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第2章 南郡平定戦
閑話5 高岩秀敏(エイン帝国 遊軍部隊長)
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まずは上々の成果だった。
スキル『幻想軍行』はかなり使い勝手がよいと思う。
もともとが争いごとは嫌いだったし、死ぬのも痛いのも怖いのも嫌いだった。
かといって戦えないスキルだと、万が一の時が怖い。
その時に見つけたのがこのスキルだった。
『幻想の軍団を呼び出す』
もちろん幻想だからその軍団が攻撃できるわけでも攻撃されるわけでもない。
だが人は本来臆病な動物だ。
死が目の前から襲って来れば、それを回避しようとする。1人でも逃げれば、我先にと次々と逃げ出すことになる。
だからこのスキルで数万の軍勢を出現させて見せれば、どんな軍でも我先に逃げ始めるのだ。
そうなったらもうこちらのもの。幻の軍勢に紛れて攻撃してもいいし、相手が混乱している間に退却することもできる。
欠点としては時間が3分と短い事。
あとは無機物の軍勢は出現できないという事。
すなわち鉄製の戦車や戦闘機、イージス艦といった近代兵器は再現できない。
それでも鉄砲が普及し始めたこの時代においては、さほど問題はない。
むしろ見慣れない戦車なんかより、馬と人が大軍で襲ってくる古代戦車の方が相手には脅威に見えるらしい。明確な殺意というものが分かりやすく見えるからかもしれないと、この使い方を教えてくれた人はそう言った。
そんなこと、高校じゃおしえてくれなかったしな。当たり前か。
「高校か……」
ここに来て1年が経つ。
思い起こせばついこないだまで高校生をやっていたわけで、それがこんなところに連れてこられたのは、正直アンラッキーだと思う。
死因も交通事故なんてしまらない死に方をしたのだから、我ながら情けない。
いや、どんな死に方すればしまった死に方なのか、と言われたら困るけど。不謹慎だし。
「隊長、砦の守備隊長殿がお呼びです」
「守備隊長? 俺なんかに何の用だろう?」
部下、といっても俺より一回りは年上の男が俺を呼んできた。
思えばこの世界に来たことはアンラッキーだったが、この一番強い国に拾われたこと、『あの人』と会えたこと、こうして部隊の隊長を任せられたことはラッキーだったと思う。
特に、俺のスキルをちゃんとした場所でちゃんと使えば有効になると教えてくれたのは『あの人』だ。
そしてその力を示して敵を何度も退けてきたのだから、エイン帝国においての俺の地位はある程度盤石になったことも大きい。
正直戦争は怖い。
けど、俺が戦うことで元の世界に戻れるのであれば、『あの人』に恩返しができるのであれば、それはとても嬉しいことだ。
『あなたのスキルなら数万の敵を足止めするのは簡単でしょう。何度かそのスキルで仕掛けて敵を押し込めておいてください。そうすれば援軍が敵を撃退してくれるでしょうから。さぁ、今こそ力を合わせてシータ国を倒しましょう。そして、みんなで元の世界に戻るのです』
そうだ。『あの人』の言う通りにすれば間違いない。
けどどうしよう。
現場の指揮官の対応なんて指示されていない。
それに帝国の基本構造は貴族主義だ。超がつくほどの縦社会。こういった場所に配置されている隊長も貴族サマだろう。
正直気は進まない。
俺は『あの人』の部下であって、貴族サマの部下ではないのだ。
でも俺の身勝手で『あの人』が貴族に嫌われるのも問題だ。
俺は『あの人』のために生きたい。少なくとも、元の世界に戻りたい。
今さら思う。学校なんてくだらないなんて思ってたのが今はもう恋しい。友人と馬鹿やってふざけて遊んだり、受験や恋に悩んだり。ゲームに漫画、カラオケ、ボウリングにダーツ、やりたいことがたくさんある。
だからこんなところで躓いてられない。
俺はその指揮官に会うことにした。
「来たか。お主があの1万を退けたという遊撃隊か」
「はぁ」
音楽室にあるバッハみたいな巻き毛をした痩身の男が待っていた。年齢は30代だろう。生地のよい燕尾服みたいなグレーの上着に白い長ズボンの姿は、世界史の教科書に出てきそうだ。
なにより男は顔を赤くして、若干目が座っている。こいつ、陣中で酒を飲んでるのかよ。いい気なものだ。
あるいは敵を撃退したことを褒めてくれるのだろうか。
なんて思った途端、急に男は目を怒らせて、
「一体何をしておるのだ!」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
え、いや、なんで俺怒られてるの?
「撃退したのなら何故追わぬ!? 追撃のチャンスだったではないか!」
「いや、といってもこっちは2千ですし。相手も態勢を立て直したらこっちが全滅しますよ」
「ええい口答えするな! おかげで敵はまとまってしまったではないか! もし全軍で攻めてきたらどうするつもりだ!」
えぇー、どういうことだよ。
さっさと逃げたのはそっちだろうに。
「今すぐ奴らを撃退しろ! これ以上この砦に近づけてはならん!」
「そうは言いましても。こっちより敵の方が多いんだから援軍を待った方が賢明でしょう」
「馬鹿者! それでは私が無能のようではないか! 援軍が来る前に少しでも敵を減らしておかなければ、私の立つ瀬がない!」
あぁ、うっざ。
結局自分のことしか考えられない。これだから貴族ってやつらは嫌いなんだ。
「さぁ、今すぐ出撃して敵を蹴散らしてこい!」
「じゃあここにある兵は連れてっていいですよね」
「馬鹿者! そうしたら私を守る兵がいなくなるではないか! 貴様は2千で1万に勝っているではないか。しかも幻術を使うと聞く。それが有効なら敵が1万だろうが2万だろうが、関係なかろう」
関係大ありだ馬鹿。
とはいえ、確かに『幻想軍行』を使えば敵を撃退できなくはないのは確か。これまでも何度もこういう場面をはねのけてきた。
けどここで安請け合いするのは良くない。何よりこのまま待っていれば援軍が来て楽に勝てるのだ。危険をおかす必要はない。
「それって命令ですか?」
「当然だ。貴族の私が命じているのだ」
「生憎うちのボスは『あの人』なんで。それ以外の命令は聞けないですね」
「あの人……? まさか、教皇様か!?」
その通り、と俺は深く頷いてみせる。
男の顔が激しく歪み、青汁を10杯ほど飲み下したような不快な表情を浮かべる。
正直、『あの人』がやろうとしていることはよく分からない。けど俺の力は『あの人』のためにある。こいつら貴族のためじゃない。だからここは断固として断るべきだった。
なのだが――
「失礼します! 敵軍、こちらに向かって進軍中! その数、およそ1万!」
「なんだと!?」
指揮官の男が素っ頓狂な声を出す。なんとまぁ滑稽な。
だが内容は滑稽では済まされない。
何故わざわざ出てきた?
いや、増援が来る前にこの砦を落としておこうってわけか。
でもここはそんなに重要な拠点じゃない。
いくら相手が多かろうが籠城して戦い、適度に損害を与えて砦を捨てれば、援軍が来る時間を稼げる。そうなれば敵を味方の中で孤立させることも可能だ。
しかし事態は俺の想像もしない方向に動いてしまった。
「お、おのれ……許せん。出撃だ!」
「今、なんと?」
「いいから出撃だ! 同程度の兵力で私に勝てると思ったか。顔に泥を塗りおって……きゃつらめ、皆殺しにしてくれる!」
指揮官の男が立ち上がると慌ただしく部屋から出ていく。幕僚たちが慌ててその後を追う。
「何をしている、貴様も来い! そして幻術で敵を混乱させるのだ!」
扉の外から男の声が響く。
正直行きたくない。
だがここで彼らだけ戦ったとして、兵力差は倍もあるのだ、おそらく負けるだろう。その時にこの貴族サマが生き残っているかは知らないが、どちらにしても友軍を見捨てたという汚名を負わされることになる。
俺が汚名を負う分にはどうでもいい。
でも『あの人』の覇道の妨げになるのであれば、それは断固として避けるべきだ。
だから仕方なく遊撃隊も出撃した。
騎馬隊500、歩兵1500の小さな部隊だが、俺が率いればそれだけで強力な部隊になる。
果たして敵軍が見えてきた。
上陸時には2万はいたはずだが、今は報告にあったとおりこちらの7千強より少し多い1万前後か。
そうなると兵力の差はさほどない。
だから不審に思う。なぜ全軍で攻めてこないのか。
「伝令! 守備隊長殿より、敵を幻術で惑わせとのことです!」
しかし改めて聞くととんでもないな。
幻術を前提に立てられる作戦なんて聞いたことがないぞ。
「ま、言われたらやりますけど。『幻想軍行』、発動……」
さて、今回は何にしようか。
もう一度、戦車か。
いや、ここはもっと驚いてもらわないと困る。
ならば、草原において最強と言われたらしいこの部隊を使ってみようか。
「モンゴル帝国の騎馬隊、10万」
騎馬1に対し人1だから、戦車より数を多く出現させられる。
十分すぎるほどの兵力。それを見た時の敵の慌てようは想像に難くない。
だから手を振り上げ、
「行け!」
振り下ろす。
すると俺の手の先を境に、空間から騎馬が飛び出した。
一頭や二頭じゃない。10万の大軍勢。
毛皮の鎧を着て手に弓を持った恐ろしい形相の男たちが、次々とこの世界に顕現しては大地を疾走していく。
背後から見ても恐ろしい光景だ。これを真正面から受け止めるなんて、並の人間ならできるはずがない。
案の定、敵の1万は突如現れた騎馬隊を目にすると、我先に逃げ出す。
「敵は崩れたぞ、続けぇ!」
守備隊長の高らかな号令が聞こえる。それに続いて5千が飛び出す。
「俺たちも続くぞ」
こうなったら徹底的に叩いてやる。
そう思うと殺る気が溢れて来る。
死ぬのは嫌だ。
痛いのは嫌だ。
怖いのは嫌だ。
だから――代わりに死んでくれ!
逃げる敵の最後尾が見えた。味方は……遅い! 何をちんたらやってるんだ。
こうなったら俺たちだけの部隊でやるしかない。
いや、止まった?
1万の軍が止まって、顔をこちらに向け反転した。
何をしている。速く逃げろ。10万だぞ。騎馬隊だぞ。死にたくないだろ。痛いんだぞ。怖くないのかよ。
その時、馬に乗った1人の小柄な兵が前に出た。
いや、兵か?
鎧は着ていない。戦場に不釣り合いな薄いトップスにスカート姿。女だ。少女と言ってもいい年齢だ。
兜はかぶっていない。美しい。そう遠目にも分かるほどの美貌。
その少女が、シータの旗を持って前に出る。
10万の大軍の前に出る。
逃げろ。踏みつぶされるぞ。お前みたいな子供が前に出てどうするつもりだ。
俺のスキルは完璧だ。完璧に本物そっくりで、迫力もそのままだ。
なのに、何故あの少女は動かない!
「――――」
その少女が何かを掲げる。
旗を持っていない方の手。
銃?
違う、ハンドガンなんて存在しない。
あれは、弩か?
「一体そんなもので何を――」
だがその後の少女の行動に、放つ言葉に、俺は心臓を握られたような気分になった。
少女は撃った。
弩を。
それは一直線に飛び、そして『幻想軍行』の軍勢の中に吸い込まれていった。
当然だ。幻想である軍勢に矢は通じない。
だが、それが彼女の狙いだった。
10万の騎馬隊が少女を飲み込んだ。
もちろん実体のない幻影だ。少女に傷一つない。
「えっ!?」
途端、地面に放り出された。
何が、と思い背後を見ると、地面が一部段差になっていた。幅は1メートルほど、深さは50センチもない。もはや溝で落とし穴というにもしょぼすぎる仕掛けだが、左右に100メートルほど広がっている。
そこに馬が足を引っかけて俺は投げ出されたのだ。
あの少女の仕業だ。そう確信した。
もちろんすべての馬が引っかかったわけじゃない。勘の良い馬なら跳躍して飛び越えるだろう。
こんなのに引っかかって落馬した俺はアンラッキーだったということになる。
ただ少女が見たかったのはきっとそれじゃない。
10万もの騎馬隊が、その溝を超える時も一切の乱れなく移動するのを見て、確信を得たかったのではないか。
幻影に足はない。だから溝にも引っかからない。
「見たか! この軍勢は幻影だ! その後から実態を持った本命が来るぞ!」
少女が吠え、そして味方の陣へと下がっていく。
やられた。
これが彼女の狙い。
穴を掘って敵が幻想だと見破り、弩を撃ってそれを味方に知らしめ、そして自らが動かないことでそれを確信に変えた。
もちろんそれだけで終わるものではない。
「前列、しゃがめ! 鉄砲隊、放て!」
別の男の声。
鉄砲!? どこに!? 残った1万か! 鉄砲が来る! 逃げろ。だが馬が倒れて。走れ。逃げろ。
「総員、退却!」
だが俺の声は、轟音にかき消された。
数千丁にも及ぶ鉄砲の音は、雷が傍に落ちたほどの爆音を放つ。
もちろん音だけではない。
その後に来るのは死の選別。
アンラッキーな者はそれに当たり死ぬ。
ラッキーな者は外れて生きる。
俺は、ラッキーの側にいたらしい。
馬から落ちたアンラッキーが、俺の命を救っていた。
だが俺以外の者はアンラッキーだった。
部下が、見知った仲間たちが、赤い液体をまき散らして倒れていく。
それを悲しいとも痛ましいとも思うより、頭がガンガンと警鐘を鳴らす。
今すぐ逃げろ、と。
「退却!」
だからもう一度叫び、そして走り出す。
これは罠だ。
悪辣な罠。
幻影に怯えきった偽の逃亡を装い、調子に乗って追撃してきた俺たちを皆殺しにするための罠。
そういえば『あの人』から聞いた。
オムカとかいう属国が独立を果たしたこと。その陰に、1人のプレイヤーがいるらしいということ。そのオムカと戦った尾田張人というプレイヤーが惨敗を喫したということ。尾田とは直接会ったことはないが、ねじ曲がった性格と悪知恵は及ぶ者がないと『あの人』に絶賛されていた。
そのプレイヤーは10代前半の絶世の美女だという噂がある。
確か名前は――ジャンヌ。
先ほどの少女の顔を思い出す。
確かに美しい。
だが、この悪質さはなんだ。
人を騙すなんて……ひどい奴だ。許せない。
背中に衝撃。
何かが刺さった。
痛い。
怖い。
死にたくない。
だから走る。
全力で逃げる。
だが足が重い。
早く逃げないといけないのに。
足がうまく動いてくれない。
力が体から抜けていく。
いや、抜けていくのは力か、血か。
もう周りがどうなっているのかも分からない。
ただただ無我夢中で逃げた。
あるいは逃げたかった。そうなのかもしれない。
再び衝撃。
いや、倒れた。
空が見える。
蒼い。
こんな空、日本でもそう見たことがない。
ただ単に空を見上げたことがあまりなかったのかもしれない。
この蒼空を、『あの人』に感じたのはいつだったか。
あぁ、『あの人』にもう一度会いたいなぁ。
顔が見える。
知らない男だ。
血走った目。
知っている。
戦争をしてる人の目だ。
それが俺に向けられている。
それが何を意味するのか、もうよく分からない。
ただ1つだけは言える。
「だから戦争は嫌なんだ」
そして喉に何かが入って来た。
スキル『幻想軍行』はかなり使い勝手がよいと思う。
