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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
第18話 一時休戦
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サカキとグリードの葬儀は簡易ながらもデンダ砦にて盛大に行われた。
もちろん、サカキの遺骸は王都へと送っているから、本人のいない葬儀となってしまったが。
それでもオムカ軍2万以上の人々が奏でる悲哀の嘆きは、天を覆い、地を揺るがすほどだった。
俺も涙を流した。
見栄を張って我慢したところで、それで気持ちの整理はつけられないと思ったから恥ずかしいとは思わない。
敵の襲撃は問題なかった。
『古の魔導書』で見る限り、あちらもあちらで葬式の真っ最中だからだ。
お互い、大事な将軍を失った。
だからこの一両日は何も起こらないだろう。
あるいはもう2日は待てるかもしれない。
こちらも被害が大きいが、相手の方もかなり損耗している。
その援軍が、おそらくあと2、3日というところまで来ているという。
となればその援軍が来る前に先手を打つべきだと思うが、元帥が復活している状況でこちらから攻城戦を仕掛けるのは難しいだろう。
しかし、なんでこんな消耗戦にまでなってしまったのか。
古来、戦が始まる原因として主だったものは『土地』と『信仰』、そして『権力』だろう。
もちろん『怨恨』という原因もあるだろうが、そもそもその怨恨が生まれることが『土地』『信仰』『権力』といった問題から発するものなのだ。
オムカ王国もエイン帝国を骨髄まで恨み浸透しているが、そもそもがオムカ王国が全土という『土地』を支配していたことから発する歴史に原因があるわけで。
なら今回のこの血みどろの消耗戦の原因はどこにあるのだろうか。
そう、『土地』でも『信仰』でも『権力』でもない。
こうして『怨恨』が生まれているが、そもそも俺たちプレイヤーの間にそういったものは本来ないはずだった。
なのにどうして。
そう考えてしまえば、いや、無理やり考えなくてももはやはっきりしている。
あの女神だ。
あの女神が、自らの愉悦と快楽のために俺たちを殺し合わせている。
元の世界に戻るという餌をぶら下げて。全員の命をという枷を締め付けて。
情けない話だが、俺はそれに最後まで気づけなかった。
それどころではなく、生き残るために精一杯だったということもある。
そんな俺だったから、赤星煌夜の言葉を聞かず、その手を振りほどいた。
もちろん、この世界を滅ぼすみたいなことを言われればそれもやむなしだったけど。
けど今は違う。
あの女神がすべての元凶だと認識した今は、煌夜と争う必要すらなく、現に講和が成立しそうだったわけで。
なのにこうして戦っている。
お互いの大事な人を失い、もはや後に引けなくなっている。
それをあの女神が高笑いしながら高みの見物をしていると思うと、心底はらわたが煮えくり返る。
かといって、あの女神――肉体がなく、赤星煌夜の彼女の体に寄生している精神生命体とも言える存在――に恨みをぶつけても無意味だ。
そうこうしているうちに、もはやお互いの軍には埋められない溝ができて、退くに引けない状況に陥っているともいう。
これまでの戦いや死が無駄になるからと、無意味と分かっても戦い続けなければならない。コンコルド効果というやつだ。
ならもうどちらかが絶えるまで戦うしかないのだろうか。
俺の中に、まだ答えはない。
「痛い! だから痛いっす! ちょっと自分も一人で歩けるっすから!」
と、そんなことを考えていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「えっと……ブリーダ?」
疑問形なのは、姿を現したのはブリーダの副官のアイザだったからだ。
その後ろ、というか下にブリーダがいた。
いつものように不機嫌そうなアイザと、髪の毛を引っ張られてなんともな姿のブリーダだ。
「えっと……」
「部隊の再編が済んだので報告に来ました」
「だからなんで髪の毛つかむっすか! 独りでも来れたっす!」
「筋肉バカの死を悼んで、いつまでもメソメソしてる愚図でのろまで頓馬で女々しい子供に、報告なんてハードルが高すぎると思ったので」
「そんな評価だったっす!?」
「ええ。愚図でのろまで頓馬で女々しい幼女趣味の子供だと」
「なんか増えたっす! てか子供なのにロリコンってどういうことっすか!?」
「胎児好き、とか?」
「対象がある意味斬新!」
いつも通り――いや、いつも通りに見せようとしている2人のやり取りに、心苦しい中にも少し安堵がある。
アイザもきっとブリーダが心配だったのだろう。
それを言うと、毒舌で切り返されるだろうから言わないけど。
「あー、えっと、本隊の編成が済んだっす。先鋒はなくして、そのままジーン総司令が指揮。前衛をアークが指揮する形で落ち着いたっす。クルレーンの鉄砲隊は数は減ったものの今まで通りっす。それと騎馬隊は、うちはそこまで損耗もなかったので、そのままっす。ビンゴ王国の騎馬隊は……解散して故郷に戻ったっす」
