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⑥思ってた以上に悪役令嬢だったようです
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ヨーロピアン国は、大小あわせて7つの公国と国王直轄領とで形成されている。
図書室でこっそり歴史書を速読した内容から、この国はいわゆる上田知花の世界でいうところの中世ヨーロッパの世界観と似ていると思われた。
一番の権力と広い領土を保有するのは、ヨーロピアン国王ことマクシミリヨン3世だ。その左右を、文芸を愛するナルニエント公国と軍事に優れたキエフル公国が預かり、農業・畜産、林業、鉱業、漁業・水産、そして工業をそれぞれ得意とする5つの公国で協力しながら、一つの国として成り立っている。
ヨーロピアン国の北側には大きな山脈がつらなり、南には海が広がる。西にはシャムスヌール帝国が、そして東側はトウゾウ国とポノボノ国を隣国にもつ。東西ともに友好関係である国があり、南北は自然のお陰で侵略が難しい地形の為、ヨーロピアン国は、ここ300年程は大きな戦乱とは無縁だったようだ。
(ここが、平和な国でよかった!! いくら私が武道好きと言っても、殺し合いがしたい訳じゃないし、そもそも武は、和する為のものだもんね)
まあ、そんな平和な国の中でも、もっとも平和な文化芸術担当のナルニエント公国である。ましては10歳の少女に、おつきの剣士など全く必要ではない。
そもそも城のなかには、使用人や侍女はうじゃうじゃいるが、基本的に剣士・兵士はいないのだ。
公国の城は、公爵ファミリーの居住区である本館を中心に、来賓客をもてなす華館、公爵の親族が住む親館、使用人達が寝起きする後館、そして下水道や医務局などが入った公館などが周りをとり囲んでいる。更にその周りにちょっとした畑や花壇、小川が流れ、その周囲にぐるっと高い城壁が張り巡らされている。その城壁が兵士たちの職場であり、壁外に兵士達の宿舎、武器庫、馬小屋やだだっ広い訓練用広場が広がっている。
本館で過ごしていたジェシカが、兵士をみることはほとんどなかったと思う。
そんな公爵令嬢が
『私専任の剣士様がほしい』
と言い出したから、公爵夫妻も兄姉もみんな驚愕した。
こちらの世界でも、貴族の嗜みとして、あまり感情を表にだすのはよろしくないとされている。
ナルニエントは、個性あふれるアートを愛する家系の為、一般的なマナー基準よりかなりユルいと思われるが、それでも姉が口からお茶を噴き出したのをみて、これは私が想像していた以上にあり得ない提案だったんだなと理解した。
でも、それでも譲れないのだ。お嬢様強化計画には、優秀な兵士ソルジャーが欠かせない。
私は何度も父公爵に懇願し、神のお告げでどうしてもお抱え剣士が必要だと口説き落として、1月がかりでやっと了承を得たのだ。
午後からは、その剣士の選抜会が行われる。私ははやる心を抑えきれず、こっそりと本館を抜け出し、下見の為に城壁の正面口へと向かった。
木々に隠れながら進むと、休憩中らしき兵士の話し声が聞こえる。
「マジかんべんですよね。残念な令嬢の専属とか、無理ゲーっすよ」
(え? ……岡田君? 彼もこちらに来てるの?)
と、勘違いしそうになった位、話し方がそっくりな若者の声がした。
木々の合間から何とか顔を覗き見ると、お揃いの制服らしきものを着た体のごつい若者が5,6名で地面に座り、パンのようなものを食べながら話している。
岡田君、元気かな?スタッフのみんなもどうしているんだろう?家族や友達は……だめだめ!今それを考えちゃダメ!
「なんか、異国で話題の物語でも読んで、影響されたんじゃねーの」
「公爵令嬢たるわたくしには、守ってくれる剣士様が必要なの! ってか?」
「城にこもってる何の役にも立たないお嬢を、いったい誰が狙うってんだ?」
ガハハハッと大笑いされるのを聞き、私の元の世界へのノスタルジーな気分は消え失せた。
「あれだろ、お嬢様は食事に嫌いな食材が出されただけで、癇癪をおこして泣きわめくんだろ?」
「俺が聞いた話じゃ、気に入らない侍女を枕でなぐりつけたそうだ」
「わがままで品がねえよな、お嬢様のくせに」
「あ、自分この間、国王直轄領の友達から聞いたんっすけど。半年前のヨーロピアン国建国際で、国王様と王妃様への挨拶の時に、ジェシカお嬢、焦って転びかけたそうですよ」
「マジかよ、王様の前でこけるとか危機一髪じゃん!」
「ただ、歩くだけができないとは……。さすが、残念な令嬢だよなあ」
「アーシヤ様とジュリエット様は穏やかで頭も良くていい方たちなのに。なんでジェシカ様だけああなのかね」
「まあまあ、家族に一人くらいはさ。やっぱ変わったのがでてくんじゃねえの?」
(……ジェシカ、こんなに嫌われてたとは……)
接点のない彼らがなぜ、ジェシカのことを知っているのか。普段ジェシカに対応している侍女達から、兵士たちに伝わっているという事だ。兵士に伝わっているということは、城外の一般市民にも噂が流れているだろう。しかも、王国の兵士からも残念な情報がまわってきてるなんて……。
「今日の選抜会だって、騎士や上級剣士は参加しないだろ」
「当たり前だろ。わがままな小娘のお守なんて、貴族の方にとっちゃ何の得にもならねえよ」
「俺も、正直迷ってるんだよな。給金が2倍になるのは魅力だが、専任ってのはな……」
「俺は、とりあえずチャレンジするよ。一介の兵士にとっちゃ、やっぱり金は魅力だもんな」
「そうだよな。僕も、とりあえず参加しようかなあ」
(とりあえず参加って何よ、とりあえずって。あーあ、給金目当ての輩ばっかりくるのかなあ)
ガッカリした私は、一度本館へと戻ることにした。
(私もとりあえずお茶でも飲んで、冷静に頭んなか整理しよう)
ワクワク気分は醒めてしまったが、ジェシカについての皆の声を聞けたことは大きな収穫だ。
思った以上に、皆からの評価が低い困ったちゃんだったようだけど。
私は忍者のように気配を消し、一人脳内会議で選抜方法を再検討しながら、そそくさと自分の部屋へと戻った。
選抜会の開始時刻まで、あと2時間。
図書室でこっそり歴史書を速読した内容から、この国はいわゆる上田知花の世界でいうところの中世ヨーロッパの世界観と似ていると思われた。
一番の権力と広い領土を保有するのは、ヨーロピアン国王ことマクシミリヨン3世だ。その左右を、文芸を愛するナルニエント公国と軍事に優れたキエフル公国が預かり、農業・畜産、林業、鉱業、漁業・水産、そして工業をそれぞれ得意とする5つの公国で協力しながら、一つの国として成り立っている。
ヨーロピアン国の北側には大きな山脈がつらなり、南には海が広がる。西にはシャムスヌール帝国が、そして東側はトウゾウ国とポノボノ国を隣国にもつ。東西ともに友好関係である国があり、南北は自然のお陰で侵略が難しい地形の為、ヨーロピアン国は、ここ300年程は大きな戦乱とは無縁だったようだ。
(ここが、平和な国でよかった!! いくら私が武道好きと言っても、殺し合いがしたい訳じゃないし、そもそも武は、和する為のものだもんね)
まあ、そんな平和な国の中でも、もっとも平和な文化芸術担当のナルニエント公国である。ましては10歳の少女に、おつきの剣士など全く必要ではない。
そもそも城のなかには、使用人や侍女はうじゃうじゃいるが、基本的に剣士・兵士はいないのだ。
公国の城は、公爵ファミリーの居住区である本館を中心に、来賓客をもてなす華館、公爵の親族が住む親館、使用人達が寝起きする後館、そして下水道や医務局などが入った公館などが周りをとり囲んでいる。更にその周りにちょっとした畑や花壇、小川が流れ、その周囲にぐるっと高い城壁が張り巡らされている。その城壁が兵士たちの職場であり、壁外に兵士達の宿舎、武器庫、馬小屋やだだっ広い訓練用広場が広がっている。
本館で過ごしていたジェシカが、兵士をみることはほとんどなかったと思う。
そんな公爵令嬢が
『私専任の剣士様がほしい』
と言い出したから、公爵夫妻も兄姉もみんな驚愕した。
こちらの世界でも、貴族の嗜みとして、あまり感情を表にだすのはよろしくないとされている。
ナルニエントは、個性あふれるアートを愛する家系の為、一般的なマナー基準よりかなりユルいと思われるが、それでも姉が口からお茶を噴き出したのをみて、これは私が想像していた以上にあり得ない提案だったんだなと理解した。
でも、それでも譲れないのだ。お嬢様強化計画には、優秀な兵士ソルジャーが欠かせない。
私は何度も父公爵に懇願し、神のお告げでどうしてもお抱え剣士が必要だと口説き落として、1月がかりでやっと了承を得たのだ。
午後からは、その剣士の選抜会が行われる。私ははやる心を抑えきれず、こっそりと本館を抜け出し、下見の為に城壁の正面口へと向かった。
木々に隠れながら進むと、休憩中らしき兵士の話し声が聞こえる。
「マジかんべんですよね。残念な令嬢の専属とか、無理ゲーっすよ」
(え? ……岡田君? 彼もこちらに来てるの?)
