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《選ばれざる乳たち──誠実の次元を超えて》編
【第87話『王宮炎上──“乳を焼く者”の正体』】
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王都ミルセディア。
その中央広場に高くそびえるのは、王国創設以来、幾たびも修復されながらも守られてきた巨大な“乳象徴彫像”──
「母性と誠実の双丘(ふたおか)」。
白大理石にして高さ十メートル超、ふくよかな双丘を模した造形が、王国の誠実愛と繁栄の象徴として、長きにわたり人々を見守ってきた。
しかしその夜。
彫像は、燃えた。
爆音と共に轟いたのは、紅蓮の炎と黒煙。
彫像の台座に「これは支配だ」「乳を拝ませるな」と書き殴られた赤い塗料。
その残酷な筆跡は、間違いなく、怒りと、否定と、絶望に満ちていた。
* * *
翌朝、王宮会議室は沈痛な空気に包まれていた。
拓真は、燃え残った彫像の破片を手にしながら、ただ黙っていた。
「……これはもう、私怨じゃない。思想の火種だ」
隣で呟いたのは、第一書記官アレスタ。
「“乳の象徴化”が、社会的暴力である……そう訴える運動が、地下で再結集しつつある。名を、《セラフィカ》」
その言葉に、場の空気がぴりりと凍りつく。
《セラフィカ》。
かつて無乳主義を掲げ、王宮にて“誠実乳理念”に反旗を翻した秘密結社。その実体は政治、宗教、貴族社会すら巻き込み、あらゆる場に“揺れなき秩序”を掲げて浸透しようとした影の組織である。
今回の犯行声明は、その復活を明確に示していた。
──そして実行犯は、ある人物の名を口にしていた。
「リリアーヌ・ヴァルモン」
“かつて悪役令嬢として断罪された者”である自分に、全ての元凶があると。
「彼女が“乳に誠実を宿す”と説いたせいで、私たちは切り捨てられた」
「揺れられぬ者の尊厳は、どこにあるのか」
「乳は、見る者の心を暴力的に占拠する」
かつての侍女頭・メルティアの名が、証言記録の中にあった。
* * *
一方その頃。
リリアーヌは、王都郊外の花農園にいた。
「王宮からの帰還要請? ……お断りよ」
乳を揺らす風に背を向け、彼女は咲き誇る芍薬を見つめていた。
「私は“正しさ”を着て戻るつもりはない。私であるために、ここを選んだのよ」
──だが、届いた知らせは、そんな静かな誓いをも、無理やり揺らしてくる。
『王宮乳象徴、焼失』
『犯人は、貴女の“断罪”により排除されたかつての侍女』
……リリアーヌは、目を閉じた。
燃える石像。その熱が、かつて自分の言葉で切り捨てた者たちの“涙”だったとしたら──
「許してとは言わない。でも、向き合う覚悟くらい……今度こそ、私が示さなきゃ」
* * *
王宮に、彼女は戻った。
ただし、正妻としてではなく、かつて“舞台に立った者”として。
「私の名が、彼らを追い詰めたのなら、私がその責任を負います」
壇上から宣言するリリアーヌ。
彼女の乳は、その日一度も揺れなかった。
それは“誠実”ではなく、“誓い”の証だった。
「《セラフィカ》へ、伝えたいことがあります」
「私はもう、誰かの正しさのために揺れる乳ではありません」
「でも──誰かが“揺れたくても揺れられない心”があるなら、それに耳を傾ける私でありたい」
「この胸は、戦うためじゃない。抱きしめるために、あるものだから」
その言葉に、拓真が立ち上がった。
「……リリアーヌ」
彼女が振り返る。
「俺たち、乳で争うんじゃない。乳を語ることで、繋がるんだ」
「次の舞台は……“対話”だ」
そう、これは再び“誠実”を問う物語ではない。
“揺れる理由”と“揺れぬ願い”が、初めて向かい合う時なのだ。
そして、燃えたその石像の跡地には、草花が芽吹いていた。
柔らかく、でも確かに──揺れながら。
その中央広場に高くそびえるのは、王国創設以来、幾たびも修復されながらも守られてきた巨大な“乳象徴彫像”──
「母性と誠実の双丘(ふたおか)」。
白大理石にして高さ十メートル超、ふくよかな双丘を模した造形が、王国の誠実愛と繁栄の象徴として、長きにわたり人々を見守ってきた。
しかしその夜。
彫像は、燃えた。
爆音と共に轟いたのは、紅蓮の炎と黒煙。
彫像の台座に「これは支配だ」「乳を拝ませるな」と書き殴られた赤い塗料。
その残酷な筆跡は、間違いなく、怒りと、否定と、絶望に満ちていた。
* * *
翌朝、王宮会議室は沈痛な空気に包まれていた。
拓真は、燃え残った彫像の破片を手にしながら、ただ黙っていた。
「……これはもう、私怨じゃない。思想の火種だ」
隣で呟いたのは、第一書記官アレスタ。
「“乳の象徴化”が、社会的暴力である……そう訴える運動が、地下で再結集しつつある。名を、《セラフィカ》」
その言葉に、場の空気がぴりりと凍りつく。
《セラフィカ》。
かつて無乳主義を掲げ、王宮にて“誠実乳理念”に反旗を翻した秘密結社。その実体は政治、宗教、貴族社会すら巻き込み、あらゆる場に“揺れなき秩序”を掲げて浸透しようとした影の組織である。
今回の犯行声明は、その復活を明確に示していた。
──そして実行犯は、ある人物の名を口にしていた。
「リリアーヌ・ヴァルモン」
“かつて悪役令嬢として断罪された者”である自分に、全ての元凶があると。
「彼女が“乳に誠実を宿す”と説いたせいで、私たちは切り捨てられた」
「揺れられぬ者の尊厳は、どこにあるのか」
「乳は、見る者の心を暴力的に占拠する」
かつての侍女頭・メルティアの名が、証言記録の中にあった。
* * *
一方その頃。
リリアーヌは、王都郊外の花農園にいた。
「王宮からの帰還要請? ……お断りよ」
乳を揺らす風に背を向け、彼女は咲き誇る芍薬を見つめていた。
「私は“正しさ”を着て戻るつもりはない。私であるために、ここを選んだのよ」
──だが、届いた知らせは、そんな静かな誓いをも、無理やり揺らしてくる。
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……リリアーヌは、目を閉じた。
燃える石像。その熱が、かつて自分の言葉で切り捨てた者たちの“涙”だったとしたら──
「許してとは言わない。でも、向き合う覚悟くらい……今度こそ、私が示さなきゃ」
* * *
王宮に、彼女は戻った。
ただし、正妻としてではなく、かつて“舞台に立った者”として。
「私の名が、彼らを追い詰めたのなら、私がその責任を負います」
壇上から宣言するリリアーヌ。
彼女の乳は、その日一度も揺れなかった。
それは“誠実”ではなく、“誓い”の証だった。
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「私はもう、誰かの正しさのために揺れる乳ではありません」
「でも──誰かが“揺れたくても揺れられない心”があるなら、それに耳を傾ける私でありたい」
「この胸は、戦うためじゃない。抱きしめるために、あるものだから」
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「次の舞台は……“対話”だ」
そう、これは再び“誠実”を問う物語ではない。
“揺れる理由”と“揺れぬ願い”が、初めて向かい合う時なのだ。
そして、燃えたその石像の跡地には、草花が芽吹いていた。
柔らかく、でも確かに──揺れながら。
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