「匂いを嗅ぐ名探偵は、高校生活に巻き込まれる! 臭気判定士の能力で転校生の秘密を嗅ぎ取る青春ラブコメ」

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第67話:初めての香り、清潔な制服

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 数日後の朝、校門の前で僕は一瞬立ち止まった。

 風に乗って漂ってきた、ひとつの香り。

 柔らかい、でも主張しない。

 それは、ごく普通の学生用柔軟剤の香りだった。

(……この香り)

 振り返ると、そこには制服を着直し、髪も整えた東雲遥香が立っていた。

 その姿は、数日前のあのホテルの非常階段で見せた彼女とはまるで別人だった。

「……おはよ、白井くん」

「おはよう。……その香り、いいね」

「ふふっ、でしょ? 昨日、ちゃんと洗濯したの」

 香水も、リップの甘香も、男の残り香もない。

 “嘘のない青春の香り”。

 今の彼女が、初めて“学生”として歩き出した香りだった。

「でさ……その、あたし、今バイト探してて……」

「近くの書店、夕方の時間帯に空きがあるって聞いたよ」

「……ありがと」

 制服の袖を握りしめながら、遥香が少しだけ顔を赤らめた。

「ねえ、白井……」

「うん?」

「今なら、男と“純粋な好奇心”で向き合える気がする」

「……え?」

「つまり、あたし今ね……あなたにちょっと惹かれてる、ってこと」

 その瞬間、教室の窓から覗いていたヒロインズの空気が変わった。

「……んん!? なんか今、危険な告白聞こえた気がする!」(ルナ)

「……また、香りの競争相手が増えるのね……」(美月)

「白井くんの、匂いに惹かれるのは……分かるけど……」(いぶき)

 静かな再出発が、一気に騒がしくなる予感。

 だけど、遥香の香りは、確かに前を向いていた。

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