お嬢様は、今日も戦ってます~武闘派ですから狙った獲物は逃がしません~

高瀬 八鳳

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第二章

2-3 愛しあう二人はラブシーンの時と場所を選ばず

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「どういうことだ? チカ、まさか、国の為に自分を犠牲にして、政略結婚を受け入れるつもりか? 」

 ライガが怒気を含んだ声で、私の両肩を大きく揺らす。

(こんなに私に対して殺気だったライガははじめてよね。ちょっと怖いし、肩が痛い……。だけど、これだけは言っておかなくっちゃ)

「正直、権力を盾に無理やりどこの誰とも知らない輩と結婚させられるとかゾッとするし、そんな勝手がまかり通るこの世界の常識がそもそもおかしいし、そんな仕組みルールはぶっ壊さなきゃって思う。でも、とりあえず作戦を立てるには、起こり得る最善と最悪の状況を考えないといけないよわよね。私にとって最悪の事態は、軍事大国シャムスヌール帝国とこのヨーロピアン国の間に戦争が起こる事。それだけは、絶対に避けなくてはならない。その為に、もし私が政略結婚を受け入れるのが唯一の方法なら……。しばらくの間だけ、耐えしのぶ覚悟が必要、ってこと。どんな手段をつかっても、戦争だけは絶対に避け、民を守る。それが、私の、公爵代理である私の責務だと思うから。……ライガには嫌な事を言っているとわかってる。自分の妻を、その、非常時には他の男に黙って委ねろって、その妻本人から言われるなんて、ね……。ごめん。でも、これだけは言っておきたいの。例え万が一、そういう事になったとしても、私は私よ。他の男に抱かれたとしても、その事で私は汚されたりしない。……トラウマにはなるだろうけど、でも負けたくないのよ。何をされても、何があっても、私は私なんだって、誇りを持って生きたい。そう在ありたい。他人の行動で、私という人間を、勝手にかえられたくない。私が愛しているのは、ライガただ一人。……これが今、ライガに伝えておきたい私の素直な気持ちよ。……ライガは、どう思う……?」

 私はジッとライガの瞳を見ながら、一気に自分の気持ちを吐き出した。
 私達は、しばらくの間、無言で見つめ合った。

 張りつめた空気が続いた後、ライガが顔をくしゃりと歪めた。そして次の瞬間、私は再び力強く抱きしめられた。

「クッソー、とんでもない嫁だ!! オレはとんでもない女に惚れちまった……!」

 普段のライガとは別人のような、苦々しく吐き出された声がして。そして、言葉を発する間もなく、私は唇を奪われた。

 いつもの、優しいキスじゃない。強引な、熱烈な、嚙みつくような、キス。
 長く、甘く、あまりにも情熱的な口づけに、ボーっとさせられる。

 心がフワフワとあったかかくなって。私は、本当に彼のことが好きなんだと実感する。
 抱きしめられたまま、額や頬へのキスの嵐がふってきて、大人しく受けていると、やっといつものライガに戻った。

「……チカ、あらためて誓うよ。この先、何があっても、オレはチカを愛し続ける。チカの選択を信じる。どこへチカが連れて行かれても、オレは必ずチカを探して、取り戻す。だから、オレの事は気にせず、チカのやりたいように動けばいい。オレは、いつもチカと共にある。安心してくれ」

「……ライガ……、ライガ…! 私も、大好き……。ありがとう。私のそばにいてくれて、本当にありがとう……」

 緊迫した状況を忘れて、互いの体温と心音を感じながら、私とライガはほんのつかの間、愛する人が目の前に存在する喜びをただ噛みしめた。 

「今回の件が落ち着いたら、旅に出よう、チカ。自由気ままに、しばらくフラフラと二人で過ごしたい」

「フフッ、いいわね。うん、旅に出よう。あ、モハード先生のとこにも立ち寄ろうよ……、あ、ああーーっ……! 」

「モハード先生……! そうだ、モハード先生がいた!!」

「そうよ、先生なら、何か知ってるかも! 知ってなくても、きっといいアドバイスをくれるわ」

「そうだな、よし、優先事項にモハード先生への連絡を設定しよう。それで、チカ。まずはどう作戦をたてる?」

「んーー……。なんせ、情報が少なすぎるのよね。フランツ王子、他に有益な情報はもってなかった?」

「そうだな……。当たり前だが、国王、王族をはじめ、王城につめる家臣はみな不安でいっぱいのようだ。逆にビーを含め、北の一族の連中は落ち着いている。飲み屋街も、いつもとかわりない雰囲気だ」

「慌ててるのは、ヨーロピアン国の中枢にいる人間だけ、ってのもなんか気になるわね」

(そもそも、シャムスヌール帝国の甥が私と結婚するメリットが思いつかないのよね。 目的は私ではなく、別の事を起こす為の目くらましか。なんにせよ、私達に今必要なのは……)

「今一番の望みは、アーシヤお兄様を早急に連れ戻すことかしら。彼さえここに戻れば、ナルニエント公国領内で、私達は正式に結婚したと認めてもらえるわ。他国とはいえ、さすがに王族が既婚者に求婚するとは思えないしね」

「確かに。次期公爵のアーシヤ様と現ナルニエント公爵が認めた結婚であれば、王家も否定は出来ないだろう」

「そうよね。ああーー、アーシヤ、アーシヤ、アーシヤ!! アーシヤお兄様さえここにいれば!!」

 私は目を閉じて、両手を掲げ、アーシヤを求めて思いっきり叫んだ。

(ああもう、色んな事が急にやってきてメンドクサイ!! とりあえず、アーシヤさえ呼び戻せたら、政略結婚は阻止できるのに……! アーシヤお兄様をここに……)

「う、わああああーー……! な、なぜ……! こ、れはいったい……?!」

「えっ? なになに?」

 至近距離から突然聞こえた男性の声に、私は驚いて目をひらいた。
 すぐ目の前に、見覚えのある見目麗しい若者が上半身裸で立っていた。
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