奴隷亜人の転生旅路〜転生先はやられ役の神獣でした〜

神月るあ

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44話 幻獣の森

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ー次の日ー

「おはよう、皆んな」
『おはよ、主様。今日は幻獣の森だよね?』
「そう。そっちも多分、同じことが起こってるん
だよね?」

そう聞くと、マリンはおずおずと出てきて、
話し出した。

『はい…時の進み方がおかしくなっている要因は、
聖獣の森と同じ理由と見ています』
「…」
『なるべく早く、終わらせましょう。お話を聞き
ましたが、今回の件を終わらせるにはペリドット様
とジャスパー様の二人の力が不可欠だと』
「…そう。まだ、必要な物は揃ってないけどね」

鍵杖の為に後一人倒して、一番の難関であろう
"神法"をどうにかしないといけない。まあそれは
ワンチャンに賭けるけど方法はあるし、後回しで
いい。

「よし、じゃあ皆んな。私達がいない間、
リトシーマと一緒に特訓しててね!」
『あ、待って下さいペリドット様!これ、持って
いってください!』

そう言って渡してきたのは、魔力を弾にして撃つ
ことのできる魔法銃。真っ白で、クォーツが持つ
特殊な魔力を感じる。ふと、アンバーも何かを
取り出し、私に差し出した。

「…これ、ペンダント?」
『ああ。宝石に加護をかけてある、特殊な物だ』
「…加護、か」
『私も何の効果があるかはわからない。奴隷だった
時に偶々拾った物だ。場所を探知したり、盗聴
したりする魔法がないのは確認済みだ』

魔力を感じるから、少なくとも神獣や神が作った
代物ではない。獣人かその他の亜人か、それとも
人間か…種族によっては途轍もない効果があるかも
しれないし、気を付けておこう。

「ありがとう、二人とも。じゃあ、行ってくる」
『ペリドット様、また後で』
「うん。リトシーマ、頼んだよ」
『はい、お任せを!』

ヒュンッと音がして、私とジャスパーは目を
開く。辺りは静かで、陽の注ぐ森。でも、異質に
歪んだ感覚は、嫌でも脳に入ってくる。

『主様。辺りに気配がないから、少し歩かない?』
「うん、そうする」

少し歩いて私達に気付き、接触してきた聖獣とは
違って、私が入っても幻獣が近づいてくる感じは
ない。もしや、時が歪んでいるのは神を殺した
せいではないとか?それは聖獣の森だけで、幻獣の
森の時が歪んでいるのは、また別の理由がある?

(だとしたら、困るな…また別の法が必要かも
しれない…)

私が知る限り、この世界にあるのは殆どの生物が
使える"魔法"、一部の亜人と聖獣・幻獣、そして
神獣・神族が扱える"霊法"、その中に神獣のみが
扱える"神獣乃法"があって、そして…神のみが
扱える"神法"。

(フォルフィア様に会うことは、きっと出来ない。
何処かもわからない場所に行かなければいけない
だろうし、あっちからコンタクトを取ってくるのは
稀だろう)

その前に、今は幻獣だな…。何らかの動物が合体
したような見た目や力ををしているとは書いて
あったけど…この目で見るのは初めてだ。

『主様。構えて』
「!」

耳を澄ませて、周りの音を聞く。何人かの足音がする。ふと、がさりと音が鳴る。

「っ!」

貰った銃を空に向けて撃つ、一種の威嚇。まあ
本来は威嚇される側だけど…。

『…? 狐?』
「…ほんとだ」

すぐそばの茂みから顔を出したのは、金色の体を
持つ小さな狐。見た目はただの狐で、幻獣の感じ
はしない。でも、それは普通の人間や亜人が
見たらの話だ。

「…カメレオンと狐の幻獣、とかだったりする?」
『…お見事。その通り』

パァッと光った狐の体は、人の形を作っていく。
そこに居たのは、金髪に同じ色の尻尾と耳。
見た目は私とよく似た、幻獣がいた。

「…少し、話がしたいんだ。時間ある?」
『寧ろ、その為にここに来たから。なんでもお聞き
くださいね、神獣様?』
「…」

近くの石に腰掛けた彼女は、見た目とは裏腹に
かなり大人っぽい。自身と同じ狐系統だし、注意
はしておこう。
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