知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

閑話23 長浜杏(エイン帝国大将軍)

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「お、戻ってきた。遅いよー、煌夜ちん」

 教会の一室。
 教皇様が使う執務室でお菓子パーティをしていたら、ようやくお目当ての人物が戻ってきた。

 赤星煌夜だ。
 ただ、少しその格好に驚いた。

「ひゃー、ボロボロじゃん」

 いつも着ている黒づくめの服はところどころが破れ、特に左肩ところがちぎれて、肩から腕が丸出しだ。
 普段は見えないけど、意外と引き締まったいい筋肉してる。
 もしかして煌夜ちん、超強い?

「ええ、少しありまして。……それで、なんでしょうか、杏さん」

「いや、噂のジャンヌ・ダルクというのがどういう人物か見ようと思ったんだけど……まさかあの時の子だったとはね」

「知っていたのですか?」

「街でちょっと、ね」

 街のお菓子屋さんで因縁つけられた相手。
 というか因縁がついた相手。
 運命の糸ってあるんだなぁ、とか言っちゃって。

「そうですか……いや、逃げられてしまいましたよ。私の仲間になってくれないかとお願いしたんですが」

「お願いであの世界に閉じ込めるかなぁ……煌夜ちんはたまに常識外れなことするからね」

「私が、ですか?」

「あはっ、本人は自覚なし。てか常識人は女神を殺そうとか言わないって」

「はぁ……」

 あー、これ絶対理解してない顔だ。
 まぁいいや。僕様は今が楽しければそれでいいのだから。

「それと煌夜ちん。一応聞いておくけど」

「ええ、なんでしょう?」

「それ、生きてる?」

 煌夜ちんの足元に転がっているのは、ぴくりとも動かない人間と思わしきものが2つ。
 たぶん里奈と、あとキッドとかいうプレイヤー。

「はい。当然です。私は神に仕える者。故に殺人などもってのほかです」

「それって遠回しに僕様たち軍人をディスってる?」

「いえ、とんでもない。貴女たちのおかげで我が帝国は大陸一の勢力を誇っているのですから」

「はいはい。てか話変わってるけど、里奈どうしたの?」

「ええ。暴れてしまったので、少しお仕置きです」

「少し、ねぇ……」

 それにしては結構、酷い感じはするけど。
 ちょっとイラっとするよな。里奈とは友達になったばかりなのに。

 まぁ、彼女の能力については張人きゅんから聞いていたから、ちょっとやそっとじゃ死なないだろうけど。

「仕方ないのですよ。彼女のスキルは油断するとこちらが喰われます。私も久しぶりです。王国マルクトの力を解放したのは。それがなければ、私は彼女と一緒に黎明れあのスキルで消滅していたでしょう」

「それは聞いてはいたからわかるけど。これはねー、普通にひくわ。女の子なんだからさ。もうちょっと優しくていうか」

「私はフェミニストなんですよ。ですから男女の主権は平等だと信じています。これはその表れですよ」

 男女が平等なら、女性に手加減もしないってことかな。詭弁だよね。

「……ま、いーけどさ」

 ただやっぱり、どうもしっくりこない。
 こんな男が宗教界のトップに立っているというのだから。
 あ、いや。うちの上司も十分にどこかネジがぶっ飛んでいるわけだけど。

「それで? 私のところに来たのはそんな雑談のためではないでしょう?」

「ああ、そうそう。オムカ軍が怪しい動きしてるって連絡。僕様も7万を率いてすぐに出る。北から連れてきた連中も、そろそろ戦に出さないとね。けどその前に敵の顔を見ておこうと思ってさ」

「そうですか。堂島元帥はどうしたのですか?」

「あぁ、ミカンちゃん? あはは、実はねー。ちょっとジェラってる感じで。僕様が先にいただいちゃうのが気に食わないんだろうね。だから少し情緒不安定でそれを発散するために旗下5千を率いて出て行っちゃったよ。きっと東か西、どっちかの戦線に憂さ晴らしにいったんじゃないかな?」

「まったく要領を得ないのですが、そうですか……。しかし、杏さんも出てしまうと帝都が空になってしまうのでは?」

「大丈夫だって。北はこないだボコったから問題ないし、反乱勢力ももういないし、それに張人きゅんを置いてくから」

「なるほど。ついに本気になるわけですね、帝国軍の最強格のお2人が」

「ま、そういうことになるかな。ちなみに一応聞いておくけど」

「なんでしょう?」

「勝ったら、あのジャンヌ・ダルクって、もらってもいい?」

「ええ、勝てたなら」

「その言葉、忘れるなよー?」

 よし、これでまたモチベーション上がった。
 さてさて、それではいっちょ戦争しますか!

 教会から外へ出て、そのまま馬を郊外まで走らせる。
 そこにはすでに7万の軍が揃っていた。あとは命令するだけで破壊をまき散らす、帝国最強の軍。

 元帥の軍とどちらが強いか。
 興味はあるけどどうでもいい。戦うことはあり得ない以上、考えても意味はないのだ。
 だから僕様の部隊が最強。そう思っていても問題はないだろう!

「オムカの逆賊がヨジョー地方を奪い、そしてさらに帝都へ迫ろうとしている。この国難に対し我らは迎撃に出る! 祖国のため、家族のため、今こそオムカが独立したことを後悔させてやろう!」

 7万ともすればかなりの数だ。
 それでも特に意識するものはない。
 こいつらは僕様の理想を実現するための道具。
 道具に見つめられて、怖いと思うなんて馬鹿げているだろう?

 だから率いることができる。
 死地へ送ることができる。

 もちろん、僕様が勝つことは決まっているけど。

「全軍、進撃!」
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