もともとが争いごとは嫌いだったし、死ぬのも痛いのも怖いのも嫌いだった。
かといって戦えないスキルだと、万が一の時が怖い。
その時に見つけたのがこのスキルだった。
『幻想の軍団を呼び出す』
もちろん幻想だからその軍団が攻撃できるわけでも攻撃されるわけでもない。
だが人は本来臆病な動物だ。
死が目の前から襲って来れば、それを回避しようとする。1人でも逃げれば、我先にと次々と逃げ出すことになる。
だからこのスキルで数万の軍勢を出現させて見せれば、どんな軍でも我先に逃げ始めるのだ。
そうなったらもうこちらのもの。幻の軍勢に紛れて攻撃してもいいし、相手が混乱している間に退却することもできる。
欠点としては時間が3分と短い事。
あとは無機物の軍勢は出現できないという事。
すなわち鉄製の戦車や戦闘機、イージス艦といった近代兵器は再現できない。
それでも鉄砲が普及し始めたこの時代においては、さほど問題はない。
むしろ見慣れない戦車なんかより、馬と人が大軍で襲ってくる古代戦車の方が相手には脅威に見えるらしい。明確な殺意というものが分かりやすく見えるからかもしれないと、この使い方を教えてくれた人はそう言った。
そんなこと、高校じゃおしえてくれなかったしな。当たり前か。
「高校か……」
ここに来て1年が経つ。
思い起こせばついこないだまで高校生をやっていたわけで、それがこんなところに連れてこられたのは、正直アンラッキーだと思う。
死因も交通事故なんてしまらない死に方をしたのだから、我ながら情けない。
いや、どんな死に方すればしまった死に方なのか、と言われたら困るけど。不謹慎だし。
「隊長、砦の守備隊長殿がお呼びです」
「守備隊長? 俺なんかに何の用だろう?」
部下、といっても俺より一回りは年上の男が俺を呼んできた。
思えばこの世界に来たことはアンラッキーだったが、この一番強い国に拾われたこと、『あの人』と会えたこと、こうして部隊の隊長を任せられたことはラッキーだったと思う。
特に、俺のスキルをちゃんとした場所でちゃんと使えば有効になると教えてくれたのは『あの人』だ。
そしてその力を示して敵を何度も退けてきたのだから、エイン帝国においての俺の地位はある程度盤石になったことも大きい。
正直戦争は怖い。
けど、俺が戦うことで元の世界に戻れるのであれば、『あの人』に恩返しができるのであれば、それはとても嬉しいことだ。
『あなたのスキルなら数万の敵を足止めするのは簡単でしょう。何度かそのスキルで仕掛けて敵を押し込めておいてください。そうすれば援軍が敵を撃退してくれるでしょうから。さぁ、今こそ力を合わせてシータ国を倒しましょう。そして、みんなで元の世界に戻るのです』
そうだ。『あの人』の言う通りにすれば間違いない。
けどどうしよう。
現場の指揮官の対応なんて指示されていない。
それに帝国の基本構造は貴族主義だ。超がつくほどの縦社会。こういった場所に配置されている隊長も貴族サマだろう。
正直気は進まない。
俺は『あの人』の部下であって、貴族サマの部下ではないのだ。
でも俺の身勝手で『あの人』が貴族に嫌われるのも問題だ。
俺は『あの人』のために生きたい。少なくとも、元の世界に戻りたい。
今さら思う。学校なんてくだらないなんて思ってたのが今はもう恋しい。友人と馬鹿やってふざけて遊んだり、受験や恋に悩んだり。ゲームに漫画、カラオケ、ボウリングにダーツ、やりたいことがたくさんある。
だからこんなところで躓いてられない。
俺はその指揮官に会うことにした。
「来たか。お主があの1万を退けたという遊撃隊か」
「はぁ」
音楽室にあるバッハみたいな巻き毛をした痩身の男が待っていた。年齢は30代だろう。生地のよい燕尾服みたいなグレーの上着に白い長ズボンの姿は、世界史の教科書に出てきそうだ。
なにより男は顔を赤くして、若干目が座っている。こいつ、陣中で酒を飲んでるのかよ。いい気なものだ。
あるいは敵を撃退したことを褒めてくれるのだろうか。
なんて思った途端、急に男は目を怒らせて、
「一体何をしておるのだ!」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
え、いや、なんで俺怒られてるの?
