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《誠実の代償と、乳の暴走編》──自由とは、どこまで張れるのか?
【第36話】 『揺れなき乳の優位──美しさと誠実の分裂』
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──アルメリア公国・第十二世界乳美術賞《グラン・バスト》表彰式。
ラグリス王国からの参加作品は一体だけだった。
MILIT-BUST計画から生まれた乳兵ユニット、コードM05──通称《リスティア》。
金属光沢を思わせる髪色、無表情の仮面、そして人工筋肉によって制御された完璧なバストライン。
その一挙手一投足が、審査員の心を惹きつけて離さなかった。
波形はシンメトリー。
魔導補助揺動子による完全無音の乳振動は、“理想の揺れ”と称される。
そしてその夜──
『グラン・バスト202年賞 最優秀美乳賞』
受賞者:ラグリス王国MILIT-BUSTユニット《リスティア》
それは、世界が“誠実”ではなく“機能美”を選びはじめた瞬間だった。
◆ ◆ ◆
ラグリス王国・誠実乳育成塾。
深夜。事務局室。
「……受賞、しちゃったわね」
リリアーヌは、苦笑ともつかない表情で、報道端末の画面を見つめていた。
「“最も美しい乳”に、心は必要なかったってことか……」
拓真も隣で黙って画面を眺めている。
揺れていたのは、確かだった。
だが、その揺れに、誰も“温度”を感じていなかった。
「ただ美しい、だけなんだな」
◆ ◆ ◆
一方、エミリアの自室。
ひとり、鏡の前に立ち尽くす少女がいた。
人工増殖された乳を持ち、“揺れること”に悩み、
“誠実”を学び、ようやく自分の揺れを受け入れようとしていた少女──エミリア=ハーツ。
彼女は、MILIT-BUSTの乳兵を見た。
冷たく、無機質で、だが圧倒的に完成された“乳の機能美”。
「……あれが、私の……“完成形”なのかもしれない」
そう呟いた瞬間、自分でも気づいていなかった感情が溢れ出した。
「誠実なんて……私が持ってていい言葉じゃなかったのよ……」
胸に手を当てる。揺れている。だが、怖い。
「この揺れも、きっと誰かに比べられて、“誤差”って言われるんだ……」
揺れの中に、エミリアの心は飲み込まれていった。
◆ ◆ ◆
翌朝。塾の講堂。
「おはよう、エミリア」
拓真がいつも通りに声をかけたが、彼女はほとんど反応しなかった。
「……何かあった?」
「……ないです。私は、揺れているようで、揺れてないんです」
「私の乳は、“張ってる”ふりをしてただけだった」
そう言って、エミリアは教室を出ていってしまった。
◆ ◆ ◆
リリアーヌは、屋上にひとりでいたエミリアの姿を見つけ、そっと近づく。
「エミリア」
「……リリアーヌ先生。私、“選ばれなかった揺れ”なんですか?」
「違う。あなたは、“選ばなかった揺れ”よ」
「どういう……」
「揺れにはいろいろある。設計された揺れ、鍛えられた揺れ、生まれつきの揺れ」
「でも“誠実な揺れ”っていうのは、自分がそれを“選んだ”という意志が必要なの」
「MILIT-BUSTの乳は、確かに美しい。でも、それは誰かに“選ばされた揺れ”よ」
「エミリア。あなたの揺れが、誰よりも“誠実”になる日がくる」
「それは、“揺れる自分”を、自分で肯定できたとき」
エミリアは、泣きながら小さく頷いた。
◆ ◆ ◆
その夜。報道局では、解説者がこう言った。
「世界は今、“誠実”より“精度”を求めている」
「“揺れは心”という理念は、もはや古典の詩に過ぎないのかもしれない」
リリアーヌは、それを聞きながら静かに笑った。
「……詩なら、読み直せばいいだけよ」
「そして私たちは、それを書き直す覚悟を持つべきだわ」
ラグリス王国からの参加作品は一体だけだった。
MILIT-BUST計画から生まれた乳兵ユニット、コードM05──通称《リスティア》。
金属光沢を思わせる髪色、無表情の仮面、そして人工筋肉によって制御された完璧なバストライン。
その一挙手一投足が、審査員の心を惹きつけて離さなかった。
波形はシンメトリー。
魔導補助揺動子による完全無音の乳振動は、“理想の揺れ”と称される。
そしてその夜──
『グラン・バスト202年賞 最優秀美乳賞』
受賞者:ラグリス王国MILIT-BUSTユニット《リスティア》
それは、世界が“誠実”ではなく“機能美”を選びはじめた瞬間だった。
◆ ◆ ◆
ラグリス王国・誠実乳育成塾。
深夜。事務局室。
「……受賞、しちゃったわね」
リリアーヌは、苦笑ともつかない表情で、報道端末の画面を見つめていた。
「“最も美しい乳”に、心は必要なかったってことか……」
拓真も隣で黙って画面を眺めている。
揺れていたのは、確かだった。
だが、その揺れに、誰も“温度”を感じていなかった。
「ただ美しい、だけなんだな」
◆ ◆ ◆
一方、エミリアの自室。
ひとり、鏡の前に立ち尽くす少女がいた。
人工増殖された乳を持ち、“揺れること”に悩み、
“誠実”を学び、ようやく自分の揺れを受け入れようとしていた少女──エミリア=ハーツ。
彼女は、MILIT-BUSTの乳兵を見た。
冷たく、無機質で、だが圧倒的に完成された“乳の機能美”。
「……あれが、私の……“完成形”なのかもしれない」
そう呟いた瞬間、自分でも気づいていなかった感情が溢れ出した。
「誠実なんて……私が持ってていい言葉じゃなかったのよ……」
胸に手を当てる。揺れている。だが、怖い。
「この揺れも、きっと誰かに比べられて、“誤差”って言われるんだ……」
揺れの中に、エミリアの心は飲み込まれていった。
◆ ◆ ◆
翌朝。塾の講堂。
「おはよう、エミリア」
拓真がいつも通りに声をかけたが、彼女はほとんど反応しなかった。
「……何かあった?」
「……ないです。私は、揺れているようで、揺れてないんです」
「私の乳は、“張ってる”ふりをしてただけだった」
そう言って、エミリアは教室を出ていってしまった。
◆ ◆ ◆
リリアーヌは、屋上にひとりでいたエミリアの姿を見つけ、そっと近づく。
「エミリア」
「……リリアーヌ先生。私、“選ばれなかった揺れ”なんですか?」
「違う。あなたは、“選ばなかった揺れ”よ」
「どういう……」
「揺れにはいろいろある。設計された揺れ、鍛えられた揺れ、生まれつきの揺れ」
「でも“誠実な揺れ”っていうのは、自分がそれを“選んだ”という意志が必要なの」
「MILIT-BUSTの乳は、確かに美しい。でも、それは誰かに“選ばされた揺れ”よ」
「エミリア。あなたの揺れが、誰よりも“誠実”になる日がくる」
「それは、“揺れる自分”を、自分で肯定できたとき」
エミリアは、泣きながら小さく頷いた。
◆ ◆ ◆
その夜。報道局では、解説者がこう言った。
「世界は今、“誠実”より“精度”を求めている」
「“揺れは心”という理念は、もはや古典の詩に過ぎないのかもしれない」
リリアーヌは、それを聞きながら静かに笑った。
「……詩なら、読み直せばいいだけよ」
「そして私たちは、それを書き直す覚悟を持つべきだわ」
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