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✽✽世間知らずの王太子の場合
「殿下…以前からお慕い申し上げておりました。
もう…この気持ちは隠す事はできません」
おかしい…
婚約者に会いにきたはずなのに、私は婚約者の侍女と…
熱い抱擁を交わしている。
彼女のトパーズ色の瞳を見つめた時から私の人生は狂い始めたのだ。
私は今…
生まれて初めて…
恋に堕ちた。
私は…
何事においても完璧で貴族令嬢の鑑であると評判の美しき婚約者ローズマリーではなく、
彼女の侍女であるユリアと恋に堕ちた。
高位貴族令嬢らしく、常に礼節を重んじ、私と話す時も決して砕けた態度を取らないし、笑顔も中々見せないローズマリーと違って
私を見つけると、小走りで駆け寄り…
「殿下…
今日も殿下のご尊顔を拝めて眼福です!
私…幸せで死にそうです!」と、ふにゃふにゃした笑顔を私に見せ、頬をバラ色に染めるユリアが愛しくて仕方がないのだ。
私は…
ユリアの笑顔に骨抜きにされているらしい。
私を見て微笑むユリアは天使に違いない。
婚約者であるローズマリーには悪いが私はローズマリーを愛する事も、結婚する事も出来そうにない。
父上に相談して、なるべく早く…
ローズマリーとの婚約を破棄してもらわなければ…
◇◇◇◇◇
幸いな事に、ユリアはローズマリーの親戚筋の伯爵令嬢で行儀見習いとしてローズマリーに仕えているらしいのだ。
来年からは、ローズマリーと共に私が通っている王都の学園に入学すると聞いている。
何とかして、それまでに…
婚約を破棄して、ユリアとの婚約の話を進めたいのだ。
可憐で可愛らしく、笑うと天使のようなユリアは私の側近達にも人気があるので油断出来ない!
ローズマリーの兄であり、私の側近であるレオンもユリアを特別な女として見ている気がするのだ。
これは…
恋する男のカンだから間違いないだろう。
◇◇◇◇
ユリアは、ローズマリーの母方の親戚であるからローズマリーとは円満に婚約を破棄しないと…
スムーズにユリアと婚約が出来ない。
どうすればよいだろうか?
プライドが高いローズマリーに正直に話すわけにもいかないし…
誰に相談したらよいのか?
側近達も誰がユリアに懸想しているか、定かではないし…
恋愛に関しては…
早いもん勝ちでも、身分があるから勝つわけでもないのだから…
私がどうして、そんな事を言うのか?
それは…
私の母が身分が高く、正妃でありながら父である王の愛を受ける事に失敗しているからなのだ。
幼少期から父上の婚約者であり、王妃教育を頑張り、知性と教養を身に着け…
勿論、見た目の美しさにも気を配り…
出来る限りの努力を惜しまなかった美しく気高き王妃である母よりも…
父は、異世界から勇者と共に召喚された聖女かどうかもわからない名も無き女にひとめぼれをして
一時は王太子になる事を辞退して、冒険者として勇者パーティーに入り魔王討伐に参加したのだ。
◇◇◇◇
結果として、魔王軍は勇者によって滅ぼされ魔国と我が国は同盟国となり…
勇者と聖女である女は、元いた世界に戻っていった。
父の初恋は叶わないまま…
心は異世界から来た聖女に囚われたままに…
母と結婚し、私が生まれたわけだが…
未だに、私の想いは届いていないの…と涙を流す母を小さな時から見ている私は…
ヒトを愛するって報われない…
結婚して、子をなして…それでも片想いって…
母上…切なすぎないか?
父上…貴方どうにかしていますよ?とついこの前までは、父上に腹を立てていた私なのだが…
ユリアに惚れてしまった今となれば、母という完璧な婚約者がありながらも異世界から来た勇者の恋人である聖女に今も想いを残している父上の気持ちが…
痛い程に理解出来るのだ。
一度、惚れてしまったら…
そのヒト以外…
愛するなんて
恋しいと想うなんて…
ないから…
これが、真実の愛ってヤツなのか?
真実の愛を語るヤツは、破滅の道を歩むらしいよ?って…
恋愛小説マニアの妹がニヤニヤしながら忠告してくるんだけど…
お前に何がわかるの?
んっ?
ユリアと上手くいく為には相談してみる価値はあるのか?
それよりも…
何で私が真実の愛に目覚めたと思ってるんだ?
……我が妹ながら、恐ろしい女だな…
情報通過ぎて…
こわい…
何とか味方にしないとヤバいなコレは…
◇◇◇◇◇
舞台裏での女達の会話
「氷結王子って言われてるワリにちょろかったんですけど?」
「本当に…
それだけユリに魅力があるのよ?
