政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成

文字の大きさ
30 / 57

28話 立っている者は女神でも使え

しおりを挟む
「はいはーい、というわけで女神ちゃんなわけだけどー。……え? てかなに? 琴音ちゃん無双? てかバランスブレイカーすぎない? と、い、う、わ、け、で!! 大バランス調整大会を始めまーす!」

 あら、女神様。お久しぶりです。

「お久しぶりちゃんーって、そうじゃないっての! ちょっとやりすぎってね、琴音ちゃん。フフフ、女神ちゃんを怒らせたらどうなるか教えてしんぜよう」

 わぁー、すごいすごい。とても恐ろしくて足がガクブルです。

「全然怖がってねー。ここまで心も何もない棒読み初めてだわ。むしろ喜んでる!? うん、まぁそういうわけでちょっとバランス調整しますよ。やっぱゲームは公平性がたもててこそだと思うんだよね! というわけでガーヒルくんの知力と政治力のパラメータを2倍にしてみましたぁん! さらにボーナスでスーパーお助けキャラ登場の巻! いぇいいぇい!」

 はぁ。

「もうちょっと驚いてくれいなかー。せっかく準備したのに」

 いえ、パラメータとかよくわからないんで。

「え? ゲームとかやったことない? キャラの強さとかそういうのを数値化しているやーつ」

 ああ。つまりその人間の強さを数値に置き換えたものってことですね。例えて言うなら偏差値みたいな。

「ジャス・ドゥ・イッ! そのとーり! ふふふー、これでわかっちゃったー? 敵が2倍の強さになっちゃうんだよー? さらにお助けキャラだよー? もうこれは降伏宣言まったなしじゃないかな!?」

 なにがです?

「……なんで驚かないのかな、この子。てかすごい嫌な予感しかしないんだけど、なんでそんな平静にしてられるか、理由聞いてもいー?」

 ええ。簡単ですわ。ゼロにいくつかけてもゼロにしかならないので、2倍になったところで何も変わらないからです。

「うわぁい! 強キャラムーブのゼロ除算! っていやいや、そんなわけないって! パラメータの下限は1だかんね! それはありえないのよ」

 じゃあ1が2倍になっても2。ゴミですわね。

「だからなんでそんな自信満々!?」

 今までの彼の動きからしてアレがそう賢くはないことは明らかでしょう? 私、これでも人を見る目はあるんで。

「いやいやいやいや! ガーヒル君のパラメータ的に、確かにそう賢くなくて。知力なんて43だけど、それが2倍になったら86だよ? 全武将ランキングでトップ50入りするレベルだよ!? てかよくそんな平均以下のパラメータのやつがラスボスポジションにいたわね……これは反省だわ。うん」

 それでも問題ありません。

「だからなんで!?」

 前パパより薫陶を受けた私が、たかがあの男相手に劣るわけないからです。

「うわぁ、すごい自信。キミの自信銀行の預金残高はいくらなのかな」

 53億ですが?

「そんな私の戦闘力みたいに言われても!?」

 それにお助けキャラでしたっけ?

「うん! スーパーお助けキャラだよ! これはもう凄いよ。裏から表から琴音ちゃんの邪魔をしまくって、ガーヒルくんを超強化しちゃう感じの……うん、ごめん。やっぱりラスボスの人選間違ってるよね」

 それも問題ありませんわ。

「だからなんで!? 大事なことなので、同じツッコミにしました!」

 パラメータが2倍になっただけですわよね、知力と、政治力でしたっけ?

「え、あ、うん。それが?」

 なら簡単です。あの男にそのような人物を扱える器量はないからです。
 将来自分の地位を脅かす存在を、手を打って迎え入れるほどの度量はあの男にありませんわ。
 それで器量は増えないわけですから、あとはおしてしかるべし。

 よってそんな人が来ても、逆にマイナスにしかならないわけですQ.E.D(証明終了)。

「それは的を射ているね!! って、うわー、やっちゃったー、女神様痛恨の凡ミスー!」

 まぁそもそもこの考えは女神様がおっしゃっていたことですよ?

「どういうこと?」

 だって女神様はさっきこうおっしゃったじゃないですか。ゲームは公平性が保たれてこそ、と。
 つまりあの男の力が2倍になろうが、お助けキャラなるものが出ようが、それであちらが圧倒的有利になるわけではないってことですよね。
 そうしたら、私が一方的に負けるだけのワンサイドゲームになってしまいますから。
 そういった要素を排除して、それでなおギリギリ、白熱するだろうレベルに調整された女神様の絶妙なバランス設計ということになるかと思いまして。

「お、おおお。そう! その通り! いやー、分かっちゃう? この女神ちゃんの超絶技巧のバランス設計。そこに気づいちゃうなんてオタク、渋いねー」

 ええ。今の私は女神様あってのことですから。

「むふふー、いやいや、やっぱ分かってるね琴音ちゃんは。どっかの女装変態フェチツッコミ魔神野郎とは大違いだよ。いやー、これは今年も取っちゃう? 女神オブザイヤー、またまた女神ちゃんの時代来ちゃう?」

 ええ。もちろんですとも。
 ところで1つ提案なんですが。このゲームをもっと面白くするための。

「お、ん? いいね、そういうのどんどん頂戴!」

 私、思うんですけど私とガーヒルの接点少なすぎません? せっかく、ガーヒルが(一応)強くなっても、私との接点がなければその様子というのは伝わらないのでは? それは見ていてつまらないものですよね?

「む、確かに。ガチンコの殴り合いバトルだったら分かりやすいけど、頭脳戦的なものだとそれはそれで弊害になるか。うぅーん。やっぱり現場の意見? ていうか新しい風を取り込むのは重要だね! よし、分かった! じゃあガーヒルとのエンカウント率をもっとあげちゃおう!」

 それについて。私もそろそろ朝議(国王の前で毎朝行う重臣会議)に出ていいかなと思うんです。今パパも色々大変でしょうし、そこならガーヒルとの対決も期待できるのでは?。

「んん。まぁそうかも。うーん、けどそこに入るっていってもねぇ。他の貴族様とかそういうのの反発すごいと思うけどいいの?」

 何事もやってみなければわかりませんわ。それに、それで潰れれば私もそれまでということ。何ら問題はないでしょう。

「む。そう、かな。そうだね。うん、じゃあそうしよう。ちょっとルールと因果律をいじくれば……オッケー! これで琴音ちゃんも朝議参加できるよー」

 ありがとうございます…………(ちょろい)。

「ん、なんか言ったー?」

 いえ、ただ女神様が優しい方でよかったと。

「うんうん、わたし優しいからね! それなのにまったく、鬼だ鬼畜だ黒幕だなんだってやっかみばっかしてさ。ほんと、琴音ちゃんだけだよ、人間で味方してくれるの」

 ええ、私は受けた恩は絶対に忘れませんから。

「うんうん。そういうの大事よね」

 そして受けた仇も絶対に忘れない。

「げぇ!? やっぱりアヴェンジャーズ! 恐ろしい子!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...