お嬢様は、今日も戦ってます~武闘派ですから狙った獲物は逃がしません~

高瀬 八鳳

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第二章

2-5 定例会

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 いつもは王城のこじんまりとしたサロンで行う定例会だが、今日は大きな広間で開催されている。
 普段と違い、たくさんの軽食と飲物が会場に用意されており、賑々しい雰囲気だ。やっぱり今日の定例会には、偉いお客様が来てるんだろう。

 アーシヤと私はわざと開始時間ギリギリに到着した。本当は早めにつかないと他の皆様に失礼なんだけど。

「ナルニエント公爵代理アーシヤ様と公爵令嬢ジェシカ様のお着きです」

 入口の騎士のかけ声に、国王はじめ会場内がざわついた。
 よく見ると、国王の隣に、ド派手な衣装を着た彫りの深い、腰まで届く銀色に輝く髪を三つ編みにした、ゴージャスって感じの青年が座っている。

 きっとあれが、シャムスヌール帝王の甥、ヌンジュラ様でしょうね。遠目でもわかるキラキラオーラが半端ない。

 私達二人は入口で礼をしてから玉座の前まで近づき、再び最敬礼をとった。

「これは驚いたぞ。ナルニエント公爵代理アーシヤ、いつ戻ったのだ?」

 アーシヤは緊張しながら、がんばってひと息で、練習したセリフを言いきった。

「我が国王マクシミリヨン様にご挨拶申し上げます。昨日戻ったばかりで、連絡が遅れましたことをお詫び申し上げます。また、他の皆様方の前でご無礼申し上げますが、急ぎ二点ご報告致します。私の帰国により妹から私へ公爵代理が戻りました。また、妹ジェシカが正式に結婚しました事を合わせてご報告申し上げます」
「な、なに? 今、なんと申した? ジェシカ嬢がなんと……?」
「はっ、はい。我が妹ジェシカは、わが父ナルニエント公爵と、公爵代理である私の認定の元、結婚致しました」
「ジェシカ嬢が、結婚したと……?!」

 会場全体が、一瞬時が止まったように静かになった後、皆様の声にならない悲鳴があちこちであがったのを感じだ。
 国王、王妃様、そしてフランツ王子もぽかんとした顔をしている。そうよね、びっくりよね。でも、驚くのはこれからなのよ。フランツ王子、本当にごめん。

 王が焦りの表情をみせながら、私に言った。

「ジェシカ嬢。……本当なのか? いったい誰と結婚したというのだ?」

 フランツ王子からの視線が痛いけど……。
 私は気合を入れて王に返答した。

「はい、国王マクシミリヨン様、この場での事後報告となり誠に申し訳ございません。私がこの定例会に参加できるのは、本日で最後。今後は兄アーシヤが参加いたします。お世話になった皆さまに最後にお礼を申し上げたく、また結婚の報告を直接自身で申し上げたく思い、厚かましくも兄について参った次第でございます。この二年半、本当に有難うございました。では、わたくしはこれにて失礼致します」

 そそくさと退場しようとした私を、フランツ王子が呼び止める。

「待て、ジェシカ嬢。それで、あなたは誰の妻となったのだ?」

 ああ、やっぱり、それ言わないと帰れません、よね……。
 私は諦めて、玉座に体を向けた。

 国王とフランツ王子をみながら、目の端で異国のキラキラ青年を捉える。
 案外落ち着いている感じで、逆に違和感を感じた。

 確か、あの人は私に求婚しにきたって話じゃなかったっけ?

「……ご報告いたします。私は、私の専任剣士のライガと結婚致しました」
「……はっ……? ライ、ガ……?」
「はい、ライガです。長年私を守り、助けてくれたライガを私は夫としました」

 会場の空気が大きく揺れた。
 定例会に参加しているのは上位貴族の皆様方。一癖も二癖もある、老獪、いえどっしりと構えた大手企業のトップであるような方々なのだが、見た事ない感じの変な顔になってる。

「あの者は平民であろう? 公爵令嬢が平民と結婚したと……? 」
「あの剣士は、たしか額が盛り上がっていたぞ……。北の民ではないか……」
「あり得ない……。ナルニエント公国令嬢が、平民と結婚など……いや、まさか……」

 まあ、皆様の驚きと戸惑いは想定内。問題は、かのゴージャス氏がどうでてくるかよね。
 と、会場の空気を無視した、朗らかな笑い声が響いた。

「……ックッ……。……クッツ……、ッハハハハッ……。これは何とまあ、愉快な事だな」
「ヌンジュラ殿……いや、これは……」
「一瞬、誰かが裏で画策したのかと思ったが、あなた方の驚きようを見れば、誰も彼女の結婚を知らなかったのは明白だ。疑いはない。マクシミリヨン王、安心なされよ」
「貴殿のご理解に感謝する……。紹介が遅れて申し訳ない。みなの者、こちらは我が客人、シャムスヌール帝王の甥御、ヌンジュラ殿だ。最敬礼を!」

 マクシミリヨン王の言葉に弾かれたように、会場内の全員が深く腰をおり頭を垂れる。

「シャムスヌール帝王は私の叔父だが、今回私は非公式でこちらを訪れている。ただのヌンジュラだ。皆、よろしく頼む」

 声は低すぎず高過ぎず、威圧的ではないが、人の上に立つ者のオーラが滲みでてる感じ。
 ヨーロピアン国の王子うちのプリンス達より、骨太でしたたかな30歳位の遊び人風ゴージャス氏は、笑顔で会場を見渡した後、私に視線を合わせてきた。

「とは言うものの、どうしたものか。私はジェシカ嬢に求婚しに遥々きたのだが、あなたの勝手な行動により、計画を変更せねばならない。困ったものだ」

 いやいや、ちょっと待って。私こそあなたの勝手な行動で困ってるんだけど、と言いたいセリフを飲み込んで。
 私はお嬢様スマイルを装着する。

「恐れながら、シャムスヌール帝国のヌンジュラ様に申し上げます。私は無学な者ゆえ……。何かご迷惑をおかけしたのであればお詫び申し上げます」
「ふむ……。ジェシカ嬢、ひとつ聞きたい」
「はい、なんでございましょうか?」
「その夫と離縁して、我が妻となり、シャムスヌール帝国へ来る気はないか?」
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