精霊術学院の死霊魔術使い

ワガドゥー男子

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第92話:クリスティーナ・フォン・イルレッドノイズの過去

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オードリーとジュディの視点に切り替わると:




「わあああぁ……この真っ白い光、ここを閃光でいっぱい眩しく照らし過ぎて、今は目が痛くて閉じるしかないんですけど、良く身体中の調子に集中すればどうやら私がさっき受けてきた数々の傷も聖魔力量の殆ども回復してるし、これはやっぱりオケウエーさんの発動した精霊魔術による効果なんですよねー?……彼の聖魔力の波長だって身体が覚えているし、きっと間違いないです……」



「そう……わね。あたくしも同じく聖魔力量も傷も殆ど回復したわ!…彼と決闘をして、友達関係になってからさほど時間が経ったという訳でもないのに、なんでこんなに彼の聖魔力波長が身近になって馴染んできて、久しぶりにも感じちゃうんだろう……す、素…敵…だわ…(って、あたくしって、なに変なことをジュディの前で口走ってんの~~?は、恥ずかし過ぎるわよ、こんなの~~!)」



「そうですね~、オードリーさん!こうして目を閉じれば、オケウエーの存在をこんなにも近くで感じるんですもん!暖かくて、親近感あって、私達の全身をこんなに優しいオーラで包んできて放さない安心感……これこそ、大聖霊イーズベリアさんと契約して変化したオケウエーの聖魔力の進化した識別波長なんですねー!……って、あれー?オードリーさん…?」



そこで全身を真っ赤にしながら蹲っているオードリーはぷるぷると震えたまま両手で顔を覆っている様子だが、それを見て不思議に思うジュディがいるのだった!



ちなみに、その後はジュディの頭の中にはこういう考えも浮上した:



「(オケウエーさん、……知り合った瞬間から、興味を惹かれるエキゾチックな見た目だけじゃなくて、その前向きな思考で、テンションの高い少年らしい性格もどっちも素敵で、運命的な出会いに感じたのを今でも鮮明に覚えています、あの訓練場で…… ですが、さっきの彼が私を押し倒してしまって、唇と唇が触れ合いそうになった途端、私の中で、【あれ】の苦い記憶が呼び起こされ、もしかしたらって、……本当に触れてしまったらが最後で、私がまたも『私じゃない』方の私になってしまい、それで、………気持ち悪がられたりしないか、嫌われるんじゃないかって恐れて………ずっと誰とも恋人になるつもりはないと、……決めたのに…………どうしてさっきの気まずい顔になっている彼のを見ると、こうも胸がちくちくと痛んでくるのかなって………)」





…………………………………




……………………





ピカアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!



ビュク~!ビュク~!ビュク~!ビュク~!



真っ白い海のような光の閃光がこの辺り一帯からやっと徐々に収まっていき、晴れていくとぴゅくぴゅくって水の雫、波紋とさざ波の音が聞こえてくると同時に、視界が完全に元の景色を捉える時にはこの辺りに未だに真っ白い霧のようなものまで漂っていて、雨のような白い液状の雫がゆっくりと降りかかっているこの現場をジュディとオードリーが見回した後、



ピカアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!



強烈な光が発しただろうその耳触りな音の音源を辿ると、もっと天高くにはとてつもなく巨大すぎる真っ白い楔の形をしたオーラが出現し、よく目を凝らせば、その中の一か所である中心に、気を失っているクリスティーナをお姫様抱っこにしているオケウエーが見えたーー!




オケウエーの視点に戻る:




さっきので、この全域が俺の【 改:絶清大聖魔術技シリーズの第3段階】から発生させた真っ白い光の本流がみんなの視界を晦ませた時に、それと同時にこんな大きすぎる楔の形をしたオーラも出現して、閃光のあまりの強烈さで敵と認定したクリスに光燃による精神的な大ダメージが身体中に入っただけじゃなくて、目も痛んで思わず両目を覆う羽目になったクリスの頭より真上の遥か上方から、暴力的な速さで以って彼女の頭のてっぺんに鋭い先端が打ち込まれ、それで気絶させられたので、その間で唯一、光の大海の中で俺一人だけが目を晦まされなかったが素早く気絶したクリスをこうして抱きかかえて、そして徐々に光が晴れてきた今になるとーー



シイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!



