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第15話 王太子、初めて自分の原稿を直される側になる

 王太子ジュリアス・ヴァレンティアは、演説が得意だと思っていた。

 少なくとも、そう信じていた。

 広場に立てば民は顔を上げる。
 式典で言葉を述べれば拍手が起きる。
 貴族の前で微笑めば、夫人たちは満足げに頷く。

 王太子らしい声。
 王太子らしい姿。
 王太子らしい言葉。

 それらは、自分のものだと思っていた。

 だから、王宮西棟の小会議室に呼ばれた時も、ジュリアスは不機嫌だった。

 政務再教育。

 その言葉自体が、彼の誇りを傷つける。

 しかも同席者は、弟のレオンハルトと王宮書記官オスカー。

 クラリスはいない。

 それが救いなのか、屈辱なのか、ジュリアス自身にも分からなかった。

「兄上。座ってください」

 レオンハルトは、いつもどおり落ち着いていた。

 黒い上着に、余計な飾りのない装い。

 王弟というより、政務官のような顔をしている。

 ジュリアスは椅子に腰を下ろした。

「それで、今日は何をさせるつもりだ」

「過去の演説原稿を見ます」

「演説?」

「はい」

 オスカーが机の上に二束の書類を置いた。

 左の束には、青い紐。
 右の束には、赤い紐。

「こちらが殿下の当初原稿。こちらが、実際に読まれた最終稿です」

 ジュリアスは眉をひそめた。

「それを見て何になる」

「違いを確認していただきます」

「くだらない。演説は、すでに成功した」

 オスカーは、ほんの一瞬だけ口を閉じた。

 言葉を選んでいる顔だった。

「成功した理由を、確認するためです」

 その言い方が気に入らなかった。

 まるで、自分一人の力ではなかったように聞こえる。

 いや、彼らはそう言いたいのだろう。

 クラリスがいなければ、私は何もできなかったと。

 ジュリアスは奥歯を噛んだ。

「始めろ」

 レオンハルトが、一枚目を差し出す。

「三年前の建国祭演説です。北方街道補修に関する部分」

 ジュリアスは原稿を受け取った。

 見覚えがある。

 自分が書いた言葉だ。

 正確には、文官に下書きさせ、自分が手を入れたもの。

 そこには、こう書かれていた。

 ――北方街道の補修は、急を要するものではありません。しかし、地方の安寧も王都の繁栄には欠かせぬもの。王家は余裕をもって支援を行いましょう。

「何が悪い」

 ジュリアスは言った。

「地方にも配慮している」

 オスカーは、隣に最終稿を並べた。

 そこでは文が変わっていた。

 ――北方街道の補修は、王国の血脈を守る務めです。王都の繁栄も、国境を支える諸侯の尽力なくしては成り立ちません。王家は責任をもって支援を行います。

 ジュリアスは、少しだけ黙った。

 レオンハルトが問う。

「違いは分かりますか」

「言い方が大げさになっている」

「違います」

 即答だった。

 ジュリアスは弟を睨む。

 レオンハルトは動じない。

「兄上の当初原稿では、“急を要するものではない”“地方”“余裕をもって”という表現が入っています。北方諸侯の前でこれを読めば、王都は国境防衛を後回しにしていると受け取られたでしょう」

