【完結】真実の愛に目覚めた男達の末路

まゆら

文字の大きさ
5 / 113

しおりを挟む
✽✽真実の愛を手に入れるのに失敗した父と真実の愛に目覚めた息子の場合

「父上!折り入って相談があります。

どうか…人払いを!」

執務室にひとりで現れた息子は宰相にさり気なく合図をしたようで、慌てて側近達は別室に移った。

「誰にも聞かれないように、のぞかれないように、この部屋には結界を張りました」

そう言いながら胸を張り自信満々な息子は…

この国の王太子であり、私は国王だ。

「秘密の話なのか?

側近にも内密とは、穏やかではないな?」

私は常に冷静で人前では表情を崩さないクールな王子と評判の息子を見つめた。

白百合姫と言われていた母に似た気品と近寄りがたい美しさを持っているらしく、城下では氷結王子と呼ばれているようだ。

氷属性の魔法に秀でているのと、女性に冷たいからそう呼ばれているらしい。

婚約者であるローズマリー嬢と一緒にいても笑わないらしく…

氷結王子の氷は年中溶ける事はないと噂されているとか…


我が息子ながらどうしたものだろうか?

もっと愛想よく振舞えないものか?と説教したい矢先だったので…

彼の用件が終わったら説教タイムにしようと思っていた私なのだが…

息子からの思いもよらないお願いに神経が…

ゴリゴリと削られていく気がした…


我が妻である王妃に嫌味を言われ続けそうな…

お願いを息子からされてしまったのだ…

まるで…

過去の自分を見ているようで、やるせない気持ちになった。

彼は…叶わない恋をしてしまったようだ…

まだわからないが…

もしかすると、王太子を失脚させたい者やこの国を混乱に導きたい者が仕組んだハニートラップの可能性もある。

冷静沈着で女性には氷のように冷たいと評判の息子から、興奮した様子で

「私は真実の愛を見つけたのです!
ローズマリーとの婚約を解消して下さい!

ローズマリーの遠縁のユリア嬢を私の妃にしたいのです!」と私に訴えてきたのだが…

ひと言で言うと無理!

幼少期から婚約者だったローズマリー嬢といきなり婚約解消は…

向こうに傷がつくからね?

王妃になれなかった、王太子のお手つきの令嬢として…

よいところへ嫁に行けなくなるんだが?

理解していないのだろうか?

馬鹿息子よ?

私は無言で息子を見つめていた。

「父上には分かるはずです!

真実の愛には抗えない事は…」

息子だけに、私の痛い過去をつついてザックリ刺してくるんだけど…

「確かに…

私にも、真実の愛に目覚めたと思い馬鹿な行動を起こした過去はあるが…

私は婚約者であるそなたの母と結婚したのだよ。

王太子としての責任は果たさないといけないからな。

王になる者は真実の愛が…とか、戯言を言っている場合ではない。

もし、お前が真実の愛を貫きたいなら廃嫡する事になるがよいか?

今1度考え直せ!

それと…これはお守りだから外さないように!」

私は息子に魅了の魔法から身を守る腕輪を装着した。

そのユリアとかいう令嬢が息子の側近にも色目を使っているようだと影からの情報が入っているからなのだが…

媚薬や毒を使われても大丈夫なように息子の装身具には毒消し効果のある石は仕込んであるのだが…

聖女でもないのに、魅了を使える者がいるとは…

ユリアは本当にローズマリー嬢の母方の遠縁であるなら息子を誘惑するわけがないのだが…

ユリアは異世界からの転生者なのかもしれないな。

私は自分の王太子時代の過ちを思い出すのだった。

異世界から来た聖女を運命の相手だと勘違いして、国も婚約者も棄てようとした事を…

真実の愛に目覚めたのです!と私も父上に告げて…

笑い飛ばされたんだったな。


父上は偉大だった。

私は国王としと、父として、

国も息子も守れるだろうか?

真実の愛という名の一時の気の迷いから…

国王は苦悩していた…

まるで若い時の自分を再現されたように、初恋に浮かれ周りが一切見えなくなっている王子を目の当たりにして

やはり…ユリア嬢が何者か、敵か味方かわかるまでは王子を軟禁すべきか?とひとり悩むのだった。

真実の愛…

それを手に出来る者は…

幸せになるのだろうか?

まだ私はその答えを知らない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...