257 / 627
第3章 帝都潜入作戦
第39話 反エイン帝国同盟軍
しおりを挟む
敵が急に引き上げていった。
正直、意味は解らなかったけどチャンスだった。
それで混乱した本陣をまとめあげると、全軍を南に3キロほど下げた。昨日までいた砦も放棄しての南下だ。
そこでようやく陣を張って休憩させ、負傷者も手当てを行った。
砦に残った竜胆たちも呼び寄せる。
相手は追ってこなかった。
だから砦に一度寄っても良かったが、それは例の仕掛けに気づかれる可能性を排除したのもあるし、何よりそれで気持ちを切らせたくなかった。
おそらくこの戦いはあと1日か2日で決着がつく。
そして7割ほどが俺たちの敗北という結末になる。
だからここで少しでも気を緩めれば、その7割が9割、あるいは10割になる。そんな気がしたのだ。
張られた陣幕で、指揮官を集めて軍議に入る。
犠牲の報告からだ。歩兵は2千ほど、騎馬隊は少なく200。
対して相手は4~5千ほどは倒した計算になるが、それでは駄目なのだ。
倍の犠牲でも、先に消滅するのはこちら。だから何か手を打たなければ、こちらが出血死する未来からは逃れられない。
「相手が退いたのは、後方で異変が起きたからっす」
ブリーダの報告によると、敵の歩兵の背後から何者かが襲撃したらしい。
それで挟撃になった敵の歩兵は一時劣勢になり、敵は撤退した。少しでも例外要素が出たら兵を退く。憎らしいほど余裕で冷静な用兵だった。
「誰か分からないけど、とにかく助かった」
正直、あの騎馬隊の突撃はきつかった。
ブリーダに1万がついて、ウィットに3千が行った以上、おそらくあれは敵の総大将のものだろう。まさか総大将が先頭に立って突撃してくるとは思わず、まさにその心理を突かれた形だった。
ちなみにその時に獅子奮迅(ししふんじん)の働きをしたクロエだが、俺が傷の手当てをして感謝の気持ちにハグして軽く肩を叩いてやると、のぼせたような表情で倒れてしまった。なんだったんだ……。
「砦は放棄してよかったっすかね」
「あぁ、とりあえずは」
「じゃあ、相手がこっちに来た時が決戦っすね」
そう。だがこのままでは勝てない。
一応、相手に勝つ方策は考えついた。
だがかなり賭けの部分があるし、相手次第というところもある。
さらにここからさらに南下し、ウォンリバーの川岸まで戻らないとこの策は使えない。
負傷兵がいて相手も近くに来ている以上、今後ろを見せて逃げる事は追撃を受ける羽目になり、そのまま川岸に追い詰められたら川を渡るまでもなく殲滅(せんめつ)される。
だからせめてもう一度、ぶつかって隙を見て下がるしかないのだが、それはかなり危険な賭けになる。
それをどうするか。それが決まらないので、苛立ちに似た思いが沸き起こるが、それをブリーダたちに言っても仕方ない。
その時、外が騒がしくなった。
「外に軍勢! 2千ほど!」
兵が陣幕に飛び込んできた。
俺とブリーダは外に飛び出す。ハワードはどっしりと動かない。
ハワードまで浮ついて動いたら兵が不安になる。そう思ってのことだろう。
「隊長殿!」
途中でクロエも合流した。
そして陣から外を見る。確かに軍勢が移動しているようで、数はおよそ2千ほどか。
近づいてくるにつれ、それが異様な集団であることに気づいた。どれもがひどく汚れて武器もまちまち。騎馬は10頭ほどいるくらいで、先頭を進んでいる。
その先頭の男が手をあげると、後ろをついてくる歩兵は止まった。
そして手作りであろう白旗を掲げると、10騎で近づいてきた。
「我らは反エイン帝国同盟軍『賢者の誇り』! オムカ王国の将軍に会わせてもらおう!」
賢者ぁ?
そんな身なりには見えないけど……。
しかし、おそらく彼らが帝国軍の後背(こうはい)を襲った連中だろう。
一応命の恩人になるのだから、話くらいは聞いても罰は当たるまい。
「通してあげてやって」
俺は兵に伝えると、そのまま陣幕に戻った。
「なんじゃった?」
「反エイン帝国とか言ってたけど。さっきの戦いで後ろを襲った奴らだと思う。盗賊みたいなやつらだ」
「ふむ……目的はなんじゃろか」
「おそらく金品じゃないか? 助けたから金を寄越せと」
「それが一番あり得そうじゃなぁ」
「同盟軍の代表をお連れしました!」
「通してくれぃ」
ハワードが重々しく言う。
すると陣幕に1人の男が入ってきた。
ガタイは良い。
それ以上に髪も髭もぼさぼさで、野性味あふれるというか……まぁ山賊そのものという格好だ。
それ以上に陣幕内にむっとした匂いが溢れた。あまり風呂に入っていないのだろうが……これは辛い。
「目通りもらって感謝するぜ。あんたがハワードっていう総司令だな」
恐縮した様子もなく、げひた笑みを浮かべて男がハワードの爺さんに対する。
「そうじゃが、まずは名乗られい」
「へっ、俺様はゴードン。エイン帝国に風穴をあける金城鉄壁(きんじょうてっぺき)の大斧使い、疾風のゴードンとは俺のことよ!」
風穴あけるのに鉄壁で結局斧で疾風なのかよ。さてはこいつ馬鹿だな。
「そうか、ゴードン。では何の用かのぅ」
「へっ、俺様を呼ぶときは閃光のゴードンと呼びな」
疾風どこいった。
ハワードの爺さんもよくにこやかに応対できるな。
俺ならキレてツッコんでた。
「そうか、閃光のゴードンとやら。どうしたのか?」
「へっ、どうしたかだって? 俺たちが帝国の奴らの背後を襲った。それの謝礼をもらいにきたぜ。そうだな、まずは2千万コル。それから毎月500万コルを送ってもらおうか」
あからさまにゆすってきたな。
もちろんそんな金はない。どうする爺さん!
「ほぅ、なるほど。そんなことがあったのか」
「あぁ? あんた見てなかったのかよ。あれほどの大軍に押しまくられてたってのに。俺たちがいなかったら今頃全員、屍を野原にさらしてたところだぜ?」
「ふむ。そうかのぅ。わしらは互角に戦っておったから、お主らの助けがなくともいずれは勝てたぞ?」
「てめぇ、喧嘩売ってんだな? 俺たちがいなくてあいつらに勝てたってのかよ!?」
「おお、勝てた」
おいおい、爺さん。
なに煽(あお)ってるんだよ。こいつらのおかげで助かったのは確かだろうに。気に入らないならさっさと金を払って追い払えばいい。
「て、てめぇ……こうやって腰を低くして訪ねてやったってのに……この天雷(てんらい)のゴードンを怒らせようてんだな? せっかく、エイン帝国をぶっつぶせるチャンスだと思ったのによぉ」
「ほぅ、お主らは帝国を潰したいのか?」
「ったりめぇだ! 奴らはなぁ、この数年で年貢を5割上げやがった。これまでもなんとかやりくりしてたのに、いきなりそんな税払えるわけがねぇ! だがそれで逃げだせば討伐軍を仕向けられて皆殺しにされる。これも国を守るためなら歯を食いしばっても耐えるが、あの馬鹿皇帝に支払ってると思うともう我慢できねぇ。だから俺たちは立ち上がった! 帝国を打倒し、俺たちの支配を確立すると!」
「なるほどのぅ」
「だからオムカ軍が北上してきた時には、ついに俺たちの時代が来たと思った。なのにヨジョー地方で止まりやがって。そんでようやく河を渡ったと思ったら、あんな奴に苦戦しやがって……。どうしてくれんだ、俺たちの気持ちをよぉ!」
んん?
