60 / 79
60 結婚の誓い
しおりを挟む「チカ、今ここで、結婚しないか?」
「今、ここで結婚...って? 」
ライガの言う意味がわからず、顔を上げて彼の顔を見る。
彼が言いにそうに言葉を続ける。
「チカが俺と結婚したいと思ってくれてるのは嬉しい。だけど、公爵様や国王様が認めてくれるとは思えない。フランツ様だって、いつまた気がかわり、チカを妻として迎えると言い出すかわからない。いくらチカが俺を好きだと言ってくれていても、権力者からすれば俺みたいな北の民との話など潰すのは簡単だ」
「それは……確かに、そうね……」
「だけど、俺はチカを他の誰にも渡したくない…。この場で、二人だけで結婚してしまえば」
「つまり、ライガはこの場で既成事実をつくりたいのね。私がライガと結ばれ、清らかな乙女でなくなれば、フランツ王子や他の貴族との結婚は事実上不可能になるから」
「すまない。狡い方法だな。でも、俺はもうチカを手放すなんて出来ない。チカは手の届かない身分のお嬢様だと自分に言い聞かせ、ずっと気持ちを抑えてきた。互いの気持ちがわかったのに、今更チカを失うのは耐えられないんだ」
彼の表情から、自分の言葉を恥じているのがわかる。
貴族の結婚には、約1年間の婚約期間が必要だ。婚約期間中に家族や親戚への根回し、夜会でのお披露目を経て双方のコミュニティの人間と親交を深め、皆に認められてから結婚式を行うというのが一般的な流れだ。
結婚届を役所に出したらOK、という簡単なものではない。
(だけどまあ、たしかにライガの心配もわかる。私はよくも悪くも目立ってしまったもんね。国王が私を使い勝手のいい駒として、他国の王族と結婚させようとする可能性は高くなってしまった。王命だと私も断ることは出来ないし。ライガの言う通り既成事実をつくってしまうのが、一番の安全策かも……)
「ライガ、もうひとつ聞いておきたいんだけど、一族を抜ける事に後悔はないの?」
「一族を抜ける事は前から考えていた。俺達にとってリーザーの掟は絶対だ。掟は、何よりも優先しなくてはならないものだが、俺は既に掟よりチカを大切に思っている。抜ける事に抵抗は全くない」
ライガの揺るがない真っ直ぐな瞳と言葉に、私の心も決まりつつある。
「ねえ、ちなみに一族では、結婚の儀式はどんな風に行うの?」
「そうだな。リーザーでは、互いの家族と族長に報告をした後に、結婚披露の祭を近くに住む一族をあげて行う。子供も大人も、皆で食べたり飲んだりしながら、天と地に感謝の舞を夜通し捧げる」
「へえー、楽しそうなお祭りね。天と地には、何て言うの?」
「天の神、地の神へ。我らが出会えた導きに感謝する。我らは今日、家族となる。この命ある限り、共にに生きることをここに誓う」
「すてきな誓いの言葉ね」
彼も私を愛してくれている。二人が一緒にいる為に、一番確かな方法がこの場で既成事実をつくる事ならば、何を迷うというのか。
貴族のルールやマナーや、プロポーズはもっとロマンチックにしてほしかったとか、初夜は美味しいお酒を飲みながら蜜蝋キャンドルを飾ってムーディーな感じで迎えたかったとか、そんなの関係ない。
大事なのは、お互いを愛している私達の気持ちだ。シュチエーションではない。
私は、覚悟を決めた。
「ライガ、私は誓うわ。天の神、地の神へ。我らが出会えた導きに感謝する。今日、私達は家族になる。それから……」
「……この命ある限り、共に生きることをここに誓う」
「この命ある限り、ライガと共に生きることをここに誓う」
「チカ……」
「ね、ライガも誓って」
ライガの頬に手を伸ばし、そう促すと、彼は満面の笑みをみせた。
「天の神、地の神へ。我らが出会えた導きに感謝する。我らは今日、家族となる。この命ある限り、チカと共にに生きることをここに誓う。チカ、愛している」
そう言って、ライガは私の体を引き寄せ、口づけた。
優しく、羽に撫でられるようなキス。それから、だんだんと彼の体温が伝わるような力強いものへとかわっていき……。
「チカ、本当にいいのか? 本当にこの場で俺と結婚しても……」
「ライガ。私もライガを愛しているわ。ずっと、あなたと一生一緒にいたい。結婚しましょう」
「……ありがとう、チカ。俺のわがままを受け入れてくれて。……一生、側にいる。俺の命を、チカに捧げると誓う」
ライガの熱い手と体に包まれて、愛していると何度も何度も囁かれながら。
私とライガは、二人きりで結婚を誓った。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる