聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第二章〈夏休み編〉act.10

テニス部~夏合宿6-瑠璃の爆弾宣言-

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〈テニス部…夏合宿2日目…〉
 

「それでは、練習を開始しまーすっ」

「「「よろしくお願いしまーすっ」」」

桜庭の号令に併せ、一列に並んで姿勢を
正し、声を揃え一斉に頭を下げる部員達。

部員それぞれが決められたコートに別れ、
合宿の練習が始まった。

パコーン
パコーン
パコーン

パコーン
パコーン
パコーン

パコーン
パコーン
パコーン

 ・
 ・
 ・

「それでは、
 今日の練習をおわりまーすっ」

「「「ありがとうございましたーっ」」」

夕方になり、桜庭の号令に併せ
昨日と同じようにその場で姿勢を正し、
声を揃え一斉に頭を下げる部員達。

翔はそれを涼しい顔で眺めていた。

(………………はやいな。
 まあ、それだけ練習に
 集中してたってことか?)

「翔せんぱい。
 ありがとうございましたです」

翔の横に居た瑠璃は直に翔の方に
体を向けて頭を下げてくる。

朝は昨日の事で少し不機嫌な感じの
瑠璃だったが練習が終わる頃には
機嫌が良くなり元気にお礼を言ってきた。

「へえ~。練習、けっこうハードに設定した
 と思ったけど、あんまり疲れてない
 みたいだね?」

瑠璃の元気な姿を見て感心するように
伝える翔。

瑠璃は顔を上げて嬉しそうに答えてきた。

「はいです。今日はずっとせんぱいと一緒に
 いられるかと思うと、疲れなんて
 吹っ飛んじゃったです」

「………?」

「せんぱい、今日は学校に
 泊まってくですよね?」

瑠璃は少し照れて翔の顔を見上げながら
言って来た。思わず言葉を無くす翔。

「………………」

(…………忘れてた。
 そういえば、そんな約束してたよな)

「あぁ~っ!
 翔せんぱい、忘れてたですぅ!」

そんな翔をを見て不満そうに
声を上げる瑠璃。

翔は焦りながらそれに答えた。

「ちがうちがうっ。
 ただ、着替えを持ってくるの
 忘れちゃったなーって」

「そうなんですか?
 だったら、いったん取りに帰って、
 また来ればいいです。

 なにそんなに焦ってるですか?」

瑠璃は不思議そうな顔で聞いてきた。

翔は黙って瑠璃から目線を外すように
下を向いて思った。

(………瑠璃ちゃんが慌てさせるように
 言うからだろ?)

「はやく帰ってきてくださいです。

 今日は瑠璃たちが食事当番ですから」

「へっ?」

瑠璃が嬉しそうに言った爆弾宣言に
思わず顔を上げる翔であった。

「瑠璃が作った料理。
 せんぱいに食べさせてあげるです」

瑠璃は自分の顔の前で両手を組んで
ニコニコとしながら嬉しそうに
言ってくる。

(瑠璃ちゃんが作った料理――。

 香織ちゃんが言っていた…
 あの、おぞましき事件の光景が
 俺の脳裏に浮かび上がる気がする……)

翔の脳裏には、合宿所の前に赤色灯を
廻しながら停まる救急車やパトカーの
情景が浮かんでいた。

「瑠璃、今日こそはがんばって作るですぅ
 ……えへへ」

嬉しそうに悶えながら体をクネクネさせて
意気込みを伝えてくる瑠璃に焦りながら
答える翔。

「い、いや、ちょっと待って!」

「はい?」

焦って放った翔の一言にピタッと動きを
止めて振り向く瑠璃。

「俺、今日中にしとかないといけない
 用事があったんだ。

 着替え取りに行くついでに
 済ましてくるから、戻ってくるの
 遅くなるかな?」

翔はしどろもどろになって言い訳をしてくる
翔に大きい声を上げて迫ってくる瑠璃。

「えぇ~っ、そうなんですかぁ~?」

「だだ、だから、外で食べてくるよ。
 俺一人のために片づけるの
 待ってもらうの悪いだろ?」

おそらく誰が聞いても翔の苦しい言い訳を
全面的に信じ項垂れながら悲しそうに
言ってくる瑠璃であった。

「あうぅ~……残念ですぅ…瑠璃の料理。
 せんぱいに食べてもらいたかったですぅ」

「そ、それは、またの機会に
 ということで……。
 だから、瑠璃ちゃんは頑張って
 作らなくて良いよ?」

翔はあんまり張り切らないで…
というよりも、作らないで…
という願いを籠めて瑠璃に伝えた。

「はいですっ。
 じゃあ瑠璃は普通に頑張って作るです!」

しかしそんな翔の願いもむなしく
瑠璃は自分の胸をドンと叩いて元気に
返事をしてくる。

「………………」

翔は空を見上げ天に祈った。

(……神様。どうかみんなを…
 守ってください。

 どうにか俺は生き延びたけど、
 テニス部の奴ら、大丈夫かな。
 桜庭、死なないでくれよ……)

目をつぶって天を仰ぐ翔の瞼には、
先ほど思い浮かべていた情景に加え、
担架で運ばれていく桜庭とそれを見て
泣き叫ぶ香織の姿が映りこんでいた。

明日もテニス部の合宿があるのか
どうか心配になりながら視線を降ろすと
そこにはニコニコしながら翔は見つめて
いる瑠璃の姿があった。

 ・
 ・
 ・
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