精霊術学院の死霊魔術使い

ワガドゥー男子

文字の大きさ
139 / 196

第138話:オケウェーの覚悟

しおりを挟む

……………………………



同日の木曜日の2月4日、11:30時午後、【静寂の霊群森】にて:




「ジュディ……良くきてくれた。……その顔をみれば、どうやら気づかれずに抜け出してこられたようだな?」

一応、イーズに周囲に気配があるか探知できる権能を使用させたが何もなかったと知らされた。少なくともこの直系100メートルの範囲内で。



「……はい、…です。あ、あの……」



「うん。大事な話があるから、他に聞こえないように【ここまで】来てもらったんだけど……」



「………」



予想通りの反応だな。緊張しているのか、ジュディの暗い表情を一目みれば分かる程に彼女は本当の意味で緊張していて、今からでも逃げ出していきそうな辛い面持ちになっている。



やはり今までの元気そうな態度が演技か、もしくは自分の本心を隠すための【建前】だったかもな!



「……【不潔なる醜顔悪臭クエラドリアス】」



「嫌ああああぁ!!そ、そんな名前ーーー!き、聞きたくないですよーーーー!!」



耳を塞ぎながらいきなり取り乱したジュディ。



だが、それでも俺との約束を必死に守ろうとするのか、ここから逃げ出すのを堪えてそこで蹲り出して両耳を塞いでるだけ。克服しようと皆の前であれほど気合を見せて元気な振舞いを装ってきたのに、いざという時に核心を突く話題をすれば【その有様】とは前途多難そうだな………



「〖そもそも、……ジュディが先に昔話について語ってくれたんだろう?あの日のジュディの私室で。……どうしてその時にジュディが自らその名前を口にしても動揺したりせず、普通に話せたのに、今は改まって俺から何かを聞こうとしたら、そんなに……………〗」



強引に【短距離集団許可中念話】という半径1キロメートルだけ指定した人物達と脳内で会話ができる【物理的無視魔術】で以って伝えるとー



「〖嫌あぁ………私と話がしたいなら……、念話を切って下さいよ!そんなのズルいです!〗」



それもそうかぁ……焦りのあまり、俺の膨大な聖魔力で以って、ジュディの許可無しでは魔術接続が通らなかったはずのこれだったけど、俺の力を駆使して強引にでも頭の中へ侵入できちゃうように【短距集団許可中念話】を無理やり使ってしまった!



それがマナー違反だってことは謝ろう。



「〖ごめん!じゃ、ジュディが落ち着くまでいくらでも待ってやるから。念話を切ってあそこで俺が待つからね!じゃ〗」



それだけ言って、あそこの大樹の幹へと身を寄り添ってジュディが覚悟を決めるまで待つと、





………………………………………………………





…………………………………





20分後:





「すゥーーはああぁぁ………すゥーーはああぁぁ…………」



「もう俺の話を聞く準備ができた?」



「………今なら、大丈夫……だと思います。……ごめんね、オケウエーさん…。自分の過去を話した時はそんなに気にしなかったのに、今回はオケウエーさんからその名前を聞いてしまうと、………なんでかいきなり形容しがたい不安感と恐怖感を感じてしまったんです…………」



「あぁ……みんなまで言う必要はない。辛かったんだろう?あの時は?」



「……はいです。……じ、自分の醜くなった姿をもしも、【憧れ】のオケウエーさんに見られたらと思うと…………」



「ん?…いま、なんて言った?」



小さな声で何か言ってくれたジュディだったから聞こえなかったんだ。なので、聞き返すと、



「はーッ!?い、いいえ、いいえ、何でもないですー!さっきのはただ自分が仲良くなった、……【友達】になってくれたオケウエーさんの前で醜くなった姿を見られたくないだけであって、それ以外のことはないです!はい!あ、あはははは……」



なんか困惑したような乾いた微妙な笑い声をしながら慌ててそんなことをスラスラと口から出したジュディだったが、



「……そんな心配は要らないんだけど?………別に、俺が検証のためにお前とキスをするために人気のないここまで呼んだ訳じゃないけど?」



確かにキスを交わすと発動する呪いだったとジュディから聞いたので、彼女の懸念を払拭させるべくこう伝えた。事実だからな。あんな辛いトラウマがあったのに、俺がそこまで鬼畜にジュディにまたも無理をさせる必要性もない。話を聞かせてもらっただけでも良かったから、わざわざこの目や...鼻まで確かめるまでもない。



俺は本当にそんなことをするためにジュディを呼んだ訳じゃなくて、純粋にとあることを訊ねるために、相談するために呼んできただけなんだよ。



だって、なるべく早くジュディのそんな理不尽な呪いを取り除くためになんとかしてやりたいんだもん!