アイツ…私の前じゃポーカーフェイス崩さないから…」
「ローズ男嫌いだもんね…」
筆頭公爵家の令嬢で、王太子と年も近く才色兼備で美麗なローズマリーは父の親友でもある王からの頼みで婚約者になっているだけで…
本音は向こうから婚約破棄してくれないかな?とずっと期待していた。
お互いに好みではないし、必要最低限しか関わっていないし…
正式にふたりの婚約が発表される1年後のデビュタント迄に何とか円満に婚約が解消されないかと画策していたのだ。
行儀見習いと言う名の気晴らしで侍女となった従妹のユリアを巻き込んでの今回の真実の愛騒動なのだが…
どうなる事やら…
「殿下…以前からお慕い申し上げておりました。
もう…この気持ちは隠す事はできません」
おかしい…
婚約者に会いにきたはずなのに、私は婚約者の侍女と…
熱い抱擁を交わしている。
彼女のトパーズ色の瞳を見つめた時から私の人生は狂い始めたのだ。
私は今…
生まれて初めて…
恋に堕ちた。
私は…
何事においても完璧で貴族令嬢の鑑であると評判の美しき婚約者ローズマリーではなく、
彼女の侍女であるユリアと恋に堕ちた。
高位貴族令嬢らしく、常に礼節を重んじ、私と話す時も決して砕けた態度を取らないし、笑顔も中々見せないローズマリーと違って
私を見つけると、小走りで駆け寄り…
「殿下…
今日も殿下のご尊顔を拝めて眼福です!
私…幸せで死にそうです!」と、ふにゃふにゃした笑顔を私に見せ、頬をバラ色に染めるユリアが愛しくて仕方がないのだ。
私は…
ユリアの笑顔に骨抜きにされているらしい。
私を見て微笑むユリアは天使に違いない。
婚約者であるローズマリーには悪いが私はローズマリーを愛する事も、結婚する事も出来そうにない。
父上に相談して、なるべく早く…
ローズマリーとの婚約を破棄してもらわなければ…
◇◇◇◇◇
幸いな事に、ユリアはローズマリーの親戚筋の伯爵令嬢で行儀見習いとしてローズマリーに仕えているらしいのだ。
来年からは、ローズマリーと共に私が通っている王都の学園に入学すると聞いている。
何とかして、それまでに…
婚約を破棄して、ユリアとの婚約の話を進めたいのだ。
可憐で可愛らしく、笑うと天使のようなユリアは私の側近達にも人気があるので油断出来ない!
ローズマリーの兄であり、私の側近であるレオンもユリアを特別な女として見ている気がするのだ。
これは…
恋する男のカンだから間違いないだろう。
◇◇◇◇
ユリアは、ローズマリーの母方の親戚であるからローズマリーとは円満に婚約を破棄しないと…
スムーズにユリアと婚約が出来ない。
どうすればよいだろうか?
プライドが高いローズマリーに正直に話すわけにもいかないし…
誰に相談したらよいのか?
側近達も誰がユリアに懸想しているか、定かではないし…
恋愛に関しては…
早いもん勝ちでも、身分があるから勝つわけでもないのだから…
私がどうして、そんな事を言うのか?
それは…
私の母が身分が高く、正妃でありながら父である王の愛を受ける事に失敗しているからなのだ。
幼少期から父上の婚約者であり、王妃教育を頑張り、知性と教養を身に着け…
勿論、見た目の美しさにも気を配り…
出来る限りの努力を惜しまなかった美しく気高き王妃である母よりも…
父は、異世界から勇者と共に召喚された聖女かどうかもわからない名も無き女にひとめぼれをして
一時は王太子になる事を辞退して、冒険者として勇者パーティーに入り魔王討伐に参加したのだ。
◇◇◇◇
結果として、魔王軍は勇者によって滅ぼされ魔国と我が国は同盟国となり…
勇者と聖女である女は、元いた世界に戻っていった。
父の初恋は叶わないまま…
心は異世界から来た聖女に囚われたままに…
母と結婚し、私が生まれたわけだが…
未だに、私の想いは届いていないの…と涙を流す母を小さな時から見ている私は…
ヒトを愛するって報われない…
結婚して、子をなして…それでも片想いって…
母上…切なすぎないか?
父上…貴方どうにかしていますよ?とついこの前までは、父上に腹を立てていた私なのだが…
ユリアに惚れてしまった今となれば、母という完璧な婚約者がありながらも異世界から来た勇者の恋人である聖女に今も想いを残している父上の気持ちが…
痛い程に理解出来るのだ。
一度、惚れてしまったら…
そのヒト以外…
愛するなんて
恋しいと想うなんて…
ないから…
これが、真実の愛ってヤツなのか?
真実の愛を語るヤツは、破滅の道を歩むらしいよ?って…
恋愛小説マニアの妹がニヤニヤしながら忠告してくるんだけど…
お前に何がわかるの?
んっ?
ユリアと上手くいく為には相談してみる価値はあるのか?
それよりも…
何で私が真実の愛に目覚めたと思ってるんだ?
……我が妹ながら、恐ろしい女だな…
情報通過ぎて…
こわい…
何とか味方にしないとヤバいなコレは…
◇◇◇◇◇
舞台裏での女達の会話
「氷結王子って言われてるワリにちょろかったんですけど?」
「本当に…
それだけユリに魅力があるのよ?
アイツ…私の前じゃポーカーフェイス崩さないから…」
「ローズ男嫌いだもんね…」
筆頭公爵家の令嬢で、王太子と年も近く才色兼備で美麗なローズマリーは父の親友でもある王からの頼みで婚約者になっているだけで…
本音は向こうから婚約破棄してくれないかな?とずっと期待していた。
お互いに好みではないし、必要最低限しか関わっていないし…
正式にふたりの婚約が発表される1年後のデビュタント迄に何とか円満に婚約が解消されないかと画策していたのだ。
行儀見習いと言う名の気晴らしで侍女となった従妹のユリアを巻き込んでの今回の真実の愛騒動なのだが…
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