世界最強の火魔法使い、暖房ビジネス始めました

サンタモニカマン

文字の大きさ
1 / 1

アレス暖房、活躍!

しおりを挟む
アレスは、かつて名を馳せた冒険者だった。だが、その力が強すぎるあまり、街で人々を助けるたびに恐れられる始末。暴れるモンスターをたちまち丸焦げにするその姿は、まるで火を吹く怪物のようで、誰もが怯えながら助けてくれたアレスからすぐに逃げていく。


ある冬の日、アレスは凍えるような寒さに耐えながら、足元の雪をザクザクとかき分けて街を歩いていた。冷たい風が顔に当たって目が上手く開けられない。アレスの頭の中には、モンスターを倒す時のような戦闘のことしか考えていなかったが、街の片隅で寒そうに震えている一家の小屋を見つけて、

「寒そうだな…」

その光景を見て、アレスは心が痛んだ。最初はただ通り過ぎようとしたが、心の中で「助けてあげたい」と思い、立ち止まる。

「よし、魔法でなんとかしてやろう。」

アレスは手を差し伸べると、すぐに炎の魔法を発動! しかし、すぐに周りが「火事か?!」と大騒ぎだ。なんせ、あまりにも強すぎて、小屋の周りの雪が一瞬で溶け、家の中まで炎が広がりそうになったからだ。


「おいおい、なんだこれ?!」

家の中から驚いた声が響く。アレスは慌てて魔法を調整し、なんとか火の勢いを抑えたことで、けっこう快適くらいの温度に落ち着いた。

「これで、少しは暖かくなるだろう…」

とりあえず、自分の魔法で家が焼けることなく温かくなったのを確認したアレスは、ホッと息をついた。家の中から、安堵した顔の青年が顔を出す。

「ありがとうございます、アレス様!こんなにいい感じに暖かくなるなんて!」

「いや、別に。寒かったら俺の魔法でなんとかなるから。」

アレスは照れくさそうに言いながらも、心の中では「おお、助けて良かった」と満足感を覚えた。
その時、横から商人の声が聞こえてきた。

「おい、アレス!その魔法、どうだ!ビジネスにしないか?」

アレスは驚いて振り返ると、そこにははしゃぎながら手を振っている商人がいた。

「ビジネス?」

「ああ、暖房サービスを提供するんだ!寒い冬にあんな魔法使えるんだから、町中の人が喜ぶぞ!」

商人は目を輝かせて言った。アレスは首をかしげながら、少し考え込んだ。

「でも、俺、魔法を使って金を取るのはなんか気が引けるな...」

「心配するなよ!みんなに温かさを届ける仕事だ!誰も傷つけることもないし、対価として少し料金を頂くだけさ!」

商人はしつこく勧めてきた。その言葉にアレスは少し心が動いた。

「確かに… これなら、みんな喜ぶし、俺も少しは安定した生活ができるかもしれない…この馬小屋生活ももう...」

そして、アレスはとうとう決心した。

「わかった!じゃあ、やってみるか!」

その後、アレスは街中を回り、商店や家々に「温かさをお届けします!」と宣伝を始めた。アレスの魔法はあまりにも強力で、すぐに町中で評判になり、彼のもとに依頼が殺到した。

「今日も温かい!」「アレス様、ありがとうございます!」「あったかーい!」

アレスは、その声を聞きながら、ついに自分の力を役立てることができたと、心の中でガッツポーズをした。


「こんなにみんな来てくれるなら、ちょっとだけ値上げしようかな…」

やりすぎた火魔法で温かくしすぎてサウナ状態を作り出し、住民たちから「今日はアレスの魔法で蒸し焼きになるかと思ったよ!」と言われることもあったが、アレスは無事に街のみんなに溶け込み、得意の火魔法を活かして暮らせるようになったのだった。


そして、ふと思った。

「この調子だと、夏はどうなるんだろう...?」

アレスはしばらく考えた後、にやりと笑って火を吹きだして言った。

「氷魔法の練習でもして、夏に備えよう!アレスクーラーだ!」


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...