精霊術学院の死霊魔術使い

ワガドゥー男子

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第94話:王女の期待

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【チーム・オケウエー】が【チーム・純粋なる淑女】と戦っている最中の1月の30日、土曜日の午後5:00時とは別の場面にある、レイクウッド王国の王都、クレアハーツの王城にて:




謁見の間にて、ティファニーブルー の色がする髪の毛を持っている上品なドレスを着ていてティアラも被っている高貴そうな身分の少女がレイクウッド国王陛下の前で頭を下げながら、さっきからここへ通されて無言のままだった国王陛下からの会話が始まるのを待っていた様子だ。



「そなたが先日、ヴェルンライトで起きたクーデターの首謀者であり、あの国の前国王ソランセンから継承権剥奪を成功させたソランセンの娘、ルミナリス・フォン・ヴェルンライト姫じゃなー?」



「うむ!お初にお目にかかり、光栄でありますよ、レイクウッド8世国王陛下。貿易親西国ヴェルンライトの新国王となったばかりのカール現国王陛下の姉であるルミナリス第一王女であります!此度、陛下の国を訪れる目的は遺憾ながらも我々の不始末が発生させてしまった大きな問題を正すために、この国への協力をこちらから申し出るためにしたく存じますから」



「そちらの『不始末』というのは、件の『二人の工作員』、……恐らくは王女殿下の父君である前国王ソランセンの命を受け、それで我が国へと罪もない町ゆく人々に変な薬を飲ませるような『人体実験まがい行為』といった数々の狼藉を働いた密偵の二人を我が国へ放たせたことがですか?そして、協力を提供したいというのは、どんな手を使ったか分からぬが姿が見えずに聖魔力波長も捕捉できないままに通称、『ゴースト・デゥオー』二人の逮捕について力を貸すということでしょうか?」



玉座の前に立っているリノールト大臣にそう訊かれたルミナリスは、



「そうでありますよ!実は、貴殿のいう『ゴースト・デゥオー』なるものは、こちらでは【叡智なる姉妹】 と呼ばれていて、ここ数日間で遺憾ながらも貴殿の国で暴れさせてしまったことを詫びましょう。文献によると、特殊なフードを使って姿も聖魔力も隠蔽し、見えないままにしつつ聖魔力波長の捕捉も不可能になっている今の彼女らのようでありますが、妾はその仕掛けをも無効化する機器があり、犯罪者のその二人を逮捕するのに有効な代物を貴殿に献上し、共に彼女らが捕獲できるように捕縛任務に参加させてもらいたいのでありますが、如何でありましょうかー?」



丁寧な言葉遣いを心掛けて提案をしてみたルミナリスに、レイクウッド国王陛下が、



「願ってもないことじゃな、それ!そなたが喜んで力を貸すというのであれば、我々も断る理由がないんじゃ。ましてや、今まで頑張っても頑張っても『ゴースト・デゥオー』のいる正確な位置を特定もできず、空気中に残留した二人の聖魔力の微々たる粒子しか探知もできておらんのじゃ。そなたが『ゴースト・デゥオー』の捕縛に協力するというのならば、是非とも力を貸して貰いたいものじゃが、見返りについては何が欲しいのかい?」



ようやく肝心なことを聞いてきたレイクウッド王国の王様に、



「…話が早くて助かるでありますよ、レイクウッド国王陛下。…実を言いますと、我が新国王陛下が即位なさったばかりの【貿易親西国ヴェルンライト】は、先日の全国発表で告げたように、【南地不干渉条約】を無視したばかりの前国王ソランセンが【奴隷階級完全禁止条約】にも背いて、我が隣国である【ブルークラール連邦】からたくさんのフェクモ人を違法的に入国させ、奴隷にしたことを我が国の新国王カール国王陛下が全員解放するよう命令をお出しになられましたから、これからは両方の条約の原点にも戻って準ずる覚悟を新たにしておきましたが、これらの原因となるものについては、グランドブードリック大王国にあります!…ですから、こちらから本題に入らせて頂きたいのでありますが、宜しいでしょうか、レイクウッド国王陛下?」



「許す!次を述べよ」



「助かるであります!では、歴史を振り返ってみても貴殿の国の者がたくさんご存じになられているはずでありますが、実はさっき述べていたように、我が国の前国王があれほど無茶ばかりなことをしていたのも、全ては我が国にとっての宿敵である【グランドブードリック大王国】から奪われてきた領土を取り戻すための布石を築くためにありました。ただの非人道的な行為をしていただけじゃなくて、我が父君は人としてあるまじき悪行に手を染まり過ぎましたから、妾と弟で止めるしかありませんでしたが、要件について話させて頂きますと、我々は貴殿に『ゴースト・デゥオー』を捕まえられるように有効的な機器を献上する代わりに、我が【貿易親西国ヴェルンライト】への同盟を結んでは頂けないでしょうかー?」



「「---!!?」」



ルミナリス王女の発言に、レイクウッド国王だけじゃなくて、リノールト大臣まで驚愕したような表情になった。



「……本気で言ってるんじゃったな、ヴェルンライト姫のルミナリスよ?」



「ええ、妾はいつでも本気なことしか言う主義がありませんので…」



「陛下ー!…ここは一旦保留にして、国益に大きく貢献するものであるかどうか、深く議論したり、皆で考えるよう時間がほしいはずです!ですから、今―」



「良かろう―!」



「ーー!?へ、陛下――!?そのお早いご決断はあまりにも急すぎますー!もっとお時間をかけてご考慮するべきなのではー?」



「だから、余は良かろうと言ってるんじゃったぞ、リノールト大臣ー?もし反対に値する理由でもおったら、言ってみるが良いぞー?そちらの意見も見解も無下にはせぬつみりじゃぞー?」



「…大体、確かに姫の協力がなければ、我々はあの【ゴースト・デゥオー】を自力で逮捕できないのかもしれませんが、だからといって長期的な同盟を目先の打破策として締結させるのは如何にも早急過ぎます!ここは一旦、【ゴースト・デゥオー】をー」



「野放しにしろ、とでも言うつもりじゃったかー!?」



「……そ、それは…」



「いいか、リノールト大臣!聞くが良いー!我々がこうして何もできずに、手をこまぬいている間に、あの【 ゴースト・デゥオー】二人の手によって、今でも多くの罪なき都民が二人の毒牙にかかり、変な薬を飲まされた一般市民がそれで我を失うように暴走し出して、問題をあっちこっちへ起こさせるばかりじゃったぞー?幸い、まだ死者数はほんの数人しか出ておらんが、恐らく人体強化の実験を試行している最中の【 ゴースト・デゥオー】は今度、我が国の魔術使いに対しても、ひいては精霊術使いに対してもその薬の服用を騙して飲ませる気満々じゃと思うぞー!そうなったら、我が国力がこれからどんどん低下していく意味を持つことを、どうして分からんのじゃー!?」



「………な、なら」



国王陛下の最もな反論に、言葉に詰まった大臣がすぐに折れそうになって何か言おうとすると、



「安心せい―。余とて今すぐ同盟を正式に結ぶ気はないのでな―!あくまでも、そこのヴェルンライト姫が我々に協力して、【ゴースト・デゥオー】を無事に捕縛できた後の3,4か月間後から締結させる予定を設けたいだけなのじゃ。これで時間の猶予もできるし、こちらから色んな準備も方針も政策も万全な状態で整えられそうなので、如何かのうー?ヴェルンライト姫よー?」



同盟を結ぶという事は、同盟国同士すべてがお互いに【敵国】と認定される相手の国に対して、有事の際に、戦争が勃発する際にお互いがある程度の協力もしくは共戦や共闘も提供し合う義務が生じるので、生半可な覚悟で国同士の同盟は容易ではない選択のはず。



「…そう言って頂けるだけ恐縮であります、レイクウッド国王陛下ー!幸い、我が国にも敵国であるグランドブードリック大王国と真っ向から戦争を仕掛けるつもりは当分なくて、ただ守りを固めたいだけなのであります。確かに、今はあの国に面した国境にいくつか戦略的な箇所で【精練製法無壊砦《リファイーネッド・マニュファクチョーリング・オブ・スピリットアンドマジック・エンチャンテッドフォールトレッス》】が前々から建て上げられて、強力な防衛網が敷かれているはずでありますが、それでも足りぬと思うところもあるので、あちらから責められたら対処に瀕することも考えられますが、国王陛下がそうおっしゃったのなら、仕方なく3,4か月間後も待つことにするでありますよー?」



「すまんな、ヴェルンライト姫よー。出来ることならば、今すぐ正式に同盟を結んでやってもいいんじゃがな……」



「いいえ、お気になさらずに。こちらも同盟の締結後に無理難題を押し付けるつもりはなくて、ただの物資と貿易強化や金銭面での協力を仰ぎたいだけなので、別にそちらから兵を派遣してもらって共に戦おうという事を要請したいという訳では決してないので、どうかお気楽に準備して頂けると幸いでありますよ」



「そうするんじゃよ、ほうほうほうー!」



「お話し中で申し訳ございませんが、陛下と姫殿はどうやってあの【ゴースト・デゥオー】を捕縛するつもりですか?詳細についてはどのようにー」



「それについてはもう当てになるような有力な作戦を用意しておきましたので、詳しい話は会議室とか閉鎖された部屋でお話し合いになってはどうでしょう?」



「良かろう。リノールト大臣!」



「は!」



「ヴェルンライト姫を会議室へ連れていってくれ。余も行くんじゃぞ!」



「畏まりした!」



深々と頭を下げる大臣は、立ち上がる王様に見守られながら『こちらへおいでください』とルミナリスにいい、玉座のすぐ横にある最上階へと続く階段のある部屋へと案内していくのだった。



「(弟にかけてもらった、【顔面偽装魔術】によって擬態姿になったラニアをホテルに残しておいて正解であるな。ここは王族と重臣ばかりいる王城であるし、連れてきたらきっと落ち着かな過ぎて擬態が緊張感で解ける可能性もなくはないな……)」



大臣と王様の後につきながら、そんなことを考えるルミナリス王女。



「(そして、この国において噂に名高い【奇跡の南地男子】であるオケウエー殿……お主と出会うことを楽しみにしているぞ)」



期待に満ちた小さな笑みを浮かべながら、王様と大臣に続いて階段を昇っていくヴェルンライトの姫がいるのだった。





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