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第3話 失恋話をしていた筈が
しおりを挟む「でも覚えておいて。どうでもいいことなんて、めったにない。どうでもいいと思うってことは、考えるのをさぼる時の言い訳なことも多いの。そやし、どうでもいいって思った時は、まず、あ、私どうでもいいって思った。と、自覚すること。そして、なぜ、どうでもいいと思ったのかを考えること。この2つを習慣にしてみて」
「どうでもいいは、考えるのをさぼってる言い訳な事も多い……」
「そう」
「えーと、どうでもいいって思った時には、自分でどうでもいいって思ってるって自覚する。それから……」
「なぜ、どうでもいいと思ったのか、その理由を考えること。自覚と、なぜ、を考える習慣を持つこと。OK?」
「は、はい。……オーケー、です」
――今まで、誰にもそんなこと言われなかった。よく友達とも、どうでもいいよねーって、話してる。
……でも。なんだかよくわからないけれど、今、すごい重要な事を聞いた気がする。
「それで、どうしよう? このままトリートメントするか、カードさせてもらうか。どっちの気分かなぁ?」
「そうですね。なんか、カードをお願いしたい気分かも。実は私、3ヵ月前に失恋しちゃって……。何だか、気持ちが麻痺気味というか、何しても楽しめなくて……。仕事もやる気がでなくて、先月でやめたんです」
私は正直に話した。初対面の人には重い話だけど、この人になら、大丈夫な気がする。
「失恋した相手はどんな人?」
「……彼とは大学の時から、5年間付き合ってました。きっとこのまま、結婚するだろうと考えてたのは私だけで。彼は、今の職場で好きな人ができたって……」
「まだ、ミサキちゃんは、今でも好きなんやね。その彼、よっぽど素敵なやろね。どんなところが好きなんか、ちょっと言うてみて」
「え、どんなところが……って。えーっと、そうですね。大学のサークルで、皆をまとめていてかっこ良くみえた。付き合ってみたら、けっこう甘えんぼで、どちらかというと、私の方がお姉さんみたいに世話をやいてましたね。そのギャップも素敵にみえました」
「じゃあ、この一年はどうだった?」
「この一年、ですか?」
そう言われて、ドキッとした。
この一年は、私から誘わないと、彼は私と会おうとも出かけようとしなくなっていた。
連絡も向こうからはほとんどなくて。私からメッセージをいれたら、2、3日して返ってくるような状態で……。最初は、毎日、何度も連絡とりあってたのに。おはようやおやすみのメッセージも、送り合ったのはもうだいぶ昔のような気がする。
「……この一年は……。会うのは2ヶ月に一度位で、私から誘ってばかりでした。いつも疲れたような顔で、話しかけてもつまらなそうな表情で……。お互いの誕生日にも会えなかった。仕事で忙しいと言われて……」
「そっかあ……。残念やけど、もう向こうさんの気持ちは、結構前からなくなってたんやね。彼、ミサキちゃんに優しくないもん」
「優しくない……?」
「うん、だって優しないやん? もう彼のあなたへの好きという気持ちはなくなってる、なのに誘われたら一応応じる、でもつまらなそうな顔は正直にみせる。自分から別れようとは言わない。悪者になりたくないから、あなたから言い出すのを待ってた。ズルい言うか、優しくないと私は感じたな」
――そうか……。人からみたら、もうずっと前に、私に対する彼の好きという気持ちはなくなってたのか。
いや、本当は自分でもわかっていた。でも、わかりたくなくて、気づかないふりをずっとしていたのだ。彼は、もう私を好きじゃないって事実を。……認めたくなかった。あんなにお互いを好きだと思い、いつまでも続くと信じていた関係が、簡単に壊れるなんて。
「まあ、でも。これ言うと身も蓋もないけど、出会いと別れは、ワンセットやしね。私からみると、人が別れる時って、単に合わなくなっただけって時が多い気がする。魅力がなくなったとか、嫌いになるとかじゃなく、お互いの価値観がかわったって事。だって、仕方ないやん? いくら仲のいい二人でも、別の会社で働きだしたら、生活や関わる人もかわる。考え方や嗜好もかわる。恋人の気持ちがかわってしまう事も、そらあるやろ。どうしようもない、ってやつやね。まあ、よく言われるように、お互いを卒業する時が来た、ってことじゃないんかなあ。ハッキリ言うと、今の海早紀みさきちゃんに、もう彼は必要ないんちゃうかな。だから、別離がきた」
「……そう、なんですかね? 私には、まだ……よくわからな……い……」
もう泣きつかれて、涙腺が干からびてしまったから、悲しいけど涙はでない。
ただ、魔女さんの話を聞いて、なんとなくそうなのかと思った。
もう、彼とは本当に終わりなんだなあ……って。
彼女は私の手をギュッと握った。
「ミサキちゃんさあ、今は次の恋愛とかは考えられへんと思うけど。でも、幸せになりたくない?」
「……なりたいです。幸せになりたい……」
「なら、しばらく私の弟子にならへん?
「え? あ、の……弟子……って?」
私は、突然の弟子というワードに、脳がついていけず唖然とした。
「とりあえず、3ヶ月だけでいいから、弟子入りしなよ。ね、なんか新しい発見できるかもよ。今日、出会ったのも何かの縁だし。私が面倒みたげるし、安心して」
――いや、頼んでないし。っていうか、今の話からどういう流れで、弟子の話がでてきたの? それに私の呼び方、なんか既にミサキチャンに定着してる?
魔女さんは、すっごい良い事言ってるって感じの満面の笑みで、私を見つめている。
正直、何が起こっているのか、どう返事をすればいいのか、よくわからない。
でも、出会ったのも何かの縁だと言われたら、そんな気もする。
魔女の弟子になるなんて、この機会を逃したら一生なれそうにないし。
結局、タロットカードもみてもらわない内に、私はよくわからないまま自称魔女の三か月限定の弟子になることに決まった。
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