2 / 196
第1話:力の覚醒
しおりを挟む
俺の名はオケウェー・ガランクレッドだ。
11歳になったばかりの俺は実質的に育ての親とも呼べるおじちゃんと一緒にここの森の奥に住んでいる者。
正確にいうと、【シンドレム森林地帯】の中心部に。
詳しく話すと、【シンドレム森林地帯】というここは、南大陸…らしい(というのは実際にそれ以外の大陸へはまだ行ったことがないから本当かどうか分からないけど)ところに位置する大規模な森のこと。
おじちゃんの家には地図があって、この森の位置から近くにある【オールグリン王国】の領土が乗っている地域にしか描かれてないが、確かにここの森から上の北方は険しい山岳地帯が表示されていて、それから上へ行くと、【カラーン海】と書かれている海域のことが地図で載せられている。
あそこから更に上へ行けば、おじちゃんに教えてもらった【北大陸】の海岸沿いがあるだろう。
【ギャラールホルーツ】(Gjallarholtz)とも呼ばれているその北大陸のことなんだけど、どうやらおじちゃんから地政学、地理学、歴史や人類学をちょっとだけ学んできた際に、どうやら北大陸には俺達と違って、肌が白いか、もしくは薄い色素してる人ばかりが住んでいる大地らしい。
自分の手元に視線を移すと、
「確かに黒いなぁ、俺……」
まるで焼け焦げた肉かのようだ。
おじちゃんも俺と同じで髪がチリチリの形をしているけれど、肌色は褐色止まりで俺より薄いしな。
まあ、実際に俺のはそこまで漆黒と言わずにダークチョコ?なる食べ物にそっくりだと言ったおじちゃんなんだけど。
それに、おじちゃんによると俺よりもっと漆黒な肌の人は他にも南大陸にいるし、ここでは普通らしい。確かに、ウナリアとかなんとかっていう地域だっけ?
「でも、今まではおじちゃんとしか過ごしてこなかったけど、俺達よりも肌が真っ白い人のことが本当にいるとか、まったく想像できないな」
仮にいるとしても、きっと幽霊みたいな不気味な顔して気持ち悪い病気っぽい人ばかりだろうな……
実際に【そういう幽霊】も見たことあるしな。
まあ、偏見なんだろうけど……
なにせ、実際に見てみないとどんなものに見えるか分かんないしなぁ。
『此処へ……』
「ー!?」
さっき頭の中に聞こえてきた声がまたも脳内で響いてきたので、歩きながらでしていた考え事を中断された。
「ここは?」
ふと目を凝らしてみると、前方には周りにある木々と別格に大きな大樹があり、それが神秘的な黄金色で光っているようだ。
カチャ―カチャ―
足元の葉っぱと落下した小枝を踏んで音を鳴らしながら、そこへと近づいていく。
すると、
ビョオオオオオオオーーーーーーーーーーンンン!!!
「なにっ!?」
一体何が起こったんだー!?
いきなり耳鳴りな爆音が炸裂したかと思うと、今度は、
シュルシュッルルルルーーー!
「!?おいおいおい~!これって何なんだよーー!?」
どういうわけか、突如として触手みたいな動きしている大樹の枝が急速に延ばされてきて、俺の四肢すべてを捉えにきた!
ぎぎぎぎぎ……
「くーっ!」
きつく縛り付けられている俺の四肢。
「痛ってぇなーこのっ!」
辛くて耐えられないほどの痛みを感じ始めたのでどうにか抵抗して振りほどこうとしたけど、無理だった。
ぎしぎしぎしぎしぎしぎし……
逆に、自分の抵抗に反抗してくるようにもっときつく縛り付けてきたー!
「この野郎ーー!」
くそ!せめて魔術さえ使えれば一瞬で燃やし尽くせたというのにーー!
で、でも仕方ないよねーー!
だって!
「ここはーっぐっ!……南大陸であるフェクモでーっん!【魔力】が宿ってもぉーお!それを行使できる【魔術】として使用できないんだっけーっ?」
くそ、何故か自分を奮い立たせようとして声に出して事実を述べようとしたら、今度はあろうことかいきなり首元へ別の枝が延ばされてきて締め付けに来やがった!
『もうすぐだ。耐え忍べ』
またも謎な声が頭に響いてくると、次にはーーーー!?
「ううううおおおおおおおおーーーーーーーー!!」
なんだなんだなんだー!!今度は何故か全身の血と生命力が放出されていくかのように宙の遠くへと打ち上げられていくような感覚を覚える。
否ー!
実際には俺の身体は未だにここで四肢を縛り付けられていて身動きが取れないままなのだから、正確に言いうとー!
