聴かせてよ愛の歌を…翔と華那恵のラブストーリー

かのん

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第二部第二章〈夏休み編〉act.12

テニス部~夏合宿8-真剣勝負-

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〈テニス部…夏合宿最終日…〉
 ~真剣勝負~

次の日の早朝練習、翔は瑠璃の相手を
するためコートに立っていた。

「ハイッ!」

 パコーン

「ほいっ」

 パコーン

瑠璃の返してくるリターンに翔は
瑠璃が追いつけるギリギリの所へ返球する。

瑠璃は翔の思惑通りにボールに追いつき
返してくる。

「ハイッ!」

 パコーン

「そりゃっ」

 パコーン

「エイッ!」

 ビシィッ

翔が甘く返したボールに狙いを定め、
力強い気合声と共に瑠璃のスマッシュが
良い所に決まる。

「やるね瑠璃ちゃん。
 今のは力強くていいよ」

「やったぁ! 決まったですっ!」

すかさずそれを褒める翔に瑠璃は
ピョンピョンと跳ねる様に全身で
喜びを表現していた。

「だいぶ基礎体力がついてきたね?
 けっこう長いラリーだったのに
 鋭いスマッシュだったよ」

ネットに近づいて話しかける翔に
瑠璃も駆け寄ってくる。

「えへへ。せんぱいの特訓のおかげですぅ」

瑠璃はラケットを胸に抱えながら
嬉しそうに答えて来た。

「いや。いくら俺が教えても
 瑠璃ちゃんにやる気がなかったら
 上達しないからね?すごいと思うよ」

翔は自分のラケットを小脇に抱え、
ネットに手をかけ、身を乗り出すように
微笑みかける。

「えへへへ……あの、翔せんぱい。
 瑠璃、お願いがあるです」

瑠璃は照れくさそうに笑い翔の顔を
見上げるようにお願いしてきた。

「なに?ちょっとメニュー、変更する?」

「いえ……。
 瑠璃と、試合して欲しいです」

瑠璃に試合を突然申し込まれて戸惑う翔。

「試合?」

「はいです。
 瑠璃、この合宿でどれだけ
 うまくなったか、今日が最終日だから
 試してみたいです。
 せんぱい、お願いしますです」

真剣な顔で頭を下げてくる瑠璃に
返答に困ってしまう翔であった。

そこに桜庭が声を掛けてきた。

「あれ、どうした菅野?」

「あっ部長。ちょうど今、翔せんぱいに
 試合を申し込んでるところです」

瑠璃から話を聞いた桜庭は翔の顔に
チラリと目線を移し真面目な顔で
瑠璃に言った。

「……ちょっと…無謀過ぎないか?」

「いいんです。
 瑠璃、合宿の成果が知りたいです」

瑠璃は真剣な顔で桜庭に自分の気持ち
を伝えた。

いつもと違って真剣にテニスの事を
考えている瑠璃の態度に驚きながら
桜庭は思わず頷きながら返事をしていた。

「そうか………。
 だったら、俺が審判してやるよ」

翔は二人の顔を交互に見ながら考えていた。

(なんか……俺抜きで勝手に
 試合することが決まってるよ。

 でも……どうしようか。

 手加減するのは、失礼になるよな。
 かといって本気を出してコテンパンに
 するのも……
 昨日の夢の件もそうだったけど…
 なにより、瑠璃ちゃんが
 自信を失ったら元も子もない。

 う~ん、悩むところだよなぁ……

 …………だけど…
 真剣に挑んでくる相手には
 真剣に応えないと、まずいよな?)

翔は悩みながら顔を上げて
もう一度瑠璃の顔を見た。

瑠璃は真剣な顔のまま黙って翔の顔を
見詰め返事を待っていた。

「わかった。瑠璃ちゃんの挑戦、
 受けてやる」

「ありがとうございますですっ!」

翔の返事を聞いて気合を入れるように
声を出し、その場で大きく
頭を下げる瑠璃であった。

試合をするか悩んでいた翔であったが
瑠璃の熱意に押されて試合を行うことに
したのであった。

「じゃあ、ワンセットマッチでいいか?
 時間無いし」

「はいですっ!」

翔の返事を聞いたあと、桜庭が二人に
声を掛けて審判席に向かっていく。

瑠璃も元気良く返事をして急いでコートの
定位置に向かって走って行った。

 パタタタ…

「よろしくお願いしますですっ!」

瑠璃は大きく頭を下げてラケットを構える。

翔はゆっくりと歩いて定位置に着いた。

「それじゃあ、試合を開始する。
 サービス高村からな?」

「はいよ」

それぞれが定位置に着いたのを確認し、
桜庭が試合開始の声を上げる。

他の部員が桜庭に言われ線審と
ボールガールの定位置に着いた。

翔はその部員からボールを受け取り
瑠璃の方を見る。

(瑠璃ちゃんには悪いけど、勝負の
 厳しさを教えてあげるべきなのかも
 しれないな。

 悔しさをバネにして、より上を目指す
 という気持ちになってもらうためにも)