「撃退したのなら何故追わぬ!? 追撃のチャンスだったではないか!」
「いや、といってもこっちは2千ですし。相手も態勢を立て直したらこっちが全滅しますよ」
「ええい口答えするな! おかげで敵はまとまってしまったではないか! もし全軍で攻めてきたらどうするつもりだ!」
えぇー、どういうことだよ。
さっさと逃げたのはそっちだろうに。
「今すぐ奴らを撃退しろ! これ以上この砦に近づけてはならん!」
「そうは言いましても。こっちより敵の方が多いんだから援軍を待った方が賢明でしょう」
「馬鹿者! それでは私が無能のようではないか! 援軍が来る前に少しでも敵を減らしておかなければ、私の立つ瀬がない!」
あぁ、うっざ。
結局自分のことしか考えられない。これだから貴族ってやつらは嫌いなんだ。
「さぁ、今すぐ出撃して敵を蹴散らしてこい!」
「じゃあここにある兵は連れてっていいですよね」
「馬鹿者! そうしたら私を守る兵がいなくなるではないか! 貴様は2千で1万に勝っているではないか。しかも幻術を使うと聞く。それが有効なら敵が1万だろうが2万だろうが、関係なかろう」
関係大ありだ馬鹿。
とはいえ、確かに『幻想軍行』を使えば敵を撃退できなくはないのは確か。これまでも何度もこういう場面をはねのけてきた。
けどここで安請け合いするのは良くない。何よりこのまま待っていれば援軍が来て楽に勝てるのだ。危険をおかす必要はない。
「それって命令ですか?」
「当然だ。貴族の私が命じているのだ」
「生憎うちのボスは『あの人』なんで。それ以外の命令は聞けないですね」
「あの人……? まさか、教皇様か!?」
その通り、と俺は深く頷いてみせる。
男の顔が激しく歪み、青汁を10杯ほど飲み下したような不快な表情を浮かべる。
正直、『あの人』がやろうとしていることはよく分からない。けど俺の力は『あの人』のためにある。こいつら貴族のためじゃない。だからここは断固として断るべきだった。
なのだが――
「失礼します! 敵軍、こちらに向かって進軍中! その数、およそ1万!」
「なんだと!?」
指揮官の男が素っ頓狂な声を出す。なんとまぁ滑稽な。
だが内容は滑稽では済まされない。
何故わざわざ出てきた?
