それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

文字の大きさ
20 / 107

闇を歩く除霊師 真冷

しおりを挟む
青白い炎は、上下左右にあり、高さを変えずに進んでくる。音羽は、颯太を逃がそうとするが、青白い炎が、移動する方が早かった。音羽は、颯太を庇い、宙から、全身を現した。長い髪を地につけ、片手には、同じような青い光を放つ、ランタンを持っている。
「まかせろ。いいか、絶対、振り返るな」
「って、音羽。怖い」
音羽の声は、緊迫を含んでいた。こんな、音羽の声は初めてだ。青白い光が、自分の背にも感じ、いつも、音羽は、半身しか、現れないのに、全身で、立ち塞がっているようだ。影が細く伸び、いつもとは、違う姿になっている。
「この借りは、後から返せよ」
音羽は、身構えた。蒼白い3つの炎は、近づくと、スッと、止まった。同じ目の高さで、こちらの様子を伺っている。
「お前が、音羽かい」
「姿を表せよ。見せられないくらい、醜いのかい」
一番高い場所にある、青白い炎の間に、三つの目が、開いていた。
「これ以上、進ませる事はできない」
音羽は、その三つの目の主が、誰か、わかっていた。
「人間の味方をするのか?裏切られたくせに」
「あいつに、それは、関係ない」
青白い炎が揺れると、光の中から、両手に、蝋燭を灯す、髪の長い男性が現れた。姿は、恐ろしい訳でもなく、どちらかと言うと、幽霊らしい姿でもあった。
「颯太は、殺人を見た幽霊を探している。お前は、違うな」
「幽霊ではないのは、お前がよく知っているだろう」
そう言うと、両手に置いていた蝋燭の炎が消えた。
「真冷・・・ここにまで、来たのか?」
音羽は、そう名を呼ぶ。
「まだ、続けていたよ。高校生の除霊師がいると聞いたが、音羽。お前と組んでいたんだな」
音羽の姿は、少女の霊ではなく、高く髪を結った遊女の姿になっていた。
「ずいぶん、別れてから、時間が経ったようだ」
真冷は、笑う。両目は、笑っているが、額にある、もう一つの目は、冷たい光を帯びている。
「殺人を目撃した霊を探していたのかい?」
真冷は、聞く。両手に乗せた蝋燭の下には、銀色の皿があり、炎で溶けた蝋で、霊を感知するようだ。
「ここには、もういないよ」
音羽が答えないで、いるので、真冷が、独り言のように呟く。
「同じ者を探していたんだね」
「まさか、ここで会うとは」
音羽は、颯太が、遠くに行ったのを確認する。
「彼には、知られたくないのだな。私の存在を」
「できれば、会いたくなかった」
「同じ世界にいれば、出会う事になっている。音羽。私の所に戻って来る気はないか?」
「お前とは、もう、終わった。用はない」
「終わったか・・・。少年も、同じ目に遭わないといいな」
そう言うと、真冷と言われた男は、音羽に背中を向けた。
「また、会う事になるだろう」
そう呟くと、闇の中に青白い三つの光となって、消えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...