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ポエム題材『夏の日差しと汗のにおい』
「自転車通学女子 × 夏 × 恋心 × 汗 ×坂道」
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『汗ばんだ坂道、君の待つ朝』
ペダルを踏み込んだ瞬間、世界が揺れる。
いつもより少し早く目が覚めた朝だった。
夏の朝の、少しねばつく空気。
洗ったばかりの髪が、すぐに汗で湿っていくのがわかる。
制服に袖を通す前から、もう暑い。
でも今日は、あの坂を越えて、君に会いにいく日。
だからこそ、ハンドルを握る手にも、少しだけ力が入る。
カゴに教科書を詰めて、玄関の扉を開けると、
すぐに世界は“夏”のにおいで満たされた。
アスファルトが熱を帯びている。
照り返しが視界を焼いてくる。
でも目を細めたその向こうには、あの坂道の影が、たしかに揺れていた。
わたしの通学路の最後に立ちはだかる、長い長い上り坂。
立ち漕ぎすると、制服の裾が膝に張りつく。
太ももに汗が伝い、ハンドルのグリップに指が吸いつく。
いつもはしんどいだけのその感触が、
今日はなぜだか、少しだけ甘く思えた。
だって、その坂を越えた先には、君がいるから。
朝の光の中、遅刻ぎりぎりで校門に立って、
わたしを見つけて、笑って、手を振る君。
それだけで、全身の体温が跳ね上がる。
「また遅刻か?」って笑うその声が、
昨日も、今日も、わたしを登らせる。
風が肌をなでる。
でも、冷たくなんてない。
むしろ火照った肌に追い打ちをかけるように、太陽がじりじりと照らしてくる。
もう、ワキの下も、背中も、ハンドルを握る手のひらも、ぜんぶぐっしょりだ。
だけど、この汗が恥ずかしくないと思えるのは、
“今のわたし”を、きちんと重ねた証拠だからだ。
汗のにおいが、制服の中で静かに香る。
朝、柔軟剤を入れて洗ったはずなのに、もう自分の体の匂いに変わっていた。
——その匂いは、恋と似ていると思った。
苦くて、すこし酸っぱくて。
でも、どこか離れがたくて。
ずっと隠しておきたかったはずなのに、
この朝の坂では、全部が溢れてしまう。
心臓がバクバクするのは、酸素が足りないせいだけじゃない。
「……もうすぐ、見える」
坂のてっぺんの、その向こう。
わたしは知っている。君がいつもいる場所。
笑って、汗を拭って、わたしを待っている君。
ときどき「今日は来ないかと思った」って、冗談みたいに言う。
でも、あのときほんの一瞬だけ見せた、不安そうな目。
あれだけが、いまも焼きついている。
だからわたしは、止まれない。
ペダルを踏む。
心臓が跳ねる。
全身の毛穴から汗が吹き出す。
グリップに染み込んだ自分のにおいを感じながら、
わたしは“好き”の温度で、坂を越えていく。
そして、ようやく坂のてっぺん。
目の前に、君がいる。
校門の前、片手でスマホをいじって、
わたしに気づいた瞬間、少しだけ顔を上げて笑う。
「おはよ、また汗だくじゃん」
その何気ない一言で、わたしの全身が“生きてる”と思える。
息を切らしながらも、
笑い返すこの瞬間だけが、わたしにとっての“ゴール”。
でも、本当は──
君に追いつきたくて、登ってるんじゃない。
君のもとに、自分を届けたくて、この坂を登ってる。
何度も、何度も、夏の汗を流しながら。
汗の匂いも、制服に染みた今日の“好き”も、
すべてが“わたしだけのもの”だと思えるから。
だからこの坂が、嫌いじゃない。
汗ばんだハンドルを握りしめながら、
わたしは今日もまた、恋の温度でペダルを踏みこむ。
それが、君に向かって進むということだから。
ペダルを踏み込んだ瞬間、世界が揺れる。
いつもより少し早く目が覚めた朝だった。
夏の朝の、少しねばつく空気。
洗ったばかりの髪が、すぐに汗で湿っていくのがわかる。
制服に袖を通す前から、もう暑い。
でも今日は、あの坂を越えて、君に会いにいく日。
だからこそ、ハンドルを握る手にも、少しだけ力が入る。
カゴに教科書を詰めて、玄関の扉を開けると、
すぐに世界は“夏”のにおいで満たされた。
アスファルトが熱を帯びている。
照り返しが視界を焼いてくる。
でも目を細めたその向こうには、あの坂道の影が、たしかに揺れていた。
わたしの通学路の最後に立ちはだかる、長い長い上り坂。
立ち漕ぎすると、制服の裾が膝に張りつく。
太ももに汗が伝い、ハンドルのグリップに指が吸いつく。
いつもはしんどいだけのその感触が、
今日はなぜだか、少しだけ甘く思えた。
だって、その坂を越えた先には、君がいるから。
朝の光の中、遅刻ぎりぎりで校門に立って、
わたしを見つけて、笑って、手を振る君。
それだけで、全身の体温が跳ね上がる。
「また遅刻か?」って笑うその声が、
昨日も、今日も、わたしを登らせる。
風が肌をなでる。
でも、冷たくなんてない。
むしろ火照った肌に追い打ちをかけるように、太陽がじりじりと照らしてくる。
もう、ワキの下も、背中も、ハンドルを握る手のひらも、ぜんぶぐっしょりだ。
だけど、この汗が恥ずかしくないと思えるのは、
“今のわたし”を、きちんと重ねた証拠だからだ。
汗のにおいが、制服の中で静かに香る。
朝、柔軟剤を入れて洗ったはずなのに、もう自分の体の匂いに変わっていた。
——その匂いは、恋と似ていると思った。
苦くて、すこし酸っぱくて。
でも、どこか離れがたくて。
ずっと隠しておきたかったはずなのに、
この朝の坂では、全部が溢れてしまう。
心臓がバクバクするのは、酸素が足りないせいだけじゃない。
「……もうすぐ、見える」
坂のてっぺんの、その向こう。
わたしは知っている。君がいつもいる場所。
笑って、汗を拭って、わたしを待っている君。
ときどき「今日は来ないかと思った」って、冗談みたいに言う。
でも、あのときほんの一瞬だけ見せた、不安そうな目。
あれだけが、いまも焼きついている。
だからわたしは、止まれない。
ペダルを踏む。
心臓が跳ねる。
全身の毛穴から汗が吹き出す。
グリップに染み込んだ自分のにおいを感じながら、
わたしは“好き”の温度で、坂を越えていく。
そして、ようやく坂のてっぺん。
目の前に、君がいる。
校門の前、片手でスマホをいじって、
わたしに気づいた瞬間、少しだけ顔を上げて笑う。
「おはよ、また汗だくじゃん」
その何気ない一言で、わたしの全身が“生きてる”と思える。
息を切らしながらも、
笑い返すこの瞬間だけが、わたしにとっての“ゴール”。
でも、本当は──
君に追いつきたくて、登ってるんじゃない。
君のもとに、自分を届けたくて、この坂を登ってる。
何度も、何度も、夏の汗を流しながら。
汗の匂いも、制服に染みた今日の“好き”も、
すべてが“わたしだけのもの”だと思えるから。
だからこの坂が、嫌いじゃない。
汗ばんだハンドルを握りしめながら、
わたしは今日もまた、恋の温度でペダルを踏みこむ。
それが、君に向かって進むということだから。
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