「……そ、そう……ですかぁ……」



ん?なんか落胆したような、複雑そうな顔になっているジュディなんだけど、どうしてー!?



そこは喜ぶべきだろう!?友達とはいえ彼氏でもない俺と接吻をしなくて済むってことを!そして呪いの所為で醜くなる顔を見られずに済むこと!



「……覚悟が決まったなら俺も話すことにしたいんだけど、じゃ、………どこから話せばいいのやら……」



ヤバい!さっきジュディのことをあれこれ言ってたけど、いざ自分の番で【あれ】について話すとなると、なんか自分でも緊張してきちゃった!………だって!しょうがないだろうー!



【あれ】について話してしまったら、自分が本当は【死霊魔術使い】であるということを自らジュディにばらすようなものだし!



でも、話すかどうかもう覚悟を決めてきたのに肝心な場面に臨んだら尻ごみしちゃうとか情けない限りだな、俺という男は!



どうやら覚悟が要るのは俺も同じなので、すうはすうはと深く息を吸い込んでは吐き出すのを繰り返すと、



「ジュディ………お前は、【人の魂】を人工的な………器へと移植させる……【魔術】があることを知ってるのか?」



まずは、ジュディが【あれ】についてどこまで知ってるのか、探りを入れるためにこう聞いたんだけど、



「……えっ?そんなこと、……可能にできる魔術がありますかー!?」



俺の言葉を聞いて意外そうな反応を見せたジュディなので、どうやら【死霊魔術】における【あれ】のことを知らないっぽいようだな。そんな調子だと【死霊魔術】についても知らなさそう...なら!



「ジュディのその呪い……、古の魔神であるクエラドリアスが関係するんだってな?……でも、大体その呪いって、遥か昔に生きた彼が現代の今に生きてるジュディと直接に対面したり遠距離呪術なんかによってかけたわけじゃないだろう?」



実際にもう死んでいたようなもんだったからな、クエラドリアスって。死んだのに、なお彼由来の呪いがずっと解除されずにジュディの中で健在って現象は凄いとは思う...



「はいです……昔、マックミュレーンさんに調べてもらった結果、……どうやら私の身体にかかっている呪いは遺伝子的に受け継がれてきた【呪痕】の一種で、私の父の家系であるトンプソン家から代々と継承されてきた呪いらしいです。私の血液の中で流れてるものです……それも、子孫である私の番だけで後天性に呪いが活発化され、幾星霜な長い時間を経て何世代か続いてきた今、私と【前に何人かのトンプソン家な人間】だけが運も悪くこんな酷い、…………姿が変貌する、……【あれ】になっちゃうんです!」



ふむ。大体想像した通りのことだな、お前のその呪いの本質って。



元凶である魔神がもう死んだというのに、尚も彼を発生源に何世代も前からかけられた呪いがこうも現代に生きる子孫のジュディにまで被害が及ぶとか、理不尽この上ないぞ、こん畜生な魔神めーー!



アフォロ―メロといい、クエラドリアスといい、魔神ってのはクズばかりしかいねえのかよーー!?



あ!ヤバイ!怒りでついつい脳内の言葉遣いが悪くなってしまった、まるでゴロツキみたいに!反省反省!



まあ、一応は真摯的な良心ある魔神もいたからね、その、……ジュディが話してくれたシェリアっていう【蛇人族】のご始祖であるミカゼーという男は…



ミカゼーという例もあったので、全ての魔神が極悪人って訳じゃないことは明白だな!



なら!



「じゃ、その呪いっていうのは、遺伝子にかけた呪いであって、それによって形成された【身体】にまで影響を及ぼしていて、呪いが発動する際はその遺伝子で創生された【身体】が変貌したという仕組みなんだが、………実際には、つまり、………なんと言えば分かりやすくなるのかな………つまり!所詮は、それは遺伝子にかけた呪いであって、別にジュディ個人の魂にかけた呪いという訳ではないだろうー?つまり、何が言いたいのかというと、その呪われた遺伝子のある【身体】からジュディの魂だけを抜き取り、別の【白紙の状態】で生成された新規なる遺伝子がついている【人体的な器】へとお前の魂を移植させることが出来れば、ジュディの呪いも自然となくなり、新しい生命体として再誕生させられるんだろうー?」



「……………そ、そんなこと…………そんな奇跡的なデタラメ過ぎることって、本当に出来ちゃうとんでもない魔術があるっていうんですかーー!?」



俺の明かした事実をまだ信じられない顔してるジュディが驚愕とも興奮ともつかない表情を浮かべなら俺の近くまで寄ってきて両手を俺の両腕へ添えてきたら、



「ああ、そうだよ。【とある魔術】なら、それが出来るんだが……」



「【とある魔術】?それって何なんですか教えて下さいよー!?わ、わわ私、もうこんな呪いなんて吹き飛んじゃえばいいのにー!って常々思ってきたんですからーー!!」



希望を見出した顔してるジュディが縋るような切実な思いで俺の身体を強く揺すって聞いてきた。



いよいよだな、こんな時が!



あの胡散臭くて危ないオーラ出してるぜナテスの野郎はともかく、学院関係者限りだと、イリーズカ先生以外にも、ついに俺の秘密を知ってもらう時がこんな短期間で出来てしまうなんて………



しかも、同じチームメイトのジュディにー!



どうするんだよ、俺ーーーー!?



本当に、ジュディに対して【死霊魔術】について話すのかよーーーー!?



彼女の呪いを直したいのは山々なんだが、後からの立ち回りも考えねばならんとなると、慎重に動かざるを得ないな、こんな場面になっていてもー!



というか、もし俺からの覚悟が決まっていても、呪いから解放されるかもと聞いたジュディがそんなに必死になっているようだが、それでも怖くないのかー!?



だって、【魂】を移植させるようなもんなんだぞー!?



一般的に言えば、つまり、たとえ俺の魔術を通して痛みが一切感じなくなるような昏睡状態の元で発動できても、一度は死んでもらってからは別の【人工的身体】へとジュディの魂を転生させるような仕組みになってるぞー!



それでも、いいんだな!?



.......だって、呪いが発動するのはキスされる条件だけだし。



そして、変貌した姿といっても24時間後は元通りに自動的に直るし。



つまり、もしジュディが強く望めば、呪いを直さなくてもこのまま一生すれば、未知なる怖い魔術に思えるはずのこれを使ってまでジュディを一度死なせるような魔術で魂を移植させる必要ないんだもんね。



他に何かがあって、ジュディをそんなに切羽詰まった心境にさせてるのー!?



もしかしたら、恋愛が出来ない身体より、魂を移植させた方が一度死する価値があるんだろうな!



だったら、ジュディの意志を組んで上げるべく、俺もジュディの呪いを完全に取り除いてやろうー!



別の身体へ、俺の【死霊魔術】を通しての特製【ホムンクルス】へと魂を移植させることでな!



前のイリナ戦でもイリナがあんなバケモノ姿になる前に、俺が斬首した後は彼女の魂を抜き取ろうと魂を移植させることで救うことも考えたことあったっけ?樹界脈に魂を回収される前に。でも、結局はそんなもんに魂を回収されるよりもさっきに【聖体正義戦獣】に化けたからな。



イリナを自分のゾンビーとして変えてみようって冗談半分で言ったこともあった場面だったな、あははは....



でも、最後のイリナは、彼女の魂があの首輪?だったっけ、によって別の小さな霊体的の器へと強制的に移植させられ、そしたら物理的な化け物となって巨大化されたんだったな!【聖体正義戦獣】として!





________________________________________________
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

処理中です...