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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた
第47話 神様を殺す方法
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この世の万物すべてに寿命があるように。
この世の万物すべてに死が訪れるように。
神にも寿命がある。
神も死ぬ。
かつて神話と呼ばれていた時代には、神が神を殺すことなど日常茶飯事だった。
日本のイザナギやカグツチをはじめ、ギリシャ神話のクロノスやゼウス、エジプトのセトやメソポタミアのギルガメッシュなど。
北欧神話では神同士で殺し合いを始めるし、古代中国の仙人らも神と同一視されていることを考えれば封神演義の殺し合いもそれのうちに数えられるだろう。
だから神も死ぬ。
とはいえ今あげたのは、神が神を殺したというレベル帯のもの。
人間が神を殺した例はほぼない。
――わけではない。
そう、神は簡単に死ぬ。
人間によって、あまりにもあっけなく。
別にそれは数々の試練を突破した勇者だとか、数多くの戦功をあげた英雄だとか、人類の歴史を左右するパラダイムシフトを起こした発明家によるものじゃない。
ただの人。
どこの誰というものでもない、平民という一般人によって簡単に行われる。
『忘れる』という行為によって。
10分が経った。
その間に起きたことは、正直あまり言いたくない。
ただ、150もの人間がなぶられ、蹴散らされ、蹂躙されていくのを見るだけの時間。
それを俺はただ黙って見ていた。
戦いに参加もせずに、ただマリアと共に見ていただけだ。
我ながら臆病者と呼ばれても、外道と言われても仕方のない行為だけど、俺が力で立ち向かったところで瞬殺されるだけだ。
そんなことで1秒稼ぐより、他のことで5分稼いだ方が明らかに勝算がある。
だからこそ、出なかった。
みんながやられていく様を、歯ぎしりしながら、爪が皮を突き破るほど手を握りしめながら、耐えて見ていた。
そして、俺たちは全滅した。
「大見得を切ったね、アッキー。けど、その結果がこれだ」
傷1つない。
九神が惨状を手で示して、俺を皮肉に嗤う。
もはや俺とマリアを守る味方はいない。
九神がこちらに向かって来れば待っているのは死だ。
だがそれをおくびにも出しちゃいけない。
丹田に力を入れて、九神に対して口を開く。
「見得じゃない。事実だよ」
「不愉快だなぁ。本当に君は。会った時から不愉快だった」
とはいえ、あまり苛立ちを表には出さない。
もはや勝利は疑いようがないのだから当然だろう。
それほどに、今の九神は力にあふれている。
「1つ、話をしようか」
俺はそう置いて話を切り出す。
今、ほしいのは時間。
1分1秒が、砂漠の水よりも貴重。
「イギリスのジェームズ・フレイザーの金枝篇によると、王殺しというのは世界各国にある。しかもその中で取り上げられているのは、とても簡単なこと。金枝の枝で刺し殺す。それだけだ」
本当はもっと違う文化人類学の話ではあるんだけど、細かいところなので割愛。
読んでみたけど、途中で挫折したんだよなぁ。
「……いきなり何の話をしだしたかと思えば。アッキーは物知りだね。そう言えばいいのか?」
「そうじゃないさ。王といえど、たったヤドリギの枝1つで殺されることがあるってことだよ。それなら神だって、そんな些細なもので死ぬことだってある。現に北欧神話の光の神バルドルは、ヤドリギによって殺された。神でさえヤドリギで死ぬ。いわんや、自称神をや、さ」
「僕を馬鹿にしているのかい? そうやって怒らせて、アッキーを殺そうとしに行ったところを、伏兵で挟撃。そんなところかな」
「…………」
そこでわざと黙る。
もちろんそれも考えてはいたけど、さすがにそんな兵力はない。
「ふふ、当てが外れたようだね。ならヤドリギでも投げてみるかい? まぁこんなところにそれはないだろうけど」
「そうだな、その通りだ」
……ふぅ。時間を稼ぐのがこんなにつらいことだとは。
けど舌戦なら、諸葛亮の本領というところ。
口先三寸舌八丁。
何が何でも、見栄もプライドもすべて投げ捨てて、勝ちを拾いにいかせてもらう。
「九神」
「なんだ?」
「どうしてそんなに人を嫌う」
「決まってる。裏切るからだ。嘘をつくからだ。だまし討ちするからだ。そんな奴らと同じ人間という分類にあることすらおぞましい。だから滅ぼす。それだけだ」
「それは、嘘だ」
「なに?」
「裏切るから嫌い。嘘をつくから嫌い。だまし討ちされるから嫌い。それはつまり、裏を返せば全然違うことになるだろ。裏切られると思っていなかった。嘘をつかれるなんて思いもしなかった。だまし討ちされるなんて夢想だにしなかった。だから傷つく。だから嫌い。お前は他人を信じたいんだよ」
「違う」
九神が即答する。
それが逆に、図星だったことを示す。
「そうかな。じゃあなんで水鏡と一緒にいた。あいつをずっと行動をした。一緒にいて、それで辛いこと、楽しいことを経て、お前は王になったんだろ。それを感謝してるんだろ?」
「違うっ!」
「それにこの数年。俺たちと出会って。色んなことをしたよな。お前の国での闘技場といい、クリスマスと正月にわざわざこっちに来たり。俺たちと一緒に馬鹿やって笑いあった。それが、嫌だったと、無駄だったと、本当に思っているのか?」
「違う、違う、違う!」
狂ったように、違うを連呼する九神。
あるいは、と思っていた。
だから彼の言葉は、本心を隠すためのカモフラージュだと。
だがしばらくして冷静になると、暗い声で、
「もういい。君との話は飽きた。もう終わらせよう」
その声音に、作戦の失敗を悟る。
しまった、追い詰めすぎた。
「待て、九神!」
「待てない。これからここにいる連中を一気に殺す。それからこの王都を灰にして、それからすべての国に攻め込もう。あの女神に頼もうと思ったけど、これはもう自分でやった方が早い。それほどの力を、僕は得たんだからね」
「待て、待ってくれ。それだけは……それだけはやめてくれ!」
必死に懇願する。
それほどの力を、九神は持っている。それは確かだった。
「うるさい。人の心をここまでえぐって、何を今更。所詮、君も自分本位で、自己中心的で、自分勝手な奴だ。待てと言えば誰もが待つ。そう思う、その傲慢さを呪え」
まだ時間が足りないというのに、もはや聞く耳も持たない様子の九神。
なら、しょうがない。
「…………分かった」
俺は立ち上がり、瓦礫の上に立つ。
「ジャンヌ!」
マリアの悲鳴。
身を隠すもの1つもないこの状況で、俺が殺されると思ったのだろう。
それは分かる。
正直、足の震えが止まらない。
自称神とか言ったけど、今の九神は確かに人間の範疇を超えている。
宙に停滞し、どことなく体を薄いオーラが取り巻いてるように見える。
何も言わずに見せられれば、神、あるいは天使とでも思ってしまうだろう。
だが相手は気まぐれで、人を殺戮する悪魔だ。
それを前に無防備でいるんだから、正直、命がいくつあっても足りない。
怖いのだ。
こちらにあるのは小さな旗ただ1つ。
それも武器にはなりえない。
完全に無防備。
けど、こいつに勝つにはこれしかない。
「助けてくれ。頼む」
「やっぱり命乞い? 自分の命が惜しくなっちゃった? 見苦しいね。これがあのジャンヌ・ダルクかい。闘技場の三女神の名が泣くよ?」
「違う。助けてほしいんだ」
「そういう意味深な言い方、やめろよ。格好良いとでも思ってる? 正直、聞いてるこっちからすればイライラしかない」
仕方ないだろ。
こっちは1秒でも時間を稼ぎたいんだ。
だが、もういいだろう。
「助けてほしい。俺――以外のすべてを」
「は?」
「俺を殺していい。その代わり、ここにいる皆を助けてやってくれ。そして、できればこの世界も」