「うおおおおおおおおおおおぉーーーーー!!」
そう!身体の血流全体が信じられない程な循環速度で身体中を巡っていて、俺を恐ろしいほどに高揚した感覚にさせているからだ。
「ぎっ!」
なんでか身体中が爆発しちゃいそうな感覚を覚えると同時に、目を向けてみると俺を縛っている最中の枝たちもなんでか黄金色で光っていて俺から何かを吸収するがごとく、別の色の漆黒の液体を俺の身体を拘束している先端の枝から抜き出していったようにここから遠ざかっていく様子だ。
「ぐっ!もう意識がっ……」
それから凄い倦怠感を覚える俺は成す術もなく、意識を失うのであった。
「お…おじ………ちゃ…」
……………
……
…
ん?
「うぅぅぅ……」
それからどれほどの時間が経つか分からなかったが、さっきからいた場所で目を覚ました。
「え?」
今度、どこを見回していてもさっきからあった大樹はどこにもなかった。
「一体何だったんだ、さっきのあれは...?」
もしかしてただの悪い夢か?
なんか、まるでここにいると何かの毒っぽい空気を吸っちまっていて、それで気絶させられ悪夢でも見せられたってことだったのかな?
考えれば考えるほどますます訳が分からなくなってる出来事だったので、まあ、今は無事だと確認できただけでもありがたいと思うべきだよね、うん!
というか、【あの声】が俺をここまで呼び寄せてきた理由って、ただ俺をあんな気持ち悪い樹のバケモノで拷問してくる悪夢を見せるためだったのかー!?
だとしたら、なんか損した感じだなぁ、くそ!
てっきり森で発見される前の俺の過去について何か明かしてくれるのかと思ってたのに、とんだ無駄足をさせてくれたものだ!
……
不満、怒りと疑問を頭で浮かべるばかりいても仕方ないので、ずっと頭に響いてきた【あの声】も聞こえてこなくなったために、家に帰ることを決めた俺。
もう沢山だ!
次にまたも【あの声】が頭ん中に五月蠅く入り込んできても絶対無視するからなっ!
さすがにあんな最悪な体験をさせられたからにはもう懲り懲りだ、こん畜生!
ターッ!ターッ!
うん?
あれ?なんかさっきより脚の動きが何倍か軽くなってきたような気がしないでもー?
「なに?」
そう。改めて自分の身体の体内全ての感覚と器官の働きに意識を集中してみると、なんでか……息吹?というような存在を全身に駆け巡っているかのような不思議な気分を感じる。
「ふーはアぁ~~!」
息を吸い込んで吐き出してみると、
!?
微弱ながら、確かに何かが口元から漏れ出ていくのが見えた。
「漆黒の気球みたいだ……」
それに、よくよく身体に感じ取った違和感が強くなっていくのを自覚すると、
「はあーーーーー!」
試しに、空気を長い間で吸い込んでから吐き出してみると、
フシュウウウウウウウウウゥゥーーーーーーー!
「ーー!?」
何だこれーーー!?
まるで黒い霧でも吐き出されたかのように、周囲へと浮上してきては早い速度で消えて霧散していく。
『口に出さずに、心の中だけでこう唱えよ、【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸は、腕なりえぬ剣となりて我が手元に形作られよー!】』
ーー!?なっ!?また【あの声】だ!
「おいー!悪夢を見せてきやがったばかりなのに、今度はどの面下げて俺にまたもちょっかい出してきたんだー!?」
さっきのことに対してまだ根に持って怒っている俺に構わず、
「唱えよ、そうすれば、汝の中に真の力が発現したり、【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸は、腕なりえぬ剣となりて我が手元に形作られよー!】」
「何言ってるか分かんないけど、最後に口走ったあれを俺に唱えさせようとしたいんなら断るよ!」
今度、またもいう事聞いたら何かされるか分かったものじゃないからね。
さっきので懲りたし……
「グルルルルーー!グルローーーー!!」
「ーーなに!?」
何だと唸り声と動物っぽい吠えが聞こえてきたら、音のする方向へと視線を移動させてみると、
「グルルローーロオオオオオーーー!」
小走りでこちらへと襲い掛かってきた通常よりも格段と大きな狼2二匹が見えた!
おいおいおい、何だったんだよ―、畜生!
狼は確かにここが生息地ではなく、もっと海岸沿いにたむろしているものだとおじちゃんが言ってくれた。
たとえ南下してきてもあそこまで大きくて紅色な毛皮はしてないはず!
つまり、あれは本で読んだことある【世界獣】ってことだ!
『だから唱えよ。【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸はー】』
「ああ、もう!分かったよ、唱えればいいだろう、唱えれば!」
恐らくそうしないとあの魔物2匹を撃退できないだろうな。
なら!やることは一つしかない!
【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我ー】
くー!間に合わない!
心の中だけでさっき言われた通りの詠唱を最後まで済ませようとしたけど、もう至近距離まで近づいてきた2匹の狼...いや【世界獣】がいるんだ!
だったらーー!
「やあああぁぁーーー!」
一か八か、俺はさっき感じ取れるようになった体内に宿ったばかりの【黒い霧】を手のひらに集束していく想像を集中しながら思い浮かべてみると、
バシャー―――!!
「グーーラオオ――オ!!グルギギギギ………ひゅぐっ~」
手元に何かが握られているのを感じならも、集中して一匹目を上段切りで振り下ろし、頭部から深々と切りつけた! それで堅い皮膚という手ごたえを感じならもそれなりに深い傷を負わせたみたいで、
グサ―――!
俺の得物がこいつの脳みそにまで深く刃を届かせた感じがした。
「ギギ………ギュク…………」
こめかみに【刃】を深くまで潜り込ませた俺はそれを抜き取ると、
「一匹を撃滅!次!」
「グラオオオォーーーー!」
仲間が頭部から深々と切りつけられても臆することなく、またも俺に飛び掛かってくるが、
「それー!」
つられて、俺も跳躍して空中でヤツをこの【刃】で横切りに3回も連続して切り刻み、そのたびにヤツの身体中に出血がとめどなく溢れてきた。
「しまいだー!これを喰らいやがれーー!」
バッシャーーーーーーーー!!
グチューー!
………
今度は本当に終わった。
その場で、息をしているものがいるとすれば、俺一人だけだ。
二匹の大きな紅色の狼の残骸を見下ろしていると、なんか戦いの最中で血流が盛んになって無我夢中で我を失っていたっぽいんだけどちゃんと倒せたみたいで良かった……
改めてみると、2匹の【世界獣】を初めて見てしまった俺が初対面で討伐できたという信じられない光景を目にすると、なんでか気分が高揚する感じ。
そう。それが出来ても、すべてはこれがあったからだ。
見下ろしていると、俺の右手には白い骨の形に近い剣が握られているからだ。
__________________________________________
11歳になったばかりの俺は実質的に育ての親とも呼べるおじちゃんと一緒にここの森の奥に住んでいる者。
正確にいうと、【シンドレム森林地帯】の中心部に。
詳しく話すと、【シンドレム森林地帯】というここは、南大陸…らしい(というのは実際にそれ以外の大陸へはまだ行ったことがないから本当かどうか分からないけど)ところに位置する大規模な森のこと。
おじちゃんの家には地図があって、この森の位置から近くにある【オールグリン王国】の領土が乗っている地域にしか描かれてないが、確かにここの森から上の北方は険しい山岳地帯が表示されていて、それから上へ行くと、【カラーン海】と書かれている海域のことが地図で載せられている。
あそこから更に上へ行けば、おじちゃんに教えてもらった【北大陸】の海岸沿いがあるだろう。
【ギャラールホルーツ】(Gjallarholtz)とも呼ばれているその北大陸のことなんだけど、どうやらおじちゃんから地政学、地理学、歴史や人類学をちょっとだけ学んできた際に、どうやら北大陸には俺達と違って、肌が白いか、もしくは薄い色素してる人ばかりが住んでいる大地らしい。
自分の手元に視線を移すと、
「確かに黒いなぁ、俺……」
まるで焼け焦げた肉かのようだ。
おじちゃんも俺と同じで髪がチリチリの形をしているけれど、肌色は褐色止まりで俺より薄いしな。
まあ、実際に俺のはそこまで漆黒と言わずにダークチョコ?なる食べ物にそっくりだと言ったおじちゃんなんだけど。
それに、おじちゃんによると俺よりもっと漆黒な肌の人は他にも南大陸にいるし、ここでは普通らしい。確かに、ウナリアとかなんとかっていう地域だっけ?
「でも、今まではおじちゃんとしか過ごしてこなかったけど、俺達よりも肌が真っ白い人のことが本当にいるとか、まったく想像できないな」
仮にいるとしても、きっと幽霊みたいな不気味な顔して気持ち悪い病気っぽい人ばかりだろうな……
実際に【そういう幽霊】も見たことあるしな。
まあ、偏見なんだろうけど……
なにせ、実際に見てみないとどんなものに見えるか分かんないしなぁ。
『此処へ……』
「ー!?」
さっき頭の中に聞こえてきた声がまたも脳内で響いてきたので、歩きながらでしていた考え事を中断された。
「ここは?」
ふと目を凝らしてみると、前方には周りにある木々と別格に大きな大樹があり、それが神秘的な黄金色で光っているようだ。
カチャ―カチャ―
足元の葉っぱと落下した小枝を踏んで音を鳴らしながら、そこへと近づいていく。
すると、
ビョオオオオオオオーーーーーーーーーーンンン!!!
「なにっ!?」
一体何が起こったんだー!?
いきなり耳鳴りな爆音が炸裂したかと思うと、今度は、
シュルシュッルルルルーーー!
「!?おいおいおい~!これって何なんだよーー!?」
どういうわけか、突如として触手みたいな動きしている大樹の枝が急速に延ばされてきて、俺の四肢すべてを捉えにきた!
ぎぎぎぎぎ……
「くーっ!」
きつく縛り付けられている俺の四肢。
「痛ってぇなーこのっ!」
辛くて耐えられないほどの痛みを感じ始めたのでどうにか抵抗して振りほどこうとしたけど、無理だった。
ぎしぎしぎしぎしぎしぎし……
逆に、自分の抵抗に反抗してくるようにもっときつく縛り付けてきたー!
「この野郎ーー!」
くそ!せめて魔術さえ使えれば一瞬で燃やし尽くせたというのにーー!
で、でも仕方ないよねーー!
だって!
「ここはーっぐっ!……南大陸であるフェクモでーっん!【魔力】が宿ってもぉーお!それを行使できる【魔術】として使用できないんだっけーっ?」
くそ、何故か自分を奮い立たせようとして声に出して事実を述べようとしたら、今度はあろうことかいきなり首元へ別の枝が延ばされてきて締め付けに来やがった!
『もうすぐだ。耐え忍べ』
またも謎な声が頭に響いてくると、次にはーーーー!?
「ううううおおおおおおおおーーーーーーーー!!」
なんだなんだなんだー!!今度は何故か全身の血と生命力が放出されていくかのように宙の遠くへと打ち上げられていくような感覚を覚える。
否ー!
実際には俺の身体は未だにここで四肢を縛り付けられていて身動きが取れないままなのだから、正確に言いうとー!
「うおおおおおおおおおおおぉーーーーー!!」
そう!身体の血流全体が信じられない程な循環速度で身体中を巡っていて、俺を恐ろしいほどに高揚した感覚にさせているからだ。
「ぎっ!」
なんでか身体中が爆発しちゃいそうな感覚を覚えると同時に、目を向けてみると俺を縛っている最中の枝たちもなんでか黄金色で光っていて俺から何かを吸収するがごとく、別の色の漆黒の液体を俺の身体を拘束している先端の枝から抜き出していったようにここから遠ざかっていく様子だ。
「ぐっ!もう意識がっ……」
それから凄い倦怠感を覚える俺は成す術もなく、意識を失うのであった。
「お…おじ………ちゃ…」
……………
……
…
ん?
「うぅぅぅ……」
それからどれほどの時間が経つか分からなかったが、さっきからいた場所で目を覚ました。
「え?」
今度、どこを見回していてもさっきからあった大樹はどこにもなかった。
「一体何だったんだ、さっきのあれは...?」
もしかしてただの悪い夢か?
なんか、まるでここにいると何かの毒っぽい空気を吸っちまっていて、それで気絶させられ悪夢でも見せられたってことだったのかな?
考えれば考えるほどますます訳が分からなくなってる出来事だったので、まあ、今は無事だと確認できただけでもありがたいと思うべきだよね、うん!
というか、【あの声】が俺をここまで呼び寄せてきた理由って、ただ俺をあんな気持ち悪い樹のバケモノで拷問してくる悪夢を見せるためだったのかー!?
だとしたら、なんか損した感じだなぁ、くそ!
てっきり森で発見される前の俺の過去について何か明かしてくれるのかと思ってたのに、とんだ無駄足をさせてくれたものだ!
……
不満、怒りと疑問を頭で浮かべるばかりいても仕方ないので、ずっと頭に響いてきた【あの声】も聞こえてこなくなったために、家に帰ることを決めた俺。
もう沢山だ!
次にまたも【あの声】が頭ん中に五月蠅く入り込んできても絶対無視するからなっ!
さすがにあんな最悪な体験をさせられたからにはもう懲り懲りだ、こん畜生!
ターッ!ターッ!
うん?
あれ?なんかさっきより脚の動きが何倍か軽くなってきたような気がしないでもー?
