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第3章 帝都潜入作戦
第33話 帝都脱出
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時間との勝負だった。
里奈のことにショックを受けている場合じゃない。
病院、といっても個人経営の医者をたたき起こして、ルックの応急手当てをした。
それから街の各所で騒ぎが起きるのを待って、外に出た。
暴れ馬が各地で走り回る音がする。
夜道だから一般人の被害はそうないだろうけど、少し胸が痛んだ。
その騒ぎに紛れて、俺たちは街のはずれで合流した。
特に何の妨害もなく、マールたちも馬を連れてこれたらしいが、それでも3頭が精いっぱいというところだ。
とりあえず帝都から離れるのを優先したため、速度は落ちるが2人乗りで走った。
この中で一番馬術が上手いのはマールだったから、マールにルックを任せ、竜胆はクロエが乗せた。そして俺とイッガーがペアで帝都を後にする。
一応、背後を気にしながらの旅だったが、どうやら追手の気配はなさそうだ。
暴れ馬程度の混乱で追撃を諦めるとは思えないが……あるいは元々追うつもりがないのか。
そんなこんなで、月明かりと『古の魔導書』を頼りに南下。
陽が昇る頃にはタルフ関にたどり着いた……のだが。
「あれー、私が壊したところ修理されてます。どうしましょう、先輩ー」
竜胆、反省の色なし。
ともあれ困った。もしかしたら俺たちの顔を覚えている人間がいるかもしれないし、強行突破するには2人乗りは圧倒的に不利だ。
「いや、ちょっとおかしいですよ。あそこ。人だかりがありますけど、どんどん通って行ってます」
「ほんとだ。もしかして出るのはフリーなのか……」
「行きましょう、隊長殿! もしばれたらその時は……」
「はい! 正義です!」
「いや、頼むからこれ以上荒事はしないでくれ……」
と心配しながらも、特に何事もなく関所を抜けた。
それから数時間。
太陽が中天にさしかかったところで、さすがにそろそろ空腹と疲労と、ルックは熱もあり、近くの町に寄って休憩をとることにした。
追手が来ないことはほぼ確定しているし、関所からも離れたし、そこそこ大きな町だったから、ピンポイントで探されない限り脅威はないと判断したのだ。
ルックは医者にちゃんと見せて治療。
それ以外の皆はお風呂に入って食事をとって、そのまま1つの部屋で熟睡した。
とはいえ、俺は昨日途中まで寝てたし、あまり動いてもいないからそこまで眠くはない。
部屋を出てホテルのラウンジに出て、椅子に座りながら不寝番をしていた。ラウンジと言っても、もともとが小さなホテルだ。自分だけいれば見張りは十分だし、自分以外誰もいない。
それが命をかけて皆が助けに来てくれた、そのお返しでもあると思っている。
「あれ……隊長。寝てないんですか」
そうやって静かな夜の一時を過ごしていると、イッガーがやって来て言った。
「イッガー、もういいのか?」
「はぁ……自分、3時間は寝れば充分なんで」
なんて燃費がいいんだ。
そしてイッガーは俺の対面に座ると、小さくため息。
「ザインさんは、残念でした」
「あぁ……そうだな」
「でも、満足してたって。大切な人を守れたから。だから頑張ろうって、クロエさんが」
「その通りだな。あいつもたまにいいこと言う」
「たまに、ね」
そして小さく笑いあう。
「ミストさんは、大丈夫、でしょうか……」
あぁ、忘れてたわけじゃない……いや、忘れてた。
けどあまり不安な感じはしない。
「そうだな。何も言わず出てきちゃったからな……。ま、あいつならなんとかなるだろ」
「ですね」
今度はイッガーだけが小さく笑う。
しばらく、沈黙が降りた。
そして意を決したようにイッガーが再び口を開く。
「あの人は……プレイヤーですか。それも、お知り合い?」
あぁやっぱりそうなるか。
俺のあの様子。スキルのこと。
分かる人が見れば分かる。
「あ、いえ。言いたくないなら、いいです。前の世界の話なんて、したくない……でしょうし」
「いや、いいんだ。正直、誰かに聞いてほしいと思ってた。それはクロエたちのような、この世界の人じゃダメだし、ミストは面白がりそうだし、マツナガは論外だ。案外、お前が適任なのかもしれない」
「はぁ……っす」
それから俺は話をした。
元の世界での俺と彼女の関係。
それから戦場での出会い。
帝都での出会い。
そして、赤星煌夜から聞かされたことも含め。
「なんか……とんでもないことに、巻き込まれて……ません?」
「だよなぁ……この世界を滅ぼすとか、女神を殺すとか、神が降臨するとか。どんな夢想家なんだか」
「……案外、そういうのが一番純情だったり、するんですよ。オチ的には」
「あー、そういうパターンのもありか。いや、でもあれが純情ってのはないだろ」
「でも、これは難しいですね……その、部外者が言うのもなんですけど……その、彼女。きっと負い目感じてるかと」
「そう……だよなぁ」
人を殺してきた。
けど、それは俺も同じだ。
物理的でも直接的でもないけど、俺の言葉で、行動で、これまで数百、いやそれ以上の人間を殺してきた。
これ以上ないほど、俺の手は血で濡れているのだ。
だから里奈だけが負い目を感じる必要はない。
けど、彼女は優しいから。
それ以上の罪悪を感じてしまっているのではないか。そう思う。
「助けてあげたい、ですね。その、隊長のとか、関係なく。同じ、プレイヤー、として」
「あぁ……ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」
「……っす」
イッガーが照れたように笑う。
本当に感謝している。
この問題、俺だけで考えてたら、また考え込んで、頭がハツカネズミみたいにぐるぐる同じところを周回することになっていた。
話し合える人がいる。そう考えると、俺は幸せなのかもしれない。
里奈には、いたのだろうか。
こうやって、悩みを打ち明けられる誰かが。
「隊長も、少しだけ寝てください。あとは、自分、起きてるんで」
「ん……そうだな。少し、横になるわ。じゃあ、よろしく」
「はい、良い夢を」
それからきっかり3時間だけ眠り、起きた時には日が傾き始めていた。
てゆうか不快な夢を見た。
まさかのここであの女神かよ……。
いや、今は考えない。
とりあえず休憩を取ってすっきりした俺たちは、先に進むことにした。
ルックは安静の状態で馬車に乗せる。
それから約一週間かけて南下していく。
途中、ルックはなんとか回復し、馬にも乗れるようになったので速度を上げた。
そしてそろそろウォンリバーにさしかかろうとした頃、
「隊長ー、なんか前が騒がしいですよー」
復帰したルックが目を凝らして前方をにらむ。
「あれは……戦ってるっぽいなー」
「戦か!?」
こんなところで戦を始めるなんて、オムカ王国とエイン帝国しかない。
ならなぜ……いや、違う。そうだ。俺だ。
俺がウィットに北進をさせた。
王都から軍を率いてウォンリバーを渡ったなら、日程として大体合ってる計算になる。
「どうしますか、隊長殿? 近づくのは少し危険な気がしますが……」
クロエの言う通り、こちらは6人。
馬に乗っているとはいえ、軍馬じゃない以上、戦闘は無理だ。下手に近づいて邪魔になるだけならいい。命の危険にさらされる可能性は大いにある。
「少し遠回りで近づきつつ、陽が暮れて戦闘が中断されたら一気に本陣に駆けこむか」
とりあえずそうするしかなさそうだ。
――が、俺は事態を甘く見ていたのかもしれない。
「あー、隊長。9時の方向に騎馬隊。多分、敵ですー」
「なんだって!?」
確かに9時方向から近づく土煙が見えた。
迂回してオムカ軍の背後から攻撃しようとする別動隊にかち合ったのか。なんて運がない、というかこれくらい見抜けよ俺。帝都でなまったか?
なんて考えているうちに、敵の騎馬隊はこちらに向かってくる。
およそ1千騎。所属不明の俺たちを蹴散らしてそのまま味方の後ろを襲おうというのだろう。
戦うにしては戦力差がありすぎる。
逃げるにしては馬の差がありすぎる。
俺もオムカ軍も絶体絶命。
いや、違う。すぐに諦めてどうする。
「全速力でオムカの本陣に向かう! 敵の騎馬隊から逃げるぞ!」
だが間に合わないだろう。
次第にその距離が詰まってくる。
100メートル、70メートル、50メートル。
弓は打ってこないのが幸いだ。
いや、少人数だし追いつけるから、矢がもったいないと思ってのことだろう。
そして馬群が射程距離に入った。その時。
「隊長、10時方向! 騎馬隊です!」
そっちはオムカ軍とは少し離れた位置。
200騎ほどの小部隊だ。だがその部隊は颯爽と駆け、何の躊躇もなく後方の騎馬隊とぶつかった。
俺たちを追っていたため、他への注意が散漫になっていたのだろう。敵の騎馬隊は脆くも崩れ、それを縦横無尽に駆け巡るオムカ軍らしき騎馬隊が粉々に打ち砕いた。
100騎程度の犠牲を出しながら、敵騎兵はほうほうのていで逃げ去っていった。
なんにせよ助かった。
騎馬隊ってことはブリーダか。
見ればオムカ軍の旗を掲げ、こちらに向かってくる。
そして指揮していたのは意外な人物だった。
「あっ! 隊長! ご無事だったんですか!?」
ウィットだ。
よく見ればその他の連中も俺の部下だった。
「ウィットーーーー! いいとこ出てきてかっさらってくるなー!」
「むっ、クロエ。貴様もいたのか。ふん、小さすぎて気づかなかったぞ、胸が」
「こ、殺します! 隊長殿! この不埒者に、いいですよね!」
「いいわけないだろ」
はぁ……ったく。
相変わらずのやり取りに力が抜ける。
ただ、なんとなく戻ってきたって感じがする。
「はいはい、お前ら再会できて嬉しいのはいいけど、後にしろ。ウィット、とりあえず本陣に案内してくれ」
「はい! こちらです!」
こうして俺たちはウィットたちに守られ、オムカの本陣へと案内された。
それがエイン帝国とのこれまでにない大戦。その序章だった。
里奈のことにショックを受けている場合じゃない。
病院、といっても個人経営の医者をたたき起こして、ルックの応急手当てをした。
それから街の各所で騒ぎが起きるのを待って、外に出た。
暴れ馬が各地で走り回る音がする。
夜道だから一般人の被害はそうないだろうけど、少し胸が痛んだ。
その騒ぎに紛れて、俺たちは街のはずれで合流した。
特に何の妨害もなく、マールたちも馬を連れてこれたらしいが、それでも3頭が精いっぱいというところだ。
とりあえず帝都から離れるのを優先したため、速度は落ちるが2人乗りで走った。
この中で一番馬術が上手いのはマールだったから、マールにルックを任せ、竜胆はクロエが乗せた。そして俺とイッガーがペアで帝都を後にする。
一応、背後を気にしながらの旅だったが、どうやら追手の気配はなさそうだ。
暴れ馬程度の混乱で追撃を諦めるとは思えないが……あるいは元々追うつもりがないのか。
そんなこんなで、月明かりと『古の魔導書』を頼りに南下。
陽が昇る頃にはタルフ関にたどり着いた……のだが。
「あれー、私が壊したところ修理されてます。どうしましょう、先輩ー」
竜胆、反省の色なし。
ともあれ困った。もしかしたら俺たちの顔を覚えている人間がいるかもしれないし、強行突破するには2人乗りは圧倒的に不利だ。
「いや、ちょっとおかしいですよ。あそこ。人だかりがありますけど、どんどん通って行ってます」
「ほんとだ。もしかして出るのはフリーなのか……」
「行きましょう、隊長殿! もしばれたらその時は……」
「はい! 正義です!」
「いや、頼むからこれ以上荒事はしないでくれ……」
と心配しながらも、特に何事もなく関所を抜けた。
それから数時間。
太陽が中天にさしかかったところで、さすがにそろそろ空腹と疲労と、ルックは熱もあり、近くの町に寄って休憩をとることにした。
追手が来ないことはほぼ確定しているし、関所からも離れたし、そこそこ大きな町だったから、ピンポイントで探されない限り脅威はないと判断したのだ。
ルックは医者にちゃんと見せて治療。
それ以外の皆はお風呂に入って食事をとって、そのまま1つの部屋で熟睡した。
とはいえ、俺は昨日途中まで寝てたし、あまり動いてもいないからそこまで眠くはない。
部屋を出てホテルのラウンジに出て、椅子に座りながら不寝番をしていた。ラウンジと言っても、もともとが小さなホテルだ。自分だけいれば見張りは十分だし、自分以外誰もいない。
それが命をかけて皆が助けに来てくれた、そのお返しでもあると思っている。
「あれ……隊長。寝てないんですか」
そうやって静かな夜の一時を過ごしていると、イッガーがやって来て言った。
「イッガー、もういいのか?」
「はぁ……自分、3時間は寝れば充分なんで」
なんて燃費がいいんだ。
そしてイッガーは俺の対面に座ると、小さくため息。
「ザインさんは、残念でした」
「あぁ……そうだな」
「でも、満足してたって。大切な人を守れたから。だから頑張ろうって、クロエさんが」
「その通りだな。あいつもたまにいいこと言う」
「たまに、ね」
そして小さく笑いあう。
「ミストさんは、大丈夫、でしょうか……」
あぁ、忘れてたわけじゃない……いや、忘れてた。
けどあまり不安な感じはしない。
「そうだな。何も言わず出てきちゃったからな……。ま、あいつならなんとかなるだろ」
「ですね」
今度はイッガーだけが小さく笑う。
しばらく、沈黙が降りた。
そして意を決したようにイッガーが再び口を開く。
「あの人は……プレイヤーですか。それも、お知り合い?」
あぁやっぱりそうなるか。
俺のあの様子。スキルのこと。
分かる人が見れば分かる。
「あ、いえ。言いたくないなら、いいです。前の世界の話なんて、したくない……でしょうし」
「いや、いいんだ。正直、誰かに聞いてほしいと思ってた。それはクロエたちのような、この世界の人じゃダメだし、ミストは面白がりそうだし、マツナガは論外だ。案外、お前が適任なのかもしれない」
「はぁ……っす」
それから俺は話をした。
元の世界での俺と彼女の関係。
それから戦場での出会い。
帝都での出会い。
そして、赤星煌夜から聞かされたことも含め。
「なんか……とんでもないことに、巻き込まれて……ません?」
「だよなぁ……この世界を滅ぼすとか、女神を殺すとか、神が降臨するとか。どんな夢想家なんだか」
「……案外、そういうのが一番純情だったり、するんですよ。オチ的には」
「あー、そういうパターンのもありか。いや、でもあれが純情ってのはないだろ」
「でも、これは難しいですね……その、部外者が言うのもなんですけど……その、彼女。きっと負い目感じてるかと」
「そう……だよなぁ」
人を殺してきた。
けど、それは俺も同じだ。
物理的でも直接的でもないけど、俺の言葉で、行動で、これまで数百、いやそれ以上の人間を殺してきた。
これ以上ないほど、俺の手は血で濡れているのだ。
だから里奈だけが負い目を感じる必要はない。
けど、彼女は優しいから。
それ以上の罪悪を感じてしまっているのではないか。そう思う。
「助けてあげたい、ですね。その、隊長のとか、関係なく。同じ、プレイヤー、として」
「あぁ……ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」
「……っす」
イッガーが照れたように笑う。
本当に感謝している。
この問題、俺だけで考えてたら、また考え込んで、頭がハツカネズミみたいにぐるぐる同じところを周回することになっていた。
話し合える人がいる。そう考えると、俺は幸せなのかもしれない。
里奈には、いたのだろうか。
こうやって、悩みを打ち明けられる誰かが。
「隊長も、少しだけ寝てください。あとは、自分、起きてるんで」
「ん……そうだな。少し、横になるわ。じゃあ、よろしく」
「はい、良い夢を」
それからきっかり3時間だけ眠り、起きた時には日が傾き始めていた。
てゆうか不快な夢を見た。
まさかのここであの女神かよ……。
いや、今は考えない。
とりあえず休憩を取ってすっきりした俺たちは、先に進むことにした。
ルックは安静の状態で馬車に乗せる。
それから約一週間かけて南下していく。
途中、ルックはなんとか回復し、馬にも乗れるようになったので速度を上げた。
そしてそろそろウォンリバーにさしかかろうとした頃、
「隊長ー、なんか前が騒がしいですよー」
復帰したルックが目を凝らして前方をにらむ。
「あれは……戦ってるっぽいなー」
「戦か!?」
こんなところで戦を始めるなんて、オムカ王国とエイン帝国しかない。
ならなぜ……いや、違う。そうだ。俺だ。
俺がウィットに北進をさせた。
王都から軍を率いてウォンリバーを渡ったなら、日程として大体合ってる計算になる。
「どうしますか、隊長殿? 近づくのは少し危険な気がしますが……」
クロエの言う通り、こちらは6人。
馬に乗っているとはいえ、軍馬じゃない以上、戦闘は無理だ。下手に近づいて邪魔になるだけならいい。命の危険にさらされる可能性は大いにある。
「少し遠回りで近づきつつ、陽が暮れて戦闘が中断されたら一気に本陣に駆けこむか」
とりあえずそうするしかなさそうだ。
――が、俺は事態を甘く見ていたのかもしれない。
「あー、隊長。9時の方向に騎馬隊。多分、敵ですー」
「なんだって!?」
確かに9時方向から近づく土煙が見えた。
迂回してオムカ軍の背後から攻撃しようとする別動隊にかち合ったのか。なんて運がない、というかこれくらい見抜けよ俺。帝都でなまったか?
なんて考えているうちに、敵の騎馬隊はこちらに向かってくる。
およそ1千騎。所属不明の俺たちを蹴散らしてそのまま味方の後ろを襲おうというのだろう。
戦うにしては戦力差がありすぎる。
逃げるにしては馬の差がありすぎる。
俺もオムカ軍も絶体絶命。
いや、違う。すぐに諦めてどうする。
「全速力でオムカの本陣に向かう! 敵の騎馬隊から逃げるぞ!」
だが間に合わないだろう。
次第にその距離が詰まってくる。
100メートル、70メートル、50メートル。
弓は打ってこないのが幸いだ。
いや、少人数だし追いつけるから、矢がもったいないと思ってのことだろう。
そして馬群が射程距離に入った。その時。
「隊長、10時方向! 騎馬隊です!」
そっちはオムカ軍とは少し離れた位置。
200騎ほどの小部隊だ。だがその部隊は颯爽と駆け、何の躊躇もなく後方の騎馬隊とぶつかった。
俺たちを追っていたため、他への注意が散漫になっていたのだろう。敵の騎馬隊は脆くも崩れ、それを縦横無尽に駆け巡るオムカ軍らしき騎馬隊が粉々に打ち砕いた。
100騎程度の犠牲を出しながら、敵騎兵はほうほうのていで逃げ去っていった。
なんにせよ助かった。
騎馬隊ってことはブリーダか。
見ればオムカ軍の旗を掲げ、こちらに向かってくる。
そして指揮していたのは意外な人物だった。
「あっ! 隊長! ご無事だったんですか!?」
ウィットだ。
よく見ればその他の連中も俺の部下だった。
「ウィットーーーー! いいとこ出てきてかっさらってくるなー!」
「むっ、クロエ。貴様もいたのか。ふん、小さすぎて気づかなかったぞ、胸が」
「こ、殺します! 隊長殿! この不埒者に、いいですよね!」
「いいわけないだろ」
はぁ……ったく。
相変わらずのやり取りに力が抜ける。
ただ、なんとなく戻ってきたって感じがする。
「はいはい、お前ら再会できて嬉しいのはいいけど、後にしろ。ウィット、とりあえず本陣に案内してくれ」
「はい! こちらです!」
こうして俺たちはウィットたちに守られ、オムカの本陣へと案内された。
それがエイン帝国とのこれまでにない大戦。その序章だった。
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そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
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