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古の島編
リベンジ。VSゴリラ
しおりを挟む晃は洞窟に猿の死体を持って行って、毛皮をどうにか剥ごうとしていた、生き返れるクセに喉は乾くし腹も減る。土魔法で作ったナイフで少しずつ剥いでいた。
「…どうなってんだ?」
こんなちっぽけなナイフでは今の俺の身体は傷一つ付かない、だけどこの猿の死体は俺が作ったナイフで少しだけ傷付けられた。
とは言っても全力で斬り込んでようやくだったが…それでも切り傷が付くのは変だ。
…死んだらステータスの防御力は引き継がれない?でも骨とかは硬いままだし…勿論毛皮としては硬さがおかしいが、それでも殴った時とは全く違う。
「ラプラスに聞いてもそういう物だから、みたいな答えしか返って来ねえし…」
[申し訳ございません]
いや、別にいいが…それにしても駄目だ、こんなのいつまで経っても剥げやしない、日が暮れる。いい加減暖まるために毛布ぐらい欲しいんだが…透明狼の死体はそのまま放置してたから腐っちまったし、夜の洞窟は冷えるんだよ…。
…寝るか。
*********************************
〈何処かの教会〉
「脚の調子はどう?」
少女の様な背格好で綺麗なローブに深くフードを被った少年が、木で出来た長椅子に座った槍を持った男の背中に乗り掛かって話しかける。
「…お陰様で好調だ、後はリハビリを済ませればかつての様に戦えるようになるだろう、感謝している」
槍を持った男は乗り掛かっているのを引き離し、その場に立って頭を下げた。少年は微笑んでいるのか、「ふふふん…」
という音が聞こえる。
「いいんだよ~その代わりに頼みを聞いてくれるんだから…」
「…十三人の騎士団を四つ作るという話か、傭兵団の真似事でもして金を稼ぐのか?」
「んーそれもイイけど、もっと大事な事があるんだ~」
少年は笑いながらそう言い、近くの長椅子に寝転がった。
「…まぁ構わないが、アテもある」
「アテ?その人達って何人ぐらい?君は強いけどその人達強いの?」
「俺を含めて十二人、実力は…あるとは言えないな、才能の無い奴等の集まりだったからな…皆俺を慕ってくれた、この中で唯一才能がある者として俺達を導いてくれと言われていた、そのせいで外野からのやっかみも多かったが」
槍を持った男は何かを懐かしむような表情を浮かべ、長椅子に腰を掛けた。
「へぇ~なら丁度いいや、君にはクラブの王になって貰おうかな」
少年はヘラヘラと笑いながらそう言った。
「クラブ…トランプのか?それに騎士団なのにキングとは…?」
「騎士団はその紋章のキングに従うようにする、そしての王達を僕が従えるんだ。才能のある精鋭を集めようと思ったけど…最弱の紋章であるクラブを非才の者に分ける事にした!」
少年は急に立ち上がり、ハイテンションで叫び出した。
「俺が呼べばあいつらは来てくれるかもしれない。しかし、俺個人としてお前には恩があるが、あいつらがお前に従うかは分からないぞ?」
槍を持った男がそう言うと少年は少し考えるような素振り見せるが直ぐにニンマリと笑い、それをやめた。
「君を慕ってたんでしょ?なら君が僕に従ってくれたら大丈夫、信ずる王の信ずる神は民にも信仰されるものだよ」
「…やけに具体的な喩えだな、実証でもしたことあるのか?」
「…まあ実体験だから」
少年は上を向いてそう言った。相変わらずフードは取れず、顔は隠されたままだった。
「あ、仲間を呼びに行くついでに出来たらお使い頼んでもいい?」
「…何が欲しいんだ?」
唐突な少年の発言によって槍を持った男が一瞬呆けるが、直ぐにハッとして質問を聞き返した。
少年は小石を拾い、床にカリカリと絵を描き始めた。
「えっと…こんな感じのお面なんだけど似たようなのでいいよ、適当に改造するし」
少年がそう言うと槍の男は頷く。
「商業が盛んな都市にも行く予定だ、似たような物もあるだろうが…探したいなら同行しても構わないが」
「んー」
どうしよっかな?やりたいこともあるし力も付けないといけないからなぁ…まあスペード、ハート、ダイヤの騎士団は基本的に自力で探す予定だからなぁ…でもこの世界の社会勉強も必要…うーん。
「いいや、まだ力の使い方がよく分かって無いんだ、少し訓練しなきゃだしここは別れよう」
うん、力を付けておこう。何事にも力は必要だからね。
「そうか、では行ってくる」
槍の男がそう言うと、少年は手を振ってこう言った。
「いってらっしゃい、シャルル」
あ、何気に初めて名前で呼んだな。
***********************************
「…この気配は?」
次の日、晃は洞窟の外で座って、どうにか毛皮を引き裂いた猿の肉を焼いていた。そうすると、気配察知に知っている気配が引っ掛かった。
「ゴリラかよ…洞窟に近付いて来るな」
巨大ゴリラの気配だった、何かと戦っているようで暴れ回っていた、その近くには数体の巨大バッタの気配がした。どうやら巨大生物同士の戦いのようだ。
「無視しておこう」
無視だ無視、どうせなら生き残った方を仕留めるか、どうせゴリラが勝つだろうし、そうしたらリベンジにでも行くか。
それにしても…一つ疑問があるんだが、何で俺のレベルは上がんないんだ?身体が概念になってて、死んでも復活出来るけど精神が鍛えられてレベルも上がるんじゃ無かったのか?
[…申し訳ございません、半神半人になった事によってレベルの概念が不安定になっているようです]
それってつまりレベル上がらないって事か?…なんか残念だ。そして半神半人ってよく考えたら何だ?
あ、どうやら戦闘が終わったらしいな…勝ったのはゴリラか、まあ黄色いバッタじゃ無くてただの巨大バッタだったから勝てなくて当然だな、予想通りだ。
「行くか」
晃は火を土魔法で作ったバケツに入った水で火を消し、骨付き肉をかじってゴリラの気配がする場所に向かって行った。
気配がした場所に着くと、辺り一帯は木が何本も倒れていた。どうやらここで戦闘があったみたいだ、あのゴリラ…派手に暴れやがって。
「グゴォ…」
辺りを見渡していると背後から重い足音と唸り声がする。
「よう、久しぶりだな…リベンジに来たぞ」
「グガァァッ!」
ゴリラは俺を見て大きな雄叫びを上げ、足元に落ちていた倒れた木を持ち上げて投げつけてきた。
晃はそれを横に回避した、投げられた木が地面に激突して砂埃が舞う。
「うおっ!相変わらず凶暴だな!“生物鑑定”!“身体強化Ⅶ”!」
『無し』 ジョブ 無し LV259 種族 《ラースゴリラ》 年齢 ???
攻撃力 16000
防御力 10500
俊敏力 2300
魔力 3600
魔防力 6300
《固有スキル》憤怒の魂
《スキル》 体術LV2 投擲LV3 野性の勘LV6 物理耐性LV3 拳術LV2 威圧LV2
《称号》野性の獣 古の魔物
クッソ強えな、だがスキルのレベルが低い…何でだ?
「あの狼に比べればまだまだ余裕だなぁ!」
ゴリラはもう一度木を引き抜き、こちらに投げ付けようとする、しかし晃は縮地法を使って巨大ゴリラの顔付近に跳び、そのまま勢いを殺さずに跳び膝蹴りを打ち込んだ。
「ゴァ!?」
「かってえな!」
巨大ゴリラは顔をのけ反った…しかし倒れ込むことは無く足を踏ん張りのけ反ったままこちらに唸ってきた。
晃はそのままゴリラの背後に付き、背中に後ろ跳び回し蹴りを決めた。
巨大ゴリラは背骨の辺りを打たれ、上半身が不安定になってそのまま後ろに倒れた。
晃は押し潰されないようにその場から距離を取り、様子を伺った。ゴリラはその豪腕で地面を叩いて辺りを振動させた。
「ゴガァァッ!!」
「おっと」
巨大ゴリラは何度も地面を叩き、こちらが怯んでいる隙に立ち上がった。
嘘だろ…全力で蹴り込んだのによ…あんだけの強さで蹴られたら背骨外れるだろ…。それにしたって頭を攻撃されてあの復帰かよ。
「ゴァァァッ!」
巨大ゴリラはその拳を強く握った、そうすると拳に赤黒い光が集結した。不味い、アレも戦技か?それなら俺も…!
晃は右手を強く握って意識を集中させる、晃の周りに青いオーラと青き龍が現れ、右腕に集結した。
「ゴグガァァ!」
「喰らえや!“龍爪拳”!」
巨大な赤黒い拳と青き龍を纏った拳がぶつかり合い、衝撃音と振動が鳴り響き、拳同士の間にはプラズマのような光が飛び交った。
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