ようやく立ち上がったブリーダがそう報告した。
「そうか、ありがとう」
大きな変更はないものの、やはり一軍を指揮する人間が2人もいなくなったのは大きい。
それにグリードの部隊がほぼ全滅という兵力の減少も響いてくる。
負傷者は後方に送って治療してもらっている中、残兵力としては、うちらとシータがそれぞれ2万5千ほど。
対する相手は4万くらいという。
今のところ兵力はまだ優勢だが、帝国には援軍が来るという話だ。
おそらく1万以上は来るだろうから、それで兵力差は逆転する。
そしてあの元帥が復帰して来れば……。
そう考えるとかなり憂鬱になる。
いまだにあの元帥に打ち勝てる人間はこちらにいない。
人間が無理なら策でどうにかするということになるが、その策もはっきり言って確実ではない。
倒し方は分かっている。単純明快なほど。
要はあの元帥を動かさない、動けない状況に追い込んでしまえばいい。口で言えば簡単だが、そこに至るまでが果てしなく険しい茨道。
少なくとも数で劣り、騎馬隊の数もかなり減ってしまった現段階で、果たしてできるのか。
「軍師殿?」
黙り込んでしまった俺に、心配そうにブリーダが話しかけてきた。
「ん、ああ。どうした?」
「いや、軍師殿も…………っす! とにかく! あの馬鹿に馬鹿にされないよう、自分も頑張るっす! アイザも頑張るっすよ……痛い痛い! 生意気言ってすまないっす! だから髪の毛引っ張らないでほしいっす!」
なんだかなぁ……。
けど、ブリーダの心意気もありがたい。
俺の考えてる策で、肝になるのがこのブリーダだ。
そのためには彼に死んでもらっては困る。損耗してもらっても困る。かといって彼を使わなければ、あの元帥に蹂躙されるだけという。
いや、だからその前に兵力差をどうするかなんだけど……。
と、その時。
慌ただしい様子が外から伝わってきた。
と、扉が開いて兵士が1人。飛び込んできた。
「南より軍勢! 船で渡ってきます! おおよそ100捜!」
「な!?」
慌てて砦の南に走る。
100捜となれば大変な数だ。
一艘につき200人乗れるとして、その数2万。
一体どこの軍勢が……。
いや、それより南からってことはヨジョー城と、王都と分断されたということ。
一気に緊張感が高まる中、さらなる報告が入る。
「あれは……オムカの旗です!」
「味方……か?」
だがどこに2万なんて軍が?
あるいは物資だけを積んだ船か? 何のために?
だがその疑問は、船から降り立った1人の男によって氷解した。
それは俺たちがよく知っている人物で、
「お待たせしました、ジャンヌさん」
ワーンス王国のアズ将軍が、笑顔でこちらに手を振っているのを見たとき、俺は盛大に安堵のため息をついていた。
もちろん、サカキの遺骸は王都へと送っているから、本人のいない葬儀となってしまったが。
それでもオムカ軍2万以上の人々が奏でる悲哀の嘆きは、天を覆い、地を揺るがすほどだった。
俺も涙を流した。
見栄を張って我慢したところで、それで気持ちの整理はつけられないと思ったから恥ずかしいとは思わない。
敵の襲撃は問題なかった。
『古の魔導書』で見る限り、あちらもあちらで葬式の真っ最中だからだ。
お互い、大事な将軍を失った。
だからこの一両日は何も起こらないだろう。
あるいはもう2日は待てるかもしれない。
こちらも被害が大きいが、相手の方もかなり損耗している。
その援軍が、おそらくあと2、3日というところまで来ているという。
となればその援軍が来る前に先手を打つべきだと思うが、元帥が復活している状況でこちらから攻城戦を仕掛けるのは難しいだろう。
しかし、なんでこんな消耗戦にまでなってしまったのか。
古来、戦が始まる原因として主だったものは『土地』と『信仰』、そして『権力』だろう。
もちろん『怨恨』という原因もあるだろうが、そもそもその怨恨が生まれることが『土地』『信仰』『権力』といった問題から発するものなのだ。
オムカ王国もエイン帝国を骨髄まで恨み浸透しているが、そもそもがオムカ王国が全土という『土地』を支配していたことから発する歴史に原因があるわけで。
なら今回のこの血みどろの消耗戦の原因はどこにあるのだろうか。
そう、『土地』でも『信仰』でも『権力』でもない。
こうして『怨恨』が生まれているが、そもそも俺たちプレイヤーの間にそういったものは本来ないはずだった。
なのにどうして。
そう考えてしまえば、いや、無理やり考えなくてももはやはっきりしている。
あの女神だ。
あの女神が、自らの愉悦と快楽のために俺たちを殺し合わせている。
元の世界に戻るという餌をぶら下げて。全員の命をという枷を締め付けて。
情けない話だが、俺はそれに最後まで気づけなかった。
それどころではなく、生き残るために精一杯だったということもある。
そんな俺だったから、赤星煌夜の言葉を聞かず、その手を振りほどいた。
もちろん、この世界を滅ぼすみたいなことを言われればそれもやむなしだったけど。
けど今は違う。
あの女神がすべての元凶だと認識した今は、煌夜と争う必要すらなく、現に講和が成立しそうだったわけで。
