前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー~うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと!~

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第170話:忍者修行の隠れ里でステルス失敗!? もう隠れられないよ!

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 俺の名前は佐藤太一、18歳。
 コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
 最近はコンビニ弁当だけじゃなく、友達の手料理でも腹をやられてる俺の胃が恨めしい。
 俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。  
 トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
 もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
 このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー!」なんて浮かれてた自分が恨めしい。  
 昨日はオーケストラの演奏会で遥、彩花、美月、美咲、玲奈に囲まれて、音楽をぶち壊す地獄を味わった。
 その前は結婚式で幸せを台無しにしたし、毎回毎回が試練だ。
 なのに、今日もまた腹がゴロゴロ鳴ってる。
 原因は昨夜の飯だ。
 半額の「激辛キムチラーメン」を食っただけじゃなく、美月が「太一ならこれくらい平気でしょ?」って持ってきた手作り激辛味噌おにぎりも一緒に食っちまった。
 コンビニの辛さと美月の挑戦的な優しさ(辛さ)が胃の中で暴れてる感じだ。  
 学校から帰って少しゲームしてたけど、我慢の限界が来た。
 仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
 竹林のざわめきと、木刀の打ち合う音が耳をついた。
 目の前には黒装束の忍者が修行してる隠れ里。
 俺の便器は、修行場のど真ん中、土の地面にポツンと出現。  
「うおっ、忍者修行!? 隠れ里かよ!」  
 周りには忍者が木刀で「ハッ!」って掛け声かけて打ち合ってて、別のグループが手裏剣投げてる。
 竹林の奥からは滝の音が聞こえてきて、霧が漂ってる。
 静かで厳かな雰囲気の中、俺の便器がドーンと目立ってて、ステルス感ゼロだよ!  
「こんなとこで用を足すとか、マジで無理ゲーだろ……!」  
 腹痛は待ってくれない。
 キムチラーメンの辛さと美月の味噌おにぎりのスパイスが下腹部をギュルギュル締め付けてきて、冷や汗が止まらない。
 でもその時、竹林の奥から聞き覚えのある声が響いてきた。  
「兄よ! この隠れ里に眠る闇の忍術を我が手にせん!」  
 何だ、この厨二病全開のセリフ!?
 見ると、竹の陰でポーズ取ってるのは俺の妹、佐藤遥だ。
 黒装束っぽいマント巻いて、片手挙げて叫んでる。  
「遥!? またお前かよ!」  
「この修行こそ我が闇の試練! 兄よ、一緒に影を支配しようぞ!」
 遥が俺を指さしてくる。
 見えてないはずなのに、毎回絡んでくるな、お前!  
 すると、別の声が割り込んできた。
「太一くん、大丈夫? またお腹痛いんだね? 私のチャーシューじゃなくてよかった!」
 明るい声と笑顔。
 山本彩花だ。
 クラスの癒し系ヒロインで、昨日も演奏会で心配してくれた。
 修行場の端からこっちに笑ってる。  
「彩花!? 何で隠れ里に!? いや、今回は美月のせいだよ!」  
 さらに別の声。
「太一、彩花ちゃんに近づきすぎじゃない? 私の味噌おにぎり、効いてるみたいね」
 穏やかで親しみやすい口調。
 山本美月だ。
 幼馴染で、いつも冷静にフォローしてくれるけど、今回は原因の一人。
 修行場の木刀持ってニヤッとこっち見てる。  
「美月!? お前が原因だろ、これ!」  
 すると、竹林の影から低い声が響く。
「太一……私がそばにいるのに、隠れ里で他の女と楽しそうに……許さないよ?」
 佐々木美咲だ。
 ヤンデレ気質のクラスメイトで、昨日も演奏会で怖い目をしてた。
 今は手裏剣持ってジトッとした目でこっち見てて、忍者修行の緊張感が倍増だよ!  
「み、美咲!? またお前か!?」  
 さらに追い打ちをかけるように、別の声が。
「全てが虚無……この修行も、私の心も……」
 中村玲奈だ。
 闇落ちしたクラスメイトで、いつも虚無感漂わせてる。
 修行場の隅で竹にもたれて、虚ろな目で滝見つめてる。  
「玲奈!? お前まで!? また全員集合かよ!」  
 混乱してる俺の横で、忍者が「敵襲か!?」って叫んで木刀構えてる。
 別の忍者が「気配がする!」って手裏剣投げてくるけど、俺には当たらない。
 遥が「闇の忍者が目覚めた!」って叫んで竹叩いてる。
 彩花が「太一くん、顔赤いよ?」って近づいてきて、美月が「ほら、落ち着いて」って笑ってる。
 美咲が「太一は私だけでいいよね?」って迫ってくるし、玲奈が「どうせ消えるだけ……」って呟いてる。
 隠れ里がカオスと化してるよ!  
「集中しろ、集中しろ、集中しろ! 早く終わらせないと精神持たねえ!」  
 腹に全神経を集中させる。
 おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ!
 ブッ。  
「……うっ、音が里に響いた!」  
 静寂の中、音が反響して忍者が「何だ、この臭い!?」ってざわつき出す。
 リーダーっぽい忍者が「隠れ敵の術か!?」って刀抜く。
 遥が「闇の咆哮だ!」って叫び、彩花が「え、太一くん、これって……?」って目を丸くする。
 美月が「まさかね……私の味噌が?」って苦笑い、美咲が「太一の全てを受け入れるよ……」って目を潤ませる。
 玲奈が「この臭いも虚無……」って呟いてるし、見えてないはずなのにステルス失敗すぎる!  
 ポチャン。  
「よっしゃ、出た! 終わった!」  
「ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」  
 光に包まれてアパートのトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
 心臓バクバクで息を整えながら、俺は便器に座ったまま放心状態。  
「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」  
 汗だくで呟く。
 忍者修行の隠れ里で全員に囲まれて用を足すとか、俺の人生終わってるだろ。
 遥の厨二病、彩花の優しさ、美月の冷静(と辛いおにぎり)、美咲のヤンデレ、玲奈の虚無感が混ざって、忍者の緊張感をぶち壊した罪悪感がヤバい。  
「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」  
 腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
 次に開けるのが怖い。
 でもキムチラーメンと味噌おにぎりの残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
 コンビニ飯も美月の手料理も、やめたいけどやめられないんだよな。
 安いし美味いし、友情も嬉しいし、つい食べちゃうんだよ。  
 とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
 でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
 隠れ里で生き延びただけでも褒めてくれよ、自分。  

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