 ポンポン
 ポンポン
 ………………スッ…

2、3回ボールをついて
頭上高くトスをする。

「おぉ~りゃっ!」

 ビシィッ

「きゃっ!?」

『フィフティーン・ラブ』

「す……すごいサーブですぅ」

翔の早いサーブがコートの端に決まる。

瑠璃はそのボールに反応する事が
出来なかった。

「いくよ瑠璃ちゃん」

「は、はいです」

「おぉ~りゃっ!」

 ビシィッ

「きゃっ!?」

『サァーティーン・ラブ』

「おぉ~りゃっ!」

 ビシィッ

「きゃっ!?」

『フォーティーン・ラブ』

「おぉ~りゃっ!」

 ビシィッ

 ・
 ・
 ・

 ビシィッ

「マッチウォンバイ高村」

「よっしゃ~――あっ」

(しまった。
 調子に乗りすぎて、ラブゲームで
 勝っちゃった)

「あうぅ~……」

翔は次々とサービスエースを決め、
瑠璃のサーブの時は鋭いリターンを返し
エースを決めていた。

最後のゲームを取った翔は気が付けば
オールエースの完全ラブゲームで
勝利していた。

がっくりと項垂れる瑠璃。

(やばいなぁ。
 瑠璃ちゃん、おもいっきり…
 へこんでるよ……)

「翔……おまえ、やりすぎ。
 あれじゃあ菅野、かわいそうだよ。
 テニス部辞めるなんて言いだしたら、
 おまえの責任だからな?」

落ち込んでいる瑠璃を見て、
言葉を無くして立っている翔に
審判席から降りてブスっとした
表情で声を掛けてくる桜庭。

「や……やっぱり?
 なな、なんとかフォローしないとっ。
 瑠璃ちゃん!」

翔は慌てて瑠璃に近づいて声を掛けた。

「…………翔せんぱい。
 ……瑠璃、全然ダメです…」

瑠璃は力なく翔の方に振り返り
項垂れたまま答えてきた。

「そんなことないって。
 最終日だから、きっと疲労が
 ピークだったんだよ」

「ダメです……。
 せんぱいの足元にも及ばないです…」

(うっわ…完全に自信なくしちゃってるよ。
 まずったなこりゃ……)

「気にすることないって。
 たぶん、男子と女子の差が出ただけと
 思うんだ。

 確実にうまくなってきてるんだから、
 女の子とならいい勝負すると思うよ」

「慰めてくれなくていいです。
 瑠璃、ある程度この結果は
 予想してたです」

「え?」

翔の考えとは逆に前向きな発言を
してくる瑠璃に驚く翔。

「それでも1ゲームくらいはって思った
 けど、やっぱりダメでした。
 瑠璃、まだまだ未熟者です。

 翔せんぱい。瑠璃をもっともっと
 しごいてください。

 瑠璃、せんぱいに教われば、きっと
 上手になるってことがわかったです。
 お願いしますです」

「瑠璃ちゃん……」

「せんぱいの知ってること、全部教えて
 くださいです。

 瑠璃、せんぱいのように
 うまくなりたいです。だから」

瑠璃は翔に向かって真剣な表情で
お願いしてきた。

(本気の目だ。 瑠璃ちゃん、本気で
 上達したいと切望してる……)

「よし。
 じゃあ、これからの練習は今まで以上に
 厳しくなるけど……覚悟はできてる?」

翔はその瑠璃の気持ちを正面から受け取り
本気で答える。

桜庭もそんな二人の気持ちを
聞いて今の考えを素直に二人に伝えた。

「代表選考は見たところ菅野と朝倉の
 一騎討ちって感じだな。
 しかも菅野はこのところメキメキ
 実力をつけてきてるし……翔の指導に
 従ってれば、まだまだ上達するぞ」

「ほ、本当ですか?」

「そうだぜ瑠璃ちゃん。
 確かに前より数段うまくなってるん
 だからこれからもっと練習していこうよ」

「はいですっ!瑠璃、がんばるですっ!」

瑠璃は強いまなざしで翔を見つめ、
コクッと大きくうなずいた。


それから翔は昼はテニス部にできるだけ
顔を出し、瑠璃を鍛えていくのであった。

 。
 。
 。
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