なのにこうして戦っている。
お互いの大事な人を失い、もはや後に引けなくなっている。
それをあの女神が高笑いしながら高みの見物をしていると思うと、心底はらわたが煮えくり返る。
かといって、あの女神――肉体がなく、赤星煌夜の彼女の体に寄生している精神生命体とも言える存在――に恨みをぶつけても無意味だ。
そうこうしているうちに、もはやお互いの軍には埋められない溝ができて、退くに引けない状況に陥っているともいう。
これまでの戦いや死が無駄になるからと、無意味と分かっても戦い続けなければならない。コンコルド効果というやつだ。
ならもうどちらかが絶えるまで戦うしかないのだろうか。
俺の中に、まだ答えはない。
「痛い! だから痛いっす! ちょっと自分も一人で歩けるっすから!」
と、そんなことを考えていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「えっと……ブリーダ?」
疑問形なのは、姿を現したのはブリーダの副官のアイザだったからだ。
その後ろ、というか下にブリーダがいた。
いつものように不機嫌そうなアイザと、髪の毛を引っ張られてなんともな姿のブリーダだ。
「えっと……」
「部隊の再編が済んだので報告に来ました」
「だからなんで髪の毛つかむっすか! 独りでも来れたっす!」
「筋肉バカの死を悼んで、いつまでもメソメソしてる愚図でのろまで頓馬で女々しい子供に、報告なんてハードルが高すぎると思ったので」
「そんな評価だったっす!?」
「ええ。愚図でのろまで頓馬で女々しい幼女趣味の子供だと」
「なんか増えたっす! てか子供なのにロリコンってどういうことっすか!?」
「胎児好き、とか?」
「対象がある意味斬新!」
いつも通り――いや、いつも通りに見せようとしている2人のやり取りに、心苦しい中にも少し安堵がある。
アイザもきっとブリーダが心配だったのだろう。
それを言うと、毒舌で切り返されるだろうから言わないけど。
「あー、えっと、本隊の編成が済んだっす。先鋒はなくして、そのままジーン総司令が指揮。前衛をアークが指揮する形で落ち着いたっす。クルレーンの鉄砲隊は数は減ったものの今まで通りっす。それと騎馬隊は、うちはそこまで損耗もなかったので、そのままっす。ビンゴ王国の騎馬隊は……解散して故郷に戻ったっす」
ようやく立ち上がったブリーダがそう報告した。
「そうか、ありがとう」
大きな変更はないものの、やはり一軍を指揮する人間が2人もいなくなったのは大きい。
それにグリードの部隊がほぼ全滅という兵力の減少も響いてくる。
負傷者は後方に送って治療してもらっている中、残兵力としては、うちらとシータがそれぞれ2万5千ほど。
対する相手は4万くらいという。
今のところ兵力はまだ優勢だが、帝国には援軍が来るという話だ。
おそらく1万以上は来るだろうから、それで兵力差は逆転する。
そしてあの元帥が復帰して来れば……。
そう考えるとかなり憂鬱になる。
いまだにあの元帥に打ち勝てる人間はこちらにいない。
人間が無理なら策でどうにかするということになるが、その策もはっきり言って確実ではない。
倒し方は分かっている。単純明快なほど。
要はあの元帥を動かさない、動けない状況に追い込んでしまえばいい。口で言えば簡単だが、そこに至るまでが果てしなく険しい茨道。
少なくとも数で劣り、騎馬隊の数もかなり減ってしまった現段階で、果たしてできるのか。
「軍師殿?」
黙り込んでしまった俺に、心配そうにブリーダが話しかけてきた。
「ん、ああ。どうした?」
「いや、軍師殿も…………っす! とにかく! あの馬鹿に馬鹿にされないよう、自分も頑張るっす! アイザも頑張るっすよ……痛い痛い! 生意気言ってすまないっす! だから髪の毛引っ張らないでほしいっす!」
なんだかなぁ……。
けど、ブリーダの心意気もありがたい。
俺の考えてる策で、肝になるのがこのブリーダだ。
そのためには彼に死んでもらっては困る。損耗してもらっても困る。かといって彼を使わなければ、あの元帥に蹂躙されるだけという。
いや、だからその前に兵力差をどうするかなんだけど……。
と、その時。
慌ただしい様子が外から伝わってきた。
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「南より軍勢! 船で渡ってきます! おおよそ100捜!」
「な!?」
慌てて砦の南に走る。
100捜となれば大変な数だ。
一艘につき200人乗れるとして、その数2万。
一体どこの軍勢が……。
いや、それより南からってことはヨジョー城と、王都と分断されたということ。
一気に緊張感が高まる中、さらなる報告が入る。
「あれは……オムカの旗です!」
「味方……か?」
だがどこに2万なんて軍が?
あるいは物資だけを積んだ船か? 何のために?
だがその疑問は、船から降り立った1人の男によって氷解した。
それは俺たちがよく知っている人物で、
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