聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第一章 act.54

瑠璃~悲しいときはコートで…その1~

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数日後。
あれから翔は放課後はテニス部で瑠璃の
練習に付き合っていた。

そのおかげか瑠璃のネット前での動きが
格段に良くなってきていた。

 ポーン。ポン。
 ポーン……

「右、左、左、右……」

「ハイ。ハイ。ハイ。……」

翔がネットの前でボールを
左右に散らす。
瑠璃はそれに飛びつくように
ボレーを決める。

普段の瑠璃からは、想像が
できないくらい真剣な顔で
機敏に動いてそれに反応していく。

「そうだ!その調子だ!」

「ハイです!」

 ポーン。ザッガッ!

 ポン。ザザッガシッ!

「………?」

(瑠璃ちゃん。ちゃんと反応してる
 じゃないか? じゃあなんで
 ボレーができないんだろ?)

翔はそんな瑠璃のプレーを見ながら
考えていた。
ボールへの反応、ラケットの出し方、
手首の使い方、そして、ラケットの
角度やボールを打ち返す方向。
どれを見ても瑠璃のプレーに悪い
ところは見当たらなかった。

 ポーン。ザッガッ!

 ポン。ザザッガシッ!

「ハイ!」

(待てよ? もしかして……?)

翔は何かを思いつき、瑠璃に声を
掛けながらボールを高く上げた。

「瑠璃ちゃん。ロブだ!」

 ポ~~ン。

瑠璃が取りやすいように
普通より高く上げたボールは
コートのライン際に落ちる。

「……あうっ!」

 ダダダッダ……。

「………えいっ!」

 ザザザッガシュッ!

瑠璃はすこし戸惑いながら直に反応し、
ボールに追いついて返してくる。

翔はすかさず次の指示をだした。

「そのままネットについて!
 ボレーだ!」

「!?……あうっ!」

 ダダダッダ……。

その指示に従い、ネット際に
ダッシュしてくる瑠璃を見て翔は瑠璃が
取れそうなところにボールを打ち出した。

 ガシュッ!
 ポーン。

 ダダダッダ……。

 ザザザザザッザー!

瑠璃はネット際に滑り込み
そのボールに反応して…。

「…………!?」

 ポン、ポンポン、ポポポ………

「!?」

……ボールを見送った。

「………あうぅぅ」

転がるボールを見ながら悲しそうな
声をもらす瑠璃。

(あれ? 今、追いついていたのに……
 なんでラケットを出さないんだ?)

翔は完全に間に合うタイミングにも
かかわらず、ラケットを出そうと
しない瑠璃に聞いた。

「瑠璃ちゃん。どうしたのさ?
 今、追いついてたよな?
 そのままラケットを出せば
 良かったのに……」

「……あうぅ。瑠璃、わからなく
 なっちゃいましたです」

瑠璃は少し混乱した表情を翔に
見せて説明してきた。

「わからなくなった?」

「……はいです。どのマネをしていいか、
 わからなくなったですぅ」

「……なんですと?」

瑠璃の説明を聞いて驚く翔。

「瑠璃。いつもですぅ…。
 頭の中でいろんなポーズが浮かんできて、
 どれにするか悩んじゃうです」

瑠璃は両手を頭の上に乗せて
解らないというジェスチャーを
翔に見せながら話を続ける。

「ズ~とネットについてるときは平気です。
 だけど、レシーブとボレーとかが
 組まれると、瑠璃どれ使って良いか
 わからなくなるですぅ」

「…………瑠璃ちゃん。…それって……」

(つまりなんだ? 瑠璃ちゃんは、
 今までの練習全部…その都度考えて、
 人のマネをしてるって事?)

瑠璃の説明を聞いて思わず考え込んで
しまう翔であった。
瑠璃はそんな翔を見あげて不思議そうに
聞いてきた。

「翔せんぱいどうしたですか?」

翔は黙って瑠璃を見つめる。

「………………」

(でもそれって、言いかえれば、
 瑠璃ちゃんが人のマネを完全に自分の
 物にしていないって事で……。
 …ってことは、この子がすべての
 モノマネを自然にできるようになれば…。
 この子はいったい何処まで伸びるんだ?)

「……あの…。しょう…せんぱい?」

翔に見つめられて、照れながら
聞いてくる瑠璃。

翔は真剣な顔をして瑠璃に話しかけた。

「瑠璃ちゃんわかったよ。
 瑠璃ちゃんを上手にする方法……」

「………えっ?」

「………瑠璃ちゃんは、
 自分で覚えたモノマネを自然にできる
 ようになるまで反復練習するんだ。
 確実に自分の物にするんだ」

「はいです! 瑠璃頑張るです!」

姿勢を正し、元気よく返事を
してくる瑠璃。

翔は気合を入れるように大きな声で伝える。

「時間が持ったいない。続きをやるぞ!」

「はいです!」

瑠璃も大きな声でそれに答えたのであった。

 。
 。
 。
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