いや、増援が来る前にこの砦を落としておこうってわけか。
でもここはそんなに重要な拠点じゃない。
いくら相手が多かろうが籠城して戦い、適度に損害を与えて砦を捨てれば、援軍が来る時間を稼げる。そうなれば敵を味方の中で孤立させることも可能だ。
しかし事態は俺の想像もしない方向に動いてしまった。
「お、おのれ……許せん。出撃だ!」
「今、なんと?」
「いいから出撃だ! 同程度の兵力で私に勝てると思ったか。顔に泥を塗りおって……きゃつらめ、皆殺しにしてくれる!」
指揮官の男が立ち上がると慌ただしく部屋から出ていく。幕僚たちが慌ててその後を追う。
「何をしている、貴様も来い! そして幻術で敵を混乱させるのだ!」
扉の外から男の声が響く。
正直行きたくない。
だがここで彼らだけ戦ったとして、兵力差は倍もあるのだ、おそらく負けるだろう。その時にこの貴族サマが生き残っているかは知らないが、どちらにしても友軍を見捨てたという汚名を負わされることになる。
俺が汚名を負う分にはどうでもいい。
でも『あの人』の覇道の妨げになるのであれば、それは断固として避けるべきだ。
だから仕方なく遊撃隊も出撃した。
騎馬隊500、歩兵1500の小さな部隊だが、俺が率いればそれだけで強力な部隊になる。
果たして敵軍が見えてきた。
上陸時には2万はいたはずだが、今は報告にあったとおりこちらの7千強より少し多い1万前後か。
そうなると兵力の差はさほどない。
だから不審に思う。なぜ全軍で攻めてこないのか。
「伝令! 守備隊長殿より、敵を幻術で惑わせとのことです!」
しかし改めて聞くととんでもないな。
幻術を前提に立てられる作戦なんて聞いたことがないぞ。
「ま、言われたらやりますけど。『幻想軍行』、発動……」
さて、今回は何にしようか。
もう一度、戦車か。
いや、ここはもっと驚いてもらわないと困る。
ならば、草原において最強と言われたらしいこの部隊を使ってみようか。
「モンゴル帝国の騎馬隊、10万」
騎馬1に対し人1だから、戦車より数を多く出現させられる。
十分すぎるほどの兵力。それを見た時の敵の慌てようは想像に難くない。
だから手を振り上げ、
「行け!」
振り下ろす。
すると俺の手の先を境に、空間から騎馬が飛び出した。
一頭や二頭じゃない。10万の大軍勢。
毛皮の鎧を着て手に弓を持った恐ろしい形相の男たちが、次々とこの世界に顕現しては大地を疾走していく。
背後から見ても恐ろしい光景だ。これを真正面から受け止めるなんて、並の人間ならできるはずがない。
案の定、敵の1万は突如現れた騎馬隊を目にすると、我先に逃げ出す。
「敵は崩れたぞ、続けぇ!」
守備隊長の高らかな号令が聞こえる。それに続いて5千が飛び出す。
「俺たちも続くぞ」
こうなったら徹底的に叩いてやる。
そう思うと殺る気が溢れて来る。
死ぬのは嫌だ。
痛いのは嫌だ。
怖いのは嫌だ。
だから――代わりに死んでくれ!
逃げる敵の最後尾が見えた。味方は……遅い! 何をちんたらやってるんだ。
こうなったら俺たちだけの部隊でやるしかない。
いや、止まった?
1万の軍が止まって、顔をこちらに向け反転した。
何をしている。速く逃げろ。10万だぞ。騎馬隊だぞ。死にたくないだろ。痛いんだぞ。怖くないのかよ。
その時、馬に乗った1人の小柄な兵が前に出た。
いや、兵か?
鎧は着ていない。戦場に不釣り合いな薄いトップスにスカート姿。女だ。少女と言ってもいい年齢だ。
兜はかぶっていない。美しい。そう遠目にも分かるほどの美貌。
その少女が、シータの旗を持って前に出る。
10万の大軍の前に出る。
逃げろ。踏みつぶされるぞ。お前みたいな子供が前に出てどうするつもりだ。
俺のスキルは完璧だ。完璧に本物そっくりで、迫力もそのままだ。
なのに、何故あの少女は動かない!
「――――」
その少女が何かを掲げる。
旗を持っていない方の手。
銃?
違う、ハンドガンなんて存在しない。
あれは、弩か?
