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第二章
2-10 予期せぬ来訪者
しおりを挟む「仁 、義 、智、 信、 勇。簡単に言うとですね、誠実で人を思いやれる、正義感のある人。広い視野で物事を計り、知識と経験豊かな、努力を怠らない人の事です。ヌンジュラ様はどうですか。これらの要素を持ってます?」
「思いやりとはなんだ?」
「え、思いやりをご存じない……?」
「言葉は知っている。が、思いやりなど何の役に立つのだ? 何をすれば思いやりがあると認められるのか。その基準は誰が決めるのだ? 結局、思いやりも愛と同じ、あやふやで形のないものではないか。無意味だ」
「確かに、あやふやで、形はありません。人により基準も違うでしょうね。だからといって、意味がないとは私は思いません。愛や思いやりは、感じる事はできますから」
「感じる? 理論的でないな」
「人間も動物ですよ。本能である五感の能力を軽視して、己に蓄積された少量の知識から成る理論に、頼り過ぎるのもどうかと思いますわ。そもそも理論も、人や文化や時代によって違いますよね。万物は流転します。でもまあ結局のところ、全ての事象は空っぽで無意味なものかもしれないという点は否定しませんけどね」
「ご令嬢はお喋りなのだな。ペラペラとよく囀ることだ」
「普段、察しの良い方々とお話する時は寡黙な方なのですが。今日はなんだか冗舌ですわね、私」
ヌンジュラ様の冷笑を見ながら、私も負けじと目を細めて笑顔をつくりながら返す。
表情筋が痛くなってきたなあなんて思ってると、急に城内が騒がしくなった。あちこちから、叫び声が聞こえてくる。
「え、なに?」
何気なしに窓の方をみると、遠くに何かが飛んでいるのが見えた。
つい、立ち上がって窓の方へ近づくと、ヌンジュラも一緒についてきた。
「……何だ、あれは?」
「あれは……、多分、私が昔みたことのある動物のような気がします」
その、空飛ぶ恐竜みたいな物体は勢いよく城をめがけて近づいてくる。同時に、人々の声も大きくなってきた。
「逃げろ、逃げろ~~!」
「か、神鳥だ! あれは神鳥だ」
「おお、神鳥がやってくるぞ!!」
部屋まで届いた声を聞き、ヌンジュラが私の顔をのぞき込んだ。
その表情に、恐怖はみられない。むしろ、期待感みたいなものが感じらる。
「あれが、神鳥なのか?」
「はい、私がみた神鳥の記憶と一致しますね」
「そうか、あれが」
そこへ、ドンドンと扉をたたたく音がして、アーシャと剣士達が部屋へ入ってきた。
「ヌンジュラ様、許可なく入室した事をお詫び申し上げます。非常事態となりました為、至急避難をお願い致します」
「非常事態とは何事か?」
「はっ、現在未確認生物がこの城に近づいております。急ぎ、地下にご案内いたし……」
「お兄様、未確認生物ってあれのこと? あれ、多分、神鳥よ」
あわてるアーシヤの言葉をさえぎり、窓から飛行物を見ながら私は続けた。
「下手に攻撃しなければ、危険はないと思うわ。神鳥は本来、穏やかな動物らしいの」
やられない限り攻撃しないって、防御の武術として有名な合気道みたい。と考えながら、私はライガから聞いた神鳥についての話を伝えた。
「すぐに、王にお知らせして! 私が神鳥と話すまで、絶対に手をださないよう兵に通達するようにと。さ、急いで!」
「はっ、かしこまりました」
兵士達は慌てて退室した。
「お兄様、一度城の上に上がりましょう。神鳥がどこへ降りるのか確認したいわ。あ、申し訳ありませんが、ヌンジュラ様、これにて失礼します」
「待て、私も行く」
「え、でも危険が全くないとは言えませんので、地下に避難された方が」
「いや、私は神鳥をみたいのだ。私のことは気にせず行くがよい。後を追おう」
「そうですか? 本当に何があってもしりませんよ」
お兄様とヌンジュラ様を引き連れて、私は狭い階段を上へと駆け上がった。
既に見張りの兵達は避難したようだ。城壁の上に設置されている物見台は無人だった。
神鳥を探すと、城の上を周回している。
「おおーーい、こっちよーー。ここに来てーー!」
私は神鳥に向かって手を振りながら大声で呼びかけた。
「だ、大丈夫なのか?」
お兄様は不安そうな顔で私に問うたが、ヌンジュラ様に私の声は聞こえてないようで、神鳥をただキラキラした目で見ている。
(とにかく、彼が本気で神鳥に興味があるのは確かなようね。他にどんな思惑があるのかはわからないけど)
二人から神鳥に視線を戻すと、こちらめがけて急降下してくるところだった。
(あれ、よく見ると誰かが乗っているような…?)
神鳥の頭部分に、人間が二人、見えた気がした。
そして、私の耳に意外な声がとびこんできた。
「チカ! 無事か?」
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