。

どうして。

疑問が湧いた。

僕は、何も見たくなかった。

目を開けさせるな。

この闇に溶けていきたい。

僕は、叫んだ。

誰かと同じに。

お願いだから、そっとしておいてほしい。

「颯太・・・」

聞き慣れた声が響いた。

音羽だった。

「わかるよ・・・」

「何が、わかるの」

僕は、反抗的だった。

「現実から逃げた君に何がわかるの」

「颯太が、悩んでいるの。わかるから」

現実に戻っていた。

あのまま、眠らせてくれれば良かったのに。

「少しは、落ち着いた?」

「いいや」

僕は、頭を振った。

混乱していた。

母の胎内に逃げたかった。

時間を遡り、

僕の機嫌に戻りたかった。

どうして、

僕は、存在する?

人でさえ、滅びゆくこの世界に。

僕らは、荒廃した平野を見下ろす山奥に居た。

以前は、青々とした山や美しい河があったであろう山岳地の横穴に、

身を潜めて。

邪神(晴)は、別れ際に言った。

「どうするか、自分で考えるんだ」

「それは、僕がどう生きるかって事?」

「お前、自身が決めろ!世界は、変わってしまった」

邪神は、僕の起源について、考えろと言う。

「ここからは、別に行こう」

邪神は、僕と別れる事を決めたようだ。

「無事だったら、また、逢おう」

飛びきっりの笑顔で、邪神は言った。

「颯太。君は、悪くない。自分で、決めていいんだ」

邪神なんて、誰が付けた?

彼は、誰よりも、人間らしかった。

「颯太・・・」

暗闇の洞窟で、咽び泣く、僕に音羽が声をかけた。

「本当に・・・まさか、こんな事が起きるなんて・・」

つい、この間まで、僕らは、人と対峙している妖の立場だった。

追われる側だったのだ。

それなのに・・・。

状況は、ある日を境に一転した。

深い海溝で、生物兵器を積んだ潜水艦が、大地震で、爆発した事により、

僕らの運命は、一転した。

地上にまともな人間は、存在しなくなっていた。

人らしく生きようと足掻いているのは、僕らだけになった様だった。

「元々、人でなかったんだから、良かったんじゃない?」

「人でないなんて、思った事はないよ」

「あれだけ、追われて、そう思っていたの?」

「風邪みたいなもんだと、思っていた」

「風邪?」

音羽は、笑った。

「甘い考え。颯太は、否定されたんだよ。人じゃないって」

「人だよ。母だって・・・」

僕の中には、恐ろしい血が流れている。

だけど、一度だって、人でないなんて、思った事はなかった。

人の血だって、流れているんだから。

「結局、誰も、いなくなったのか」

「そう・・・私達、以外ね」

音羽は、、寂しそうに呟いた。

「結局、また、二人か」

僕らは、古い因縁に縛られていたらしい。

遠い日に恋人同士だったという人も居た。

今となったら、どうでもいい事だ。

二人になったからと言って、僕らが、何か始める訳ではない。

「颯太。落ち着いたら・・・ここから、出ないと「

外を見下ろしていた音羽が振り返って言った。

「ヤダ」

ここから、外には、行きたくない。

「出ないとだよ・・・」

音羽が、見つめる方角を見下ろすと、

一列になって、こちらに向かう影が見えた。

「颯太・・・!」

叫ぶ音羽の声に焦りが見えた。



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗
恋愛
王城の使用人であるメルフィナには、ある秘密があった。 彼女は国王の隠し子なのである。 その事実は、半ば公然の秘密となっていた。公にされたことは一度もないが、嗅覚に優れた者達はそれを察知していたのだ。 しかし中には、そうではない者達もいた。 その者達は、メルフィナを一介の使用人として考えて、彼らなりの扱い方をした。 それは許されるものではなかった。知らぬうちに王家に牙を向けた者達は、その行為の報いを受けることになったのだ。

処理中です...