耳鳴りの音が俺の頭の中だけで鳴り響いたかと思えばー



『これから潜り込む……んだよ。……クリス姉ちゃんの過去の記憶へ』



「ああ……」



という訳なので、イーズに勧められた通りにクリスの過去を除いてみることにする!



今、まるで俺達の感覚の中だけで時間が停止しているかのように、俺の意識が彼女の脳内へとダイヴして、クリステイーナがどうして大の男嫌いになったのか、その経緯を明らかにするために彼女の意識の底へと潜り込むことにしたー!



もちろん、気絶した彼女の心の中にある『魂』とも打ち明け合うことができれば、分かり合うことができれば、仲直り…というか、良好の仲を構築して、育み上げていくことも不可能じゃないはずー!



まずは、クリスの抱えている『問題意識』から覗いてみて、どうやって彼女の中に眠っている『憎悪』と複雑な内面にある『コンプレックス』を知ってから、『適切な手段と対処法で直していく』算段だ!



では、いざ!彼女の過去の記憶へーー!



こういう時間がまるで停止している特殊な領域に入っているからこそ、マーリエラからのカウントダウンに邪魔される訳もなく、彼女の過去の記憶を盗み見る事ができるというものだ!





……………………………………………………




クリスティーナ・フォン・イルレッドノイズの過去に遡る:




アタクシ、……ナぜ男が嫌いになったのか、………ソの発端のことを辿ると、全てはアタクシの過去にあった、アの忌々しい少年、アの苦い記憶と体験があったからこそ、アタクシがこうも男という生き物に対して、強い拒絶反応と憎しみを持つようになったんデス!



ソう。



アタクシが12歳だった頃に、王都に移り住むより前に、アタクシが【ウッドワイス湖】の湖岸沿いの東方面にある、東地域の『エレーマイネッス地域』にある我がイルレッドノイズ家の本拠地の領地である【メルキッシューヴァルツェーア】にて、通称、【メキツヴァルツーア】という古い伝統のあるレイクウッド王国にとっての【王都とも引けを取らない最古の繁栄してきた豊かな東部地域の最大都市】であるここで生まれた瞬間から暮らしてきたアタクシがそこの【ゲリック・ヴォールツン精霊術中等学院】に通っていた時に、全てが始まるのデス!



「エールムハイット君、エールムハイット君、起きてー?」



「んんん……んぐ~、やだよ~、クリス……まだ寝たいし……」



「モう~!ダメじゃない、エールム君~!アタクシがこうして早起きで苦労してアンタを起こしにやってきたんデスから、少しはアタクシのためにもっと精一杯で生きようって心意気がないって言うんデスー?」



「うぅぅぅ……分かったよ、クリス……今から、……起きるから、着替えるから、………クリスは外で待っていて…くれよな?」



「ウふふふ~!モちろんデスー!」



ソれだけ言って、幼馴染の部屋から鼻歌を口ずさみながら出ていったアタクシ。



ソうデスぞー、そうデスぞー!



コこは昔から、アタクシが良く頻繁に訪ねてきたエングラームズ侯爵家の屋敷で、アタクシが良く知っている幼馴染の少年、そのエングラームズ侯爵の一人息子でもあるエールムハイット・フォン・エングラームズの親友として、長い付き合いがあったのデス。



幼少期の6歳から知り合ったアタクシ達は、長い月日を通して色んな体験を積んできたのデスが、



離れ離れになった10歳から12歳の2年間の期間に、アタクシが【エルニマス島】にて、契約精霊を習得するよう厳しい修行をお母さんに課されたー!



厳しい修行デシタが、ソのお陰で、今の12歳になった時点でも王国においてトップ6の契約精霊にも入るであろう【ネトロファイッス=セデロ】をこうして使役することができたんデスからー!



カチャ―!



「もう着替えてきたよ、クリス。早く訓練場に行こう?」



「ウむ!今日は調子がいいみたいデスから、ビしばしやっていこうデスぞ!」



ソれから連れ立って廊下から早歩きしてエングラームズ屋敷の敷地内にある訓練場へと向かうアタクシとエールム君。モちろん、訓練場には朝食の場所に使えそうな小さなカフェテリアがあるので、ソこで簡潔なジャムトーストを用意してくれるこの家系の元で仕えている年配の騎士様がいるんデス!



………………



ガチャアアアーーーーーーーーーンングウ!!!!



「ヌるいーー!!ドこを見ている―?脇が甘いぞー!」



「くッ……」



武器化したアタクシの【ネトロファイッス=セデロ】で上段からの切り落としフェイントを見せたが実はエールム君の脇を狙う薙ぎ払いを実行したので、慌てて剣の向き方と握り方を変えるエールム君がぎりぎりに受け止めただけのようなので、ソれで剣筋の決め方が雑になって震え出している彼を叱咤するアタクシ。



ガチイイイィィーーーーーーンング!!



「モうちょっと上半身の向きと構えを固めて腰を上げろー!ソんなんじゃいつまで経ってもアタクシからの振り降ろしに耐えられんぞー!」



「うぐー!?」



アタクシのロングソードで以って彼のショートソードの形した武器化した精霊を上から圧力をかけると、女々しくも音を上げちゃいそうな彼を鼓舞してやったアタクシ!





…………………………………





………………





「はぁぁ……はぁぁ……」



「今日はこれぐらいにするんデス。ホい、ハンカチーフデスぞ」



「ありがとう、クリス……」



今朝の分の訓練を終わらせたアタクシとエールム君だが、ドうやら満足してもらえたようで、全身から興奮冷めやらぬといった体でまだ息を弾ませている彼が前にいる。マだまだやりたがりたそうな目をしている様子だが、マあ、今日は日曜日だし、これからイくらでも訓練できるはず!



「これからアタクシは少し読書するために自分家ちに戻るけれど、アンタとの次の訓練は昼食の後でいいんデス?」



「はぁぁ……うん!そうするね!」



「宜しい!デは、またなー!」



ソれだけ言って、帰っていくアタクシ。



コうも冷静に彼と会話を交わしているアタクシを見て何とも思わない関係だと思う方がいるかもしれないが、実はそこのエールム君こそ、この世界にとっての【初めての男の精霊術使いであるマックミュレーン様】に続いてのレイクウッド王国における第2番目の男の精霊使いデス!



ソして、精霊術使いとしての素質に目覚めて実際にそうなった彼は昔からアタクシと幼馴染同士でもあることから、ソれで誇りに思うアタクシもいるんデスぞよー!ダッて、誰よりもこの国を愛するアタクシデスものー!



自分の男友達であり、大事な仲間でもあるエールム君が王国にとっての2番目の男性精霊術使いであり、現在はマックミュレーン様が謎の失踪に遭って、イなくなってからでは唯一な男の精霊術使いとなった彼と親密な関係にあるアタクシデスから、イつも周りに対して自慢したいと思うアタクシがいても文句はいえないデショウ……



コの王国内では唯一ではあるが、世界にとっての数少ない精霊術使いとなった彼をこうしてアタクシが仲良く訓練に付き合うと思うと、ナんか誇らしい気分になり、自分の存在が如何にも世界にとって重要であるかを実感できたアタクシ。…イルレッドノイズ家の人間として産まれたんデスから、プライドが高くて何が悪いー?ふーんデス!