と、勘違いしそうになった位、話し方がそっくりな若者の声がした。
木々の合間から何とか顔を覗き見ると、お揃いの制服らしきものを着た体のごつい若者が5,6名で地面に座り、パンのようなものを食べながら話している。
岡田君、元気かな?スタッフのみんなもどうしているんだろう?家族や友達は……だめだめ!今それを考えちゃダメ!
「なんか、異国で話題の物語でも読んで、影響されたんじゃねーの」
「公爵令嬢たるわたくしには、守ってくれる剣士様が必要なの! ってか?」
「城にこもってる何の役にも立たないお嬢を、いったい誰が狙うってんだ?」
ガハハハッと大笑いされるのを聞き、私の元の世界へのノスタルジーな気分は消え失せた。
「あれだろ、お嬢様は食事に嫌いな食材が出されただけで、癇癪をおこして泣きわめくんだろ?」
「俺が聞いた話じゃ、気に入らない侍女を枕でなぐりつけたそうだ」
「わがままで品がねえよな、お嬢様のくせに」
「あ、自分この間、国王直轄領の友達から聞いたんっすけど。半年前のヨーロピアン国建国際で、国王様と王妃様への挨拶の時に、ジェシカお嬢、焦って転びかけたそうですよ」
「マジかよ、王様の前でこけるとか危機一髪じゃん!」
「ただ、歩くだけができないとは……。さすが、残念な令嬢だよなあ」
「アーシヤ様とジュリエット様は穏やかで頭も良くていい方たちなのに。なんでジェシカ様だけああなのかね」
「まあまあ、家族に一人くらいはさ。やっぱ変わったのがでてくんじゃねえの?」
(……ジェシカ、こんなに嫌われてたとは……)
接点のない彼らがなぜ、ジェシカのことを知っているのか。普段ジェシカに対応している侍女達から、兵士たちに伝わっているという事だ。兵士に伝わっているということは、城外の一般市民にも噂が流れているだろう。しかも、王国の兵士からも残念な情報がまわってきてるなんて……。
「今日の選抜会だって、騎士や上級剣士は参加しないだろ」
「当たり前だろ。わがままな小娘のお守なんて、貴族の方にとっちゃ何の得にもならねえよ」
「俺も、正直迷ってるんだよな。給金が2倍になるのは魅力だが、専任ってのはな……」
「俺は、とりあえずチャレンジするよ。一介の兵士にとっちゃ、やっぱり金は魅力だもんな」
「そうだよな。僕も、とりあえず参加しようかなあ」
(とりあえず参加って何よ、とりあえずって。あーあ、給金目当ての輩ばっかりくるのかなあ)
ガッカリした私は、一度本館へと戻ることにした。
(私もとりあえずお茶でも飲んで、冷静に頭んなか整理しよう)
ワクワク気分は醒めてしまったが、ジェシカについての皆の声を聞けたことは大きな収穫だ。
思った以上に、皆からの評価が低い困ったちゃんだったようだけど。
私は忍者のように気配を消し、一人脳内会議で選抜方法を再検討しながら、そそくさと自分の部屋へと戻った。
選抜会の開始時刻まで、あと2時間。
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