精霊術学院の死霊魔術使い

ワガドゥー男子

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第25話:懸軍万里のチームオケウェー

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第25話:懸軍万里のチームオケウェー


「【大守白霊防壁(グレート・ホワイトスピリット・バリアー)】ーーー!!」



ヒルドレッドの声がこだましてきたかと思うと、あそこを良く見てみるとあの頭部も全部鎧に包まれてる騎士の姿の契約精霊は右手に握られてる盾が天高く掲げられると、その盾からはあっという間に後ろにあるヒルドレッド達のいる位置すべてを広範囲な大きな魔術的な透明のようで真っ白い障壁が出来上がった。



あの通路へと到達するまでにはいかないけど、あの障壁の中から走って30秒も満たない内にすぐにあの通路へと辿り着けるだろう。よし!



「ジェームズ、早くー!」



「ああ!今行くー!」



「待って下さいまし、二人ともー!」



「「ーーえぇ!?」」



ジェームズを早くあそこへ進めるよう促したジュディだったが、何故かヒルドレッドに呼び止められた。



「この障壁から出ていかないで下さいまし。この『レッド・フリークス』……普通じゃありませんのよー!?」



「「ーえ!?」」




…………………



あそこにいるヒルドレッド達を観察しているんだが、なんでかあの障壁から抜け出そうとしないジュディとジェームズ。



あの障壁から出ていって通路まで僅か20秒…いや、あの距離からだと10秒も満たない走行でやったらすぐにあの狭い通路まで到達できて安全圏に入れたのに、それをしないということはー



「グロオオオオオアアアアアアーーーーーーーー!!!!!!」



ガアアーーーーーンンン!! ガアアアーーーーーンン!!ガチャ――――ング!!ガチイイ―――ング!!



世も終わるような叫喚を上げたその【剛力級】の世界獣は何度も両鋏による挟撃を障壁にぶつけてみたが、まったく破ることができずにいるようだ。



ガチャ―――ング!!ガチイイィ――――ン!!



「オードリー!どういう状況だ!?なんであの二人が通路までの距離を急いで向かっていかないんだ――!?」



「 そう簡単なことじゃないわよ、オケウェー!あの『レッド・フリークス』には様々な攻撃手段があると聞いたわ!確かに前にあたくしが戦った時は全種類の攻撃手段を見せる前にお姉様が討伐してくれたんだけど、あれでもれきっとした【剛力級】の世界獣よ。あの【緑両溶毒唾撃(グリーン・ポイゾンメルティング・サライバー)】以外にも遠距離からの攻撃手段があるわよーー!!それもあの前と戦ったよりも何倍も大きくて強力な【熟成体】ならーー!!」



真剣に状況のヤバさを伝えようとしたオードリーに、俺もつられて場の緊張感に引っ張られるようにして唾を呑み込みながら汗を一気に拭きだしてしまって、あそこで繰り広げられてる光景をただ見つめることしかできない。



ガチャ―――ング!!ガチ――――ン!!ガチャ―――ング!!



ん?待ってー!それなら!



「でも、オードリー!なんであのヒルドレッドの精霊からは攻撃が一切やってないんだー!?逆側の手にはあの槌矛があるじゃないかーー!?」



「無駄わよ!ヒルドレの【アールドヴィオーレ】には障壁を展開したままあの中からは敵に対する攻撃が一切できないような集中力の要る態勢に入ってるのよー!そして、障壁の中にも精霊が入ってるなら尚更に攻防同時行動ができないはずだわ、今のヒルドレの実力なら!」



「じゃ、なんであの騎士の姿した精霊に後退の動きしながら障壁を維持したままであの通路の近くまでに後退させ移動させようとしないんだよーー!?そうしたら、ジェームズ達を安全にあそこへー」



「それも無駄わよ、オケウエー!言ったわよね、今の彼女の実力ならそれも恐らく不可能のはずだわーー!!」



動きながら障壁を保てないだとー!なんて不便なー!

「…くーっ!…で、でも……だったら!なんで『俺達から』ヤツへの攻撃をしかけに行かないんだよー!?俺達の能力3人を以ってすれば余裕だろう?あの図体だけデカいバケモンをやっつけるためなー」



「『我が手元に睡魔3射よ参れ【シュート・ザ・リシャー】』ーーー!!!」



俺が言い終える前にすぐに自分の横で陣取ったクレアリスが自身のフクロウの精霊を既に【武器化(ベヴァフヌング)】した状態のままに詠唱を唱えながら矢3本を無から顕現させ、弓につがえてからあの巨大の蠍の形をした世界獣へと飛翔させたーー!






