42 / 107
僕らの始まり
しおりを挟む
僕らは、道に溢れる百鬼に向かって、進んで行った。
僕は、除霊師で、依頼を受けて除霊をしていた。それは、その場所に向かい、身時通り、除霊をする。だけど、いつしか、それは、除霊だけではなく、退魔になっていった。
そして、音羽は、僕に憑く霊である。
自縛霊とも違う。
音羽の正体は、不確かな物だった。
そもそもの出会いは、僕が追いやられた山寺だった。
僕が、小さい頃、母親は、あの部屋で、消えていた。
もしかすると、殺されていたのかもしれない。
大量の出血と共に、姿を消した。
鑑定の結果、その血液は、母親の物で、致命傷を負う量だった。
「生きてはいないだろう」
誰もが、そう思っていた。
父親も。
妻を失い失意の中で、僕を見る目が変わっていった。
父親は、僕を知り合いの僧侶に任せた。
突然、連れてこられた山奥の寺で、幼い僕は、当惑した。
夕暮れの中、飛び交うカラスや、虫や、闇の中に潜む声達に震え上がった。
ある日。
僕は、僧侶の大事にしている、数珠を壊してしまった。
悪気はなかったが、山奥にやられ、荒れていた僕に、弁解はできなかった。
珍しい数珠だった。
僕は、何時間も、外に出されていた。
山奥の日暮。
僕には、空恐ろしかった。
「誰かいるか?」
森の中から、声が聞こえた。
「誰か・・・」
何度も、ぶつぶつと声が聞こえる。
遠くを見ると鬼火が聞こえる。
「誰か・・」
僕は、声に誘われるまま、寺を抜け出し、歩いていった。
裸足だった。
どこかで、僕を止める声が聞こえた。
それでも、僕は、歩いていった。
声に導かれるまま。
「助けて・・」
声が聞こえたのは、森の奥にある大きな石だった。
周りをしめ飾りで、封印され、見るからに、禁じられた場所だった。
「日暮に、森に行ってはイケナイ」
寺に来た時に、言われた言葉は、忘れていた。
「どうしたの?」
僕は、その岩に話しかけていた。
「助けて」
石の中から、か細い声が聞こえていた。
「どうしたら、助けられるの」
「ここから、出して」
「どうやって?」
しめ飾りが揺れる。
「これを、切って」
「これ?」
そう簡単に、切れないと言われていたしめ飾り。僕が、触れると、それは、バラバラに、宙へと散り去り、その岩の中から、真っ白な体を持つ女性が現れた。
「何だ、小童か」
女性は、恥ずかしげもなく、素っ裸で、僕を見下ろしていた。
「子供の癖にやるなぁ」
「どうして、石の中にいたの?」
僕が、聞くと女は、恐ろしい程、口を大きく開けると、笑っていた。
「そんな答え、知るか」
そう言うと、僕に飛び掛かってきた。
僕は、除霊師で、依頼を受けて除霊をしていた。それは、その場所に向かい、身時通り、除霊をする。だけど、いつしか、それは、除霊だけではなく、退魔になっていった。
そして、音羽は、僕に憑く霊である。
自縛霊とも違う。
音羽の正体は、不確かな物だった。
そもそもの出会いは、僕が追いやられた山寺だった。
僕が、小さい頃、母親は、あの部屋で、消えていた。
もしかすると、殺されていたのかもしれない。
大量の出血と共に、姿を消した。
鑑定の結果、その血液は、母親の物で、致命傷を負う量だった。
「生きてはいないだろう」
誰もが、そう思っていた。
父親も。
妻を失い失意の中で、僕を見る目が変わっていった。
父親は、僕を知り合いの僧侶に任せた。
突然、連れてこられた山奥の寺で、幼い僕は、当惑した。
夕暮れの中、飛び交うカラスや、虫や、闇の中に潜む声達に震え上がった。
ある日。
僕は、僧侶の大事にしている、数珠を壊してしまった。
悪気はなかったが、山奥にやられ、荒れていた僕に、弁解はできなかった。
珍しい数珠だった。
僕は、何時間も、外に出されていた。
山奥の日暮。
僕には、空恐ろしかった。
「誰かいるか?」
森の中から、声が聞こえた。
「誰か・・・」
何度も、ぶつぶつと声が聞こえる。
遠くを見ると鬼火が聞こえる。
「誰か・・」
僕は、声に誘われるまま、寺を抜け出し、歩いていった。
裸足だった。
どこかで、僕を止める声が聞こえた。
それでも、僕は、歩いていった。
声に導かれるまま。
「助けて・・」
声が聞こえたのは、森の奥にある大きな石だった。
周りをしめ飾りで、封印され、見るからに、禁じられた場所だった。
「日暮に、森に行ってはイケナイ」
寺に来た時に、言われた言葉は、忘れていた。
「どうしたの?」
僕は、その岩に話しかけていた。
「助けて」
石の中から、か細い声が聞こえていた。
「どうしたら、助けられるの」
「ここから、出して」
「どうやって?」
しめ飾りが揺れる。
「これを、切って」
「これ?」
そう簡単に、切れないと言われていたしめ飾り。僕が、触れると、それは、バラバラに、宙へと散り去り、その岩の中から、真っ白な体を持つ女性が現れた。
「何だ、小童か」
女性は、恥ずかしげもなく、素っ裸で、僕を見下ろしていた。
「子供の癖にやるなぁ」
「どうして、石の中にいたの?」
僕が、聞くと女は、恐ろしい程、口を大きく開けると、笑っていた。
「そんな答え、知るか」
そう言うと、僕に飛び掛かってきた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦
未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?!
痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。
一体私が何をしたというのよーっ!
驚愕の異世界転生、始まり始まり。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる