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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
閑話4 堂島美柑(エイン帝国軍元帥)
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なぜ自分がそんなことをしたのか不思議だった。
逃げてくる兵たちを収容し、態勢を整えるとジュナン城に退いた。
兵たちには休憩を取らせ、城に残っていた部隊を警備に当たらせる。
そして被害報告を聞いて愕然とした。
死傷者4千。
初戦も初戦で出して良い数ではなかった。
だから杏たちには兵を落ち着かせて、軍議を後に行うとして部屋から追い出した。
そして考えた。
今回の戦い――いや、もう認めよう。負けたのだ。
達臣の対応のおかげで壊滅的な配送にならなかったが敗けは敗け。
初戦は敗北、それが結果だ。
この世界に来て、軍を率いて戦って初めての敗北。
そう認めると自分の中にあるもやもやがはっきりと目に見えるようになった。
別に自分が言い出したことではないが『帝国不敗』と呼ばれているのは知っている。
それが負けたのだ。
別にこだわっているわけではないが、やはりその名が汚されたと考えるとはらわたが煮えくり返る。
怒りだ。
これ以上ないほどの恥辱に、頭がおかしくなりそうなほどの怒りを覚える。
気づいたら部下たちのところにいた。
敵の追撃阻止で動いたものの、犠牲はいない。
そして彼らも同じ思いだったのか、鎧を脱がずに待機していた。それがとても嬉しかった。
それから部下を率いて敵陣へと馬を走らせた。
深く考えてのことではない。ただ自分の、部下たちのうっ憤を、怒りを、無念を晴らすためにしたこと。
一番近くの陣、陽気な声が癇に障った。
歩哨が立っていたけどかまわなかった。
敵の多さも関係ない。
相手が多ければ多いほど、こちらが少なければ少ないほど、自分のスキルは強化される。
途中で隊を分けた。
示し合わせた通りだが、別動隊が速度を上げ前を行く。
小癪な。
そう思った。
総大将の自分が先に突っ込んで万が一のことがあったらと考えたのだろう。
別動隊が突っ込み、敵陣に動揺が走った。
だがそれもすぐに収まり、統率を取り戻して防戦しようとしている。なかなかまとまった部隊だ。
だから別方向から突っ込んだ。
再び、敵陣が動揺したのが分かる。
幸か不幸か、敵の指揮官らしき男が怒鳴り散らしているのに遭遇した。
剣を抜く。相手もこちらに気づいた。
敵の雑兵。鎧をつけていたので首を飛ばした。
もうそんなことも簡単にできるようになった。
2人目は鎧を脱いでいたので袈裟に斬り捨てたところで、敵将が来た。
隆々たる体躯。こちらを殺そうとする気迫も素晴らしい。
「先頭の黒鎧を狙え! そいつが大将だ!」
「ほぅ、私を知るか」
意外だった。
自分は相手を知らないから。
いや、顔見知りでも忘れていただろう。
私の記憶力なんてそんなものだ。
「総大将自ら来たか!」
男は一瞬意外そうな顔をしたが、それでも獲物を見つけた肉食獣のように口を大きく開いて叫ぶ。
それを見て直感した。
この男はここで殺す。
さもないと後々の禍になる、と。
加速した。
こちらは馬、相手は徒歩。来る。剣。いや速い。斬った。腕だ。致命傷ではない。
だがトドメはさせない。
止まれば全滅する。
だから駆け抜けた。
振り返り見れば、敵将の胸に部下が剣を刺すところだった。
だが敵将は最期の力を振り絞って、部下の腕を残った手でつかむと、そのまま馬から引きずり降ろして頭から地面にたたきつける。
そこへ別の部下が斬撃を加えた。
自分でとどめを刺せなかったこと。
部下を死なせてしまったこと。
すぐに忘れた。
まだ戦いは終わっていないのだ。
決めた進路に一直線。
100人規模の組織だった抵抗はない。あったとしても、1万人はいるだろう広大な陣地だ。出くわすことはまれだ。
数名が集まって抵抗してきた相手は、容赦なく踏みつぶした。
時間にすれば5分にも満たない時間だっただろう。
移動の方が時間がかかったはずだ。
陣を突っ切り、別動隊と合流してジュナン城に戻った。
被害は10名程度だが、陣を突っ切っただけだから相手も多くはないだろう。
ただ大将を斬ったから少しは変わるはずだ。
それから部隊を解散させ、自室に戻った。
少しは気分も落ち着きを取り戻した。最前までのもやもやとした気分は幾分か晴れ、少しは落ち着きを取り戻したようだ。
だから明日の準備をして床につこうとシャワーを浴びに軍営に行ったところで、
「げーんーすーいー……このバカチーン!!」
トップロープからのフライングボディプレスを食らった。いや、何を言っているのだ私は。
そんな杏が小さな体を振り回して抗議してくる。
「もう! 本当に何してんの!? 3千で突っ込むとかバカなの!? 本当、元帥ってそういうとこあるよね!」
「いや、ただ敵を突っ切っただけだが」
「あー、もう、わけがわかんないよ! 一歩間違ったら全滅だよ!? 分かる!? てか総大将の自覚ある!?」
「問題はない。その時は杏が仕切ってくれるだろう」
「うわー、その自分の命をなんとも思ってない感じ、元帥だよねー」
「はは、これは脱帽だな。あんたも計算できないタイプかぁ」
尾田張人が苦笑してそう言ってくる。
「計算はどこまで行っても計算だ。人の意志は時として計算を上回る」
「それ、本気で言ってるなら頼もしいけどねぇ」
「いや、元帥。その返しは合ってるの?」
杏が呆れたように肩を落とす。
はて、私は何か変なことを言っただろうか?
ああ、そうだ。これだけは皆に共有しないと。
「相手のシータの方の1万。敵将を斬ったから、明日、動きがあるかもしれない」
「…………いや、ごめん。もう何て言ったらいいか」
「そればかりはおっさん少女に同意だね。奇襲して敵の将軍倒すとか」
「おっさん言うな!」
そして言い合いを始める2人。
仲が良さそうで何よりだ。
その背後で沈黙を守っていた椎葉が、こちらに向かって柔和な笑みを浮かべた。
「無事で何よりだよ」
「醜態を見せてしまったね」
「いや、さすがだよ。初戦の負けをチャラに……じゃないな。むしろプラスに転換してくれた。これで相手はいつ何をしてくるか分からない緊張感に支配されて動きが鈍る」
「そう簡単にいくといいがな」
「ともあれ、もう無茶はやめてくれよ。元帥の代わりはいないんだから」
「……心にとどめておこう。ところで煌夜は?」
「兵の慰撫に回っているよ。蒼月さんとともに」
「そうか……」
さすがは煌夜。自分のやるべきことを分かっている。
そう考えると、今回の奇襲もやるべきことだった。
自分がやるべきことだったのだ。そうなのだ。
ともあれ、今日はよく眠れそうだ。
人を斬った余韻も罪悪感もなく、目的であったシャワールームへと入っていった。
逃げてくる兵たちを収容し、態勢を整えるとジュナン城に退いた。
兵たちには休憩を取らせ、城に残っていた部隊を警備に当たらせる。
そして被害報告を聞いて愕然とした。
死傷者4千。
初戦も初戦で出して良い数ではなかった。
だから杏たちには兵を落ち着かせて、軍議を後に行うとして部屋から追い出した。
そして考えた。
今回の戦い――いや、もう認めよう。負けたのだ。
達臣の対応のおかげで壊滅的な配送にならなかったが敗けは敗け。
初戦は敗北、それが結果だ。
この世界に来て、軍を率いて戦って初めての敗北。
そう認めると自分の中にあるもやもやがはっきりと目に見えるようになった。
別に自分が言い出したことではないが『帝国不敗』と呼ばれているのは知っている。
それが負けたのだ。
別にこだわっているわけではないが、やはりその名が汚されたと考えるとはらわたが煮えくり返る。
怒りだ。
これ以上ないほどの恥辱に、頭がおかしくなりそうなほどの怒りを覚える。
気づいたら部下たちのところにいた。
敵の追撃阻止で動いたものの、犠牲はいない。
そして彼らも同じ思いだったのか、鎧を脱がずに待機していた。それがとても嬉しかった。
それから部下を率いて敵陣へと馬を走らせた。
深く考えてのことではない。ただ自分の、部下たちのうっ憤を、怒りを、無念を晴らすためにしたこと。
一番近くの陣、陽気な声が癇に障った。
歩哨が立っていたけどかまわなかった。
敵の多さも関係ない。
相手が多ければ多いほど、こちらが少なければ少ないほど、自分のスキルは強化される。
途中で隊を分けた。
示し合わせた通りだが、別動隊が速度を上げ前を行く。
小癪な。
そう思った。
総大将の自分が先に突っ込んで万が一のことがあったらと考えたのだろう。
別動隊が突っ込み、敵陣に動揺が走った。
だがそれもすぐに収まり、統率を取り戻して防戦しようとしている。なかなかまとまった部隊だ。
だから別方向から突っ込んだ。
再び、敵陣が動揺したのが分かる。
幸か不幸か、敵の指揮官らしき男が怒鳴り散らしているのに遭遇した。
剣を抜く。相手もこちらに気づいた。
敵の雑兵。鎧をつけていたので首を飛ばした。
もうそんなことも簡単にできるようになった。
2人目は鎧を脱いでいたので袈裟に斬り捨てたところで、敵将が来た。
隆々たる体躯。こちらを殺そうとする気迫も素晴らしい。
「先頭の黒鎧を狙え! そいつが大将だ!」
「ほぅ、私を知るか」
意外だった。
自分は相手を知らないから。
いや、顔見知りでも忘れていただろう。
私の記憶力なんてそんなものだ。
「総大将自ら来たか!」
男は一瞬意外そうな顔をしたが、それでも獲物を見つけた肉食獣のように口を大きく開いて叫ぶ。
それを見て直感した。
この男はここで殺す。
さもないと後々の禍になる、と。
加速した。
こちらは馬、相手は徒歩。来る。剣。いや速い。斬った。腕だ。致命傷ではない。
だがトドメはさせない。
止まれば全滅する。
だから駆け抜けた。
振り返り見れば、敵将の胸に部下が剣を刺すところだった。
だが敵将は最期の力を振り絞って、部下の腕を残った手でつかむと、そのまま馬から引きずり降ろして頭から地面にたたきつける。
そこへ別の部下が斬撃を加えた。
自分でとどめを刺せなかったこと。
部下を死なせてしまったこと。
すぐに忘れた。
まだ戦いは終わっていないのだ。
決めた進路に一直線。
100人規模の組織だった抵抗はない。あったとしても、1万人はいるだろう広大な陣地だ。出くわすことはまれだ。
数名が集まって抵抗してきた相手は、容赦なく踏みつぶした。
時間にすれば5分にも満たない時間だっただろう。
移動の方が時間がかかったはずだ。
陣を突っ切り、別動隊と合流してジュナン城に戻った。
被害は10名程度だが、陣を突っ切っただけだから相手も多くはないだろう。
ただ大将を斬ったから少しは変わるはずだ。
それから部隊を解散させ、自室に戻った。
少しは気分も落ち着きを取り戻した。最前までのもやもやとした気分は幾分か晴れ、少しは落ち着きを取り戻したようだ。
だから明日の準備をして床につこうとシャワーを浴びに軍営に行ったところで、
「げーんーすーいー……このバカチーン!!」
トップロープからのフライングボディプレスを食らった。いや、何を言っているのだ私は。
そんな杏が小さな体を振り回して抗議してくる。
「もう! 本当に何してんの!? 3千で突っ込むとかバカなの!? 本当、元帥ってそういうとこあるよね!」
「いや、ただ敵を突っ切っただけだが」
「あー、もう、わけがわかんないよ! 一歩間違ったら全滅だよ!? 分かる!? てか総大将の自覚ある!?」
「問題はない。その時は杏が仕切ってくれるだろう」
「うわー、その自分の命をなんとも思ってない感じ、元帥だよねー」
「はは、これは脱帽だな。あんたも計算できないタイプかぁ」
尾田張人が苦笑してそう言ってくる。
「計算はどこまで行っても計算だ。人の意志は時として計算を上回る」
「それ、本気で言ってるなら頼もしいけどねぇ」
「いや、元帥。その返しは合ってるの?」
杏が呆れたように肩を落とす。
はて、私は何か変なことを言っただろうか?
ああ、そうだ。これだけは皆に共有しないと。
「相手のシータの方の1万。敵将を斬ったから、明日、動きがあるかもしれない」
「…………いや、ごめん。もう何て言ったらいいか」
「そればかりはおっさん少女に同意だね。奇襲して敵の将軍倒すとか」
「おっさん言うな!」
そして言い合いを始める2人。
仲が良さそうで何よりだ。
その背後で沈黙を守っていた椎葉が、こちらに向かって柔和な笑みを浮かべた。
「無事で何よりだよ」
「醜態を見せてしまったね」
「いや、さすがだよ。初戦の負けをチャラに……じゃないな。むしろプラスに転換してくれた。これで相手はいつ何をしてくるか分からない緊張感に支配されて動きが鈍る」
「そう簡単にいくといいがな」
「ともあれ、もう無茶はやめてくれよ。元帥の代わりはいないんだから」
「……心にとどめておこう。ところで煌夜は?」
「兵の慰撫に回っているよ。蒼月さんとともに」
「そうか……」
さすがは煌夜。自分のやるべきことを分かっている。
そう考えると、今回の奇襲もやるべきことだった。
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