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第47話:闇に包まれるとある西方地域の国
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精霊術学院、 聖神歴895年、1月の21日、木曜日のお昼の時間にて:
「ありがとうね、オケウエーくん!そしてオードリー様もジュディちゃんも!わたし達B組との親睦を深めるためにクラスメート同士だけのお昼にしてくれて!」
舞い上がったニナはテンション高く嬉しそうにしてたし、俺との葛藤やしがらみが全然なくなった他の子に至ってもみんなが憑き物でも落ちたように敬語の使用を止め、キラキラで、それでいて親切そうな表情を俺の方に向けてきてる。
「ふん、オケウエーもあたくしも全然構わないわ、こんな些細なことで。たまには『チーム・オケウエー』のメンバーとだけじゃなくて、クラスメートとの交流も大事なのよね、たまにだけど!」
満更でもなさそうに答えたオードリー。それもそのはず。
今の俺達はいつものメンバーで屋上か食堂でチームメイトだけで集まってお昼を過ごすんじゃなくて、教室内にとどまってランチボックスを広げたり、学食で買ってきたパンでテーブルを囲んでB組教室の面々だけで食事をとっている最中だ。
さっき、魔道通信機を通してこのことについて既にみんなに知らせておいたので問題なし!
ヒルドレッドとの決闘が控えてるのも放課後からなので、現実逃避というか息抜きな感覚としてちょっとこういうのんびりとしたクラスメートB組教室のみんなとだけの癒しの時間を過ごしてみたいっていう思いもあったので渡りに船って感じだねー!
「…それにしても、やっぱりわたし達が感じたフェクモへの偏見や差別の気持ちの根幹って、『南地不干渉条約』の所為で交流や日常的な接触が皆無だったから、それで様々な悪い噂と歪んだ想像だけが膨らんできたばかりで真相を知る機会がなかったってだけだねー!」
どうやら、打ち解けていられたニナとクラスメート全員だったからか、すっかり遠慮も捨てて普段通りに友達感覚で俺と言葉を交わすようになったニナ。
「そうですよねー!人間って背景と全体を見ることが出来ないと、それを自分の妄想だけで補完しようとする生き物なんですよ。ですから、周りからのプレッシャーだけでフェクモに対する悪い想像ばかり流行っていたってだけですね」
ジュディがそういうと、
「やっぱり、憶測じゃなくて、自分の目で見て確かめる大切さがどれほど重要なのか証明された典型的な例のひとつだったわね」
そう続いたオードリーだったが、次に、
「あたしちゃんもオードリー様の見解に賛成~ィ!ところで、先日のルネヨー・フラックシスでの野外授業にて、大規模戦闘後にオケウエーちゃんが『愛の大聖霊』様と契約できたって聞いたんだけド、確かに1階層の戦闘で、あたしちゃん達のB組教室に最大、5人程の中傷者が出たよネ?」
「あたしね!「私ー?「オレ?「このあっし様?「はいはい、メリダちゃんデスー!」」」」」
口々に反応した負傷したことあるクラスメート5人に対して、さっき俺が拳骨を見舞いしたイザベラが、
「アールシェラ保険医教師の類稀なる上級クラス【傷所治癒魔技(マジックアーツ・オブ・ウンデッドパーツ・ヒーリング)】の力があってそれから早く全快してそうだったけド、確かにお薬ももらってきたんだよネー?ほら、後遺症対応ノー」
「そうみたいね!アールシェラ先生がくれたのよ!なんでも、『アイの治癒術って後から変な症状が出てくるものだから、この薬よ~く飲んで症状を軽減させるんだぞ』って言われちゃってー」
「私も覚えてたぞ!保険医教師が言ってたそれ!まあ、飲んできて分かったけど、超~苦かったんだねー!」
「オレも飲んじゃったミサチ!確かに苦かったが、オレ苦いの好きなのミサチ!」
「あっし様に聞くんじゃねえ―よ、イザベラ黒髪娘がよーお!プライバシーってもんわかってねえーのかよ、あぁ?」
「あ!メリダちゃんが好きな奴デスねー!刺されてあれーな感覚が身体中を駆け巡る感じのお薬って最高デスよねー!たとえ保険医センセーがくれなくとも、薬草専門の本読んでどういう植物って傷の安静化に有力なのかメリダちゃん自身が採草して成分の液体を機器で吸収して自身の右腕にぶっ刺してたところデシタよーー!!」
あ~ははははぁ......なんて、...個性的な子達なんだろうぅ......。それぞれの反応を示した中傷したことある5人であるローラ、アイヴィー、マリア、シェリー、メリダに、
「じゃ、薬を摂取したり注入したことあるあんた達だからよく聞いているといいんだけれド、昨夜おこった『とある事件』があって、警戒するようにネ。何でも、昨日は『チーム・オケウエー』が各所に出てきた世界獣を討伐したことで意識が全部あっちへ向いてたかもしれないんだけド、実はニュースの片隅にも報道されたんだがそれほど注目度が低かったってのもあって全然話題になってなかったんだよネー」
ん?なんの事件だったって言うんだ?
「イザベラ―!その事件ってー?」
気になってしょうがなかったので聞いてみると、
「やっぱりオケウエーちゃんも気になるー?美味っ尻を持つだけあって美味しそうな声だネエ~!」
「い・ざ・べ・ら~!」
未だふざけようとするイザベラなので凄んでみると、
「はーイー!すぐ話すから怒んないでヨ~~!こほんー!何でも、昨夜はクレアハーツの町のとある一隅に、夜の裏路地を歩いていた女性3名が道行く男性達に襲われていてって事件があったヨ?そのいずれかの男性には、泥酔したり放心したりといった様々な精神状態を保つまま、襲っていたそうヨ?」
「襲っただとーー!?何かものでも奪われでもしたかーー!?お金とか?」
「……オケウエーちゃん、…あんたも男であたしちゃん達は女性だからぎこちないようになるのは分かるが、あんたはあんたで立派な男性だから聞いていても気に病む必要ないから言うんだけド、実は昨夜で女性達に襲って奪っていたのは身につけてた物だったりとかじゃなくて、あの女性3人の『純潔』だったってだけヨー?」
「-え?」
「ひ、酷すぎます……」
「最低だわー!もしあたくしがその場に出くわしたら絶対半殺しにしてたわね!この王国に外道極まりない男はお断りよー!」
言葉を失った俺に、ジュディとオードリーがそれぞれ意見を述べた。
「…本当に下種で狡猾なやり方なのハ、狙ったあの3人の女性達にはどれも戦う力を持たない、魔術や精霊と契約する素質を持たない一般人だったってところだヨ?身体能力強化とかで一切の魔術の心得も持たない女性達を巧みにも特定でキ、襲っていたような連中だったヨー?」
ふむ。
それは確かに外道極まりないことをした男達だったけれど、でもたとえ魔術や精霊魔術が使えて抵抗するとしても、確かにこの王都クレアハーツには【魔術発動権管理省】が指定した通りに、学院とか軍が管理してる施設以外に【身体能力強化】と【空中浮遊】以外の魔術の発動が法律にて違法とされ、各所に設置してある魔術発動探知機器を通して発覚でもしたら即逮捕されるってなってなかったっけ?(もっとも、【空中浮遊】に至っても15km以内だけが許されて、それ以外で飛んでいくと違法とされるから魔法飛行車の運転が必要になってくるんだったね?
なので、よっぽどのことが起こらない限り、襲ってきた者を精霊魔術で死なせる程に返り討ちにしたらアウトなんだったね?でも【身体能力強化】で正当防衛した最中に相手を殺せでもしたら許されちゃうってなってるんだよね、ニュアンス的に………
ん?そういえば、ニナに聞きそびれちゃったことがあるんだけど、早く訊かないとー!
「ニナ、ルネヨー・フラックシスでお前を助けた時に、ショックで身を守るために洞窟の入り口近くまで引き返したようだったけど、あれからどうなった?入り口付近でも精霊と契約できたの?」
気になっていたことを訊ねると、
「ええ、それはもう可愛くて好きな精霊なのよねー!オケウエーくんもジュディちゃんもオードリー様も、もし機会があれば見てくれたら絶対に頬が綻ぶほどの可愛さマックスな姿してる精霊だって断言しちゃうよ、えへへ……」
どうやら、自分が契約を結んでいる精霊の可愛さに対して絶対的な自信がありそうな口ぶりだったので是非見てみたいものだな、いつか機会がある時に………
…………………………………………………………
……………………
昨日の夜、午後10時:55分の裏路地にて:
「ぎゃーはははは!!無駄だぜー!!ここでどれぐらい叫んでも助けがやってこないってのー!」
「う~むぐ!ぎゅむっ~!」
「そうさ、そうさ!暴れるのがいいさー!そういうことする度にただおれらを興奮させられる材料となってくだけだからね、ぎゃはははははーー!!」
「ひーっ!むふ~!ふむっ~!?」
真夜中にて、ただ無慈悲に乱暴の限りを尽くしていた男二人だけが拘束した状態の女性3人を襲っていたのだった。
それを上から眺めていた二人の女性の人影があったー!
人影を見れば、身長がさほど男性みたいに高くないにせよ、確かにあの感じからしたら10代後半の背の低くなさそうな少女にも見えたー!
「ね~、あの感じだともう実験が成功してるってことにできないかな、エリザたんー?」
「…いいえ、まだ【実力者】に試していない時点で、成功も何もないと、エリザが思うのですわ」
「えぇ~、面倒くさい~。なら早いとこ嬢たんの多い【学院生】でも捕まってこれ飲ませにいくべきでしょー?いつまで躊躇してこんな何もないカスみたいな男共に試してばかりしていいのー?」
「…まあ、今は黙って見ているだけにして下さいますわ、リンダ……時期に、分かるようになるはずですわ…」
近いところにある一軒家の屋根に、下で行われている非道な『襲撃』をただ観察している二人の赤色のフードを被っている少女の人影がいるだけだった。
どうしてなのか、そのフードのお陰なのかすぐ近くを徘徊していた【魔術発動権管理省】の警官達がいても探知されず、視認できずにいる様子だった!
………………………………………………
…………………
翌朝、つまり、今日の午前7時:30分の朝の王城内の王族用のダイニングホールに、
「殿下と大臣だけじゃなくて、私までご朝食にご招待して頂き誠に恐縮でございます、陛下!」
あそこで腰を下ろしてジャムトーストを楽しむレイクウッド国王に向けてそう言っていたのは30代前半の女性で、腰まで伸びる長いウェーブ型の銀色の髪の毛を分厚い真っ白い帽子で被されているようだ。
神官のローブを着ているその女性に対して、
「クローディッシアー大司祭、自然体でいいぞー?今は余のプライベートの時間に付き合ってもらうだけなので無礼講でもいいんじゃぞ?」
「そうは参りませぬ!陛下ともあろう偉大なお方と一緒の場ならば、いつでもどこでもしっかりとした振る舞いを私がすべきだと、子供の頃から教えられてきましたので」
「ほっほっほ!相変わらず堅物じゃのう、クローディッシアークンは!」
「それはそうとして、なんで僕まで呼ばれてるのかい?いつものように自室にて朝食を済ませておきたかったんだが…」
どうやらガブリエル王子もいるようで、父親である国王の命令に付き合わされて同席せざるを得ないようだった。
「まあ、今はそんなこと言わんでも良いー、我が息子よー。じゃって、今からは食べながらの大事な話をそなたらとしておきたいしなあー!大臣!」
「はっ!ガブリエル殿下、クローディッシアー大司祭殿!実は、陛下が貴方様お二人をお呼びになられたご旨はたった一つの案件だけに御座います!昨夜、この王都にて影を潜んでいた『ヴェルンライト』からの密偵というか、……潜伏していたスパイがいたことを微弱な聖魔力が場に残滓として漂いながらもなんとか個人特定の波長で確認できました!」
リノールト大臣の言葉に対して、王子が、
「おや?そうだったのかい?……それで、その『ヴェルンライト』からのスパイが送り込まれてるってことは、何か目的があって僕らの国にやってきたのだろう?説明してもらおう、大臣」
「はっ!実は、殿下と大司祭殿もご存じの通りに、ヴェルンライト…つまり、【貿易親西国ヴェルンライト】という西方地方の国では昔から、フェクモ大陸からの人間を密入国させてきて、【南地不干渉条約】の署名国の一つであるのにも関わらず、フェクモ人を国内の各地を統治している貴族階級の者共に人身売買をしていた疑惑が御座いました!そして、元々ギャラ―ルホールツには全ての国がその条約に署名した事実が御座いますが、一国だけがその条約に署名せず、フェクモからの船と船舶全般の係留を公式に公の場で認めており、普通のようにフェクモの国々との外交も交わしているほどに一匹狼の政策を取っている国がいることをご存じで御座いますよね?」
「ええ、それは誰もが知ってることなんじゃよ、リノールト大臣。【貿易3大都市国家群、ブルークラール連邦】だろう?」
「左様で御座います、殿下。超~経済的発展を競い合いながら誇っているあの三つの大都市は一番栄えてるブルークラール港町を連邦の正式な名前として命名され、一時は遥か昔に、海から侵攻していた【伝説級の世界獣】を討伐できた英雄的扱いを受けた国でも御座いました!問題は、そのいずれかの三つの大都市には昔から、【南地不干渉条約】という枠組みに対して否定的な姿勢を見せており、経済面に悪いからと言う理由で条約に参加する要求を一蹴したことが御座いました!これもご記憶に御座いますよね、殿下に大司祭殿?」
「それはもう嫌と言う程に聞かされてきたよ、僕がまだ学院生だった頃にね」
「私も殿下と同じでございますね、大臣。それはもう、耳が腐りそうな頻度でずっと歴史に関して教わったことある大聖堂で…」
「宜しいで御座いますね、お二人様!では、そちらのお地図をご覧になって下さいます。衛兵!」
「承知致しました!」
ダイニングホールで既に滞在し、護衛用の衛兵に話しかける大臣がいたので、すぐ様に衛兵が部屋の端っこの壁にある天井の巻かれてあった巻き紙スクロールに繋がった糸を引いて、そしてー!
バー―――!
…………
「ご存じの通りに、そして地図をご覧になって頂いたことで【3大都市国家群ブルークラール連邦】と【貿易親西国ヴェルンライト】がどれもお互いが隣国であるということをご理解できたはずで御座いますね!つまりー!」
「既にフェクモ各国との交流も長年続けてきたブルークラール連邦から、ヴェルンライトが立場の弱い一部のブルークラール在住のフェクモ人の身柄を『買って』、自国へと密入国させていると言いたいんだね?」
確かに、ブルークラール連邦へと正式に移住して、永住や国民までなっているフェクモ人がそれなりにわんさかいる。お金持ちとかとびっきり美人な令嬢と結婚できた出世したフェクモ人もいるにはいる。
だが、連邦へと永久的に移民していったフェクモ人に全てが立場の強い者ばかりであるはずもなく、立場の弱い者、所謂、収入が壊滅的に低いもの、貧しい者や借金の多い者までもいるだろう。それら社会的不適合者のフェクモ系移住者をヴェルンライトの毒牙がかけられてるってだけの話である。
なにせ、北大陸において唯一にフェクモ人が自由に行き来して暮らせる『国』だから。ヴェルンライトにとっての宝箱の多い『金の洞窟』ってところにも見えるだろう、その3大都市の都市国家群を。
「そうなりますね、殿下!では、確かに『南地不干渉条約』の署名国の一国としてのヴェルンライトを、各国が問いただしてきても頑なにブルークラール連邦からの立場弱いフェクモ人の人身売買に関わった疑惑をすべて否定し、実際に調査隊が派遣されていても各所の町と都市にはそういった『奴隷』の痕跡を発見することができませんでした!」
それもそのはず!
何故なら、北大陸には【南地不干渉条約】が結んであるってだけじゃなくて、【奴隷階級完全禁止条約】までもがレイクウッド王国が独立した頃からずっと続いてきて、署名した全ての国からは完全に奴隷階級が撤廃され、今はただぎりぎりで【ブラック事業】と呼ばれてる会社だけがこき扱っている程度の可愛いもの。
だから、もしヴェルンライトで行われてるフェクモ人の奴隷売買が発覚したら、一大事なスキャンダルとなり、それを正すためには西方地方における覇権国であるグランドブードリック大王国が遠征用の連合軍を結成してヴェルンライトを『悪から解放し、正義と自由を与える』っていう大義名分を掲げ、宿敵であるヴェルンライトからもっと領土を拡大する絶好のチャンスともなれるはず。
「……朝食の場なのにそんな重い話を延々と語っていてどうなるんだい?早速本題に持っていってはどうなのかいー?」
前置きが長すぎたからか、しびれを切らした王子に、
「はっ!失礼致しました、殿下!つまり、ワタシが申し上げたい事なのは、昔から立場的に弱者になった一部のフェクモ人を奴隷として隣国から買っていることがあるという噂がされていた【貿易親西国ヴェルンライト】という国から、昨夜はあそこからのスパイがやってきて王都で何か怪しい動きでもしていたのではないかという危惧も御座いました!ですからー」
「炙り出してこそこそしていた目的を突き止めていきたいって、そういう方針を父と共に進めたいんだろう?」
「はっ!仰る通りに御座います、殿下!フェクモ人を人身売買していた疑惑のある国ぐらいで御座いますし、我々のレイクウッド王国の民にまでその毒牙をかけにくる事は想像に難くないことで御座いましょう」
「まあ、確かに昔は西方地方で覇権を謳歌していた【ヴェルンライト西主王国】だった時代があるが、何十年も【グランドブードリック大王国】との覇権争いの数々の戦争で負けっ放しになってからは沢山の領土も奪われてきたので、弱体化されたヴェルンライトが奴隷などに着手して、少しでも経済難を改善させる禁じ手に乗り出すこと自体は合理的な手段とも言えますが、なんか巻き込まれているフェクモ人のことが可哀想すぎて助け出せるなら救出して差し上げたいものでございますね、神官の身として感じるありのままの気持ちを聞かれたら……」
「それはならんのじゃ、大司祭!そなたが何を考えておっても無駄じゃ。あっちの国は我々の管轄外じゃから何もしてやれることはできんのじゃ!まあ、戦争でもしにかけない限りはなぁー。この距離で……」
「それもそうでございますね、陛下!浅はかな考えを申してしまい、お詫び申し上げたい所存でございます!」
「うむ!じゃ、朝食もそろそろ食べ終えたいし、みんなも早く冷めないうちに食べ終えるようにのう、ほほほう~!」
それだけいって、王様につられて、他の3人も優雅な朝食を続けていくだけだった。
ちなみに、【ブルークラール連邦】は確かに『南地不干渉条約』に署名してないギャラ―ルホールツにおける唯一の国。
そのため、各国からの恨みや敵愾心を向けられることも多いはず。
だからなのか、如何なる国であろうと、あるいは連合軍が結成され連邦へと攻め込んでいっても迎撃が簡単になるように、連邦が自分達の優れている技術を頼りに発明した【精練製法無壊砦(リファイーネッド・マニュファクチョーリング・オブ・スピリットアンドマジック・エンチャンテッドフォールトレッス)】にて、精練魔剣と同じ要領で精霊魔術を一般的魔術と融合した新魔術でもって砦を作るための材質をもっと強化するような付与を施し、普通の砦よりも十倍以上も頑丈なものへと昇華させられたのである。
お陰で、通常の魔道兵器では【ブルークラール連邦】が国土を防衛するために国境の何箇所で建設していたそれらの特殊性の砦を一切合切破壊することが出来ないとされている。
如何なる強力な魔道砲台と砲弾であろうとも、連邦の持つ【精練製法無壊砦】の前では小石を投げるのと同じように児戯に等しい行為である。
………………………………………
………………
今日のオケウエー達と王様がそれぞれの日常を過ごしているより、三日前の夜の【貿易親西国ヴェルンライト】の王都、【ヴィスカールゴー】にある空き家の隠し通路の先に繋がった地下廊下にて:
「きひひひ……そうよ~。そのボトルを仰いで飲み干すのよ。いう事聞かなかったら【あそこ】に装着した【魔道電気機器】を起動しちゃうからね~~きひひ!」
「うぐっ!はーい…リンダ様……ごっくっん!」
「いい子よ、さあ!....じゃ、エリザたん~!もうこのチョコ犬に飲ませたわよー!そっちはー?」
「こっちは見ての通り、順調ですわ。ほら、これでも飲んで下さいな、褐色駄人」
「うぅぅ……分かりましたよぉ……エリザ様…」
「駄人にしては良く命令を聞くようになりましたわね。まあ、今までの調教が行き届いている賜物でもありますけどね」
「あうぐっ~!あがっ!ひぎゃやああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「ふぐっ!?おうふっ!!おううああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!?」
それぞれ、変な薬を飲まされた奴隷の身分となったブルークラール連邦から違法に誘拐されたきたフェクモの魔術の才能なしの男達は、成す術もなく美しいながらも根っからの悪人の金髪の美少女である真っ白い肌している魔術使いの主人達からの命令を聞く羽目になり、運悪く『実験を次の段階へと進展させる犠牲』となったのである!
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「ありがとうね、オケウエーくん!そしてオードリー様もジュディちゃんも!わたし達B組との親睦を深めるためにクラスメート同士だけのお昼にしてくれて!」
舞い上がったニナはテンション高く嬉しそうにしてたし、俺との葛藤やしがらみが全然なくなった他の子に至ってもみんなが憑き物でも落ちたように敬語の使用を止め、キラキラで、それでいて親切そうな表情を俺の方に向けてきてる。
「ふん、オケウエーもあたくしも全然構わないわ、こんな些細なことで。たまには『チーム・オケウエー』のメンバーとだけじゃなくて、クラスメートとの交流も大事なのよね、たまにだけど!」
満更でもなさそうに答えたオードリー。それもそのはず。
今の俺達はいつものメンバーで屋上か食堂でチームメイトだけで集まってお昼を過ごすんじゃなくて、教室内にとどまってランチボックスを広げたり、学食で買ってきたパンでテーブルを囲んでB組教室の面々だけで食事をとっている最中だ。
さっき、魔道通信機を通してこのことについて既にみんなに知らせておいたので問題なし!
ヒルドレッドとの決闘が控えてるのも放課後からなので、現実逃避というか息抜きな感覚としてちょっとこういうのんびりとしたクラスメートB組教室のみんなとだけの癒しの時間を過ごしてみたいっていう思いもあったので渡りに船って感じだねー!
「…それにしても、やっぱりわたし達が感じたフェクモへの偏見や差別の気持ちの根幹って、『南地不干渉条約』の所為で交流や日常的な接触が皆無だったから、それで様々な悪い噂と歪んだ想像だけが膨らんできたばかりで真相を知る機会がなかったってだけだねー!」
どうやら、打ち解けていられたニナとクラスメート全員だったからか、すっかり遠慮も捨てて普段通りに友達感覚で俺と言葉を交わすようになったニナ。
「そうですよねー!人間って背景と全体を見ることが出来ないと、それを自分の妄想だけで補完しようとする生き物なんですよ。ですから、周りからのプレッシャーだけでフェクモに対する悪い想像ばかり流行っていたってだけですね」
ジュディがそういうと、
「やっぱり、憶測じゃなくて、自分の目で見て確かめる大切さがどれほど重要なのか証明された典型的な例のひとつだったわね」
そう続いたオードリーだったが、次に、
「あたしちゃんもオードリー様の見解に賛成~ィ!ところで、先日のルネヨー・フラックシスでの野外授業にて、大規模戦闘後にオケウエーちゃんが『愛の大聖霊』様と契約できたって聞いたんだけド、確かに1階層の戦闘で、あたしちゃん達のB組教室に最大、5人程の中傷者が出たよネ?」
「あたしね!「私ー?「オレ?「このあっし様?「はいはい、メリダちゃんデスー!」」」」」
口々に反応した負傷したことあるクラスメート5人に対して、さっき俺が拳骨を見舞いしたイザベラが、
「アールシェラ保険医教師の類稀なる上級クラス【傷所治癒魔技(マジックアーツ・オブ・ウンデッドパーツ・ヒーリング)】の力があってそれから早く全快してそうだったけド、確かにお薬ももらってきたんだよネー?ほら、後遺症対応ノー」
「そうみたいね!アールシェラ先生がくれたのよ!なんでも、『アイの治癒術って後から変な症状が出てくるものだから、この薬よ~く飲んで症状を軽減させるんだぞ』って言われちゃってー」
「私も覚えてたぞ!保険医教師が言ってたそれ!まあ、飲んできて分かったけど、超~苦かったんだねー!」
「オレも飲んじゃったミサチ!確かに苦かったが、オレ苦いの好きなのミサチ!」
「あっし様に聞くんじゃねえ―よ、イザベラ黒髪娘がよーお!プライバシーってもんわかってねえーのかよ、あぁ?」
「あ!メリダちゃんが好きな奴デスねー!刺されてあれーな感覚が身体中を駆け巡る感じのお薬って最高デスよねー!たとえ保険医センセーがくれなくとも、薬草専門の本読んでどういう植物って傷の安静化に有力なのかメリダちゃん自身が採草して成分の液体を機器で吸収して自身の右腕にぶっ刺してたところデシタよーー!!」
あ~ははははぁ......なんて、...個性的な子達なんだろうぅ......。それぞれの反応を示した中傷したことある5人であるローラ、アイヴィー、マリア、シェリー、メリダに、
「じゃ、薬を摂取したり注入したことあるあんた達だからよく聞いているといいんだけれド、昨夜おこった『とある事件』があって、警戒するようにネ。何でも、昨日は『チーム・オケウエー』が各所に出てきた世界獣を討伐したことで意識が全部あっちへ向いてたかもしれないんだけド、実はニュースの片隅にも報道されたんだがそれほど注目度が低かったってのもあって全然話題になってなかったんだよネー」
ん?なんの事件だったって言うんだ?
「イザベラ―!その事件ってー?」
気になってしょうがなかったので聞いてみると、
「やっぱりオケウエーちゃんも気になるー?美味っ尻を持つだけあって美味しそうな声だネエ~!」
「い・ざ・べ・ら~!」
未だふざけようとするイザベラなので凄んでみると、
「はーイー!すぐ話すから怒んないでヨ~~!こほんー!何でも、昨夜はクレアハーツの町のとある一隅に、夜の裏路地を歩いていた女性3名が道行く男性達に襲われていてって事件があったヨ?そのいずれかの男性には、泥酔したり放心したりといった様々な精神状態を保つまま、襲っていたそうヨ?」
「襲っただとーー!?何かものでも奪われでもしたかーー!?お金とか?」
「……オケウエーちゃん、…あんたも男であたしちゃん達は女性だからぎこちないようになるのは分かるが、あんたはあんたで立派な男性だから聞いていても気に病む必要ないから言うんだけド、実は昨夜で女性達に襲って奪っていたのは身につけてた物だったりとかじゃなくて、あの女性3人の『純潔』だったってだけヨー?」
「-え?」
「ひ、酷すぎます……」
「最低だわー!もしあたくしがその場に出くわしたら絶対半殺しにしてたわね!この王国に外道極まりない男はお断りよー!」
言葉を失った俺に、ジュディとオードリーがそれぞれ意見を述べた。
「…本当に下種で狡猾なやり方なのハ、狙ったあの3人の女性達にはどれも戦う力を持たない、魔術や精霊と契約する素質を持たない一般人だったってところだヨ?身体能力強化とかで一切の魔術の心得も持たない女性達を巧みにも特定でキ、襲っていたような連中だったヨー?」
ふむ。
それは確かに外道極まりないことをした男達だったけれど、でもたとえ魔術や精霊魔術が使えて抵抗するとしても、確かにこの王都クレアハーツには【魔術発動権管理省】が指定した通りに、学院とか軍が管理してる施設以外に【身体能力強化】と【空中浮遊】以外の魔術の発動が法律にて違法とされ、各所に設置してある魔術発動探知機器を通して発覚でもしたら即逮捕されるってなってなかったっけ?(もっとも、【空中浮遊】に至っても15km以内だけが許されて、それ以外で飛んでいくと違法とされるから魔法飛行車の運転が必要になってくるんだったね?
なので、よっぽどのことが起こらない限り、襲ってきた者を精霊魔術で死なせる程に返り討ちにしたらアウトなんだったね?でも【身体能力強化】で正当防衛した最中に相手を殺せでもしたら許されちゃうってなってるんだよね、ニュアンス的に………
ん?そういえば、ニナに聞きそびれちゃったことがあるんだけど、早く訊かないとー!
「ニナ、ルネヨー・フラックシスでお前を助けた時に、ショックで身を守るために洞窟の入り口近くまで引き返したようだったけど、あれからどうなった?入り口付近でも精霊と契約できたの?」
気になっていたことを訊ねると、
「ええ、それはもう可愛くて好きな精霊なのよねー!オケウエーくんもジュディちゃんもオードリー様も、もし機会があれば見てくれたら絶対に頬が綻ぶほどの可愛さマックスな姿してる精霊だって断言しちゃうよ、えへへ……」
どうやら、自分が契約を結んでいる精霊の可愛さに対して絶対的な自信がありそうな口ぶりだったので是非見てみたいものだな、いつか機会がある時に………
…………………………………………………………
……………………
昨日の夜、午後10時:55分の裏路地にて:
「ぎゃーはははは!!無駄だぜー!!ここでどれぐらい叫んでも助けがやってこないってのー!」
「う~むぐ!ぎゅむっ~!」
「そうさ、そうさ!暴れるのがいいさー!そういうことする度にただおれらを興奮させられる材料となってくだけだからね、ぎゃはははははーー!!」
「ひーっ!むふ~!ふむっ~!?」
真夜中にて、ただ無慈悲に乱暴の限りを尽くしていた男二人だけが拘束した状態の女性3人を襲っていたのだった。
それを上から眺めていた二人の女性の人影があったー!
人影を見れば、身長がさほど男性みたいに高くないにせよ、確かにあの感じからしたら10代後半の背の低くなさそうな少女にも見えたー!
「ね~、あの感じだともう実験が成功してるってことにできないかな、エリザたんー?」
「…いいえ、まだ【実力者】に試していない時点で、成功も何もないと、エリザが思うのですわ」
「えぇ~、面倒くさい~。なら早いとこ嬢たんの多い【学院生】でも捕まってこれ飲ませにいくべきでしょー?いつまで躊躇してこんな何もないカスみたいな男共に試してばかりしていいのー?」
「…まあ、今は黙って見ているだけにして下さいますわ、リンダ……時期に、分かるようになるはずですわ…」
近いところにある一軒家の屋根に、下で行われている非道な『襲撃』をただ観察している二人の赤色のフードを被っている少女の人影がいるだけだった。
どうしてなのか、そのフードのお陰なのかすぐ近くを徘徊していた【魔術発動権管理省】の警官達がいても探知されず、視認できずにいる様子だった!
………………………………………………
…………………
翌朝、つまり、今日の午前7時:30分の朝の王城内の王族用のダイニングホールに、
「殿下と大臣だけじゃなくて、私までご朝食にご招待して頂き誠に恐縮でございます、陛下!」
あそこで腰を下ろしてジャムトーストを楽しむレイクウッド国王に向けてそう言っていたのは30代前半の女性で、腰まで伸びる長いウェーブ型の銀色の髪の毛を分厚い真っ白い帽子で被されているようだ。
神官のローブを着ているその女性に対して、
「クローディッシアー大司祭、自然体でいいぞー?今は余のプライベートの時間に付き合ってもらうだけなので無礼講でもいいんじゃぞ?」
「そうは参りませぬ!陛下ともあろう偉大なお方と一緒の場ならば、いつでもどこでもしっかりとした振る舞いを私がすべきだと、子供の頃から教えられてきましたので」
「ほっほっほ!相変わらず堅物じゃのう、クローディッシアークンは!」
「それはそうとして、なんで僕まで呼ばれてるのかい?いつものように自室にて朝食を済ませておきたかったんだが…」
どうやらガブリエル王子もいるようで、父親である国王の命令に付き合わされて同席せざるを得ないようだった。
「まあ、今はそんなこと言わんでも良いー、我が息子よー。じゃって、今からは食べながらの大事な話をそなたらとしておきたいしなあー!大臣!」
「はっ!ガブリエル殿下、クローディッシアー大司祭殿!実は、陛下が貴方様お二人をお呼びになられたご旨はたった一つの案件だけに御座います!昨夜、この王都にて影を潜んでいた『ヴェルンライト』からの密偵というか、……潜伏していたスパイがいたことを微弱な聖魔力が場に残滓として漂いながらもなんとか個人特定の波長で確認できました!」
リノールト大臣の言葉に対して、王子が、
「おや?そうだったのかい?……それで、その『ヴェルンライト』からのスパイが送り込まれてるってことは、何か目的があって僕らの国にやってきたのだろう?説明してもらおう、大臣」
「はっ!実は、殿下と大司祭殿もご存じの通りに、ヴェルンライト…つまり、【貿易親西国ヴェルンライト】という西方地方の国では昔から、フェクモ大陸からの人間を密入国させてきて、【南地不干渉条約】の署名国の一つであるのにも関わらず、フェクモ人を国内の各地を統治している貴族階級の者共に人身売買をしていた疑惑が御座いました!そして、元々ギャラ―ルホールツには全ての国がその条約に署名した事実が御座いますが、一国だけがその条約に署名せず、フェクモからの船と船舶全般の係留を公式に公の場で認めており、普通のようにフェクモの国々との外交も交わしているほどに一匹狼の政策を取っている国がいることをご存じで御座いますよね?」
「ええ、それは誰もが知ってることなんじゃよ、リノールト大臣。【貿易3大都市国家群、ブルークラール連邦】だろう?」
「左様で御座います、殿下。超~経済的発展を競い合いながら誇っているあの三つの大都市は一番栄えてるブルークラール港町を連邦の正式な名前として命名され、一時は遥か昔に、海から侵攻していた【伝説級の世界獣】を討伐できた英雄的扱いを受けた国でも御座いました!問題は、そのいずれかの三つの大都市には昔から、【南地不干渉条約】という枠組みに対して否定的な姿勢を見せており、経済面に悪いからと言う理由で条約に参加する要求を一蹴したことが御座いました!これもご記憶に御座いますよね、殿下に大司祭殿?」
「それはもう嫌と言う程に聞かされてきたよ、僕がまだ学院生だった頃にね」
「私も殿下と同じでございますね、大臣。それはもう、耳が腐りそうな頻度でずっと歴史に関して教わったことある大聖堂で…」
「宜しいで御座いますね、お二人様!では、そちらのお地図をご覧になって下さいます。衛兵!」
「承知致しました!」
ダイニングホールで既に滞在し、護衛用の衛兵に話しかける大臣がいたので、すぐ様に衛兵が部屋の端っこの壁にある天井の巻かれてあった巻き紙スクロールに繋がった糸を引いて、そしてー!
バー―――!
…………
「ご存じの通りに、そして地図をご覧になって頂いたことで【3大都市国家群ブルークラール連邦】と【貿易親西国ヴェルンライト】がどれもお互いが隣国であるということをご理解できたはずで御座いますね!つまりー!」
「既にフェクモ各国との交流も長年続けてきたブルークラール連邦から、ヴェルンライトが立場の弱い一部のブルークラール在住のフェクモ人の身柄を『買って』、自国へと密入国させていると言いたいんだね?」
確かに、ブルークラール連邦へと正式に移住して、永住や国民までなっているフェクモ人がそれなりにわんさかいる。お金持ちとかとびっきり美人な令嬢と結婚できた出世したフェクモ人もいるにはいる。
だが、連邦へと永久的に移民していったフェクモ人に全てが立場の強い者ばかりであるはずもなく、立場の弱い者、所謂、収入が壊滅的に低いもの、貧しい者や借金の多い者までもいるだろう。それら社会的不適合者のフェクモ系移住者をヴェルンライトの毒牙がかけられてるってだけの話である。
なにせ、北大陸において唯一にフェクモ人が自由に行き来して暮らせる『国』だから。ヴェルンライトにとっての宝箱の多い『金の洞窟』ってところにも見えるだろう、その3大都市の都市国家群を。
「そうなりますね、殿下!では、確かに『南地不干渉条約』の署名国の一国としてのヴェルンライトを、各国が問いただしてきても頑なにブルークラール連邦からの立場弱いフェクモ人の人身売買に関わった疑惑をすべて否定し、実際に調査隊が派遣されていても各所の町と都市にはそういった『奴隷』の痕跡を発見することができませんでした!」
それもそのはず!
何故なら、北大陸には【南地不干渉条約】が結んであるってだけじゃなくて、【奴隷階級完全禁止条約】までもがレイクウッド王国が独立した頃からずっと続いてきて、署名した全ての国からは完全に奴隷階級が撤廃され、今はただぎりぎりで【ブラック事業】と呼ばれてる会社だけがこき扱っている程度の可愛いもの。
だから、もしヴェルンライトで行われてるフェクモ人の奴隷売買が発覚したら、一大事なスキャンダルとなり、それを正すためには西方地方における覇権国であるグランドブードリック大王国が遠征用の連合軍を結成してヴェルンライトを『悪から解放し、正義と自由を与える』っていう大義名分を掲げ、宿敵であるヴェルンライトからもっと領土を拡大する絶好のチャンスともなれるはず。
「……朝食の場なのにそんな重い話を延々と語っていてどうなるんだい?早速本題に持っていってはどうなのかいー?」
前置きが長すぎたからか、しびれを切らした王子に、
「はっ!失礼致しました、殿下!つまり、ワタシが申し上げたい事なのは、昔から立場的に弱者になった一部のフェクモ人を奴隷として隣国から買っていることがあるという噂がされていた【貿易親西国ヴェルンライト】という国から、昨夜はあそこからのスパイがやってきて王都で何か怪しい動きでもしていたのではないかという危惧も御座いました!ですからー」
「炙り出してこそこそしていた目的を突き止めていきたいって、そういう方針を父と共に進めたいんだろう?」
「はっ!仰る通りに御座います、殿下!フェクモ人を人身売買していた疑惑のある国ぐらいで御座いますし、我々のレイクウッド王国の民にまでその毒牙をかけにくる事は想像に難くないことで御座いましょう」
「まあ、確かに昔は西方地方で覇権を謳歌していた【ヴェルンライト西主王国】だった時代があるが、何十年も【グランドブードリック大王国】との覇権争いの数々の戦争で負けっ放しになってからは沢山の領土も奪われてきたので、弱体化されたヴェルンライトが奴隷などに着手して、少しでも経済難を改善させる禁じ手に乗り出すこと自体は合理的な手段とも言えますが、なんか巻き込まれているフェクモ人のことが可哀想すぎて助け出せるなら救出して差し上げたいものでございますね、神官の身として感じるありのままの気持ちを聞かれたら……」
「それはならんのじゃ、大司祭!そなたが何を考えておっても無駄じゃ。あっちの国は我々の管轄外じゃから何もしてやれることはできんのじゃ!まあ、戦争でもしにかけない限りはなぁー。この距離で……」
「それもそうでございますね、陛下!浅はかな考えを申してしまい、お詫び申し上げたい所存でございます!」
「うむ!じゃ、朝食もそろそろ食べ終えたいし、みんなも早く冷めないうちに食べ終えるようにのう、ほほほう~!」
それだけいって、王様につられて、他の3人も優雅な朝食を続けていくだけだった。
ちなみに、【ブルークラール連邦】は確かに『南地不干渉条約』に署名してないギャラ―ルホールツにおける唯一の国。
そのため、各国からの恨みや敵愾心を向けられることも多いはず。
だからなのか、如何なる国であろうと、あるいは連合軍が結成され連邦へと攻め込んでいっても迎撃が簡単になるように、連邦が自分達の優れている技術を頼りに発明した【精練製法無壊砦(リファイーネッド・マニュファクチョーリング・オブ・スピリットアンドマジック・エンチャンテッドフォールトレッス)】にて、精練魔剣と同じ要領で精霊魔術を一般的魔術と融合した新魔術でもって砦を作るための材質をもっと強化するような付与を施し、普通の砦よりも十倍以上も頑丈なものへと昇華させられたのである。
お陰で、通常の魔道兵器では【ブルークラール連邦】が国土を防衛するために国境の何箇所で建設していたそれらの特殊性の砦を一切合切破壊することが出来ないとされている。
如何なる強力な魔道砲台と砲弾であろうとも、連邦の持つ【精練製法無壊砦】の前では小石を投げるのと同じように児戯に等しい行為である。
………………………………………
………………
今日のオケウエー達と王様がそれぞれの日常を過ごしているより、三日前の夜の【貿易親西国ヴェルンライト】の王都、【ヴィスカールゴー】にある空き家の隠し通路の先に繋がった地下廊下にて:
「きひひひ……そうよ~。そのボトルを仰いで飲み干すのよ。いう事聞かなかったら【あそこ】に装着した【魔道電気機器】を起動しちゃうからね~~きひひ!」
「うぐっ!はーい…リンダ様……ごっくっん!」
「いい子よ、さあ!....じゃ、エリザたん~!もうこのチョコ犬に飲ませたわよー!そっちはー?」
「こっちは見ての通り、順調ですわ。ほら、これでも飲んで下さいな、褐色駄人」
「うぅぅ……分かりましたよぉ……エリザ様…」
「駄人にしては良く命令を聞くようになりましたわね。まあ、今までの調教が行き届いている賜物でもありますけどね」
「あうぐっ~!あがっ!ひぎゃやああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「ふぐっ!?おうふっ!!おううああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!?」
それぞれ、変な薬を飲まされた奴隷の身分となったブルークラール連邦から違法に誘拐されたきたフェクモの魔術の才能なしの男達は、成す術もなく美しいながらも根っからの悪人の金髪の美少女である真っ白い肌している魔術使いの主人達からの命令を聞く羽目になり、運悪く『実験を次の段階へと進展させる犠牲』となったのである!
…………………………………………………
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