「そこまで悪く取るか」

「取ります」

 オスカーが静かに言った。

「当日、会場には北方三家の当主が揃っておりました。前年の雪崩で橋が落ち、補給が遅れた直後です」

 ジュリアスは原稿を見た。

 そんなことは、覚えていない。

 いや、知らされていたかもしれない。

 クラリスが何か言っていた気もする。

 北方諸侯の顔ぶれについて。
 雪崩の件について。
 街道補修を軽く扱う表現は避けるべきだと。

 その時、自分はどう返しただろう。

 細かいな、と言ったような気がする。

「次です」

 レオンハルトは、間を置かずに次の書類を出した。

 王都大神殿での慈善式典。

 当初原稿。

 ――神殿の尊き慈悲に、王家は今年も相応の支援を行います。民の不安を慰めるその働きに、感謝を捧げます。

 ジュリアスは読む。

「これは問題ないだろう」

 オスカーは最終稿を出す。

 ――神殿が日々支えてくださる孤児院、施療院、貧民救済の働きに、王家は深く感謝します。慰めにとどまらず、人々の明日を支えるその務めを、王家も共に担います。

 ジュリアスは眉を寄せた。

「また長くなっている」

「兄上の原稿では、神殿の仕事を“慰め”に限定しています」

 レオンハルトが言う。

「それの何が悪い」

「神殿は、祈るだけではありません。孤児院も施療院も実際に運営している。彼らは慰め係ではなく、王国の福祉を担う実務者です」

 ジュリアスは言葉に詰まった。

 オスカーが控えめに補足する。

「当時、フィオナ司祭からも似た懸念が出ておりました。クラリス様が修正されたことで、神殿側からはむしろ感謝の書簡が届いております」

 また、クラリス。

 喉元まで反発が上がった。

 だが、原稿を見比べると、言い返せなかった。

 最終稿の方が、明らかに相手の仕事を見ている。

 自分の当初原稿は、遠くから褒めているだけだ。

 悪意はない。

 だが、薄い。

「次」

 ジュリアスは低く言った。

 レオンハルトは、わずかに目を伏せる。

 次に出されたのは、昨年の王妃主催園遊会の挨拶文だった。

 ジュリアスは少しだけ嫌な予感がした。

 当初原稿。

 ――本日は王妃陛下のご快復を祝い、多くの方々と春の喜びを分かち合えることを嬉しく思います。

 何が悪い。

 そう言おうとして、ジュリアスは止まった。

 最終稿を見る前に、少し考えた。

 王妃の快復。

 春の喜び。

 園遊会。

 問題ないように見える。

 だが、最近見た資料の中に、似た言葉があった。

 喪中の家。

 ヴェルナー伯爵家。

 ミレーヌが封筒で叱られていた件だ。

 オスカーが最終稿を出す。

 ――本日は王妃陛下より、皆様の日頃のご厚情に感謝をお伝えする場を賜りました。春の庭に集えることを、王家一同ありがたく存じます。

 ジュリアスは無言で見比べた。

「当日、ヴェルナー伯爵夫人が出席していました」

 オスカーが言った。

「ご実弟を亡くされた直後でした。王妃陛下の快復を祝う表現そのものは悪くありませんが、“喜びを分かち合う”は避けるべきでした」

 ジュリアスは、拳を握った。

 知らなかった。

 そう言いたかった。

 だが、その言葉が、ミレーヌの声と重なる。

 そんなの、誰も教えてくれませんでしたわ。

 自分も同じだった。

 知らなかった。
 教えられなかった。
 だから仕方ない。

 そう言おうとしていた。

 だが、本当に教えられていなかったのか。

 クラリスは、事前に資料を渡していたのではないか。

 出席者の近況表。
 話題注意一覧。
 言及を避けるべき事柄。

 思い出そうとすると、いくつも浮かぶ。

 だが、その多くを自分は読んでいなかった。

 細かすぎる。

 任せる。

 必要なところだけ言ってくれ。

 そう言って、書類を脇へ置いた。

「……次だ」

 声が少し掠れた。

 レオンハルトは、何も言わずに次を出す。

 隣国ノルヴァルト公国使節団歓迎の挨拶。

 当初原稿。

 ――遠き北の地より、我が国の繁栄を学ぶためにお越しくださった皆様を歓迎します。

 ジュリアスは、読んだ瞬間にまずいと思った。

 以前なら気づかなかった。

 だが今は分かる。

 繁栄を学ぶため。

 上からだ。

 まるでノルヴァルト公国が、アルヴィア王国より劣っているように聞こえる。

 最終稿。

 ――長き友誼を結ぶノルヴァルト公国より、尊き客人をお迎えできることを光栄に思います。北方の知恵と我が国の技が、さらに深い友好を育むことを願っております。

 ジュリアスは、しばらく黙った。

 レオンハルトもオスカーも急かさない。

 急かされない沈黙が、かえってつらかった。

「……これは」

 ジュリアスは、ようやく口を開いた。

「クラリスが直したのか」

「はい」

 オスカーが答える。

「すべて?」

「文官室で下整えをしたものもございます。ただ、危険表現を最終的に拾っておられたのは、ほとんどクラリス様です」