確かに『睡魔誘発』ができるんだっけ?前に話したことあるクレアリスの精霊の能力って。



だが、戦況がそう簡単に好転する訳もなく、



カチャ――ン!!カチャ――ン!カチャ――ン!!



「なんだとーーー!?」



「うそよー!?」



びっくりした顔を浮かべる俺とクレアリスなんだけど、それもそのはず!3本の矢があの『レッド・フリークス』目がけて正確性のある軌道で飛んでいっても、何故か狙った胴体や頭に当たる前に、巨大蠍の既に長くて大きな尾が更に全長が伸ばされ、比較的に小型の矢3本をああも正確に叩き落とせたのが見えたから――!


「や、ヤツー!前の障壁に向かって両脚の鋏をぶつけまくっている最中なのに、後ろから向かっていった矢にまで気づいて迎撃できたとか、後ろからも目があるというのかーー!?」



こりゃーオードリー以外どうすることもないな!なら!



「おい、オードリー!お前の精霊でなんとか出来ないのかー!?」



「…好機を見てから決めるわよー!だってー!」



ん?なんか深刻そうな表情を浮かべるようだけれど、それ程に討伐することが難しい相手だって言いたいのか?確かにあの蠍には強大すぎる禍々しい【反人力】を感じたんだが、それでも前の決闘に見せてくれたあの【災弾五円陣撃】の方がよっぽど強力な能力だと断言できる。



それなのに、それを使おうとしないということはー



「だって、ベネを拳銃にして普通に中型氷弾を打ってても、あの熟成体特有の【聖魔力耐性万丈の滅尾】が弾こうとするだけわよーー!」



「でも、確かにあれに当たったモノすべてがあの自動的発生する氷の柱によって氷漬けにできたんだよなー!?違わないのかー!?」



「無理だって言ってるわよー!【聖魔力耐性万丈の滅尾】があるからって。あの尾には他の部分よりも【聖魔力】が含まれる『魔術攻撃』や『精霊魔術攻撃』に対する耐性が10倍以上も絶大だって言われてるわよーー!あたくしが10発、連続して撃ってても氷柱が発生するかしないかに関わらず、氷漬けにはできないはずだわーー!!」



マジかよー!?じゃ、さっき至近距離にいたあいつがもっと危ない位置で俺達を攻撃できたってことになるんだよなー!?

こっちはヒルドレッドみたいに広範囲な障壁を展開できないっぽいしな!マジで助かった。



ん?でもー!



「つまり、さっき目の前に近くいたあれの頭を先に氷漬けにできたらー」



「しまったわね、最初の好機を見逃してしまった事!」



「いいえ、そうでもないと思うわ。さっきあの尾が伸ばされていく速度みたわね?あの速さだと、至近距離に臨んだが最後、すぐに伸ばされてきた【聖魔力耐性10倍】の尾がうちらを吹き飛ばすか絡みとってたはずだわー!」



俺、オードリーやクレアリスがそれぞれ戦況の正確な分析を述べ合っていると、



ガチャ―――ング!!ガチャ―――――――ン!!!ガチィ――――ンギ!!



くそ、なんかあそこで疲れの色を見せ始めてるヒルドレッドの顔が映ってるけど、いつまでも持たないっぽいよな、ありゃー!




「オードリー!どうにかしてお前の精霊の【真体姿(トゥ―ル・フォーム)】の子熊でもけしかけて、直接的にあの世界獣の身体に噛みつくようにしてみないかよーー!?【精霊】って確かになんの階級のものや強さを持っている【世界獣】からの攻撃を受けていても傷つかない体質を持ってるんだな、授業で習った通りに本当ならばーー!」



「習った通りにじゃなくて実際にそうなのよー!昔に、何百回も目にしてきたじゃない!【ギャラールホルーツ】に住んできた住民なら既に何回も見てきたわよ。精霊術師が世界獣と戦ってる中に、例え使い手が世界獣からの攻撃で傷ついていても使役されてる方の精霊に一切傷が入ってないところをー!」



