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第24話:剛力級、【レッド・フリークス】の襲撃に遭うチームオケウエー
しおりを挟む「それにしても、『第二階層』に入ってからというもの、未だに『世界獣』と一切遭遇しなくなってるなんて……前の階層にはあんなに頻繁にあっちこっちへと暴れ回ってたのに……」
「……なんか悪い予感がするっすねー!」
平民組のジュディとジェームズに警戒の色が濃くなっており、それにつられてみんなの緊張感も高まってきた。
それもそのはず、『第二階層』に入ってから、最初の休憩場にて昼飯と軽い休息を取った後、1時間ぐらいこんな広大な大広場を歩いていっても一向に『世界獣』の気配は感じないし、他の生徒も前の階層から降りてきた様子はない。
まあ、前の階層であんな大勢の【闘志級】の襲撃があったら、そりゃ警戒してもっと強力な世界獣が出現する可能性の高い下の階層に降りていくことを躊躇っていてもおかしくない。
「そろそろ景色に変化が見えてきても良いころ合いなんですわね……」
片方のドリル型ツインテ―ルをいじりながらそんな声を漏らした薄い金髪令嬢のヒルドレッドなのだが、
「教科書と先生のくれた参考資料によれば、第二階層に入ってからはすぐ前階層のと同じ大広場があって、長い道のりを通ってたら直ぐに浅すぎる湖が中心にできてるってところ、……つまり、あの【大試練の場】へと辿り着くはずだと思うんだけど……」
オードリーの指摘は確かに先生がくれた情報その通りだ、
「オードリーの言う通りだよ。今まで1時間以上歩いてきても世界獣の姿がまったく出てこないってことは、この階層の【樹界脈】がそんなに多くなくて、交差してないところが殆どだってこと。だが、その分、【樹界脈】がもっと多く流れ着いていて、複数の脈がたくさん集中してる交差点みたいなものがどこかにあるはず。それも、あの【大試練の場】ってところに……」
間違いないはずだね、それ。
というか、見えざる【樹界脈】って言ってるんだけど、たとえ空気中に漂う霊質みたいなものであっても、それを機器か魔道具の類で感知して観測することもできると教科書で学んだことある。でなかれば、どのようなところにどれほどの脈があって昔からそういう知識が本に載ってないはず。
確かに、国の上層部だけが管理したり観測していい情報だったかな?
この国だと、授業で知ったことある【宮廷魔術師】や【王宮親衛精霊部隊】の事が真っ先にそれらの機器とか魔道具を持っていても不思議じゃない。で、彼らが観測した【樹界脈】の現状を公開して良い情報とそうでない情報を分けて、公開していい情報を本に載せる許可を下してきたんだろう、それも王様の決定も絡んでくる会議の末に。
「確かに【精霊術学】の教科書も一頁の小さい記述がそれを知らせてくれたんですねー?」
「ええ、うちもこの国へと引っ越してきて2か月間しか経ってないけれど、祖国の【グランドブードリック大王国】にいた時もこっちに着いたばかりの頃も教科書や本をたくさん読んで、ルネヨー・フラックに関する情報も一通り一読してきたの。だから、戦闘準備を始めて、みんな。もうすぐ着くはずよ」
クレアリスの忠告に、場の緊張感が高まった気がする俺達。数分歩いてみると、『それ』が見えてきた。
「わああーーーー!綺麗な湖なんですねーー!ね、そこの水って毒が入ってないよね?教科書もただの『普通の水』だって書いてあったしー!」
「いや、ジュディ。前の階層だった時も話したことあるけれど、ここへ流れてきた【樹界脈】の密度も分脈も濃くて多くなったりしてるようなら、その影響で湖の中の水分の物質が変化しててもおかしくないわよ。で、一応警戒してあの水に直接触れたり、体内に摂取するような無謀なことをしないでおいて頂戴」
「オードリーの見解は最もだ。だから、ジュディもみんなもくれぐれも湖の方にあまり近づかないようにしろ。水に触れたらが最後なにか悪影響を及ぼしてくるかもしれないから!」
「「「「「はーいっ!」」」」」
湖の外回りからなるべく距離を置くように、回っていく徒歩をしている俺達だったけど、湖の遥か前方にある壁には大穴が開いてからの長い通り道が見えてきて、そこからは眩しい光やとてつもない強力な『聖魔力気』の波動が遠い位置にあるここの俺達にも正確で届いてる。
「オードリー!」
「ええ、間違いないわね、あそこに強力な『契約精霊』が眠っているわー!」
確かにまだ第二階層にいるんだけど、ジェームズやジュディのための精霊を探し出す必要がある以上、まずはそこを見ておこうー!
「じゃあ、みんな、短い間でなら聖魔力の消費がそんなに高くないし【身体能力強化】発動してあそこまで走ろうー」
「………いや、無理っす、僕……」
「え?」
「だから、僕はまだそれを習得してないんだ。【物理法則無視魔術】の中でも基本中の基本なんだけど、どうやら精霊契約の適性値検査を合格した以外に、僕のできる魔術って第1階梯の【地魔術】だけっす………」
「マジか……どうして苦手だって分かってるのに訓練の限り尽くして習得しようと頑張ってこないのか?」
最もなことを聞くと、
「こ……怖いんだ………よ」
「へえ?」
「昔………暴力……を振るわれた………ことがあって…それで……『地魔術』以外はどれほど頑張って自主練しても、【身体能力強化】だけは………聖魔力の同調も一ミリもできなくて……………一向に上手くないん………っす……」
「「「「「………」」」」」
確かに、魔術を習得する際、それを訓練してからやっと使えるようになったが、最初の過程である『聖魔力の同調』も出来ないなんて………
普通、【物理法則無視魔術】の第一階梯のポジションでも占めてる【身体能力強化】という魔術だけは誰かの駆け出しとか素人の魔術使いであっても、たとえマスターして使えるようにはなれなくてもなにがしらかの『聖魔力の同調』が訓練して数か月も経ってないうちにできたことだっていう一般論や前例の多さが………
こりゃ、深刻そうな問題抱えてるようだなぁ、ジェームズ。今までは呑気に会話かわしてくる爽やか系のほほんとした性格だって思ってたけど、こういう一面もあるとは……
「ジェームズ!大丈夫ですよ~!【身体能力強化】出来なくたってー!今は普通に走りながらでもいいから、私と一緒にあの通路を抜けていこう、ねー?」
手を差し伸べるジュディに、
「………基本中の基本の…【身体能力強化】を満足にも……使用できない僕に…どうしてそんなに見下すことせず、優しくしてくれるんっす…か…?」
「簡単なことですよ、ジェームズ。だって、私達はー!」
「仲間だからよ、ふふふ……」
「あそこへ行くのなら早くして頂戴ね!あたくしとオケウェーが後ろからの世界獣の奇襲を警戒するようにしんがりを努めるから!」
ジュディとクレアリスからの発言に安心感いっぱいの顔を浮かべてるジェームズだったので、オードリーが早くあそこへ行けと催促したのだが、みんなが行動を万全態勢で起こそうとする前に、『それ』が起きたー!
「グロオオオオオアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「「「「「「ーーー!!?」」」」」」
何事だー!?まるで地獄の底から生え出てきたようなそんな轟いた咆哮がー!
カチイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンン!!!!
咆哮が聞こえてきた方向を辿ってみればそこの湖からだと判明した途端、いきなりその湖からは全幅すべての水から緑色の強烈な光が眩しく炸裂してきながら耳鳴りな音を鳴り響かせてる!
うおおおおおおーーー!?
この尋常ならぬ【反人力】の波動はーー!?
「オードリー!!」
強烈な光に目を晦まされても何とか目を閉じてオードリーに声をかけてみた。
「分かってるわよー!戦術通りにあたくしとオケウエーが先に先陣を切るから、みんなは早くあの通路へ行きなさいーー!」
「「「了解ー!」」」
元気よくあそこへと向かっていったジュディ、ジェームズやクレアリスだったが、
「わたくしは?」
「……あんたは戦闘の様子をみて援護が必要そうになったメンバーが見えたら、『護衛」して頂戴。いいわよねー!?」
「お~ほほほほ!やっとわたくしが頼りになる場面がきてるんですのね~おほほほ!宜しくてよ、わたくしの【アールドヴィオーレ】が盾になってあげても」
「くるぞー!」
「グロオオオアアアアアアアアアアアーーーーーーーーー!!!!!」
キイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーンンンン!!!!………
耳鳴りと咆哮が止んでるのと同時に、緑色の光と霧だったあそこから出てきたのは、
ガアア―――――――ン!!
「上からだぞ!気をつけろー!」
上級らしい世界獣の爆発的な跳躍を察知して俺はみんなを注意しながら天井の方へと見上げると、
「グロオオオアアアアアアーーーーー!!!!!」
なんだあれはーーー!?
顔の方がぺちゃんこになってるような潰れた蛙のような醜すぎる虎の容貌がした頭部に続いて、全身が赤い一色で統一された巨大な蠍が見えたようだ。
大規模な光が発生した湖から跳び上がったそれが天井に足の一本を蹴って瞬発力にでも変換した要領で巨体に似合わない爆発的なスピードで俺達のいるここへと身体ごと落下しようとしてきたーーー!!
「みんな避けろ――――――――!!!!」
「「「「「ーーーーはっ!!!」」」」」
ターターターターターターーー!!
ゴドドオオオオーーーーーーーーーーーンン!!!!!
………
俺達が元々いたあそこにあの巨大な蠍の形をした世界獣が着地したと同時に地面が揺れるような落下衝撃波をこっちにも伝わったような強力さだ。
くーーっ!この莫大なほどの【反人力】はーーー!!
今まで俺が遭遇したことのない類の大物だ!!
「【剛力級】わよ、みんなーー!!それも昔に一度あたくしがお世話になった狂暴で強大な【反人力】が載せられる物理攻撃を得意としてる【レッド・フリークス】なのよーーー!」
「オケウェー君とオードリー、そして【状態異常誘発】能力が得意のうち以外、契約精霊まだ持ってない方の二人は早くあそこの通路へ走っていってーー!!防御能力が優れるヒルドレッドには二人の護衛は任せたのよー!」
オードリーの忠告とこんな緊迫した状況でも冷静な判断能力を失わないクール系なクレアリスは的確に指示を出して、敵から最先頭の位置で対峙してる俺とオードリーよりも状況が良く見える後衛な役割と長点を見事に発揮してる。
「出でよー!我が愛熊ベネフォーロッスよー!」
「顕現せよ、我が【サリシャ】よー!」
契約精霊を出したオードリーとクレアリスは既にここであの蠍の形をしてる【剛力級】のレッド・フリークス…?を睨みながら俺の側から離れない。
俺の直ぐ斜め後ろにいるクレアリスを見てみたら、確かに彼女の髪のと同じ青色のフクロウの形をした精霊がちょこんと彼女の肩に乗ってるままで微動だにしない様子だ。
念のために、後をもっと振り向いてみると、既にヒルドレッドに伴われてあの壁に穴が開いてるとこの通路へと走っていったジェームズとジュディが見えた。
フシュウウ―――――――ゥ!!
「させないわーー!!ベネーー!!」
「グラオオーー!!」
カチャーーーーーーック!!!
あの見るに堪えない醜い虎のような顔をしてる【レッド・フリークス】から一条の狭くて小さな緑色の水流が吐き出されてきたので、オードリーが自分の子熊の精霊にあの水流へと飛んでいく命令を出して、それであれを氷漬けにしたようだ。
なんか空中で水流が氷になって浮かんでる様子はシュールすぎて笑いが漏れ出ちゃいそうだぜ。
「ふふふ…ナイスアシストなのね、オードリーよ」
「ふーん!あんたのためにやった訳じゃないし、余計の台詞よー!」
と、そんな会話を交わした二人を見たら、
「こいつ、とんでもない程の莫大な【反人力】の波動を感じるけど、ただの【剛力級】だとー!?」
「ええ、以前にあたくしがこんなバケモノの討伐任務があった際にはお姉様の率いた部隊に参加したことあるわ。その頃に、こういうのと戦った事あるわね」
「それでどうだったんだー?あの時」
「ふん、あの時はまだ契約精霊を持ってなかったあたくしだもん。でも今回は違うわ。サイズもどこかあの時より2か3倍以上にはなったようだけれど、今のあたくしには可愛くて愛おしいベネも一緒だし、徹底的に氷漬けにしてやるわよーーー!!」
「おう!そうこなくちゃなー!」
それでこそ、決闘で散々俺を苦戦に持ってきた学院一年生だけのトップ3のエースだ。
「グウウウロオオオアアアアアアーーーーーーー!!!!」
「「「ーーーー!!?」」」
なんだと、俺達が話し合ってる間に遥か天井まで跳び上がっていきやがったぞーー!?
って、おいおいおいーーー!?
あそこの方向へと巨大な蠍が跳び降りようとしたようだが、あそこにはヒルドレッドと一緒のジェームズとジュディがあの通路に向かってるところの位置だし、ここから間に合って助けてやることはー
「大丈夫わよ、オケウェー!あそこにはヒルドレッドがいるわー!」
「で、でもー!」
「ふふふ、安心してて、【漆黒の魔王】君。ヒルドレッドを甘く見ない方がいいのよ?」
「えー?」
「我が敵の悪意から鉄壁の防御を形成せよー!【白盾聖騎士アールドヴィオーレ】ーー!!」
シュウウウウーーーーーーーーーンンン!!!!!
あそこを凝視して見てると、ヒルドレッドの前に青白い光が発生したかと思うと、すぐにそこから勇ましくて堂々とした佇まいを誇る巨体持ちの真っ白くて透明なガラスっぽい光力反射を発揮してる鎧姿の騎士の形をしている『精霊』が見えた。
右手には長くて高くて分厚い縦長の複雑な文様と意匠が飾られてる白い盾があり、左手には細長くてもどこか身体全体や盾に比べてまだ小さく見える鋼性っぽい槌矛つちほこの形をしてるキラキラとした武器が握られてるようだ。
あれが、あの騎士こそがヒルドレッドの契約精霊だというのかーー!
なんかオードリーやクレアリス以上に派手な形してる精霊だなー!
なんか超~~かっこいいんだけど、俺がもしも【愛の大聖霊】と契約できたら、あのようなかっこいい姿してる精霊も手に入れられるっていうのかーーー!?
すごく期待が高まる光景だった!
………………………………………
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