精霊術学院の死霊魔術使い

ワガドゥー男子

文字の大きさ
6 / 196

第5話:学院長

しおりを挟む
「う....ん」



きりっとした目で眼下のデスクの書類に目を通している30代のきつい顔している女性がいる。



イリーズカ先生の銀髪よりも格段と薄い白髪をしている彼女はショートヘアーを複雑な三つ編みで後ろへと束ねているようだ。



先生と同じローブを羽織っているが、ドレスの類を中で着ているのではなくて、きっちりとした赤色のスーツのようだ(本でしか見たことなかったが実際に見るとなんか魅力的な感じがするんだな)



ここは学院長室であり、俺と一年B組の担任先生であるイリーズカ先生はこの広い部屋の中心に突っ立っている。横に置かれているふかふかそうなソファーに目もくれずに俺達は黙々と書類をチェックしている目の前の女性の事だけを見つめている。




「で、そこの子の事なんだけど……」



今度は事務用テーブルの席から身を起こして奥の窓に正面を向け、こちらに後ろ姿を見せながらそう小さく声を漏らした。



「………」



なんでか、俺の隣で俯いているばかりで顔をあげようとしないイリーズカ先生。



俺は先生より背が低いので、こちらから見るとなんでか怯えているように見えなくもない。



「彼の入学を認めることは……できないな。...『南方へ』帰してやりな」



「ー!そ、そんな、学院長ー!」



やっぱり、予想した通りのことになったな。最悪な結果を予感していたイリーズカ先生は俯いているばかりだったが、言われた言葉があまりにも一方的過ぎて抗議しようとする先生。



手順通りだったら、学院長が俺の入学を認めてくれたら、書類の受け入りをクリアさせて、俺が本当にこの学院のカリキュラムに適応できる実力を持っているかどうか、軽い【聖魔力】の有無を検査できる試験を課してきそうなのだが、こうも早い段階で断られるとやれることは何もない。



「糞は糞らしく、『南地』に留まるのが筋だと思え」



「ーー!それはあまりにも言い過ぎですっ!学院長ーー!」



学院長の横柄な態度に対し、ついに堪えきれずに声を上げたイリーズカ先生。



「生憎だが、この【聖エレオノール精霊術学院】にああいう輩を通わせる義理はない。それに、たとえ試験を一応受けさせても結果は同じだ。【南蛮人】に【聖魔力】を上手く制御できるはずもないのだからな」



「そんなのやってみないと分からないじゃないー!学院長ー!」



「もう言うべきことは伝えたはずだ。これ以上の問答は不要だから退室する気がないなら実力行使で追い払うことになるが?」



「そーそんな……」



しゅーんと落ち込んでいるイリーズカ先生。



ったく……これならおじちゃんを決定的に直すための【精霊術】が習えなくなるじゃない!成り行きをもっと見守ろうかと思っていた俺だったが、もう取り合わないような姿勢を学院長が見せたら、こっちも黙っているばかりにはいられない!おじちゃんの命がかかってるんだから!



「失礼します、学院長。僭越ながら申し上げたいことがあるのですが、ここの国、レイクウッド王国にとっての一番の脅威って何でしょうか?」



先生にばかり庇ってもらうわけにはいかない。なので、俺を嫌っているあの女に対してもっと嫌われないようにするために一応丁寧な言葉遣いを心掛けながら、肝心なことを聞いてみた。



「ああぁー?横で声も出ず沈黙ばかり決め込んだ南蛮人の少年が、ついに大きく出たってところかしら?」



「聞いてるんですっ!この王国にとっての最大の脅威って何ですかって!」



小馬鹿にするようなことを言われても、平然とした態度を取りまたも確認するように声を少し張り上げて訪ねる俺。



「どうやら、少々侮り過ぎたのかしらね、貴様の覚悟を」



「学院長……」



俺の若干あらぶった声に対して学院長の顔色が少し苛立ちを滲み出したけど、微かな興味に満ちたものに変わったのを感じ取ったイリーズカ先生は希望を見出すようにと学院長と俺の方を交互に見てる。



「氷竜だ、南蛮人の少年よ。この国の最大な脅威っていうのは」



「ひょう、氷竜...ですか」



「...ええ、この首都、【王都クレアハーツ】より遠く北のアズリア地域に、極寒の地があるわ。【氷死の界獣地】って呼ばれてるそれは数多くの【世界獣】が徘徊し、それだけじゃなくてもっとも強力であり伝説級の【氷竜マインハーラッド】までもが跋扈し、縄張りとしている地帯のことよ」



「...そして、ここ最近の数か月前から今日までの間、【氷死の界獣地】に留まっていたばかりで飛び越えてこようとしなかったはずのあの氷のトカゲがいきなり南下し、我が王国のアズリア地域にあるいくつかの町を襲ってきて、甚大な被害と犠牲を出したそうだ」



イリーズカ先生に続いてそう説明した学院長へ、



「討伐隊は派遣してないですか?」



「もちろん、冒険ギルドだけじゃなくて王国軍の選りすぐりの一流な近衛騎士団までもが討伐隊に加わった。だが……」



「成す術もなく、その……ぜ、全滅させられていたんだわ...」



「……なる程」



やっぱりこの質問をした甲斐があって、俺の入学トラブルについて状況を打破する糸口が掴めた気がしてにやっとする。





「では、こういう提案があるんですが、如何でしょうか?要するに、俺がその【氷竜マイン】なんとかってトカゲを刈り取り、王国を一番の危機であるそれから救って差し上げると言うのはどうですか?そうすれば、俺の実力を否が応でも認めてもらわなくてはいけなくなるんですよ?」



今度は一か八かの最高級の博打だ。これを言ってしまったら、俺を【南蛮人】だと見下して、蔑んでいた学院長の琴線に触れることが出来るかどうかを



「………ふむ」



俺を値踏みするかのように目を細めて真剣に見つめてくる学院長。



「オケウェー君……ほ、本当に大丈..夫でしょうか?あんなものまで...」



心配するような目を向けてくるイリーズカ先生だったが、



「よかろう。その提案を受けてやろうではないか!」



「「ーーー!?」」



学院長からの衝撃な気転にはっと希望を見出した俺とイリーズカ先生。だが、次に彼女から発せられたものは予想通りに、とんでもないものだった。



「但し、やるからには徹底的にやってもらうぞ?責任も伴う。大口叩いたからには結果がすべてだな」



「そ、それは勿論ですとも!俺も真摯な心で王国にとっての最大な危機を取り除きたい所存です!ですから、俺―」



「だが、貴様はあくまでも一生徒として過ごすのではなく客人だ、それもあの彼の【呪われた大地】からやってきて魔術も使えなかったような薄汚い【南蛮人】だ。肌色を見る限り、わたしが危惧した通りに薄い煤色のようで正に【南黒人】と言った方がもっと正しい貴様の事を、本当に本当の意味でこの大陸にやってきたばかりで【聖魔力】を【魔術】として使えるのか、まずは試験を通して確かめてから提案がどうのこうの話すのだなー」



いっきにそう捲し立ててきた学院長がそれだけいうと、



「氷竜を討伐できる暁まで、貴様をここの学院生の一人として認めることはできない。よって、貴様は『期間中の客人』として通い、討伐任務を完了するまでの間は通常の授業をすべて受けることを一時的に許可しよう。但しー!」



「ただし?」



「一か月間だけだ。この一月の間に、貴様はあの 【氷竜マインハーラッド】を滅ぼせなかった場合、学院の授業を受ける資格を失うだけじゃなくて、一生ここでの小間使いとして働いてもらうことになるんだが、それでもいいというのかー?」



「……はっ!~予想はしてましたけどね……でも望むところですっ!まあ、奴隷とか人体実験にされるよりかはマシかぁ……」



「オケウェー君~~!なんてことを口にしたの~!学院長に変なアイデアを吹き込まないでよぉ~~!それに~!一生に小間使いとして働かされるのって、過酷な方ではないにしても労働奴隷となんら変わらないじゃない~!」



慌てて俺の口を塞ごうとじゃれついてきたイリーズカ先生を無視すると、



「なんだー。その方が嬉しいというのか。見た目に似合わず、案外ドMのむっつりガキだな貴様は。まあ、ある意味【南黒民】である【南蛮人】の貴様に相応しい下僕っぷりだな」



心なしか、俺の気概と大胆さに心にでも響いているか、あれほどさっきから俺を見下しっきりでまったく取り合おうとしてなかったのに、今はさっきの仏頂面と違って辛辣なことを口走りながらもこうして親しみの欠片でも感じられるような薄笑いまで浮かべるようになった学院長だった。




_____________________________________
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

処理中です...