「なに?」
そう。改めて自分の身体の体内全ての感覚と器官の働きに意識を集中してみると、なんでか……息吹?というような存在を全身に駆け巡っているかのような不思議な気分を感じる。
「ふーはアぁ~~!」
息を吸い込んで吐き出してみると、
!?
微弱ながら、確かに何かが口元から漏れ出ていくのが見えた。
「漆黒の気球みたいだ……」
それに、よくよく身体に感じ取った違和感が強くなっていくのを自覚すると、
「はあーーーーー!」
試しに、空気を長い間で吸い込んでから吐き出してみると、
フシュウウウウウウウウウゥゥーーーーーーー!
「ーー!?」
何だこれーーー!?
まるで黒い霧でも吐き出されたかのように、周囲へと浮上してきては早い速度で消えて霧散していく。
『口に出さずに、心の中だけでこう唱えよ、【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸は、腕なりえぬ剣となりて我が手元に形作られよー!】』
ーー!?なっ!?また【あの声】だ!
「おいー!悪夢を見せてきやがったばかりなのに、今度はどの面下げて俺にまたもちょっかい出してきたんだー!?」
さっきのことに対してまだ根に持って怒っている俺に構わず、
「唱えよ、そうすれば、汝の中に真の力が発現したり、【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸は、腕なりえぬ剣となりて我が手元に形作られよー!】」
「何言ってるか分かんないけど、最後に口走ったあれを俺に唱えさせようとしたいんなら断るよ!」
今度、またもいう事聞いたら何かされるか分かったものじゃないからね。
さっきので懲りたし……
「グルルルルーー!グルローーーー!!」
「ーーなに!?」
何だと唸り声と動物っぽい吠えが聞こえてきたら、音のする方向へと視線を移動させてみると、
「グルルローーロオオオオオーーー!」
小走りでこちらへと襲い掛かってきた通常よりも格段と大きな狼2二匹が見えた!
おいおいおい、何だったんだよ―、畜生!
狼は確かにここが生息地ではなく、もっと海岸沿いにたむろしているものだとおじちゃんが言ってくれた。
たとえ南下してきてもあそこまで大きくて紅色な毛皮はしてないはず!
つまり、あれは本で読んだことある【世界獣】ってことだ!
『だから唱えよ。【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸はー】』
「ああ、もう!分かったよ、唱えればいいだろう、唱えれば!」
恐らくそうしないとあの魔物2匹を撃退できないだろうな。
なら!やることは一つしかない!
【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我ー】
くー!間に合わない!
心の中だけでさっき言われた通りの詠唱を最後まで済ませようとしたけど、もう至近距離まで近づいてきた2匹の狼...いや【世界獣】がいるんだ!
だったらーー!
「やあああぁぁーーー!」
一か八か、俺はさっき感じ取れるようになった体内に宿ったばかりの【黒い霧】を手のひらに集束していく想像を集中しながら思い浮かべてみると、
バシャー―――!!
「グーーラオオ――オ!!グルギギギギ………ひゅぐっ~」
手元に何かが握られているのを感じならも、集中して一匹目を上段切りで振り下ろし、頭部から深々と切りつけた! それで堅い皮膚という手ごたえを感じならもそれなりに深い傷を負わせたみたいで、
グサ―――!
俺の得物がこいつの脳みそにまで深く刃を届かせた感じがした。
「ギギ………ギュク…………」
こめかみに【刃】を深くまで潜り込ませた俺はそれを抜き取ると、
「一匹を撃滅!次!」
「グラオオオォーーーー!」
仲間が頭部から深々と切りつけられても臆することなく、またも俺に飛び掛かってくるが、
「それー!」
つられて、俺も跳躍して空中でヤツをこの【刃】で横切りに3回も連続して切り刻み、そのたびにヤツの身体中に出血がとめどなく溢れてきた。
「しまいだー!これを喰らいやがれーー!」
バッシャーーーーーーーー!!
グチューー!
………
今度は本当に終わった。
その場で、息をしているものがいるとすれば、俺一人だけだ。
二匹の大きな紅色の狼の残骸を見下ろしていると、なんか戦いの最中で血流が盛んになって無我夢中で我を失っていたっぽいんだけどちゃんと倒せたみたいで良かった……
改めてみると、2匹の【世界獣】を初めて見てしまった俺が初対面で討伐できたという信じられない光景を目にすると、なんでか気分が高揚する感じ。
そう。それが出来ても、すべてはこれがあったからだ。
見下ろしていると、俺の右手には白い骨の形に近い剣が握られているからだ。
__________________________________________
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる