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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
閑話34 堂島美柑(エイン帝国軍元帥)
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「尾田張人が命じる! 帝国軍は武器を捨て投降しろ!」
戦場に響く大音声。
そして武器を捨てていく兵士たち。
あぁ、敗けたのか。
尾田張人が戦機を誤るような人間ではないのは知っている。
だから降伏か、敗走か、全滅かの3択しかない状況だというのも分かる。
怒りはない。
彼がそう判断したなら、それが最善ということ。
指揮権は譲渡していたから、椎葉もそれに従うだろう。
「敗けた、か」
今度は声に出してつぶやく。
敗けた。負け。敗北。敗軍。
ここにいる軍同士の戦いだけじゃない。
エイン帝国がオムカ王国に敗けたのだ。
もはや煌夜に抵抗する力はないだろう。
軍を指揮する全員が戦死するか捕虜になるのだ。
すまないな、煌夜。
お前の役には立てなかった。
だが。
だが、だ。
もはや元帥の名も、帝国不敗の称号もなにもない、ただの一兵卒。
そうなってどこか重荷が消えた、そんな気がした。
だから届けよう。
自分の、最期の精一杯の力を煌夜に届けよう。
ジャンヌ・ダルクを殺す。
杏がやろうとしてできなかったこと、尾田張人と椎葉がやってできなかったこと。いや、ここまで幾人もの人間が行おうとして失敗してきたこと。
それを、自分が最期に成す。
武器を捨てた部下たちは連れて行かない。
足手まといになるのは明らかだし、敗けたのなら戦後を生きてほしい。
馬を走らせる。
ズキリ、と右のわき腹が痛んだ。
弾は貫通したが、今でも血が流れている。
流れ弾、か。
もはや自分に時間はない。
だからこそ、最期に、最期に成す。
走る。
痛みは要らない。シャットアウトだ。必要なもの。それは剣。そして倒すべき敵。
突っ込んだ。
敵はいきなり現れた騎兵にひるみながらも果敢に抵抗してくる。それを刈り取った。
1対5万。
スキルが最大級に効果を発揮する兵数差だ。
ジャンヌ・ダルクの位置は分かっている。
あの旗。杏たちの願いを打ち砕いてきたあの旗だ。
それを叩き落とす。
それでこちらの勝利だ。
あと100メートル。
左。槍が来た。よけられない。肩で受けた。鎧がはじく。大丈夫。行ける。
さらに敵を葬って、馬を前に進める。
あと90メートル。
気配がした。鉄砲。体をひねる。左肩に痛み。鎧を貫通して、肩の肉を少し抉り取る。問題ない。
あと80メートル。
力自慢そうな兵を最小限の動きで刺し殺す。さらに前へ。
あと70メートル。
再び鉄砲。味方の中でよく撃つ。それだけ目立っているからか。来る。いや、来ない。馬が脚を折った。馬が撃たれていた。頭だ。なんて命中精度。放り出される。同時、跳んだ。死んだ馬に申し訳ないと思いつつ、着地と同時に敵を斬る。
あと60メートル。
一斉に突き出された槍。その下をかいくぐって、敵の脚を斬った。悲鳴と共に包囲が崩れる。そのまま前へ。
あと50メートル。
そこで――
「堂島さん」
出会った。
出会ってしまった。
いや、出会うべくして出会ったのだ。
ジャンヌ・ダルクを殺そうとすれば、必ず立ちはだかる壁。
ジャンヌ・ダルクの最強の盾であり矛。
「里奈くん」
彼女が、立花里奈が立っていた。
むき出しの剣を携えて待っていた。
そのことに軽い苛立ちと、激しい興奮を感じていた。
「手出し無用でお願いします。下手にかかわると……死にます」
こちらに向かって吐いた言葉ではない。
周囲に邪魔をするなと釘を刺した。
そう、もはや言葉は要らない。
問答の時間はすでに過ぎた。
私がジャンヌ・ダルクを殺そうとする以上、ぶつかることは必定。
私がジャンヌ・ダルクを殺そうとするなら必ず殺さなければいけない相手だし、彼女がジャンヌ・ダルクを守ろうとするなら私を殺すしかない。
もはやどちらかが死ぬしか終われない。
そういう状況。
「『抜山蓋世』」
「『収乱斬獲祭』」
お互いのスキル。
内容は分かっている。純粋強化のスキル。
こちらの手の内もばれているだろう。
だからあとは、どちらの殺意が上回るか。
それだけだ。
「感謝する里奈くん。最期に、この晴れ舞台を用意してくれて」
「関係ないです。明彦くんを殺そうとするなら……排除します」
それでいい。
最期の戦いが、つまらないものにならなければ。
「行くぞ」
そして、終わりが始まった。
戦場に響く大音声。
そして武器を捨てていく兵士たち。
あぁ、敗けたのか。
尾田張人が戦機を誤るような人間ではないのは知っている。
だから降伏か、敗走か、全滅かの3択しかない状況だというのも分かる。
怒りはない。
彼がそう判断したなら、それが最善ということ。
指揮権は譲渡していたから、椎葉もそれに従うだろう。
「敗けた、か」
今度は声に出してつぶやく。
敗けた。負け。敗北。敗軍。
ここにいる軍同士の戦いだけじゃない。
エイン帝国がオムカ王国に敗けたのだ。
もはや煌夜に抵抗する力はないだろう。
軍を指揮する全員が戦死するか捕虜になるのだ。
すまないな、煌夜。
お前の役には立てなかった。
だが。
だが、だ。
もはや元帥の名も、帝国不敗の称号もなにもない、ただの一兵卒。
そうなってどこか重荷が消えた、そんな気がした。
だから届けよう。
自分の、最期の精一杯の力を煌夜に届けよう。
ジャンヌ・ダルクを殺す。
杏がやろうとしてできなかったこと、尾田張人と椎葉がやってできなかったこと。いや、ここまで幾人もの人間が行おうとして失敗してきたこと。
それを、自分が最期に成す。
武器を捨てた部下たちは連れて行かない。
足手まといになるのは明らかだし、敗けたのなら戦後を生きてほしい。
馬を走らせる。
ズキリ、と右のわき腹が痛んだ。
弾は貫通したが、今でも血が流れている。
流れ弾、か。
もはや自分に時間はない。
だからこそ、最期に、最期に成す。
走る。
痛みは要らない。シャットアウトだ。必要なもの。それは剣。そして倒すべき敵。
突っ込んだ。
敵はいきなり現れた騎兵にひるみながらも果敢に抵抗してくる。それを刈り取った。
1対5万。
スキルが最大級に効果を発揮する兵数差だ。
ジャンヌ・ダルクの位置は分かっている。
あの旗。杏たちの願いを打ち砕いてきたあの旗だ。
それを叩き落とす。
それでこちらの勝利だ。
あと100メートル。
左。槍が来た。よけられない。肩で受けた。鎧がはじく。大丈夫。行ける。
さらに敵を葬って、馬を前に進める。
あと90メートル。
気配がした。鉄砲。体をひねる。左肩に痛み。鎧を貫通して、肩の肉を少し抉り取る。問題ない。
あと80メートル。
力自慢そうな兵を最小限の動きで刺し殺す。さらに前へ。
あと70メートル。
再び鉄砲。味方の中でよく撃つ。それだけ目立っているからか。来る。いや、来ない。馬が脚を折った。馬が撃たれていた。頭だ。なんて命中精度。放り出される。同時、跳んだ。死んだ馬に申し訳ないと思いつつ、着地と同時に敵を斬る。
あと60メートル。
一斉に突き出された槍。その下をかいくぐって、敵の脚を斬った。悲鳴と共に包囲が崩れる。そのまま前へ。
あと50メートル。
そこで――
「堂島さん」
出会った。
出会ってしまった。
いや、出会うべくして出会ったのだ。
ジャンヌ・ダルクを殺そうとすれば、必ず立ちはだかる壁。
ジャンヌ・ダルクの最強の盾であり矛。
「里奈くん」
彼女が、立花里奈が立っていた。
むき出しの剣を携えて待っていた。
そのことに軽い苛立ちと、激しい興奮を感じていた。
「手出し無用でお願いします。下手にかかわると……死にます」
こちらに向かって吐いた言葉ではない。
周囲に邪魔をするなと釘を刺した。
そう、もはや言葉は要らない。
問答の時間はすでに過ぎた。
私がジャンヌ・ダルクを殺そうとする以上、ぶつかることは必定。
私がジャンヌ・ダルクを殺そうとするなら必ず殺さなければいけない相手だし、彼女がジャンヌ・ダルクを守ろうとするなら私を殺すしかない。
もはやどちらかが死ぬしか終われない。
そういう状況。
「『抜山蓋世』」
「『収乱斬獲祭』」
お互いのスキル。
内容は分かっている。純粋強化のスキル。
こちらの手の内もばれているだろう。
だからあとは、どちらの殺意が上回るか。
それだけだ。
「感謝する里奈くん。最期に、この晴れ舞台を用意してくれて」
「関係ないです。明彦くんを殺そうとするなら……排除します」
それでいい。
最期の戦いが、つまらないものにならなければ。
「行くぞ」
そして、終わりが始まった。
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