聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第一章 act.64

雪乃-YUKINOその2-

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「えっ翔!? 雪乃ちゃんがそんな事を
 言っていたのか?」

次の日の朝。
隆二さん達の部屋で遅い朝食を摂る事に
なった翔は、隆二に昨日の雪乃の事を
相談していた。

ちなみに雪乃は玲子と二人で朝食の
準備に台所に立っていた。

「はい。昨日の朝。雪乃が魘されていて…。
 目を覚ました時の話の中に、雪乃を
 襲った奴らと街の中で会ってしまうのが
 怖いって…。一応、昨日は立ち直った様
 に思ったんですが…俺と一緒にいても、
 ちょっとした物音や急に現れる人影に
 身体を硬直させていました。

 まあ俺と一緒にいる時は大丈夫だったん
 ですが…一人の時は…心配です」

真面目な顔で声を潜めて話す翔。

「そっか…。まあ、こう言う事は…
 時間が経てば気持ちが落ち着いてきて、
 解決すると思うが…
 さすがに昨日の今日だと難しいよな?
 雪乃ちゃん。
 それだけ怖い思いもしたと思うし…」

隆二は台所の方をチラリと見て
翔に向かって言って来た。

「ええ。だから、どうしたらいいのか
 解らなくて…。
 俺もできるだけ一緒にいようと思って
 いるんですが…。
 さすがに自分の学校がある時や雪乃の
 バイトがある日でライブがある時は
 迎えにも行けないですし…」

翔は自分の気持ちを隆二に伝えた。

隆二はそんな翔を見て安心させるよう
に言って来た。

「もうすぐ学校も夏休みになるし。
 夏休みになればお前だけじゃなくて
 俺も玲子も一緒に居る事もできるから
 普段の日の行動は大丈夫だよ。
 まあ夏休みのライブの時の迎えは
 俺の方で誰か手配しておくから
 安心しても良い」

翔は隆二に頭を下げてお礼を言う。

「ありがとうございます。
 そうすると問題は夏休みに入るまで
 ですね?
 さすがに学校の登下校は安心だと
 思うんですけど…AQUAの行き返り
 は繁華街に近づくので心配です」

「ああ。それは大丈夫だと思うぞ?」

「えっ?それってどう言う意味…」

隆二が意味ありげな一言を言って翔が
聞き返した時、玲子と雪乃が料理を手に
台所から戻ってきた。

「お待たせ隆二。あれ?どうしたの翔くん…
 真面目な顔をしちゃって…」

「えっ? いや…その…」

「…………!?」
 
楽しそうに出来たばかりの料理を
テーブルに並べながら聞いて来る玲子に
翔はどう対応していいのか困って
雪乃の顔を見つめる。

雪乃は不思議そうな顔で翔の顔を
見つめていた。

「翔から雪乃ちゃんの事で
 相談をされてたんだ」

「……!! りゅ、隆二さん!」

「えっ? あたしの事?」

そんな状況を気にしないで隆二は
あっさりと玲子に相談の事を伝えた。
 
「ああ。 雪乃ちゃんちょっと、
 そこに座って…玲子もここに座ってくれ」

「はい」

「うん」

隆二に言われ翔の横に座る雪乃。

玲子も隆二の横に腰を下ろした。

「食事の前に、 雪乃ちゃんが
 心配していることを話そうと思う」

「…………」

雪乃は隆二の話しぶりに緊張したように
翔の手を取り握り締めてきた。

「街中で雪乃ちゃんを襲った奴らに
 会うかも知れないと心配している事
 なんだが…」

雪乃はビクッと身体を反応させた。

翔はそんな雪乃を優しく見つめていた。

「雪乃ちゃん。その件は安心していいよ」

「えっ?」

「へっ?」

隆二が雪乃を見つめて伝えた言葉に
思わず驚き顔を上げる雪乃と翔。

「最低でも一ヶ月…いやもっとかな?
 それぐらいは奴らは街中を歩き回る事
 は出来ないと思う」

「りゅ、隆二さん。
 それって…どう言うこと…?」

翔が驚きながら隆二に聞き返す。

「えっ翔? お前…。そうか。
 気づいてなかったのか?」

翔の反応に隆二が驚き聞き返してきた。

翔は大きく頷いて隆二の顔を見る。

「お前の倒した相手全員。
 2ヶ月以上の重症だぞ?
 最低1ヶ月は入院してるんじゃないか?」

「……マジっすか?」

驚く翔に隆二は話を続ける。

「ほとんどが関節を砕かれてたからなぁ…。
 軽い奴でも2か所以上の骨折はしてたよ。
 あれはリハビリに時間が掛かる。 
 まともに動けるようになるまで2ヶ月…。
 完治まで3ヶ月以上は
 かかるんじゃないか?」

「…………」

隆二から聞かされた衝撃の事実に
言葉の出ない翔。

翔の顔に『やりすぎたかな?』
と焦った表情が浮かぶ。

その表情を見て、隆二は可笑しそうに
言ってきた。

「ははは。それだけ、お前の格闘技は
 完璧だったと言う事だよ。
 まあ気にするなって。
 雪乃ちゃんを守る為に全力で戦ったんだ。
 それだけお前の雪乃ちゃんを
 大切に…大事に想う気持ちが
 強かったんだろ?
 そんなお前の禁忌に触れたんだ。
 あいつらも自業自得だ。
 これだけ痛い思いをしたんだ。
 これで二度と悪さはしないだろうよ?」

「……翔…さん…」

翔は照れたように顔を下に向けた。

雪乃は愛おしそうに翔の名前を呟き、
顔を見つめてくる。 

「だから… 雪乃ちゃん」

「……はい」

そんな二人を優しく見ながら
隆二は雪乃に話しかけた。

「雪乃ちゃんが心配することは…
 怖がることはなにもないんだよ?
 夏の間は絶対にあいつらに会うこと
 は無い。
 それに翔や俺達ができるだけ側に
 いるから安心してくれ。
 まあ…俺がいなくても…
 最強にして最凶の『鬼神』様が…
 常に側にいるから誰も近づいて
 来ないだろうけど…」

話の最後の方で隆二は翔を見て笑いながら
言ってきた。

「き、鬼神…ですか?」 

雪乃も不思議そうに翔を見る。

「えっ? ……俺?」

翔は驚きながら自分の事を指差す。

「雪乃ちゃんにとって最高の
 『守り神』だろ?」

「はい」

雪乃は嬉しそうに返事をした。

そして自分の気持ちを正直に伝えた。

「あたし…やっぱり街に出るのが
 怖かったんだと思います。
 心の中では翔さんが側にいてくれるから…
 大丈夫だって…思っていても…
 実際に街に出ると…身体が竦んじゃって。
 でも…今の隆二さんのお話を聞いて…
 なんだか安心できました」

「ははは。もう大丈夫そうだな?
 じゃあ、飯にするか」

隆二は雪乃を見て
安心したように言ってきた。

「はい」

雪乃も微笑みながら返事をした。
 
翔と玲子はそんな雪乃を
温かく見守っていた。

その後、遅い朝昼ご飯を食べ終わった
翔達は玲子さんの要望(決定事項)
により、ボーリングへ繰り出して行った。

 ・
 ・
 ・

ボーリングを3ゲームほど
軽くこなし、そのあとゲームセンターで
音ゲーで熱いバトルを繰り返して遊んだ。

ボーリング場を後にする頃には
6時間ほど経過していた。

隆二達と別れ、雪乃を自宅まで送っていく
翔であった。

「………翔さん。ありがとう。
 あのままじゃ…あたし、
 AQUAにも行けなくなる所でした…」

手を繋ぎながら歩く二人。
雪乃は翔の顔を見上げて言ってきた。

翔は雪乃の顔を見返すように
その名前を呼んだ。

「……雪乃」

「翔さんと隆二さんのおかげで…
 安心して外に出れるようになりました」

「いや、俺は隆二さんに相談しただけで。
 実際に雪乃の不安を取り除いてくれたのは
 隆二さんだよ…。
 俺は雪乃の事を心配することしか
 出来なかったわけだし…」

翔は罰が悪そうに雪乃から目線を外して
返事をする。

そんな翔の姿を見た雪乃は繋がれている
翔の手をギュッと握り締め、翔に微笑み
かけながら自分の気持ちを伝える。

「でも、翔さんが隆二さんに相談して
 くれたから、隆二さんがあたしの不安を
 取り除いてくれたんです。
 隆二さんに『絶対会うことはない!』
 って言って貰えて、本当に大丈夫なんだ
 って思えて…。
 怖かった思いがスーっと消えていく
 感じがして心が軽くなったんです」

「俺もそうだよ…。隆二さんの『絶対』に
 心が軽くなった…。
 それまでは俺のせいで雪乃に怖い思いを
 させた…傷つけてしまった…って
 気にしていた」

翔は沈みがちに雪乃に答える。

雪乃は立ち止まり、翔の両手を掴み
力強く言ってきた。

「それは違います!翔さんが責任を
 感じる事は無いと思います!」

「……ゆ、ゆきの?」

翔は驚いたように雪乃を見下ろす。

「あたしがあの人に狙われたのも…
 あたしが翔さんの『恋人』を
 名乗ったからです。
 翔さんは悪くないです。
 あたしはあの時、翔さんを取られたく
 なくてとっさに『恋人』を名乗った
 んです。あたしの自業自得なんです。
 だから翔さんは責任を
 感じないで下さい!」

「雪乃…でも…」

「それに翔さんはあたしを
 守ってくれました。
 危ないところを助けてくれました。
 あたし…嬉しかったんです。
 不謹慎かも知れないけど…
 あたし…翔さんに心配して
 もらえて…守ってもらえて…
 すごく…嬉しかった…」

雪乃の瞳に涙を溜まっていた。

「ゆ、雪乃!」

  ぐいっ

「あっ!」

翔は震えだす雪乃の身体を抱きしめていた。

翔は嬉しかった。
雪乃が自分の事を気遣って
言ってくれた事に…。

「雪乃…ごめん。
 俺…俺…強くなるから…」

翔は自分の気持ちが…
心が弱くなっていた事に
気がついたのであった。

「……しょう…さん…。
 …強く…強くなって……」

  ぎゅっ

翔の背中に廻した雪乃の手が
シャツを強く握る。

「雪乃…約束する。俺は強くなって…。
 どんな時も冷静に雪乃を守って
 見せるから…」

「ふふふ…約束ですよ?
 …守ってくださいね?」

雪乃は翔の顔を見上げて
泣きながら微笑んだ。

「……雪乃」

「……ん」

  ちゅっ

翔は雪乃の唇にキスを落とした。

 ・
 ・
 ・
 
二人はまた手を繋いで歩き出していた。

雪乃と翔の表情も先ほどとは
違って明るい表情だった。

「雪乃はどんなことが
 あっても音楽をやめちゃいけない。
 いつかきっと…俺と一緒にステージに
 あがるんだからな?」

「………はい。約束します……」

そんな雪乃の顔を見て、微笑んで
言ってくる翔に雪乃は頬を少し紅く
染めて返事をしてきた。

「………夏休みになったら、遊ぼうな?」

「………はい。じゃあ、お休みなさい」

「ああ、お休み雪乃」

雪乃は微笑みながら返事をして
自宅に向かって行く。

翔はそんな雪乃を安心した顔で見送って
夜空を見上げる。

その頭上には夏の星座が
二人を見守るように輝いていた。

 。
 。
 。


《第2部第1章……完》
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