今のこいつの言い方。すんごい回りくどい言い方してるけど、実は俺たちと一緒に戦いたいってことか?
なにこのツンデレ。
「つかてめぇ気に入らねぇ。なんだ、この陣は。こんな女子供を入れて……勝つ気あんのか!?」
「それは当然じゃ。こやつらはわしの愛人――」
「おい!」
さすがに殴る場面じゃないから手は出さないけど、厳しく言わないとすぐ調子に乗る。
「っとと、怖いやつじゃ。そう優秀な部下じゃよ」
「あぁん? 何が優秀だ。こんなやつら、屍山血河(しざんけつが)のゴードンと言われた俺様が本気だしゃ、2秒で……」
そこでゴードンが俺たちに視線を向けた。
あれ? こいつ……改めてみるとどこかで見たことあるような……しかも最近。
「ああーーー! 隊長殿、こいつ。あれです! 私たちを襲った!」
クロエが叫ぶ。
あぁ、どこかで見たことがあると思えば、竜胆と出会った時に襲ってきた盗賊か。
「ま、ままままさかてめぇ、いや、貴女様は……」
ゴードンの全身が震え始めた。言葉遣いも変わってる。
「ほぅ、お主ら知り合いか」
「いえ、正義(ジャスティス)を執行した悪党です! リンドーがいたらきっとそう言います!」
「あ、あの娘まで……!?」
青ざめた顔に汗を浮かべ、足が小鹿のようにガクガク震え出した。
なんかひどいトラウマになってしまったようだ。自業自得とはいえ、哀れだ。
「なるほど。しがない盗賊か」
「ち、ちげぇ……違う、んだ、です! 俺たちは帝国の支配に我慢ができなくなった。けど旗揚げしても潰されるだけだ。あのドージマとかいう元帥。マジで半端ねぇ。俺たちを蟻でも潰すように、容赦なく殺す。だからせめて、奴らの手が届かない位置で戦うしかなかった。それに仲間を食わさなくちゃいけねぇ。だから帝都に向かう商人を襲った。それで討伐軍が来ると逃げた! 俺たちだけじゃねぇ。そんなことをやってる連中が帝都の外にはたくさんいんだよ」
2千もの盗賊がいれば討伐の対象にもなるし、食わせていくことも大変だろうと思ったが、こいつらは別々の小さな盗賊の連合体ということか。
「俺たちは数年前まで剣も握ったことのねぇ、ただの素人だ。それでも帝国と戦いたかった。理不尽と戦いたかったんだよ、悪ぃかよ!」
ゴードンはいつの間にか滂沱(ぼうだ)の涙を流しながら力説する。
その純情な想いに、俺もどこか胸を突かれたものがあった。
1年前。独立を叫んだジルやサカキといった面子とこいつらは同じだ。
ただ違いは正規の軍人かそうでないか、戦い方を知っていたかいないかの差だけ。
ふとハワードの視線を感じた。
あとはお主がやれ、とでも言いたげな視線だ。
ったく、しょうがねぇなぁ。
「戦いたいのか」
「あんたは……」
「俺はジャンヌ・ダルク。この軍の軍師だ」
「あんたが……いや、貴女が、あの……」
「お前の想いは分かった。ならこっちもしっかり答えないといけない。その上で答えてほしい。俺たちと共に戦えるのかどうか」
「戦う! あんたらなら、あのオムカを独立に導いた貴女なら、何がなんでも戦ってやる!」
「焦るな、聞いてくれ。いいか。俺たちは勝てないかもしれない」
「な……」
「さっき、お前は言ったよな。お前たちが介入しなかったら俺たちは負けてたって。それは真実じゃないけど、嘘でもない。負ける可能性は大いにあった。だから助かった。ありがとう」
「そ、そんな……いや、俺は……」
「一旦、膠着(こうちゃく)に持ち込んだものの、まだ兵力差はある。だから最悪の場合、俺たちは対岸へ逃げる。けどお前らはこっちに残ってくれ」
「そんな!? 俺たちを見捨てるってのか!?」
「だから聞けって。俺たちは対岸へ渡る。けど撤退はしない。河を挟んでにらみ合ってるところに、お前らがこっち側で動くんだ。別に直接ぶつかる必要はない。夜襲の真似をしたり、補給物資を襲ったりすればいい。そういうの、得意なんだろ。盗賊なんだから」
あるいは意表を突いて連環馬(れんかんば)を使うのもいいかもしれない。
「は……はぁ……」
「そうしたら帝国軍はお前らを討伐しようとする。そうしたら逃げろ。散り散りになってもいい。とにかく逃げろ。たしかここら辺は縄張りって言ったよな。なら逃げ場所なんていくらでもあるだろ?」
「あ、当り前よ! 俺は仲間を死なせないために、帝国軍が来ても逃げ込める場所はいくつか作った。逃げのゴードンと呼ばれた俺だからな。お、臆病だと思うなら、笑えよ」
「そんなことはない。お前は仲間を死なせないために必死に努力したんだ。だから笑うなんてとんでもない。そしてその努力を、俺たちに見せてくれ」
「……お、おうよ! ここら辺は俺たちの庭だ。絶対帝国軍の奴らに捕まってたまるか!」
「ああ、その意気だ。その間に俺たちは河を渡って帝国軍に仕掛ける。そしてこっちに向かってきたらまた河を渡り、今度はお前らが帝国の後ろに襲いかかる。それを交互にやることで、敵を被害を与えつつ疲弊(ひへい)させて撤退させる。それが勝つための道だ」
「お、おおおお! できる。それなら俺たちにも戦える!」
ゴードンが吼えるように歓喜の声をあげる。
その熱に浮かされたのか、クロエとブリーダも唸(うな)っている。
ハワードは腕を組んだまま何も言わない。
一応、文句はないといったところか。
ほぼアドリブで考えたものの、この戦い方は悪くないと思う。
賭けの策よりは充分実用的で勝率も高い。
ゴードンを見て思いついたのは歴史上の1人の人物だ。
彭越(ほうえつ)という男がいた。
楚漢(そかん)戦争において、劉邦(りゅうほう)の側に立ち、項羽(こうう)の背後を荒らしまわった男だ。
その実態はゲリラ戦術を得意とした元盗賊。直接項羽と戦ったことはほとんどないが、それでも項羽の本拠地を荒らしたり、補給を断ったりした功績を認められ王にまで登った人物である。
ゴードンはその彭越になってほしいと思っている。
「というわけで爺さん、カネ」
「遠慮ないのぅ……ほれ、ここに金(きん)がある。200万コルにはなるじゃろ。それでしばらく耐えよ。お主らの働きに応じて報酬を出す。今はそれでいいかの?」
ハワードの爺さんは、1つの小さな包みを取り出す。
どしりと重そうだ。
「おおよ! いや、すまなかった……でした。あんたらが、あまりに……その」
「不甲斐なかったかの?」
「そ、それは……はい」
「正直な奴じゃのぅ。だが嫌いではない。うちの軍師はこんななりじゃが、えげつない策を立てるからの。期待しておれ」
「隊長殿の策はえげつないんじゃなくて、悪質なんです!」
「え、非人道的なんじゃないっすか?」
お前ら、流行ってるのか……それ。
「で、でもあいつら、あの砦に籠るんじゃないのか……ですか?」
「あぁ、それなら問題ない。一応手は打ったから、帝国軍が砦に籠ることはないよ」
「はぁ……」
ゴードンが要領を得ない顔をしているが……さて、あっちはどうなったかな。
「とりあえずこの戦が終わるまではこっちに付き合ってくれ。それから後は……まぁ、その時に考えよう」
こうして俺たちオムカ軍は、帝国領土の盗賊衆2千を組み込むことになった。
正直、意味は解らなかったけどチャンスだった。
それで混乱した本陣をまとめあげると、全軍を南に3キロほど下げた。昨日までいた砦も放棄しての南下だ。
そこでようやく陣を張って休憩させ、負傷者も手当てを行った。
砦に残った竜胆たちも呼び寄せる。
相手は追ってこなかった。
だから砦に一度寄っても良かったが、それは例の仕掛けに気づかれる可能性を排除したのもあるし、何よりそれで気持ちを切らせたくなかった。
おそらくこの戦いはあと1日か2日で決着がつく。
そして7割ほどが俺たちの敗北という結末になる。
だからここで少しでも気を緩めれば、その7割が9割、あるいは10割になる。そんな気がしたのだ。
張られた陣幕で、指揮官を集めて軍議に入る。
犠牲の報告からだ。歩兵は2千ほど、騎馬隊は少なく200。
対して相手は4~5千ほどは倒した計算になるが、それでは駄目なのだ。
倍の犠牲でも、先に消滅するのはこちら。だから何か手を打たなければ、こちらが出血死する未来からは逃れられない。
「相手が退いたのは、後方で異変が起きたからっす」
ブリーダの報告によると、敵の歩兵の背後から何者かが襲撃したらしい。
それで挟撃になった敵の歩兵は一時劣勢になり、敵は撤退した。少しでも例外要素が出たら兵を退く。憎らしいほど余裕で冷静な用兵だった。
「誰か分からないけど、とにかく助かった」
正直、あの騎馬隊の突撃はきつかった。
ブリーダに1万がついて、ウィットに3千が行った以上、おそらくあれは敵の総大将のものだろう。まさか総大将が先頭に立って突撃してくるとは思わず、まさにその心理を突かれた形だった。
ちなみにその時に獅子奮迅(ししふんじん)の働きをしたクロエだが、俺が傷の手当てをして感謝の気持ちにハグして軽く肩を叩いてやると、のぼせたような表情で倒れてしまった。なんだったんだ……。
「砦は放棄してよかったっすかね」
「あぁ、とりあえずは」
「じゃあ、相手がこっちに来た時が決戦っすね」
そう。だがこのままでは勝てない。
一応、相手に勝つ方策は考えついた。
だがかなり賭けの部分があるし、相手次第というところもある。
さらにここからさらに南下し、ウォンリバーの川岸まで戻らないとこの策は使えない。
負傷兵がいて相手も近くに来ている以上、今後ろを見せて逃げる事は追撃を受ける羽目になり、そのまま川岸に追い詰められたら川を渡るまでもなく殲滅(せんめつ)される。
だからせめてもう一度、ぶつかって隙を見て下がるしかないのだが、それはかなり危険な賭けになる。
それをどうするか。それが決まらないので、苛立ちに似た思いが沸き起こるが、それをブリーダたちに言っても仕方ない。
その時、外が騒がしくなった。
「外に軍勢! 2千ほど!」
兵が陣幕に飛び込んできた。
俺とブリーダは外に飛び出す。ハワードはどっしりと動かない。
ハワードまで浮ついて動いたら兵が不安になる。そう思ってのことだろう。
「隊長殿!」
途中でクロエも合流した。
そして陣から外を見る。確かに軍勢が移動しているようで、数はおよそ2千ほどか。
近づいてくるにつれ、それが異様な集団であることに気づいた。どれもがひどく汚れて武器もまちまち。騎馬は10頭ほどいるくらいで、先頭を進んでいる。
その先頭の男が手をあげると、後ろをついてくる歩兵は止まった。
そして手作りであろう白旗を掲げると、10騎で近づいてきた。
「我らは反エイン帝国同盟軍『賢者の誇り』! オムカ王国の将軍に会わせてもらおう!」
賢者ぁ?
そんな身なりには見えないけど……。
しかし、おそらく彼らが帝国軍の後背(こうはい)を襲った連中だろう。
一応命の恩人になるのだから、話くらいは聞いても罰は当たるまい。
「通してあげてやって」
俺は兵に伝えると、そのまま陣幕に戻った。
「なんじゃった?」
「反エイン帝国とか言ってたけど。さっきの戦いで後ろを襲った奴らだと思う。盗賊みたいなやつらだ」
「ふむ……目的はなんじゃろか」
「おそらく金品じゃないか? 助けたから金を寄越せと」
「それが一番あり得そうじゃなぁ」
「同盟軍の代表をお連れしました!」
「通してくれぃ」
ハワードが重々しく言う。
すると陣幕に1人の男が入ってきた。
ガタイは良い。
それ以上に髪も髭もぼさぼさで、野性味あふれるというか……まぁ山賊そのものという格好だ。
それ以上に陣幕内にむっとした匂いが溢れた。あまり風呂に入っていないのだろうが……これは辛い。
「目通りもらって感謝するぜ。あんたがハワードっていう総司令だな」
恐縮した様子もなく、げひた笑みを浮かべて男がハワードの爺さんに対する。
「そうじゃが、まずは名乗られい」
「へっ、俺様はゴードン。エイン帝国に風穴をあける金城鉄壁(きんじょうてっぺき)の大斧使い、疾風のゴードンとは俺のことよ!」
風穴あけるのに鉄壁で結局斧で疾風なのかよ。さてはこいつ馬鹿だな。
「そうか、ゴードン。では何の用かのぅ」
「へっ、俺様を呼ぶときは閃光のゴードンと呼びな」
疾風どこいった。
ハワードの爺さんもよくにこやかに応対できるな。
俺ならキレてツッコんでた。
「そうか、閃光のゴードンとやら。どうしたのか?」
「へっ、どうしたかだって? 俺たちが帝国の奴らの背後を襲った。それの謝礼をもらいにきたぜ。そうだな、まずは2千万コル。それから毎月500万コルを送ってもらおうか」
あからさまにゆすってきたな。
もちろんそんな金はない。どうする爺さん!
「ほぅ、なるほど。そんなことがあったのか」
「あぁ? あんた見てなかったのかよ。あれほどの大軍に押しまくられてたってのに。俺たちがいなかったら今頃全員、屍を野原にさらしてたところだぜ?」
「ふむ。そうかのぅ。わしらは互角に戦っておったから、お主らの助けがなくともいずれは勝てたぞ?」
「てめぇ、喧嘩売ってんだな? 俺たちがいなくてあいつらに勝てたってのかよ!?」
「おお、勝てた」
おいおい、爺さん。
なに煽(あお)ってるんだよ。こいつらのおかげで助かったのは確かだろうに。気に入らないならさっさと金を払って追い払えばいい。
「て、てめぇ……こうやって腰を低くして訪ねてやったってのに……この天雷(てんらい)のゴードンを怒らせようてんだな? せっかく、エイン帝国をぶっつぶせるチャンスだと思ったのによぉ」
「ほぅ、お主らは帝国を潰したいのか?」
「ったりめぇだ! 奴らはなぁ、この数年で年貢を5割上げやがった。これまでもなんとかやりくりしてたのに、いきなりそんな税払えるわけがねぇ! だがそれで逃げだせば討伐軍を仕向けられて皆殺しにされる。これも国を守るためなら歯を食いしばっても耐えるが、あの馬鹿皇帝に支払ってると思うともう我慢できねぇ。だから俺たちは立ち上がった! 帝国を打倒し、俺たちの支配を確立すると!」
「なるほどのぅ」
「だからオムカ軍が北上してきた時には、ついに俺たちの時代が来たと思った。なのにヨジョー地方で止まりやがって。そんでようやく河を渡ったと思ったら、あんな奴に苦戦しやがって……。どうしてくれんだ、俺たちの気持ちをよぉ!」
んん?
今のこいつの言い方。すんごい回りくどい言い方してるけど、実は俺たちと一緒に戦いたいってことか?
なにこのツンデレ。
「つかてめぇ気に入らねぇ。なんだ、この陣は。こんな女子供を入れて……勝つ気あんのか!?」
「それは当然じゃ。こやつらはわしの愛人――」
「おい!」
さすがに殴る場面じゃないから手は出さないけど、厳しく言わないとすぐ調子に乗る。
「っとと、怖いやつじゃ。そう優秀な部下じゃよ」
「あぁん? 何が優秀だ。こんなやつら、屍山血河(しざんけつが)のゴードンと言われた俺様が本気だしゃ、2秒で……」
そこでゴードンが俺たちに視線を向けた。
あれ? こいつ……改めてみるとどこかで見たことあるような……しかも最近。
「ああーーー! 隊長殿、こいつ。あれです! 私たちを襲った!」
クロエが叫ぶ。
あぁ、どこかで見たことがあると思えば、竜胆と出会った時に襲ってきた盗賊か。
「ま、ままままさかてめぇ、いや、貴女様は……」
ゴードンの全身が震え始めた。言葉遣いも変わってる。
「ほぅ、お主ら知り合いか」
「いえ、正義(ジャスティス)を執行した悪党です! リンドーがいたらきっとそう言います!」
「あ、あの娘まで……!?」
青ざめた顔に汗を浮かべ、足が小鹿のようにガクガク震え出した。
なんかひどいトラウマになってしまったようだ。自業自得とはいえ、哀れだ。
「なるほど。しがない盗賊か」
「ち、ちげぇ……違う、んだ、です! 俺たちは帝国の支配に我慢ができなくなった。けど旗揚げしても潰されるだけだ。あのドージマとかいう元帥。マジで半端ねぇ。俺たちを蟻でも潰すように、容赦なく殺す。だからせめて、奴らの手が届かない位置で戦うしかなかった。それに仲間を食わさなくちゃいけねぇ。だから帝都に向かう商人を襲った。それで討伐軍が来ると逃げた! 俺たちだけじゃねぇ。そんなことをやってる連中が帝都の外にはたくさんいんだよ」
2千もの盗賊がいれば討伐の対象にもなるし、食わせていくことも大変だろうと思ったが、こいつらは別々の小さな盗賊の連合体ということか。
「俺たちは数年前まで剣も握ったことのねぇ、ただの素人だ。それでも帝国と戦いたかった。理不尽と戦いたかったんだよ、悪ぃかよ!」
ゴードンはいつの間にか滂沱(ぼうだ)の涙を流しながら力説する。
その純情な想いに、俺もどこか胸を突かれたものがあった。
1年前。独立を叫んだジルやサカキといった面子とこいつらは同じだ。
ただ違いは正規の軍人かそうでないか、戦い方を知っていたかいないかの差だけ。
ふとハワードの視線を感じた。
あとはお主がやれ、とでも言いたげな視線だ。
ったく、しょうがねぇなぁ。
「戦いたいのか」
「あんたは……」
「俺はジャンヌ・ダルク。この軍の軍師だ」
「あんたが……いや、貴女が、あの……」
「お前の想いは分かった。ならこっちもしっかり答えないといけない。その上で答えてほしい。俺たちと共に戦えるのかどうか」
「戦う! あんたらなら、あのオムカを独立に導いた貴女なら、何がなんでも戦ってやる!」
「焦るな、聞いてくれ。いいか。俺たちは勝てないかもしれない」
「な……」
「さっき、お前は言ったよな。お前たちが介入しなかったら俺たちは負けてたって。それは真実じゃないけど、嘘でもない。負ける可能性は大いにあった。だから助かった。ありがとう」
「そ、そんな……いや、俺は……」
「一旦、膠着(こうちゃく)に持ち込んだものの、まだ兵力差はある。だから最悪の場合、俺たちは対岸へ逃げる。けどお前らはこっちに残ってくれ」
「そんな!? 俺たちを見捨てるってのか!?」