「一体そんなもので何を――」
だがその後の少女の行動に、放つ言葉に、俺は心臓を握られたような気分になった。
少女は撃った。
弩を。
それは一直線に飛び、そして『幻想軍行』の軍勢の中に吸い込まれていった。
当然だ。幻想である軍勢に矢は通じない。
だが、それが彼女の狙いだった。
10万の騎馬隊が少女を飲み込んだ。
もちろん実体のない幻影だ。少女に傷一つない。
「えっ!?」
途端、地面に放り出された。
何が、と思い背後を見ると、地面が一部段差になっていた。幅は1メートルほど、深さは50センチもない。もはや溝で落とし穴というにもしょぼすぎる仕掛けだが、左右に100メートルほど広がっている。
そこに馬が足を引っかけて俺は投げ出されたのだ。
あの少女の仕業だ。そう確信した。
もちろんすべての馬が引っかかったわけじゃない。勘の良い馬なら跳躍して飛び越えるだろう。
こんなのに引っかかって落馬した俺はアンラッキーだったということになる。
ただ少女が見たかったのはきっとそれじゃない。
10万もの騎馬隊が、その溝を超える時も一切の乱れなく移動するのを見て、確信を得たかったのではないか。
幻影に足はない。だから溝にも引っかからない。
「見たか! この軍勢は幻影だ! その後から実態を持った本命が来るぞ!」
少女が吠え、そして味方の陣へと下がっていく。
やられた。
これが彼女の狙い。
穴を掘って敵が幻想だと見破り、弩を撃ってそれを味方に知らしめ、そして自らが動かないことでそれを確信に変えた。
もちろんそれだけで終わるものではない。
「前列、しゃがめ! 鉄砲隊、放て!」
別の男の声。
鉄砲!? どこに!? 残った1万か! 鉄砲が来る! 逃げろ。だが馬が倒れて。走れ。逃げろ。
「総員、退却!」
だが俺の声は、轟音にかき消された。
数千丁にも及ぶ鉄砲の音は、雷が傍に落ちたほどの爆音を放つ。
もちろん音だけではない。
その後に来るのは死の選別。
アンラッキーな者はそれに当たり死ぬ。
ラッキーな者は外れて生きる。
俺は、ラッキーの側にいたらしい。
馬から落ちたアンラッキーが、俺の命を救っていた。
だが俺以外の者はアンラッキーだった。
部下が、見知った仲間たちが、赤い液体をまき散らして倒れていく。
それを悲しいとも痛ましいとも思うより、頭がガンガンと警鐘を鳴らす。
今すぐ逃げろ、と。
「退却!」
だからもう一度叫び、そして走り出す。
これは罠だ。
悪辣な罠。
幻影に怯えきった偽の逃亡を装い、調子に乗って追撃してきた俺たちを皆殺しにするための罠。
そういえば『あの人』から聞いた。
オムカとかいう属国が独立を果たしたこと。その陰に、1人のプレイヤーがいるらしいということ。そのオムカと戦った尾田張人というプレイヤーが惨敗を喫したということ。尾田とは直接会ったことはないが、ねじ曲がった性格と悪知恵は及ぶ者がないと『あの人』に絶賛されていた。
そのプレイヤーは10代前半の絶世の美女だという噂がある。
確か名前は――ジャンヌ。
先ほどの少女の顔を思い出す。
確かに美しい。
だが、この悪質さはなんだ。
人を騙すなんて……ひどい奴だ。許せない。
背中に衝撃。
何かが刺さった。
痛い。
怖い。
死にたくない。
だから走る。
全力で逃げる。
だが足が重い。
早く逃げないといけないのに。
足がうまく動いてくれない。
力が体から抜けていく。
いや、抜けていくのは力か、血か。
もう周りがどうなっているのかも分からない。
ただただ無我夢中で逃げた。
あるいは逃げたかった。そうなのかもしれない。
再び衝撃。
いや、倒れた。
空が見える。
蒼い。
こんな空、日本でもそう見たことがない。
ただ単に空を見上げたことがあまりなかったのかもしれない。
この蒼空を、『あの人』に感じたのはいつだったか。
あぁ、『あの人』にもう一度会いたいなぁ。
顔が見える。
知らない男だ。
血走った目。
知っている。
戦争をしてる人の目だ。
それが俺に向けられている。
それが何を意味するのか、もうよく分からない。
ただ1つだけは言える。
「だから戦争は嫌なんだ」
そして喉に何かが入って来た。
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