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古の島編
スラムでの生き方
しおりを挟む「成る程、それがお前の元の世界の文化か…」
「まあ、沢山あるから、それだけって訳じゃ無いが…俺の出身はそういう所だったな」
「…なんだか、可哀想…お別れなんて…」
「あー…まあ、悲しさはあったな。それでこの後俺はスラムに行ったんだが、そこはもう酷くて、信頼し合える仲間も、味方と言える奴なんて居なかった」
「…じゃあ、一人ぼっちだったの?」
ミインは心配そうな目で、こちらを見つめてくる。
「…いや、一人だけ、たった一人だけ友達と言える奴が居たんだ」
***********************************
ガンバとのお別れを済まし、スラムに行く事になった。持っていくのは数着の服と食料そしてそこそこの金、後はガンバから受け取った拳銃とマガジンだけだ。あまり沢山の物を持ちすぎると、目立って襲われる可能性を考えて精々小さめのバッグに入る程度しか持って行かなかった。
そこは、酷いところだった。
今までは普通の一軒家とマフィアの館にしか住んでいなかったので、より酷く感じた。
そこら一帯にゴミや瓦礫が広がり、建物の壁は整備されていないのか大量の植物が生えている。中には金属板を貼り付けただけの継ぎ接ぎの家や、広めのパラソルを広げ、床には布を敷いている、家とはいえない物で生活している奴も居た。設置された何かのパイプの様な物は風化して穴が空いていた。
晃と同じぐらいの子供達は、集まって座り込んでいる。何かをかじって食べながら、わいわいと喋っている。
そこら中から異臭がし、泥と埃だらけの男達がこちらを見つめていて、居心地が悪い。
「…綺麗すぎるか」
服装はマフィアの時に着ていた服は豪華すぎるので適当なシャツとズボンを見繕ったが、それでも此処に居るには綺麗すぎるようで、警戒している様な目で睨み付けてくる。
どうやら周囲の同僚の様子を窺いつつ、晃を狙っている様で、いつ襲い掛かられてもおかしくない状況だった。
「…失敗したな、早めに家を見つけないといけないが…」
あくまで大通りだから襲い掛かって来ないだけで、下手に横道に入ったら襲撃は必須だろう。ガンバに教えて貰った、家を売ってる奴の住処に行きたいが、このまま歩いていても行けそうにない。
無法地帯であるスラムと言っても、法が適応されないだけでルールはある。住人達が作ったルールは守らなければならない、住人達による都合の良いルールは、破られればそいつらにとっての不利益になる。下手に破ると反感を買って襲われるかもしれない。法は、取り締まる者が居ないので、守る必要は無い。
まあ、つまり、襲って来る奴を返り討ちにする事は問題無いが、人を選ばないと面倒な事になる。縄張りとかを考えている奴とやり合う事になるのは御免だ。
突っ切るか?行けるとは限らないが、スラムの情勢を把握出来ていない今は戦闘は避けた方が良いだろう。
晃は近くにある中で、最も人影が少ない横道を選び、駆け込んだ。
「なっ!?」「しまった!」
先程まで晃を狙っていた奴ららしき声が聞こえる。晃は入り組んだ道に入り込んで、追って来る奴らが見失うまで逃げた。
「この辺りか」
晃は家を売ってる奴の住処の近くに来ていた。辺りを見渡し、それらしき場所を探す。
この辺りは高めの建物の間にある道なので、日当たりが悪く、全体的に暗い。最寄りの壁は、全て何かの絵が描かれていて、色は少し濁っている。
そうしていると、ギイッ、と金属が軋む音が聞こえた。その方向を見ると、奥に階段のある鉄格子の扉を開け、男が此方に近づいて来た。
「よぉ!新入りか?俺はベルン、住む場所が決まって無いなら紹介するぜ?…って子供?雰囲気が大人びてたから勘違いしちまったぜ…」
金髪にサングラス、金属製の綺麗なネックレスを着けた、見るからに羽振りの良さそうな男が話しかけて来た。どうやらその男が探していた男らしかった。
「…と言うことは、お前がガンバさんの…金はどれぐらい持ってる?バイトとオススメの物件を紹介するぜ」
男は珍しい物を見るようにマジマジと晃を見て、急に交渉を吹っかけて来た。
どうやらガンバの知り合いのようだ。俺の事を知らせてくれたのか…。
「勿論、この無法地帯は勝手に空き家に住み込んでも良いが、買ってくれるなら、それはお前の家だって俺と俺の仲間が保証してやるぜ?少なくとも客にそこに勝手に入るのは俺と仲間に喧嘩売るのと同じだからな…っと子供に難しいこと言っても分かんねえか?まあ、暇ならこっちに来な」
ベルンと名乗った男は手を拱いて、先程その男が出てきた鉄格子の扉に歩いていく。再度、ギイッと音が鳴り、晃はそれについて行った。
階段を下って行くと、コンクリートの灰色の壁に、申し訳程度の電灯が暗い地下を照らしていた。階段を下り切ると、真ん中にデカい机が設置してある部屋に着いた。
「ここが俺のオフィスだ。さあ、新入り、特別に俺が此処のルールを教えてやる、今は人手も足りてないからな、バイトの斡旋もしてやるよ」
何故に初対面に対してここまでやるのかは分からなかったが、ベルンは丁寧に教えてくれた。何となくだが、ガンバと同じ雰囲気を感じる奴だった。
ベルンはまず、縄張りを取り仕切ってる奴を教えてくれた。
大きく分けて三つの地区に分かれていて、一つはスラムの人間が、後二つはマフィアの人間が取り仕切ってるらしかった。マフィアが取り仕切ってる地区の一つの東地区は俺がお世話になっていた所の幹部の一人だった。
言わば顔見知りだ、住むならそこが良いだろう。
もう一つの西地区の方は…まあ、敵対してたマフィアの幹部だ、此処には近付かない方が良いな。
最後にスラムの人間が取り仕切ってる南地区は、取り仕切ってる人間が粗雑な為、治安が悪いらしい、住むには危険が大きい。
「東地区とはお目が高いねぇ、あそこは治安が比較的良いし、ちょうど良い空き家も数軒ある」
結局、俺は東地区に住む事を決めた。
「金は…よしよし、足りるな。物件、案内するから着いてきな」
その後、二階建ての程良い家を紹介してもらい、金を渡し、俺はそこに住む事になった。
日も沈み、硬いベッドを我慢しながら寝たその夜、1階から不自然な物音がして、俺は目が覚めた。
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