それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

文字の大きさ
61 / 107

心の奥に巣食う者よ。あれは、友人ではない。

しおりを挟む
「お前が、憎んでいるのは、目の前のあいつだ」
先に、逃げようとする颯太を引き止めたのは、その言葉だった。
「あいつを引き裂け」
「ちょっと!」
驚く颯太に、封雲は、冷ややかな笑いを浮かべる。
「ごめんな。颯太。俺としては、どっちでもいいんだけど。基本、自分が生き残る事。それが、俺のポリシーなんだ」
「封雲。何だよ」
「自分が、どう生き残るか。それって、大事だろう」
「そうだけど」
封雲と揉めている間に、砂の姫は、地面に降り立った。
「未練を断ち切れば、音羽も、戻ってこれるだろう」
颯太の首先に剣を突きつける。
「少しも、懲りていないな」
「何の事だが・・分かりませんけど」
「おや?忘れたのか?」
「忘れたとか・・そんな」
首元に突きつけられた剣は、少しでも、動くと、颯太に紅い模様を刻み込もそうだ。
「悪いな」
動けない颯太の右手首に、手を伸ばす封雲。
「お前・・」
取られまいと身を翻すと、突き出された剣先が、颯太の首を傷つけた。
「ちっ!」
これは、本当に傷つけられてしまう。ってか、殺される。
抵抗できない颯太を尻目に、封雲は、数珠を外してしまった。
「ごめんな。颯太。こいつは、どうしても、手に入れたかったんだ」
その時、初めて颯太は、気が付いた。
「これって・・・封雲?」
封雲は、満足そうに、颯太から奪った数珠を右手にはめると、軽く振ってみせた。
「偶然、ここを通りかかったと思う?」
封雲は、砂の姫に視線を送る。
「好きにしていいよ」
「え・・・。封雲」
「こいつのない、颯太は、ただの人間と変わらないしな」
封雲は、数珠を振ってみせる。
「お前には、勿体無い物何だよ・・・。なんで、師匠は、お前に渡したのか」
封雲は、颯太を砂の姫に、差し出したまま、そこを離れようとした。
「待て・・・お前もだ」
砂の姫は、封雲を引き留める。
「お前も、逃す訳には、いかない」
「俺の事?」
封雲は笑う。
「お前に、俺を倒せると思う?」
そう言い、数珠に唇を寄せ、何かを呟こうとした。その瞬間。光と物凄い音がして、地面に叩きつけられる封雲。
「うわ・・・」
頭から、叩きつけられ、顔面は、血まみれになる。
「何だ・・・これは」
右手の数珠は、次第に重くなり、地面に沈み込む。
「そいつは・・・」
颯太は言った。
「百八の妖が閉じ込められているって・・・師匠は言っていた。そいつらが、僕を守るって。ただ・・・そいつらを、納得させ、押さえつける力が必要なんだ」
「押さえつける力・・・」
颯太が、封雲から、数珠を奪い返そうとした瞬間、砂の姫が飛びかかってきた。
「ごちゃごちゃ、うるさい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!

有賀冬馬
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!? 「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。 でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした! 「君がいたから、この国は守られていたんだよ」 えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!? 竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート! そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

推し活が嫌いだ!

あんど もあ
ファンタジー
街の治安を守る衛兵隊が、推し活ブームのせいで「会いに行けるアイドル」という存在になってしまった。一番人気の隊員の俺は、過熱する推し活の女性たちに迷惑をかけられて推し活が大嫌い。だが、一人気になる女性がいて……。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

ベテラン精霊王、虐げられ皇子の子育てに励みます

はんね
ファンタジー
 大陸で最も広大な領土と栄華を誇るアストラニア帝国。 その歴史は、初代皇帝ニコラスと精霊王バーティミアスが“疫病王ヴォラク”を討ち倒したことから始まった。ニコラスとバーティミアスは深い友情を結び、その魂を受け継ぐ皇子たちを永遠に見守り、守護する盟約を交わした。  バーティミアスは幾代もの皇帝を支え、帝国は長き繁栄を享受してきた。しかし、150年の眠りから目覚めた彼の前に現れた“次の皇帝候補”は、生まれたばかりの赤ん坊。しかもよりにもよって、十三番目の“虐げられ皇子”だった! 皮肉屋で老獪なベテラン精霊王と、世話焼きで過保護な月の精霊による、皇帝育成(?)奮闘記が、いま始まる——! 人物紹介 ◼︎バーティミアス 疫病王ヴォラクを倒し初代皇帝ニコラスと建国初期からアストラニア帝国に使える精霊。牡鹿の角をもつ。初代皇帝ニコラスの魂を受け継ぐ皇子を守護する契約をしている。 ◼︎ユミル 月の精霊。苦労人。バーティミアスとの勝負に負け、1000年間従属する契約を結びこき使われている。普段は使用人の姿に化けている。 ◼︎アルテミス アストラニア帝国の第13皇子。北方の辺境男爵家の娘と皇帝の息子。離宮に幽閉されている。 ◼︎ウィリアム・グレイ 第3皇子直属の白鷲騎士団で問題をおこし左遷されてきた騎士。堅物で真面目な性格。代々騎士を輩出するグレイ家の次男。 ◼︎アリス 平民出身の侍女。控えめで心優しいが、アルテミスのためなら大胆な行動に出る一面も持つ。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...