デスが、そんなアタクシの期待も名誉も誇りも希望も何もかもを裏切りながら手放させ、どぶに捨てるような乱雑で、野蛮極まりない鬼畜にして愚かな行為を仕出かそうとするエールム君が待っていたとは露も知らずに、楽観視していたばかりのアタクシが後悔する羽目にーー!





……………………………………







………………………





自分の屋敷で済ませてきたお母様達との昼食後、アタクシはエールム君が訓練を続行するだろうエングラームズ屋敷の訓練場へと戻る最中、ソれが目の前に起きたー!




「おい、【ギリシュマナールズ】--!!何度言えば分かると思うんだ――!?僕が欲しいのは広範囲の敵の群れに向けて、魔導散弾銃よろしく小爆発するオーラの弾が撃ちだせる魔技が手に入れたいんだー!お前の武器化した姿がショートソードだから、こうして僕が不利にも相手へのリーチと間合いが著しく短い方にしちまったんだろうがーーー!!お陰で、僕がこんなに、こんなにー!!苦労してばかりだろうがーー!!!」



「ひみゅう~~……」



シょんぼりした可愛いうめき声を発しているその灰色の鷹こそが、エールム君の持っている契約精霊、【ギリシュマナールズ】デス。



コの訓練場に入ってきて直ぐに彼らのやり取りを目撃したので、思わず柱の後ろへ隠れるようにしたアタクシがそこで交わされてるエールム君達の会話をこっそりと盗み見ることにした!



勘デスが、コれから見ることになる光景こそがエールム君の本来の人柄と本質のような気がして、見極めたいと思う自分もいたので、何となくこういう卑怯なストーカーめいた行為をしてしまうアタクシがいるのデシタ………



ソして、アタクシの行動は間違いであるはずがないと証明されたように、



バコオオーーーーーーー!!!



「ひみょおおおおおーーーー!?」



「だから、さっさと僕に『そういう精霊魔術』を伝授しろーって言ったんだ!僕、短距離で世界獣との戦闘を強いられるとかマジで御免こうむりたいんだからーー!!」



バッシイイイイイイイイイィィィ――――――――――!!!バコオオオオオオオ――――――!!!



「ひみゃゃあおおおおおおーーーーーーー!!?」



容赦なく、八つ当たりしたように自分の精霊に向けて鞭と蹴りを何度も見舞いしたエールム君が見えたー!



ヒ、酷い――!



……ドんな場面においても、どんな戦闘のど真ん中へと投じられても自分と共に戦う大事な『相棒』のはずの契約精霊に、……ナんてことをー!



「お前があんなに役立たずな武器化した状態になってるから、そして使える精霊魔術もどれも短距離攻撃範囲ばかりだから、僕がこんなにも苦労して、怯えながらいつしか戦闘でバケモノに至近距離から攻撃される恐怖を感じなくてはならないんだぞ――!!お前がもっと砲撃系の精霊魔術だったら、僕の戦いたいスタイルに合いそうなのに、とんだ貧乏くじを引かされるもんだーー!!くそったれがーーー!!!」



バコオオオオオオーーーーー!!!!ビッシイイイイイーーーーーー!!!!バコオオーーーーーーーーー!!!!ビシイイイーーーーーーーー!!!!バコオオーーーーーーーーー!!!!ビシイイイーーーーーーーー!!!!



「ひみゅうううううううぅぅぅーーーーーーーーーー!!!」



モう見るのに耐えられないので、アタクシがー



「ナにやってるんデスかーーー!!!自分の大切であるはずの契約精霊に向かってーー!!」



タ―――!



ヤっと姿を現して場に乱入してきたアタクシを見て血相を変えた彼は、



「こ、ここここれーー!?ごご、誤解です、クリステイーナさん!これには訳がー」



動揺しているのか、幼馴染であるアタクシに対していきなり敬語で話しかけてきたんデスぞー!?