「ジャンヌ! それはダメじゃ、ダメなのじゃ!」
マリアの声。
それだけじゃない。
他のところからもざわめきが聞こえる。
傷つき、倒れた者たちの耳目がこちらに注目する。
「それは、どういう意味だ?」
「察しろよ。俺を殺していい。けど、皆を助けてほしい。お願いだ」
頭を下げた。
その時、倒れた里奈と目が合った。
不安そうな目。
だがそれも一瞬。
すぐに力強い視線で、頷く。
さすが。ちゃんと分かってくれている。
その時、乾いた音が響いた。
手と手を打ち合わせる音。
拍手だ。
「素晴らしいね。自分を犠牲にしてすべてを救うとか。世界平和でも願うジャンヌ・ダルクか。いや、本当に素晴らしい」
九神が朗らかに拍手をしながらそう告げる。
だがすぐに声色を落とし、
「けど――反吐が出る。なにその自己犠牲精神? それで満足しちゃった? 勝手に暴れて、勝手に死んで、それで満足って? 馬鹿じゃないの? そういう自己陶酔の極み、正直見苦しいんだよ。何、そんなことで悦にいっちゃってるの? 醜悪だ。醜悪だ。醜悪だ。これ以上ないほどクソ。アッキー。君は本当にクソだよ」
「…………」
「だから殺すよ。君を殺して、ここにいる全員も殺す。それで終わり。僕の独り勝ち」
「九神!」
叫ぶ。怒りを込めて。
だが九神はそれを笑殺した。
「もういい、死ね」
九神が突っ込んでくる。
それでも俺は動かない。
迫りくる九神を、最後の最期まで視界に収め――
「――あ?」
九神の右腕。
それが俺の胸を貫く、その刹那。
九神が失速した。
急激に力が吸われたかのように、重力に負けるかのように落下していく。
「こ、れは……」
「ふぅぅぅぅ、なんとか間に合ったか」
体から力が抜ける。
正直、立っていられないほど。
だけどここは虚勢でもいいから意地を張るべきところだから腹に力を入れた。
「なにを……なにをした、アッキー!」
床に這いつくばった九神が、うなるように叫ぶ。
それに対しても1つため息。
「なにをしたもなにも」
そして答える。
精一杯の笑みを浮かべ、なるだけ驕ったように、勝者としての笑みを。
「神を、殺しただけさ」
この世の万物すべてに死が訪れるように。
神にも寿命がある。
神も死ぬ。
かつて神話と呼ばれていた時代には、神が神を殺すことなど日常茶飯事だった。
日本のイザナギやカグツチをはじめ、ギリシャ神話のクロノスやゼウス、エジプトのセトやメソポタミアのギルガメッシュなど。
北欧神話では神同士で殺し合いを始めるし、古代中国の仙人らも神と同一視されていることを考えれば封神演義の殺し合いもそれのうちに数えられるだろう。
だから神も死ぬ。
とはいえ今あげたのは、神が神を殺したというレベル帯のもの。
人間が神を殺した例はほぼない。
――わけではない。
そう、神は簡単に死ぬ。
人間によって、あまりにもあっけなく。
別にそれは数々の試練を突破した勇者だとか、数多くの戦功をあげた英雄だとか、人類の歴史を左右するパラダイムシフトを起こした発明家によるものじゃない。
ただの人。
どこの誰というものでもない、平民という一般人によって簡単に行われる。
『忘れる』という行為によって。
10分が経った。
その間に起きたことは、正直あまり言いたくない。
ただ、150もの人間がなぶられ、蹴散らされ、蹂躙されていくのを見るだけの時間。
それを俺はただ黙って見ていた。
戦いに参加もせずに、ただマリアと共に見ていただけだ。
我ながら臆病者と呼ばれても、外道と言われても仕方のない行為だけど、俺が力で立ち向かったところで瞬殺されるだけだ。
そんなことで1秒稼ぐより、他のことで5分稼いだ方が明らかに勝算がある。
だからこそ、出なかった。
みんながやられていく様を、歯ぎしりしながら、爪が皮を突き破るほど手を握りしめながら、耐えて見ていた。
そして、俺たちは全滅した。
「大見得を切ったね、アッキー。けど、その結果がこれだ」
傷1つない。
九神が惨状を手で示して、俺を皮肉に嗤う。
もはや俺とマリアを守る味方はいない。
九神がこちらに向かって来れば待っているのは死だ。
だがそれをおくびにも出しちゃいけない。
丹田に力を入れて、九神に対して口を開く。
「見得じゃない。事実だよ」
「不愉快だなぁ。本当に君は。会った時から不愉快だった」
とはいえ、あまり苛立ちを表には出さない。
もはや勝利は疑いようがないのだから当然だろう。
それほどに、今の九神は力にあふれている。
「1つ、話をしようか」
俺はそう置いて話を切り出す。
今、ほしいのは時間。
1分1秒が、砂漠の水よりも貴重。
「イギリスのジェームズ・フレイザーの金枝篇によると、王殺しというのは世界各国にある。しかもその中で取り上げられているのは、とても簡単なこと。金枝の枝で刺し殺す。それだけだ」
本当はもっと違う文化人類学の話ではあるんだけど、細かいところなので割愛。
読んでみたけど、途中で挫折したんだよなぁ。
「……いきなり何の話をしだしたかと思えば。アッキーは物知りだね。そう言えばいいのか?」
「そうじゃないさ。王といえど、たったヤドリギの枝1つで殺されることがあるってことだよ。それなら神だって、そんな些細なもので死ぬことだってある。現に北欧神話の光の神バルドルは、ヤドリギによって殺された。神でさえヤドリギで死ぬ。いわんや、自称神をや、さ」
「僕を馬鹿にしているのかい? そうやって怒らせて、アッキーを殺そうとしに行ったところを、伏兵で挟撃。そんなところかな」
「…………」
そこでわざと黙る。
もちろんそれも考えてはいたけど、さすがにそんな兵力はない。
「ふふ、当てが外れたようだね。ならヤドリギでも投げてみるかい? まぁこんなところにそれはないだろうけど」
「そうだな、その通りだ」
……ふぅ。時間を稼ぐのがこんなにつらいことだとは。
けど舌戦なら、諸葛亮の本領というところ。
口先三寸舌八丁。
何が何でも、見栄もプライドもすべて投げ捨てて、勝ちを拾いにいかせてもらう。
「九神」
「なんだ?」
「どうしてそんなに人を嫌う」
「決まってる。裏切るからだ。嘘をつくからだ。だまし討ちするからだ。そんな奴らと同じ人間という分類にあることすらおぞましい。だから滅ぼす。それだけだ」
「それは、嘘だ」
「なに?」
「裏切るから嫌い。嘘をつくから嫌い。だまし討ちされるから嫌い。それはつまり、裏を返せば全然違うことになるだろ。裏切られると思っていなかった。嘘をつかれるなんて思いもしなかった。だまし討ちされるなんて夢想だにしなかった。だから傷つく。だから嫌い。お前は他人を信じたいんだよ」
「違う」
九神が即答する。
それが逆に、図星だったことを示す。
「そうかな。じゃあなんで水鏡と一緒にいた。あいつをずっと行動をした。一緒にいて、それで辛いこと、楽しいことを経て、お前は王になったんだろ。それを感謝してるんだろ?」
「違うっ!」
「それにこの数年。俺たちと出会って。色んなことをしたよな。お前の国での闘技場といい、クリスマスと正月にわざわざこっちに来たり。俺たちと一緒に馬鹿やって笑いあった。それが、嫌だったと、無駄だったと、本当に思っているのか?」
「違う、違う、違う!」
狂ったように、違うを連呼する九神。
あるいは、と思っていた。
だから彼の言葉は、本心を隠すためのカモフラージュだと。
だがしばらくして冷静になると、暗い声で、
「もういい。君との話は飽きた。もう終わらせよう」
その声音に、作戦の失敗を悟る。
しまった、追い詰めすぎた。
「待て、九神!」
「待てない。これからここにいる連中を一気に殺す。それからこの王都を灰にして、それからすべての国に攻め込もう。あの女神に頼もうと思ったけど、これはもう自分でやった方が早い。それほどの力を、僕は得たんだからね」
「待て、待ってくれ。それだけは……それだけはやめてくれ!」
必死に懇願する。
それほどの力を、九神は持っている。それは確かだった。
「うるさい。人の心をここまでえぐって、何を今更。所詮、君も自分本位で、自己中心的で、自分勝手な奴だ。待てと言えば誰もが待つ。そう思う、その傲慢さを呪え」
まだ時間が足りないというのに、もはや聞く耳も持たない様子の九神。
なら、しょうがない。
「…………分かった」
俺は立ち上がり、瓦礫の上に立つ。
「ジャンヌ!」
マリアの悲鳴。
身を隠すもの1つもないこの状況で、俺が殺されると思ったのだろう。
それは分かる。
正直、足の震えが止まらない。
自称神とか言ったけど、今の九神は確かに人間の範疇を超えている。
宙に停滞し、どことなく体を薄いオーラが取り巻いてるように見える。
何も言わずに見せられれば、神、あるいは天使とでも思ってしまうだろう。
だが相手は気まぐれで、人を殺戮する悪魔だ。
それを前に無防備でいるんだから、正直、命がいくつあっても足りない。
怖いのだ。
こちらにあるのは小さな旗ただ1つ。
それも武器にはなりえない。
完全に無防備。
けど、こいつに勝つにはこれしかない。
「助けてくれ。頼む」
「やっぱり命乞い? 自分の命が惜しくなっちゃった? 見苦しいね。これがあのジャンヌ・ダルクかい。闘技場の三女神の名が泣くよ?」
「違う。助けてほしいんだ」
「そういう意味深な言い方、やめろよ。格好良いとでも思ってる? 正直、聞いてるこっちからすればイライラしかない」
仕方ないだろ。
こっちは1秒でも時間を稼ぎたいんだ。
だが、もういいだろう。
「助けてほしい。俺――以外のすべてを」
「は?」
「俺を殺していい。その代わり、ここにいる皆を助けてやってくれ。そして、できればこの世界も」
「ジャンヌ! それはダメじゃ、ダメなのじゃ!」
マリアの声。
それだけじゃない。
他のところからもざわめきが聞こえる。
傷つき、倒れた者たちの耳目がこちらに注目する。
「それは、どういう意味だ?」
「察しろよ。俺を殺していい。けど、皆を助けてほしい。お願いだ」
頭を下げた。
その時、倒れた里奈と目が合った。
不安そうな目。
だがそれも一瞬。
すぐに力強い視線で、頷く。
さすが。ちゃんと分かってくれている。
その時、乾いた音が響いた。
手と手を打ち合わせる音。
拍手だ。
「素晴らしいね。自分を犠牲にしてすべてを救うとか。世界平和でも願うジャンヌ・ダルクか。いや、本当に素晴らしい」
九神が朗らかに拍手をしながらそう告げる。
だがすぐに声色を落とし、
「けど――反吐が出る。なにその自己犠牲精神? それで満足しちゃった? 勝手に暴れて、勝手に死んで、それで満足って? 馬鹿じゃないの? そういう自己陶酔の極み、正直見苦しいんだよ。何、そんなことで悦にいっちゃってるの? 醜悪だ。醜悪だ。醜悪だ。これ以上ないほどクソ。アッキー。君は本当にクソだよ」
「…………」
「だから殺すよ。君を殺して、ここにいる全員も殺す。それで終わり。僕の独り勝ち」
「九神!」
叫ぶ。怒りを込めて。
だが九神はそれを笑殺した。
「もういい、死ね」
九神が突っ込んでくる。
それでも俺は動かない。
迫りくる九神を、最後の最期まで視界に収め――
「――あ?」
九神の右腕。
それが俺の胸を貫く、その刹那。
九神が失速した。
急激に力が吸われたかのように、重力に負けるかのように落下していく。
「こ、れは……」
「ふぅぅぅぅ、なんとか間に合ったか」
体から力が抜ける。
正直、立っていられないほど。
だけどここは虚勢でもいいから意地を張るべきところだから腹に力を入れた。
「なにを……なにをした、アッキー!」
床に這いつくばった九神が、うなるように叫ぶ。
それに対しても1つため息。
「なにをしたもなにも」
そして答える。
精一杯の笑みを浮かべ、なるだけ驕ったように、勝者としての笑みを。
「神を、殺しただけさ」
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