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第91話「見てしまった、あの距離感──風に混じる“ふたりの香り”」
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放課後の帰り道。まだ夏の名残が残る風の中を、僕と遥香は並んで歩いていた。
駅へと向かう途中、特に何を話すでもない。
けれど不思議と、言葉がなくても心地よい空気が流れていた。
遥香は、うっすら汗をかいた首元に手を当てながら、ふわりと笑う。
「ねえ白井。あたしね、バイトで疲れてるはずなのに……今日、ずっと楽しかったの。変だよね」
僕は答えず、代わりに鼻で彼女の香りをそっと感じ取る。
石けん、汗、紙インク、そして──恋の匂い。
僕の横で、確かに彼女は“香っていた”。
「明日も……香道、行くんだよね?」
「うん」
「……あたし、またついて行ってもいい?」
「……別に、いいけど」
その時だった。
遠く、校舎の陰。花壇の脇に集まっていた4つの影が、こちらを凝視していた。
──風がふわりと吹き抜ける。
その風に乗って、“遥香の香り”が、彼女たちの鼻先へと届いた。
一歩、また一歩。
香りが届くほどに、彼女たちの表情が硬くなっていく。
ルナの瞳がギラついた。
「……ちょっと待てコラァああ!」
その声に僕はギョッとして振り返る。
ルナ・美月・紅葉・いぶき──
まるで“見てはいけないもの”を見たような表情で立ち尽くしていた。
──距離、笑顔、手の角度。
そして、風に混じって流れた“ふたりの匂い”。
それだけで、全部伝わってしまっていたのだ。
ヒロインたちの目に灯る、静かな炎。
僕はまだ気づかぬまま、つぶやいた。
「……明日もまた、香道に行くか」
そして戦火は、再び香りとともに燃え上がる──。
駅へと向かう途中、特に何を話すでもない。
けれど不思議と、言葉がなくても心地よい空気が流れていた。
遥香は、うっすら汗をかいた首元に手を当てながら、ふわりと笑う。
「ねえ白井。あたしね、バイトで疲れてるはずなのに……今日、ずっと楽しかったの。変だよね」
僕は答えず、代わりに鼻で彼女の香りをそっと感じ取る。
石けん、汗、紙インク、そして──恋の匂い。
僕の横で、確かに彼女は“香っていた”。
「明日も……香道、行くんだよね?」
「うん」
「……あたし、またついて行ってもいい?」
「……別に、いいけど」
その時だった。
遠く、校舎の陰。花壇の脇に集まっていた4つの影が、こちらを凝視していた。
──風がふわりと吹き抜ける。
その風に乗って、“遥香の香り”が、彼女たちの鼻先へと届いた。
一歩、また一歩。
香りが届くほどに、彼女たちの表情が硬くなっていく。
ルナの瞳がギラついた。
「……ちょっと待てコラァああ!」
その声に僕はギョッとして振り返る。
ルナ・美月・紅葉・いぶき──
まるで“見てはいけないもの”を見たような表情で立ち尽くしていた。
──距離、笑顔、手の角度。
そして、風に混じって流れた“ふたりの匂い”。
それだけで、全部伝わってしまっていたのだ。
ヒロインたちの目に灯る、静かな炎。
僕はまだ気づかぬまま、つぶやいた。
「……明日もまた、香道に行くか」
そして戦火は、再び香りとともに燃え上がる──。
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