 ほとんど。

 その言葉が重かった。

 ジュリアスは、赤紐の束を見た。

 実際に読まれた原稿。

 自分が壇上で読んだ言葉。

 拍手を浴びた言葉。

 民が笑顔になった言葉。

 貴族が頷いた言葉。

 それは、自分の言葉だと思っていた。

 だが、ここに並べられたものを見ると、違う。

 土台は自分だったかもしれない。

 声も自分だった。

 けれど、その言葉が刃にならないよう丸め、薄くならないよう厚みを持たせ、相手を見下さないよう整えていたのは、クラリスだった。

「兄上」

 レオンハルトが静かに言った。

「クラリスは、兄上の言葉を奪っていたわけではありません」

 ジュリアスは顔を上げる。

「兄上の言葉が、兄上自身を傷つけないようにしていた」

「……分かっている」

 言ってから、ジュリアスは自分で驚いた。

 分かっている。

 そんな言葉を、自分が口にするとは思わなかった。

 いや、本当に分かっているのかは分からない。

 ただ、反論する力がなかった。

 オスカーが次の資料を出そうとしたが、レオンハルトが手で制した。

「今日はここまでにしましょう」

「まだ終わっていない」

 ジュリアスは反射的に言った。

「全部見ます」

 オスカーが少し驚く。

 レオンハルトは目を細めた。

「疲れた頭で見ても意味がありません」

「私は子どもではない」

「なら、なおさら休む判断をしてください」

 ジュリアスは言い返そうとした。

 しかし、弟の言葉は正しかった。

 視界の端が少し重い。

 紙の文字を追いすぎて、頭が熱くなっている。

 感情も乱れている。

 このまま読めば、怒りか恥で内容を見誤るかもしれない。

 クラリスなら、ここでどう言っただろう。

 そこでまた、クラリスの名が浮かんだ。

 ジュリアスは歯を食いしばる。

「……明日、続きを見る」

 レオンハルトは頷いた。

「そうしましょう」

 オスカーが資料を整理し始める。

 その手元を見ながら、ジュリアスは低く尋ねた。

「オスカー」

「はい」

「お前は、知っていたのか」

「何をでしょう」

「私の原稿が、ここまで直されていたことを」

 オスカーは、少しだけ間を置いた。

 正直に答えるべきか迷ったのだろう。

「知っておりました」

「なぜ言わなかった」

「申し上げる立場ではございませんでした」

 その答えは、王宮の答えだった。

 立場ではない。

 権限がない。

 誰かが言うべきだが、自分ではない。

 そうして、いろいろなものが見えないまま積もっていく。

 ジュリアスは、今さらその構造の端を見た気がした。

「クラリスは」

 口にして、少し詰まる。

「いつも、こうしていたのか」

 オスカーは静かに答えた。

「はい」

「私に怒っていたか」

 なぜそんなことを聞いたのか、自分でも分からなかった。

 オスカーは困ったように目を伏せる。

「クラリス様は、怒りを表に出されない方でした」

「答えになっていない」

「では、私の推測になりますが」

「構わない」

「怒っておられたというより……ずっと、諦めておられたように見えました」

 諦め。

 怒りよりも、その言葉の方が深く刺さった。

 怒っていたなら、まだよかった。

 責めていたなら、言い返せた。

 けれど諦められていた。

 自分が理解しないことを。
 読まないことを。
 感謝しないことを。
 それでも仕事だけは差し出してくれるものとして。

 ジュリアスは、青紐の束に手を置いた。

 自分の当初原稿。

 そこには、無邪気な傲慢さが残っている。

 悪意はない。

 だからこそ、たちが悪い。

「……今日は終わりだ」

 ジュリアスは立ち上がった。

 レオンハルトも立つ。

「兄上」

「何だ」

「明日は、兄上自身で一文直してください」

 ジュリアスは眉を寄せる。

「私が?」

「はい。まず一文でいい」

「何の意味がある」

「自分の言葉を、自分で見る訓練です」

 ジュリアスは返事をしなかった。

 小会議室を出る。

 廊下は夕暮れの色に染まっていた。

 王宮の窓から差し込む光は、美しい。

 以前なら、その美しさに何も思わなかった。

 今日は、少しだけ眩しかった。

 その頃、クラリスは顧問室で七三三番の請求書を探していた。

 ただし、一人ではない。

 オスカーが小会議室に行っているため、若い補佐官二人とイリスが一緒だった。

「お嬢様」

 イリスが言う。

「終業時刻までです」

「分かっているわ」

「本当に?」

「本当に」

 補佐官の一人が、遠慮がちに紙を差し出した。

「クラリス顧問、こちらは違いますか」

 クラリスは受け取る。

 番号は七三三。

 だが、品目は式典用旗布。

 慈善関連ではない。

「違います……いえ、待って」

 紙を見つめる。

 式典用旗布。

 納入商会は、ルグラン織物商。