イくらアタクシが彼らより爵位の一段と高い公爵家であり、【四大貴族】の一つだからって、何年も前から親しい関係を保っているアタクシに向けて敬語だなんてー!ショックデスぞー!デスぞー!



「ドういう訳があって、自分の大事にすべき契約精霊に向けてあんな酷い仕打ちをする必要があると言うんデスーーー!?」



「…そ、それは………」



「会話は少しだけ聞かせてもらったが、どうやらアンタは自分の武器化した精霊の姿であるそこのショートソードが気に入らないから、ソれで精霊に向かって鬱憤を晴らすべく当たり散らかすんデショウー?」



「…………」



「モっと遠距離からの戦い方を好むアンタの気持ちも分からんでもない、……デスが、今のアンタにはその子しかアンタと契約を交わす精霊がいないってのをこの2年間を通して分かってきたつもりなんだろうー?」



離れ離れになった2年間も前から、アタクシが【エルニマス島】にて修行をしてやっと【ネトロファイッス=セデロ】との契約を成功させた間に、別の場所で湖に近い【ガロック・ヘムライト】という【樹界脈も通っていて初級クラスの世界獣も跋扈する『ダンジョン』】にて2年間も彼の家の者に仕える騎士達と魔術師達に護衛されながら修行をし続けてきたエールム君だったが、ソの期間中に彼に向かって『精霊の囁き(ネルン・フェーズ)』を開始させている精霊は2カ月間前になってからようやくしてくれたのがそこの鷹のみ!



「……で、でも…」



「1年間以上も【ネトロファイッス=セデロ】と契約を済ませてきたアタクシと違って、アンタは2カ月間しかその【ギリシュマナールズ】と契約期間がないから、経験からいえばアタクシの方には及ばないようデスが、ダからといって焦っていてはどうするー!?アンタは自分のことを契約人間として選んだその子の好意とありがたみを蔑ろにする気かー!?」



「そ、それは……」



「ソういう訳デスから、今は謝るんデスぞー!自分の契約精霊であるそこの【ギリシュマナールズ】に向かって!今はまだ短距離攻撃しか出来ないみたいデスが、イつか遠距離攻撃できるような精霊魔術も習得できるかもしれないんデスぞー?」



「……そ、そんなの分からないじゃないー!クリスも精霊術学の座学で既に習ったんでしょうー?精霊には自分の特性と特長を活かした精霊魔術と【武器化した姿】しか顕現させてくれないんだー!明らかなに短距離攻撃方法だけが得意のここの出来損ないな精霊がー!どうして僕の最も欲しがる遠距離射撃できる契約精霊と同等の精霊魔術の習得が可能だって思ってるの―――!!?」



「……ソ、そんなことに関しては……」



上手い答えが咄嗟に思い浮かばなくて言い詰まったアタクシに、



「だから、もうこんな役立たずの精霊は要らないよーーー!!!でも僕だって鬼じゃないー!この一日中で『遠距離攻撃できる精霊魔術』を一つだけでも伝授してくれれば、もう当分の間は許してやるよーー?どうだギリシュマナールズーー!?出来ないとは言わせないよーーー!?」



「ひみゅう~~……」



怯えるように縮こまっているその鷹へ、



「どうしたんだ、返事がないなー!」



ソう。



確かに契約精霊は自分と契約を交わした人間に対してしか『人間の言葉』を聞かせて上げられないので、アタクシからは聞こえないが、確かに彼ならば聞こえるだろう、ソの子がその気になればの話なんデスが……



バッシイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!



「ひみゅうううううーーーーーーーー!!!」



「なんだとぉーーー!!この何の役にも立たない無能鳥がーーーー!!!!」



バッシイイイイイイイイーーーーーーーーーーーー!!!バコオオオ――――――――!!!!



「ひみょおおおおーーーーー!?ひみゃあううーーーーーーーーー!!?」



ぷちっとアタクシの脳内に何かが綻び小さな炸裂した音がした。



「どうしたんだよーー!!出来ないのか、一日中で遠距離のー」



がしッー!



「--!?ぐぬぬぬーー!どういうことだ、クリスー!僕の腕を離せ―――!!痛いよぉ―――!?」



我慢できなくなったアタクシがついに、鞭を高々と振り上げて叩き下ろそうとした彼の手を止めるようにがっしりと彼の腕を鷲掴んでやったー!爪が食い込むほど強く握りしめているアタクシなので、痛みを感じて当然デスぞー!



「イいえ、放さないし、許したりもしないぞー?『キサマ』の根性なし、甲斐性なしの性格悪さも気概のなさにも呆れ果てている今のアタクシがー!大体、なん何デスか、キサマはー!?精霊っていうのはなあー!元々は女性にしか契約できない崇高なる天頂神からの【女性エネルギーの方の聖魔力波長であるアーズリア性】が乗せられている神聖なる存在なんデスぞーー!!男のキサマが精霊と契約する時点でも恐れ多くて、天頂神とその精霊に対するありがたみと恐縮で一杯のはずなのに、不満を口走ったり、尊いはずの『男性もリスペクトできる大事な精霊』に向かってあるまじき野蛮極まりない暴行を加えようとするなんてーー!イくら何でも度が過ぎるぞー男のキサマはーー!!」



ガシイイーーーー!!!ガッシイシシイイイーーーーーーー!!!グリリリリリ~~~!!



「痛い――――――!!!痛すぎるよ、クリス――――――――!!!腕の皮膚が千切れるーーー!!!肉も~~~~~~~~~!???」



ずいーー!



「----!?」



ター!ター!



イきなり腕を解放したアタクシなので、後方へと2歩下がる彼がよろめいて尻もちをついてしまったので、アタクシが、



「神聖なる精霊に敬意を払うことの出来ない野蛮な男とはもう付き合いきれないデス。やはりキサマら男共にはあの【激舌の壮麗男】、マックミュレーン様を除いて、天頂神様の女性なる半分の『アーズリア性』が多く含まれている精霊と契約するのに相応しくない生き物デス!」



「で、でも、クリスーー!!こいつは僕の契約精霊でしょう――?人間じゃないし、ただ僕達人間のために尽くしてくれる戦力倍増できる味方って精霊術学の授業でも教えてたじゃないー!そのためだけに存在している精霊を道具のように扱ってもいいじゃないかーー!!」



「--!?道具デスとーーー!!?ソんなの精霊に失礼するだろうがー!エールム----!!!」



ゴド――――――――――!!!



怒りに任せて彼の両脚をアタクシので薙ぎ払い蹴りで転倒させたー!



「ぐー!…く、クリス――!なんなんだよ、もう~!今日の君はどうか、どうかしてるよー!」



「アタクシがどうかしてるってーーー!?マずは鏡を持って自分の姿を見てごらんー!キサマの方こそどうかしてるぞー!大体はなー!精霊というのは、道具じゃなくて『半分物理的で半分生きた霊体的存在』なのデスぞーー!人間だけを傷つけられる【反人力】を持っている世界獣からの攻撃を受けても精霊は傷つかいないから雑に扱いたがる輩もいるにはいるが、精霊にはちゃんと心も魂も宿っているのデスぞー!傷つくこともあるし、精神的なケアーも必要な存在なんデスぞー!ナのに、道具のようにしか思ってないキサマの脳みそこそ腐っているんデスー!」



床に尻もちをついたままクリスの剣幕に一瞬ひるんだ彼だったが、やがて



「………もういいよ、あの子……そんなに精霊が大事なら、そこの子を引き取って帰れよ――!!クリスとはもうお友達関係じゃないもん~~!」



「良かろう――!モうキサマの顔も見たくもないので、アタクシはこれで失礼する。2度とアタクシの目の前で現れるんじゃないデスぞー!野蛮なる精霊虐待少年がーー!」



タタターーーーー!





……………………………………………




ソれから、彼があまりにも精霊に対する考え方が歪み過ぎたので、彼の持っていた【ギリシュマナールズ】を連れ帰ってから野良へ解放してやった。アタクシにはもう契約精霊を持っているので、複数契約することが出来ない程いまはアタクシが自分の精霊である【ネトロファイッス=セデロ】に満足しているし。ソれに、複数契約できる人って大体は両方の精霊がお互いを完全に認め合う関係を築けないとできないらしいので、アタクシにはそんな繊細なケアも気遣いも得意じゃないデスしね……



エールムに関する近況について、アタクシと口喧嘩したあの日を境に、メイドからの報告によると、あれから彼はすっかり精霊と契約してみる気力も興味もなくしたみたいで、かといって普通の魔術使いとか精練魔剣士とか騎士になる努力もジョブ転換もせずに、アの日から今頃までにずっと屋敷に引きこもったまま親の財金に生かされ、無駄遣いばかりの廃人も同然な怠惰なダメ人間に成り下がってきたとか……



ナんで彼が自分の望みの遠距離攻撃手段が可能な精霊と契約できないってだけで人生を立ち直れないのか詳しい話は聞いていないが、モしかしたら精霊に関することよりも、幼馴染であるアタクシと縁が切られたことがショックだけデシタかもな………



デも、そんなの自業自得だけデショウが!キサマがあまりにも精霊を道具としか思わない思いやりのない身勝手な子だったのが悪いんデスぞー!



…………アタクシはー!アタクシは………何も悪く…。



マあ、何はともあれ、長年続いてきた幼馴染関係をやっと断ち切ったアタクシ達だったけど、この出来事を機に、精霊と契約するという行為については男性だけが相応しくない存在だと思うようになって、密かに男に対する不信感を募らせてきた―!



男性なんて精霊と契約するのに向いていない野蛮人ばかりで、女性なるオーラが強い精霊の心も在り方も汚す卑しい者ばかりだという考えに至った!



特殊な理由で政略結婚としてお婿にきたお父様である平民の出の何の才能もない役立たずのクリフォールドもお母様がいつも憂えていて、コとあるごとに自身の持つ絶対的なる力で以って所有物としてこき使うばかりのお母様デスし、アタクシの周りには尊敬できる男性は全くと言っていい程に存在しなかった。



デスから、アタクシは男性に対する嫌悪感も強い不信感もやがて憎しみに変わり、今年は共学化するというお母様の下された決定も猛反対したのデス!



男なんて精霊と契約するだけ無駄だって信じ切っているから、学院に入れるだけ無意味で、要らないって思ってたから反発してきたのデスぞー!



何の役にも立たない野蛮人な男、精霊の尊さも偉大さも分からぬ下賤な生き物ばかりの憎むべき『男』を、ドうして我慢までして彼らの入学をみすみすと許すというんデスー!?



マたも【ギリシュマナールズ】が感じた苦しみと絶望を他の精霊にも体験させたいというのデスか、お母様よー!



ソして、期待ばかりして結局は幼馴染の『男』の行いに裏切られた形になっているアタクシみたいな女の子達を増やしたいというのデスかーーー!!



男なんて、良き隣人である尊い精霊を使役するべきではない下賤で野蛮な存在だというのにー!



デスから、何としてもオケウエーともう一人の軟弱そうな優男も両方をここの学院から追い出さなければ!アタクシ達、『本物の精霊術使い』である女性のためにー!





……………………………………………





…………………………





オケウエーの視点に戻った:




「なるほど……これはクリスティーナの過去の記憶かぁー」



道理で男をそこまで憎むんだ。



クリス、精霊に対してそこまでの尊敬の念を抱いているなんて……



女性しか精霊と契約できない摂理が最近になって覆され、世界にとっての初めての男性精霊術使いである【激舌の壮麗男、マックミュレーン】に次ぐ王国第2番目の『男の精霊術使い』が偶然にも自分の幼馴染であるエールムがなったばかりだというのに、最後は彼が最悪な態度で精霊を虐待したのを目撃したのならばー!



それで、精霊を愛するクリスとしても見過ごすわけもなく、男は実は精霊と契約するに値しない存在だと認定したんだろう……



「マあ、結局は自分が不器用で、エールムを更生させる気転も勇気も根気もなかったから、情けなく彼を良い方向へ導いていくことを放棄したアタクシがみっともなく責任転嫁するがごとく、自身に対する怒りを『男性全て』に置き換えたというだけの惨めな話だったんデスが……」



「---!?」



さっきから、クリスの身体をお姫様抱っこで抱きかかえていた俺が彼女の記憶を覗き込むべく魂を彼女の脳内へと送り込んだが、クリスの心の中にいる今の俺に近づいてきたそこの浮いている彼女がまたも同様に魂の状態で現れても不思議じゃないね。



「クリス………お前………」



「デも、万が一にもまたエールムみたいな『精霊を優しく扱えない男精霊術使い』が学院に編入してきても迷惑だって感じたのも事実デシタから、ソれで頑張ってあれこれと画策してきてキサマらを学院から追い出してやるという気持ちも本物デシタぞー!」



「……そうか…」



今回ばかりは責任を他に転嫁したくなく、神妙な顔となったクリスのようだが、



「マあ、結局、…最後はキサマに負けちゃったデスからな……コればかりはどうしようもない。…………全て、アタクシに幼馴染である彼を良い道へ更生させる責任を手放してしまったから、こうして惨めにも文字通りの天才肌なキサマに返り討ちにあったってだけの話なんデスが………」



自虐気味に語るクリスが苦笑しながら俯いていると、



「……」



俺も上手い言葉が見つからず、黙ることにしただけだ。



「済まないな、オケウエー……アタクシがあまりにも不器用すぎて、コうして力づくで戦うことこそしか上手く問題を語り合えないほどのガサツな女で……。…アタクシがもっと…しっかりしていれば、キサマらが本当にこの学院に相応しい男の精霊術使いであるか、...面接するなり話し合うなりで上手い方法が他にいくらでもあったのに………」



「クリスティーナ……」



「……ネえ、オケウエー…」



「…なに?」



「アタクシ…いいえ、『アタクシ達』、【純粋なる淑女研鑽会】の暴走を許して…貰えないデショウか?」



「…許すも何も……お前はただ自分の信じる道、信念を貫き通したかっただけだから、そうやって俺達に【チーム戦】を挑んでくるだけの話だったんだろう?」



「ソれだけだったら、まだ虫のいい話デショウが……実はー」



パチイイーーーーーーーーーーー!!



「--!?」



ああ!



どうやら、クリスの脳内へと魂を潜り込ませられる時間が終わったようで、本来の俺の身体と正常な動いている時間に戻ってきた俺の意識がやっと今の自分が気絶中のクリスを抱きかかえていることに気づいた!



さっきの真っ白い楔っぽいオーラも消えて、地面に既に着地した俺達に、



「3-!2-!1-!0-!オケウエー選手に抱きかかえられ気を失っている様子の【チーム・純粋なる淑女】のチームリーダーであるクリスティーナが一向に起き上がらないみたいなので、この1対1戦と全体的な【チーム戦】の勝者!オケウエー・フォン・オケウエーと【チーム・オケウエー】になりますーー!!」




……………



これで、長~~い激戦の後、俺達【チーム・オケウェー】がついに勝ったなぁ…



自分達の勝ち得た勝利に満足感を覚える俺はこの心地よい感覚を噛み締めながら、達成感に心を弾ませながらあそこで見てくれている浮かれてる表情になったオードリーとジュディに微笑むだけだった。






………………………………………………





……………………………





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