それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

文字の大きさ
75 / 107

憎悪

しおりを挟む
封雲は、突然、現れた邪神に、颯太を連れ去られて、呆然と空を見上げていた。
「あれが・・・」
「邪神。」
砂羽は、颯太と一緒に見送りながら、呟くと鞘に剣を納めた。
「気まぐれな神と、人間は言ったな」
神と言う文字を使いながらも、神ではない。邪な奴。腹に何かを抱えている。信じるに値しない。
彼と逢った人は、必ず、口にしている。
どうして、邪神があの家に、代々、現れているのか、封雲は、わからなかった。
「代々、あそこの長男に乗り移るらしい。乗り移られた長男は、短命で、子供ができるとすぐ死ぬ」
同じ寺の仲間に教えられた。
何故、その家なのか、興味があった。
「婆さんがいる。年齢は、わからない。正気なのか、痴呆なのか。誰も、相手にできない」
「婆さんぐらいで、ビクビクしているのか?」
封雲は、言った。
「ただの年寄りに見えるが」
「お前も、わからない奴だな」
友人は、笑った。
「見えないのか?その婆さんは、守人だよ」
「守人?」
「あの家を守っているのさ。蔵があっただろう?」
「あぁ、確かに」
「蔵を守っているんだ」
「蔵?」
「そうさ。誰も、わからない。勿論、俺達の山寺と同じ」
「蔵に何があるのか、知りたくないか?」
「知りたいさ。今まで、何人も、あの家に侵入した者がいた」
「・・・で、何があった?」
「誰も、帰ってこなかった」
「誰も?」
「そうさ。何かある・・・あの蔵も、邪神も」
「邪神が、乗り移るのであれば、その元の体の人は、どうなるんだい?」
「さあな。」
友人は、封雲の肩を叩くと、
「深入りするなよ」
そう忠告し、去っていった。
「どうして、邪神が助けに来た?」
「全く、とんでもない邪魔が入った」
砂羽は、封雲に目もくれずに立ち去ろうとしていた。
「お前!」
砂羽は、言った。
「私を利用できると思うな」
封雲に向かって言った。
「あの小僧を憎んでいるのは、わかるが、私を利用した事は許せない」
「何、言っている。結局、邪神には、かなわなのだろう?」
「お前だろう。それは。あれらを敵にして、残っていけるのか?」
「あれら?」
「小僧の影には、音羽がいる。あいつは、奴につくだろう」
「音羽。どうみても、妖だろう?あいつと何があった。あなたが、殺したくなるほど」
「知りたいか?」
砂羽は、薄く笑った。
「あいつの、魂魄を微塵にしないと、気が済まぬ」
「颯太を?」
「何故、颯太が、あんな化け物になったのか、教えてやろう」
砂羽は、冷たく言い放った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...