 承認印は財務院。

 保証人欄に、またヴァルト家。

 そして、納入日がハイム商会の施療院用寝台布と同じ日。

「これは、外れではないかもしれません」

 イリスが近づく。

「七三三番ですか」

「ええ。ただ、慈善関連ではなく式典用旗布として処理されています」

「混ぜられた?」

「おそらく」

 クラリスは三枚を並べた。

 七三一。
 七三二。
 七三三。
 七三四。

 すべて別商会。
 別品目。
 けれど、番号は連続している。

 つまり、同じ場所でまとめて作られた請求書の可能性が高い。

「オスカー様が戻られたら確認を」

 言いかけて、クラリスは時計を見た。

 終業時刻が近い。

 ここで始めれば、また夜になる。

 イリスは何も言わずに見ている。

 クラリスは、ゆっくり息を吐いた。

「保管袋に入れて、明日の最優先にしましょう」

 イリスの表情が少し和らいだ。

「はい」

 補佐官たちも、ほっとしたように見えた。

 以前のクラリスなら、その場で照合を始めていただろう。

 今は違う。

 証拠は逃がさない。

 でも、自分たちを壊してまで追わない。

 それもまた、改革の一部だ。

 仕事を終え、クラリスが顧問室を出ようとした時、廊下の向こうからジュリアスが歩いてくるのが見えた。

 彼は一人だった。

 従者を少し後ろに下がらせている。

 クラリスは礼をした。

「王太子殿下」

 ジュリアスは、少しだけ足を止めた。

 いつものように何か命じる顔ではなかった。

 かといって、素直に謝る顔でもない。

 複雑なものを抱えた顔だった。

「……今日は、私の原稿を見た」

 唐突だった。

 クラリスは、すぐに意味を理解する。

 レオンハルトたちとの再教育だ。

「そうでございましたか」

「君が直したものだ」

「多くは、書記官室と相談のうえでございます」

「だが、君が直した」

 ジュリアスの声には、怒りが少し残っていた。

 けれど、それだけではなかった。

「なぜ、言わなかった」

 クラリスは静かに答えた。

「申し上げていたつもりでした」

 ジュリアスは黙った。

 言い返せないのだろう。

 彼女は続ける。

「資料をお渡しし、危険な表現には印をつけ、必要な時は口頭でも説明しておりました」

「……私は、聞いていなかったのか」

「お忙しかったのだと思います」

 それは、優しい言い方だった。

 ジュリアスにも分かったのだろう。

 彼の顔が少し歪む。

「気を遣うな」

「事実です」

「違う。私は、聞く気がなかった」

 クラリスは、彼を見た。

 ジュリアスは、視線を合わせなかった。

「明日、続きを見る」

「はい」

「一文、直せと言われた」

「レオンハルト殿下に?」

「そうだ」

 沈黙。

 短い沈黙だった。

 クラリスは、少し迷ってから言った。

「最初は、一文で十分かと存じます」

 ジュリアスが、ようやく彼女を見る。

「君もそう言うのか」

「はい。言葉は、一文でも国を傾けることがありますので」

 以前なら、彼はここで嫌味だと受け取ったかもしれない。

 今日も少し眉を動かした。

 だが、怒鳴らなかった。

「……そうか」

 それだけ言って、ジュリアスは歩き去った。

 クラリスは、その背中を見送った。

 以前より少し、小さく見えた。

 けれど、ただ落ちぶれたというより、ようやく鎧の重さに気づいた人の背中だった。

 イリスが隣に来る。

「お嬢様」

「何?」

「殿下、少しだけまともな顔をしておられましたね」

「イリス」

「少しだけです」

「そうね」

 クラリスは、小さく頷いた。

「少しだけ」

 王太子が一日で変わるとは思わない。

 人はそんなに簡単ではない。

 ミレーヌも、ジュリアスも、自分自身も。

 それでも、封筒一枚を直す日があり、一文を直す日がある。

 その小さな積み重ねが、いつか人を変えるのかもしれない。

 夜。

 ジュリアスは自室で、今日見た原稿をもう一度開いていた。

 青紐の当初原稿。
 赤紐の最終稿。

 机の上には、白紙が一枚。

 明日、自分で一文直せと言われた。

 くだらない。

 そう思いたかった。

 だが、紙の前で筆を持つと、思った以上に何も書けなかった。

 自分の言葉が怖い。

 そんな感覚は初めてだった。

 これまで、言葉は自分を飾るものだった。

 今は、誰かを傷つける刃に見える。

「……私は、何を見ていたんだ」

 呟きは、広い部屋に吸い込まれた。

 答える者はいない。

 クラリスもいない。

 彼女はもう、隣で赤を入れてはくれない。

 だからジュリアスは、白紙の上に自分で一文を書いた。

 拙い文だった。

 王太子らしくもない。

 けれど、初めて自分で相手の顔を思い浮かべて書いた一文だった。

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