奴隷亜人の転生旅路〜転生先はやられ役の神獣でした〜

１話 ライトノベル

「…」

私の目の前に広がる光景。薄い緑色の光に包まれて気絶した男性。…今までこの体の持ち主を奴隷
とし、叩いていた、最低な奴。そして、私は…

「…"ペリドット"、かあ」

手足にある鎖と枷。そして首に付けられた特殊加工がされた首輪。私はそれに触れてそれらを
溶かす。方法は知っている。だって、"ゲーム"で
見たし。

ーーーー☆ーーーー

「いい風…」

私は深野ふかの　翠すい。わかりやすく言うとオタク気質な
高校生。まあそのお陰で私はいじめの的だ。でも、それで他の子がいじめられないのなら、それでいい。先生が取り合わないのはわかってるから言いもしない。親もいないし、ね。

『あら！こんな所にいたのね！』
「…ああ、はい」

私をいじめてるグループのリーダー。名前は寧々ねね。かなり強気な性格だ。…そして、私に猛ダッシュで近づいてくる。

『ふふっ！ほ～ら！顔あげてー！』
「えっ……？」

その言葉の瞬間、私は前に押された。押された
だけなら金網があるから落ちることはない。
でも、運が悪かった。

『ぁえっ…？』
「ッ…？」

古くなって人の体重で簡単に壊れるぐらいになっていた場所に私は居た。ガシャン！と音を立て、私は金網と共に下に落ちた。

「ぁ…ッ」

死ぬことを意識した瞬間、私はきっと気絶したん
だろう。そこからの記憶はなかった。ただ、凄く
遅く感じた事だけは、覚えてる。

ーーーー☆ーーーー

「ッあ…？ッ⁉︎ 腕が痛い…」

気付くと、真っ暗な場所。チカチカと感じる燈に
照らされているのは、"鉄格子"だった。

(何これ…？私……ん？なんか、見覚えが…)

幾つかある牢屋の一つに、今にも死んでしまいそうな人…いいや違う。亜人奴隷あじんどれいがいる。そしてオタク特有の理解速度で私はわかった。

(『アニマルヘルプ・レコグニション』…通称、
アニレコ。私は死んで、転生した…ライトノベルか、私の人生…)

見た感じその子は死んでいない。そして、
ようやく私は自分の姿を見た。頭にうっすらと
違和感がある為嫌な予感はしていたけど…。

(銀色の髪に…長さ的に狐の耳？後、緑色の尻尾が…一、ニ、三、四…五本？かな…)

つまり私が転生したのはアニレコに出てくるキャラで唯一助けることが不可能なキャラにして、超重要なキャラ。"ペリドット"だ。物語をハッピーエンドに繋ぐには彼女のいるこの牢屋に行って、死にかけの彼女から不思議なペンダントをもらう。それが
なければハッピーエンドには行けない、オープン
ワールドの意味を疑いたくなる鬼畜仕様だ。

(最初はなんとか助ける方法がないかと模索した
けど、無理で…この子を助けずにラスボスに行くと必ずバッドエンド。よくてトゥルーエンドだった)

ゲーム内ではどんなに早く行ってもペリドットの死は変わらない。この子の役割は主人公と彼に助けられた亜人がここに来た時、ペンダントを渡す事。
そして、終盤になってわかるあの事実…。

(ペリドットは獣人じゃない。記憶を無くした
だけで、神様の眷属。つまりは、『神獣しんじゅう』だと
いうことだ)