『茶々の乱華 ~戦国の姫、愛と野望の果てに~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第6巻:鶴松の誕生と秀吉の天下

第4章:鶴松の歩み

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 秀吉の居城は、昼に開かれる。
    木の廊下が陽光に温められ、庭の花が鮮やかに咲く。
    わしは鶴松の手を引き、初と江をそばに置き、庭を歩む。
    小谷城の湖畔は遠く、父上の笑顔は光に閉ざされる。
    ――父上。わが目は、鶴松の歩みを捉えたり。  
    初が鶴松の背を支え、穏やかな声で語る。
「茶々、そなた、鶴松、歩けるようになったな。わし、江とこの子を見ると心が温まる……」
    その瞳は温かく、優しさを湛える。
    わしは初の手を握る。
「初、そなた、心優しいな。長女として、わしがそなたと江、鶴松を守る」
    江が鶴松に笑いかけ、ちっちゃな手を振る。
「茶々、初、鶴松、歩いてる! わし、この子、大好きだぞ!」  
    わしは鶴松の歩みを見つめる。
「江、そなた、明るいな。わしと初がそなたを幸せにする。鶴松も共に」
    鶴松が小さな足で進み、わが胸を温める。
    ――鶴松。そなた、わが子。わし、そなたを守る。
    その時、庭の向こうから家臣の声が響く。
「秀吉殿の天下、盤石とはいえ、北条や徳川、油断ならぬ……」
    わが心がざわつく。
    ――天下の動乱。そなた、鶴松をどう守る?  
    その時、軽やかな足音が響き、羽柴秀吉が現れる。
    その笑顔は、庭の花を凌ぐほど鮮やかだ。
「やあ、姫君たち! 鶴松、歩けるようになったか! 某、秀吉だ。そなたら、幸せそうで何よりだ!」
    その声は、春風のざわめきの如し。
    わしは鶴松を抱きしめ、秀吉を見る。
「秀吉殿、そなたの天下、動乱の影が見える。鶴松をどう守る?」  
    秀吉が笑う。
「茶々殿、鋭いな! 某の天下は盤石だ! 北条も徳川も、某がまとめ上げる。鶴松は後継ぎ、初殿、江殿も幸せに暮らす。そなたが母なら、家族は守られる!」
    わが胸が波立つ。
    ――盤石? そなたの笑顔、動乱の影を隠す。
    わしは問う。
「秀吉殿、そなた、鶴松に何を求める? 初と江、わしらの未来はどうなる?」  
    秀吉が目を細める。
「茶々殿、賢いな。某は鶴松に天下を継がせたい。初殿、江殿もこの城で幸せに暮らす。そなたが母として側室なら、家族は守られる。某の天下、そなたと鶴松と共に永遠に!」
    その笑顔に、わしは危うさの如き影を感じる。
    ――この男、笑顔でわしらを縛る。  
    初がわしに囁く。
「茶々、そなた、鶴松を育てるのか。わし、江とこの子を見ると安心する。そなた、辛くないか?」
    わしは初の手を握る。
「初、そなた、心優しいな。長女として、母として、わしがそなたらと鶴松を守る。辛くとも、そなたらの笑顔がわが力だ」
    江が鶴松の頬に触れる。
「茶々、そなた、強いな! わし、鶴松と一緒なら幸せだ!」  
    秀吉が鶴松を抱き上げる。
「茶々殿、そなた、疑うのはいい。されど、鶴松の歩み、初殿、江殿の笑顔、見てみろ。この城で、そなたらも花の如く咲ける。母として、側室として、そなた、某と共に戦国の世を切り開こう!」
    わが心が締め付けられる。
    ――母上。そなたの意志、わし、守る。
    わしは鶴松を胸に抱く。
「秀吉殿、そなたの籠に留まる。されど、わし、そなたを信じぬ。初、江、鶴松の未来のため、わし、母として生きる」  
    秀吉が笑う。
「それでいいさ、茶々殿! 信じなくとも、そなたの覚悟があれば十分だ。そなたら、某と共に鶴松を育て、天下を守ろう!」
    わしらは鶴松の笑顔を見つめる。
    初がわしに凭れる。
「茶々、そなた、母として強いな。わし、そなたがそばにいると安心する」
    わしは初と江を抱く。
「初、江、わしがそなたらを守る。長女として、母として、生き抜く」  
    わしは目を閉じる。
    小谷城の炎が、瞼の裏で揺れる。
    父上の声が、遠く響く。
    ――茶々、鷹になれ。
    わしは答える。
    ――父上。わし、目を開き、翼を広げ、歩みを越える。  

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