「だから聞けって。俺たちは対岸へ渡る。けど撤退はしない。河を挟んでにらみ合ってるところに、お前らがこっち側で動くんだ。別に直接ぶつかる必要はない。夜襲の真似をしたり、補給物資を襲ったりすればいい。そういうの、得意なんだろ。盗賊なんだから」
あるいは意表を突いて連環馬(れんかんば)を使うのもいいかもしれない。
「は……はぁ……」
「そうしたら帝国軍はお前らを討伐しようとする。そうしたら逃げろ。散り散りになってもいい。とにかく逃げろ。たしかここら辺は縄張りって言ったよな。なら逃げ場所なんていくらでもあるだろ?」
「あ、当り前よ! 俺は仲間を死なせないために、帝国軍が来ても逃げ込める場所はいくつか作った。逃げのゴードンと呼ばれた俺だからな。お、臆病だと思うなら、笑えよ」
「そんなことはない。お前は仲間を死なせないために必死に努力したんだ。だから笑うなんてとんでもない。そしてその努力を、俺たちに見せてくれ」
「……お、おうよ! ここら辺は俺たちの庭だ。絶対帝国軍の奴らに捕まってたまるか!」
「ああ、その意気だ。その間に俺たちは河を渡って帝国軍に仕掛ける。そしてこっちに向かってきたらまた河を渡り、今度はお前らが帝国の後ろに襲いかかる。それを交互にやることで、敵を被害を与えつつ疲弊(ひへい)させて撤退させる。それが勝つための道だ」
「お、おおおお! できる。それなら俺たちにも戦える!」
ゴードンが吼えるように歓喜の声をあげる。
その熱に浮かされたのか、クロエとブリーダも唸(うな)っている。
ハワードは腕を組んだまま何も言わない。
一応、文句はないといったところか。
ほぼアドリブで考えたものの、この戦い方は悪くないと思う。
賭けの策よりは充分実用的で勝率も高い。
ゴードンを見て思いついたのは歴史上の1人の人物だ。
彭越(ほうえつ)という男がいた。
楚漢(そかん)戦争において、劉邦(りゅうほう)の側に立ち、項羽(こうう)の背後を荒らしまわった男だ。
その実態はゲリラ戦術を得意とした元盗賊。直接項羽と戦ったことはほとんどないが、それでも項羽の本拠地を荒らしたり、補給を断ったりした功績を認められ王にまで登った人物である。
ゴードンはその彭越になってほしいと思っている。
「というわけで爺さん、カネ」
「遠慮ないのぅ……ほれ、ここに金(きん)がある。200万コルにはなるじゃろ。それでしばらく耐えよ。お主らの働きに応じて報酬を出す。今はそれでいいかの?」
ハワードの爺さんは、1つの小さな包みを取り出す。
どしりと重そうだ。
「おおよ! いや、すまなかった……でした。あんたらが、あまりに……その」
「不甲斐なかったかの?」
「そ、それは……はい」
「正直な奴じゃのぅ。だが嫌いではない。うちの軍師はこんななりじゃが、えげつない策を立てるからの。期待しておれ」
「隊長殿の策はえげつないんじゃなくて、悪質なんです!」
「え、非人道的なんじゃないっすか?」
お前ら、流行ってるのか……それ。
「で、でもあいつら、あの砦に籠るんじゃないのか……ですか?」
「あぁ、それなら問題ない。一応手は打ったから、帝国軍が砦に籠ることはないよ」
「はぁ……」
ゴードンが要領を得ない顔をしているが……さて、あっちはどうなったかな。
「とりあえずこの戦が終わるまではこっちに付き合ってくれ。それから後は……まぁ、その時に考えよう」
こうして俺たちオムカ軍は、帝国領土の盗賊衆2千を組み込むことになった。
0
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる