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最後のambitious japan
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2023年7月20日 木曜日
いつもの新大阪駅。
平日の夜ともあって、サラリーマンが慌ただしく東京方面の新幹線へと向かう。
大学の講義が終わった少年は、スーツ姿のサラリーマンたちと共に新大阪25番線のホームへ向かうエスカレーターに乗る。
ホームから、今日の東京行き最終の「のぞみ64号」の接近放送がなる。
今日は何やら、スーツ姿のサラリーマンたちの中にちらほらとカメラを構えた者たちが多い。
そう。今日は東海道新幹線の車内チャイム「Ambitious Japan」の最終放送日なのである。
カメラを構える者たちは、このチャイムとの別れをしに新幹線に乗りに来ている。
そして、この少年もその中の1人である。
ホームドアが開く。
博多から来た乗客たちが、車両のドアが開くと同時に足早に降りて一斉に階段へと向かう。
ホーム上で、車掌・運転士が敬礼をし交代する。
ここからは、JR西日本からJR東海へと引き継がれる。
乗務員たちが交代をし、車内に乗り込み終わる頃には、先ほどまで列をなしていた乗客たちも車内に入っている。
ベルが鳴る。
「本日の新横浜 品川 東京へと向かう最終列車です。ご利用のお客様はお近くのドアから車内にお入りください。」
ベルが鳴り終わる
「安全よし」
ホームドアから聴き慣れたチャイムが鳴る
そして、時速300kmで走る風圧に耐える重々しいドアがゆっくりと締まる。
21時24分。
ゆっくりと16両の長い車両が動き出す。
新大阪駅の明るいホームを出ると、新大阪のビル群が夜に煌々と光る。
ビル群を抜け、住宅街が見え始める頃。
「タンタン、タンタターン」
聴き馴染みのあるチャイムが鳴る。
2003年から使われてきたこの曲も今日で最後。
「例えるならばロングトレイン、風切り裂いて走るように」
そう歌われるにふさわしいスピードで走る中、東京に着くまでの停車駅と自由席の案内がなされる。
きっと、この16両の中にも、毎週のように新幹線に乗っていて、今日最後の放送を知りつつ、この音を噛み締めているサラリーマンもいることだろう。
定期列車の中では、表定速度日本最速の新幹線。
心なしか、いつもよりその速さに誇りを持っているかのように速く走る。
放送が終わる。
新幹線の車庫を通過し、阪急線と並走し、田畑を高速で抜けると、緑色のモーターメーカーの看板が煌々と光っている。
さぁ、そろそろだ。
チャイムがなる。
京都駅手前の橋を渡りながら、京都駅到着前のアナウンスが鳴る。
ゆっくりと京都駅のホームへ滑り込む。
少年は、京都で東京へ向かうのぞみ64号を見送った。
帰りは、TOKIOの「ambitious japan!」を聴きながら、新大阪へ向かうのぞみ号の最終でかえる。
終着駅用のメロディを聴き、JR東海の職員の方からの、このメロディへの感謝のメッセージが読み上げられた。
録音機やスマホを各々、天井にあるスピーカーに向ける。
のぞみ64号・のぞみ265号が東京駅・新大阪に着く最終の「 ambitious japan」の放送となった。
20年間、たくさんの「会う」を支えてくれてありがとう。
翌日の「会いに行こう」チャイム公開という、新たな時代への期待を胸に、新大阪で車両を降りる。
いつもの新大阪駅。
平日の夜ともあって、サラリーマンが慌ただしく東京方面の新幹線へと向かう。
大学の講義が終わった少年は、スーツ姿のサラリーマンたちと共に新大阪25番線のホームへ向かうエスカレーターに乗る。
ホームから、今日の東京行き最終の「のぞみ64号」の接近放送がなる。
今日は何やら、スーツ姿のサラリーマンたちの中にちらほらとカメラを構えた者たちが多い。
そう。今日は東海道新幹線の車内チャイム「Ambitious Japan」の最終放送日なのである。
カメラを構える者たちは、このチャイムとの別れをしに新幹線に乗りに来ている。
そして、この少年もその中の1人である。
ホームドアが開く。
博多から来た乗客たちが、車両のドアが開くと同時に足早に降りて一斉に階段へと向かう。
ホーム上で、車掌・運転士が敬礼をし交代する。
ここからは、JR西日本からJR東海へと引き継がれる。
乗務員たちが交代をし、車内に乗り込み終わる頃には、先ほどまで列をなしていた乗客たちも車内に入っている。
ベルが鳴る。
「本日の新横浜 品川 東京へと向かう最終列車です。ご利用のお客様はお近くのドアから車内にお入りください。」
ベルが鳴り終わる
「安全よし」
ホームドアから聴き慣れたチャイムが鳴る
そして、時速300kmで走る風圧に耐える重々しいドアがゆっくりと締まる。
21時24分。
ゆっくりと16両の長い車両が動き出す。
新大阪駅の明るいホームを出ると、新大阪のビル群が夜に煌々と光る。
ビル群を抜け、住宅街が見え始める頃。
「タンタン、タンタターン」
聴き馴染みのあるチャイムが鳴る。
2003年から使われてきたこの曲も今日で最後。
「例えるならばロングトレイン、風切り裂いて走るように」
そう歌われるにふさわしいスピードで走る中、東京に着くまでの停車駅と自由席の案内がなされる。
きっと、この16両の中にも、毎週のように新幹線に乗っていて、今日最後の放送を知りつつ、この音を噛み締めているサラリーマンもいることだろう。
定期列車の中では、表定速度日本最速の新幹線。
心なしか、いつもよりその速さに誇りを持っているかのように速く走る。
放送が終わる。
新幹線の車庫を通過し、阪急線と並走し、田畑を高速で抜けると、緑色のモーターメーカーの看板が煌々と光っている。
さぁ、そろそろだ。
チャイムがなる。
京都駅手前の橋を渡りながら、京都駅到着前のアナウンスが鳴る。
ゆっくりと京都駅のホームへ滑り込む。
少年は、京都で東京へ向かうのぞみ64号を見送った。
帰りは、TOKIOの「ambitious japan!」を聴きながら、新大阪へ向かうのぞみ号の最終でかえる。
終着駅用のメロディを聴き、JR東海の職員の方からの、このメロディへの感謝のメッセージが読み上げられた。
録音機やスマホを各々、天井にあるスピーカーに向ける。
のぞみ64号・のぞみ265号が東京駅・新大阪に着く最終の「 ambitious japan」の放送となった。
20年間、たくさんの「会う」を支えてくれてありがとう。
翌日の「会いに行こう」チャイム公開という、新たな時代への期待を胸に、新大阪で車両を降りる。
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