「じゃ、早くあのベネなんとかってのを放てよー!あの3人が危ないだろうがーー!!」



「ベネフォーロッスよ!ベネフォーロッス~~!!名前ぐらい覚えてなさいよまったくー!」



「どうでもいいから放ー」



「無理わよ……」



「…えっ?な、なんで無理なんだよー!?」



オードリーの悲痛そうな表情に心を鷲掴まれた俺が聞くが、生憎答えが絶望的なものになる、



「たとえベネをけしかけて『レッド・フリークス』に噛り付くようにしてても、全身が凍り付くまでの間に15分もかかると思うわよ、あの巨体のサイズと【反人力】の巨大さを計算にいれると。今のヒルドレッドの実力じゃ10分までも持たないわよね! それに、あの【聖魔力耐性10倍の尾】までもあるし、ベネが蠍のあっちこっちを駆けあがって齧りつき回ってる間に、凍りつけにされた部分をあの尾が叩き起こして直すことができるかどうかも分からないわよ、なにせあたくしはあの熟成体した『レッド・フリークス』と戦うのは今回が初めてなのー!」



「ーっ!くそーっ!そういうことなら俺の魔剣技の攻撃波でも尾が無効化できそうで無駄か!だったら、あの【災弾五円陣撃】ならどうなんだよー!あれなら、60発までの中型氷弾を同時に相手にぶっ込めるだろうが!相乗効果の60発からなる60本の氷柱で構成されたお前の【大氷太巨柱】だったら何とかなるだろうがよーー!」



俺の声が話してく度にもっと荒れてるような声色を帯びるようになったのを聞き逃さないオードリーなので、顔をしかめながらも彼女が俺の焦燥感を感じ取って宥めるように、



「それも駄目わよ、オケウェー…。確かに、あたくしの第二階梯の精霊魔術なら、60発もの氷柱で構成された絶対的な氷滅の力を齎してくれる【大氷太巨柱】で、あそこ一帯を包み込む巨大な太くて圧倒的な氷結の大規模の丘…というか小規模な氷の山をも10秒間だけで結成できたわね。でも……」



「でもー!?」



「でも、さっきも言った通りに、今のあのヒルドレッドの実力じゃ、彼女の精霊や障壁を以ってしても、あたくしからの【大氷太巨柱】の巨大すぎる広範囲な氷結に堪えられず、巻き込まれることになるわよ、あそこにいるジュディもあんたのジェームズもね!」



「なるほど。いわゆるフレンドリーファイアってやつになるかぁ……っておい、なんだよその言い方はー!?『あんたのジェームズ』ってのはどういう意味なんだよー!?せめて『あんたの同性友人ジェームズ』って言えばいいのに、しくしく…俺、同性愛じゃなくて普通に女性好きな男子なんだけどー? 腐った意味はなく、ジェームズはただの友人なだけだぞ」



「気にしない気にしない、 オケウェー君。さて……ヒルドレッドにも苦難の様子を見せ始めてるし、ジュディとジェームズもあそこから抜け出してくの危ない状況だし、どうしたものなのね、ふぅ…」



クレアリスからはさ程、切迫した表情にはなっていないようだが、何か隠し玉まで温存してるのかー?



しっかし……今の俺達3人に何か出来ることは一つもないってのかよー!?嘘だろうそんなの!



………くそ。せめて俺に『あの力』さえ使えれば、あんなブザイ顔してるレッドなんとかってのを俺が昔に眷属にした『ゾンビー化された虎、狼、象や豹といった様々な強化された動物』を異空間収納から放てるだけじゃなくて、【呪いの指突】で指一本だけでも全身の血肉も骨を全部まとめて腐らせたり、【死の壁】を発動しながらヤツの方へ近づいてった途端に跡形もなく消滅させられたというのにそれらの使用を自己規制で禁止にしなきゃならないなんて………



せめて、契約精霊でも手元にいればなぁ………



「グウロオオォォ-オオオオオーーーーーーーーー!!!!!」



「「「ーーー!?」」」



なんだ、俺が考え中の時にそんな咆哮を上げたヤツの意図はーーー!?



ギシイイィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンン!!!!!



なー!?



「ヤツ!いきなりあの尾の先端部分から俺達に向けてなんか『指向性砲撃ビーム』みたいなのを放ってきたぞーーー!?」



「ベネーー!!」

「グラオオーー!」



カチイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンン!!!カチャカチャカチャーーー!!カチュー!



禍々しき紅色の『指向性砲撃ビーム』をこちら目がけて撃ってきたので、素早いタイミングで子熊を放ってビームにぶつかった途端にあれっていう全長200メートル以上のビームをすべてこっちからあっちまでへと何秒間だけで氷漬けにできたーー!



「オードリー!見事に迎撃できたなーー!サンキュー!」



「…………うっそ…よ…」



「え?」



「あらまあぁ、またなの……?」



オードリーの唖然とした顔とクレアリスの冷静さがまだ崩されたない表情を交互に見ていた俺だったけど、異変を察した俺はあの蠍の方へ向き直ると、



「グウロオオォォ-オオオオオーーーーーーーーーー!!!!」



あろうことか、凍っていた全長200メートル以上のビームがたちまち氷ごと氷解していくかと思うと、いきなり固体の緑色の塊に姿形を切り替えて、完全に氷漬けから解放されたその宙で浮かび上がったままになった緑色の固体性ビームが一体どういう原理で動くか、いきなりあの尾の先端についてる小穴へと吸収されていくーーーー!!



フシュウウウウウウウウゥーーーーーーーーーーーーー!!!!



固体から液体、液体から気体へと徐々に穴へと逆戻りしていく様を見るのはなんか滑稽もあり、シュールさもある!



おいおいおいおい、デタラメすぎんだろー!ただのデカい蠍のくせによーー!



「オードリー、ありゃ、お前の精霊の放った氷の聖魔力を吸収してるらしいぞーー!!尾でーー!!」

だから凍りつけられた尾が氷解したんだ。吸収ばっかしやがってー!



「し、しくじったわ、 オケウェー!!今からー」



バココココオオオオオオオーーーーーーーーーーーーー!!!!



「きゃああああーーーーーーーー!!!!?」



なに事だーー!今度はーー!?



爆音と同時に女の子の悲鳴が近くに聞こえるかと思ってたら衝撃波と青色の破片も飛び散ってきたことに気づいてるから、起源を辿って見るとーーー



ブヨオオオーーーーーン!!ブヨオオーーーーーンン!!



「なんだ、あれはーーーー!!?」



青色のこの『床』を下から突き破ってきたとっても大きくて太い粘着質ある触手が見えたかと思うと、クレアリスを『その身体』で巻きついて、そしてー!」



「きゃああああああああーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



「「クレアリスーーーーーーーー!!!?」」



地面に開いたばかりの穴の底へとクレアリスを引きずり込んでいった触手ーーーー!!



おいおいおいおい、いくらなんでも嘘だろう――!!これえー!



「新手が……まさかの新手にクレアリスを連れ去られたなんて…」



「くっ!オケウェー!一旦脇に置いて!今は目の前の敵のことに集中してないと命取りー」



バコオオオオオオーーーーーーーーーー!!!!!



「ぐわあああーーーーーー!!!?」



「オケウェーーーーーー!!?」



オードリーに言われたことは分かってる。



だが、どうしてかぁ……



気配を悟らせないようにするのが得意だったか、床からまたも何かが突き破ってきて、今度は俺の方へと向かってその鋭い鋏みたいなのをぶちかまそうとしてきたーー!!



「ぐうゥーー!クソがーー!!」



だから、今は空中にて、絶賛吹き飛ばされてる最中の俺だ!くそ、あの蠍はその脚についてる鋏をあそこの床に潜り込ませ、こちらまで伸ばせられるってのかよー!どいつもこいつも床の下から攻撃してくるなんて、新たなる世界獣の流行かー!?



「【何線の雷に伴われて刀身に紅蓮の炎を纏う】ーーーー!!!」



さすがに既に【轟炎雷刃】を取り出した俺は精練魔剣にて、空中に吹き飛ばされるままになっていても『床から』伸ばされてきた尾の先端にある鋏をこれで受け止めることができた!



じゃ、反撃にーっておいーー!?



ギシーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンン!!!!!



駄目だったぁ………



俺、その鋏から放ってきた、今度は広範囲な緑色の飽和性砲撃の放出にて、あっという間に遥かな向こう側にある壁へと吹き飛ばされて、激突しそうにはなってるのを横目で見ながらも、



ポイーーーーング~~!



「ほえ~!?」



んだとー?俺、壁を素通りしてないかーー!?



「ううゥゥってーー!?ううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーおーーーーーーーーーーーーーーー!!?」



何故なのか、あの広範囲な砲撃にあって、精練魔剣が勝手に『炎の障壁』を形作ったままに吹き飛んでいった俺の身体を包み込んで(中はさほど熱くないが、外の障壁のところは燃え盛る炎だろう)、砲撃の衝撃波で壁に激突しかかっているかと思えば、どういう原理で壁を素通りしてしまった俺は最後に、壁の中にある滑り通路に遭い、強制的に下の階層へと引きずりこまれていった………………




……………………………………………………………





…………………………………




第三階層にて、『とある一画』での光景:



暗闇の中に、一つだけの光源があり、まるで虚無と闇夜の狭間にあるその大きな穴の奥底へと導かれるようにして、待っているのは宙に浮いている、とてつもない大きさを誇る超巨大な食人植物の形をしている『世界獣』だ。



本体の植物的な様相と相反してるように、青色の髪をしている少女の身体に巻きつかせているのは粘着性の触手であり、それがあの本体へと繋がっている模様。



「これは参ったのね、ふふふ………」



「グルグル……グ―ル……」



「まさかうちを選んでくれるとは光栄だわ……まあ、逆に『選ばされてる』だけなのかしら?ふふふ…」




絶望的な状況だというのに、ただ涼しい顔して微笑を浮かべるだけその『囚われの乙女』が次に見せた行動はもしも見る者がいれば、卒倒させられるものになったであろう………


「ここに【監視用魔道映像記録飛体機器(マジック・フライングレコーダー・オブ・モニタリング)】がどこにもないことが君の運の尽きになるのね」


それだけ口に出していうと、次に少女が取る行動は誰もが真の絶望を感じるものとなるだろう。



「【『顕現せよ、我が闇夜の暗黒鳥類!絶対魔界、漆黒の虚無絶明滅生地獄』(ダークネス・オブ・ザーヴォイド、エックスティンギシュー・オール・ザーライト・アンド・ライフ)】」


青色髪の少女は、口に声として出す詠唱ではなく、ただ心の中での『念話』を通して、その身が凍えるようなどす黒い悪意極まる呪文の言葉を直接的に世界獣の脳へと届かせる、言ってる言葉の意味と正反対な真っ白い肌色を誇るクレアリス・フォン・シュナイダーであった。


その暗闇の中にいる植物に対して、囚われたクレアリスまるごと覆い尽くしたのが、周囲の景色よりも何十倍も濃くて極黒の暗い塊がその一帯を包み込んで離さない『未知なる魔術』のようだ。




どうやら、重大な秘密を抱えているのは、なにもオケウェー・ガランクレッドだけではないということが証明された瞬間だった。




……………………………………………………





…………………………




第三階層にて、別の一画の出来事:



「うううおおおおおおおおおおおおおおおぉぉーーーーーーーーーーー!!!!」



ゴドオオオオ――――ーーーーーーーーッ!!!!



……………



「痛ってててて……!…た、ったくー!何なんだったんだよ、あれー!」



とっても長い滑り通路にあったが、今はひとまず身体を起こして、周囲を見回して今置かれてる状況を確認するのが先だな、うん!



「早くここから抜け出して、オードリーのところに戻っていきたいが、でももしも万が一、ここが本当に第三階層にある場所なら、大聖霊を探して契約を済ませてから戻った方がいいはず」



それに、オードリー程の実力と才能の持ち主なら、なんとかあの最悪な状況でも打破して、単独でヒルドレッド達を助けられると思うんだよね、きっと!



今は信じるしかないんだ!



…………



……



ほう、大穴の奥底へと引きずりこまれてきた感覚あったのに、いざ確かめてみると案外綺麗なところじゃないか、ここは!



狭い廊下みたいなところに落ちてきてしまっても、ここら辺一帯を光で照らしてる夥しい程の小型なクリスタルが壁やら天井やら生え出てきたので、照明に困ることは当分なさそうだな。



「さて、歩いて出口を見つけ出してみるかぁ。ここが最下層の【第三階層】なら、どこかに外へ出られる通り道があるだろう……」



そうと決まれば話が早いので、いざ行動を開始してみると、



『きて……』



ん?



『きて、……邪の神の【死の息吹(デースブレス)】を宿してるフェクモお兄ちゃん……。悪意は……双方にない……知ってる』



いきなり頭の中に声が聞こえてきたんだけれど、またもの『あれ』かー!

って、声が前のと違うから発生源は別物かー?



『こっち、この両開きの扉の向こう……ここが……フェクモお兄ちゃんがほしいもの……ある』



「あ、あんたは誰―!そこの扉からか!中に入ると罠がしかけられてるんじゃないだろうなー!?」



『大丈夫……。ここは……【愛の大聖霊】の眠り籠だよ……』



ーーー!!?



そうかぁ……



運よく、さっきの滑り通路が俺をこの第三階層の奥底まで導いてくれてたんだねー!



『だから、きて……フェクモお兄ちゃんは……【契約人間】として相応しい……はず』



…………………………………




…………………




___________________________________________________________________
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