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紅い月編
館の秘密
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夜も更け、晃は暗い寝室の中瞑想していた。
ミインは「アキラが寝るまで起きてる」と言ったが、部屋の灯りを消して魔石灯を使って薄暗くした後、晃が妹と同じ要領で寝かしつけると、直ぐに眠ってしまった。
「…俺、寝かしつける才能でもあるのか?」
瞑想の最中、そんな事を思ってしまう。妹は心も身体も強いが、俺によく甘える奴だ。偶に眠れないと言って
小さい頃の妹は弱くて、俺が守ってたっけな…血が繋がって無くとも妹だ。家族は守らなければならないと教えられた。
「家族を守らなければ」
そう思ったのはガンツに拾われて、俺を大事にしてくれた組織の仲間達と接してきた時からだ。
その前の俺の肉親には、そんな感情は一切湧いてこなかったな。
「スゥ…」
息を吸う。
“気配察知”の範囲内に人の反応がした。これは…リアか?
…また何かしに来たんじゃないだろうな?
気配は少しずつ近付いて来る。足取りは一定、ゆっくりと歩んでこちらの部屋に向かってくる。止まる様子はなく、最終的に部屋の扉の前で立ち止まった。
「…何のようだ」
晃は扉に近付き、ミインが目を覚さないように小さな声で、扉の向こうのリアに用件を聞く。
「起きてらっしゃいましたか。ゼロ様がお呼びです、着いてきて頂きます」
扉の向こうからリアの返事が聞こえる。昼の様な語尾を伸ばすような、なんだか落ち着いた雰囲気とは全く違う。
それに晃は溜息をつく。
「なあ…前回のことがあるのに、普通寝てるであろう深夜に部屋に来て、俺がそのまま着いていくと思うか?そもそも、俺をあの島に飛ばしたのもお前だろ…?」
「おっしゃる通りです…ですが、着いて貰わないとなりません」
「…立場的には、居候だから基本的に言うことは聞くべき何だが…流石に警戒ぐらいするぞ?」
両者が膠着状態になり、無言が続く。
暫くの無言の後、晃が発言した。
「ミインを連れて行く。少しは信頼してるからもう危険な事は無いと思うが、無いとは限らない。またミインを置いて行くのも俺としては嫌だし、ミインは強いからな」
「申し訳ございませんが、ミイン様を連れて行く事は出来ません。アキラ様1人で来るのが、ゼロ様の望みですので」
「こっちとしてもこれが最大級の譲歩だ」
「左様でございますか…なら、仕方ありませんね」
その言葉を聞いて、晃は嫌な想像をした。
互いに啀み合っている中「仕方ない」と発言する奴にはどの小説でも、折れてそう言う奴はいない。
「はぁ…私としては、連れて行っても良いと思うんですが…アキラ様、ミイン様が夜中に起きて寝不足になったらどうするんですか?」
「え」
「寝不足は乙女の大敵ですよ。美容にも影響するんです。一部こちらの事情もありますが、条件があり夜中にしか目的は果たせない為、こんな時間になってしまったんです」
「ん?えぇ?」
「…それでもミイン様を起こしますか?」
昼間や今とも違い過ぎるリアに、晃は困惑する。
まさかミインの美容を引き合いに出されるとは思わなかった。いや、どうすればいいんだこれ…ミインの美容と健康…着いて行くリスク……いや、悩むまでも無いな。リスク背負おう。
「分かった…1人で行こう」
「…はい~ご理解頂きありがとうございます」
晃の答えに満足したようで、口調が氷が溶けるように元に戻っていく。
なんだか丸め込まれた?シリアスだっただろ?展開おかしいだろ?知らんな、俺はミインの健康を自分の手で脅かすとか出来ないからな。
*********************************
案内されたのは館の書庫であった。
書庫に入るとそこにはゼロが1人、席について本を読んでいた。書庫内は複数の魔石灯によって十分な明るさが確保されていて、ゼロは書庫に入った晃にに気が付いてそちらを向いた。
「済まないねこんな夜更けに。リア、下がっていいよ」
「はい…何かあればお呼び下さい」
リアは一礼し、書庫から音を立てずに素早く出て行く。
晃はゼロの向かい側の席に座り、ゼロと話し始める。
「…で、なんでわざわざ夜中なんだよ。前回の事もあるし、俺が警戒する事ぐらい分かるだろ」
「こっちにも事情があってね、そこに扉があるだろう?」
ゼロは本を置き、書庫の奥にある扉を指差す。
ずっと気になってはいたが、あの奥には何があるのだろうか。昼に開けようと思ったが開かなかったし、よく見ると鍵穴の様なものも無いので、開ける方法も分からない。
…その気になればぶっ壊して入れるだろうが、そんな気はさらさら起きないな。
「晃、君に一つ知識を教えてあげよう」
「知識だぁ?」
「魔導具に複雑な術式を組み込む時、目的を満たす為や効果を増やす為に条件が課される時があるんだ」
「いきなり何の話だよ…」
「その条件は何かを縛るもので、目的の内容や難度、効果の上昇幅が大きい程に縛りも大きくなる」
「…魔導具に組み込まない魔術も同じか?」
「そうだよ。基本的には魔術の消費魔力量が増やして効果を高めたりするね…少し脱線したか、実はこの屋敷自体が大きな魔導具みたいなものでね」
「へぇ…まあ、さっきまで無かった場所に急に現れたりする不思議な館だしな」
「それでだ。館を魔導具を使う際に、組み込んだ術式によって制限があるんだ、例えそこの扉は夜の一定時間の間しか開かない」
「成る程、鍵穴が無い訳だ」
晃は説明を聞いて納得する。
魔導具の知識を教えて貰ったが、やはり本とかラプラスを利用して勉強しなきゃダメだな、その内時間を取ろう。
上手くいけば元の世界に戻る方法も分かるかもしれない。
美咲達を迎えに行って、元の世界に戻るのが目標だが…簡単なことでは無いのは確定だ。簡単に異世界転移出来るなら、俺らの事を転移させた奴らは何度も転移をやらせていた筈だし、アグゼルも異世界に送る事は出来るが、戻す事は難しいと言っていたからだ。
…神様が難しいって言う事を成せるかは甚だ疑問だが。
「それで?用事は夜にしか開かないあの扉の奥に行くことか。それなら俺1人だけを呼ぶ必要あるか?」
「ミインはあの奥について知っているんだよ。だから呼ぶ必要は無いんだ。私はミインもついでに連れてきても良いと思ったんだけど…リアに、乙女を不必要に夜に起こさない方が~と言われてね」
「…あ~、成る程な」
あれ、誤魔化しとかじゃなくてガチだったのか。
まあ、俺は有無を言わずそのまま乗ったが…。
「で、あの奥には何があるんだ?」
「入れば分かるよ」
ゼロはそう言うと立ち上がり、件の扉まで歩いていく。
晃はそれに着いて行き、開いた扉の奥に入って行った。
ミインは「アキラが寝るまで起きてる」と言ったが、部屋の灯りを消して魔石灯を使って薄暗くした後、晃が妹と同じ要領で寝かしつけると、直ぐに眠ってしまった。
「…俺、寝かしつける才能でもあるのか?」
瞑想の最中、そんな事を思ってしまう。妹は心も身体も強いが、俺によく甘える奴だ。偶に眠れないと言って
小さい頃の妹は弱くて、俺が守ってたっけな…血が繋がって無くとも妹だ。家族は守らなければならないと教えられた。
「家族を守らなければ」
そう思ったのはガンツに拾われて、俺を大事にしてくれた組織の仲間達と接してきた時からだ。
その前の俺の肉親には、そんな感情は一切湧いてこなかったな。
「スゥ…」
息を吸う。
“気配察知”の範囲内に人の反応がした。これは…リアか?
…また何かしに来たんじゃないだろうな?
気配は少しずつ近付いて来る。足取りは一定、ゆっくりと歩んでこちらの部屋に向かってくる。止まる様子はなく、最終的に部屋の扉の前で立ち止まった。
「…何のようだ」
晃は扉に近付き、ミインが目を覚さないように小さな声で、扉の向こうのリアに用件を聞く。
「起きてらっしゃいましたか。ゼロ様がお呼びです、着いてきて頂きます」
扉の向こうからリアの返事が聞こえる。昼の様な語尾を伸ばすような、なんだか落ち着いた雰囲気とは全く違う。
それに晃は溜息をつく。
「なあ…前回のことがあるのに、普通寝てるであろう深夜に部屋に来て、俺がそのまま着いていくと思うか?そもそも、俺をあの島に飛ばしたのもお前だろ…?」
「おっしゃる通りです…ですが、着いて貰わないとなりません」
「…立場的には、居候だから基本的に言うことは聞くべき何だが…流石に警戒ぐらいするぞ?」
両者が膠着状態になり、無言が続く。
暫くの無言の後、晃が発言した。
「ミインを連れて行く。少しは信頼してるからもう危険な事は無いと思うが、無いとは限らない。またミインを置いて行くのも俺としては嫌だし、ミインは強いからな」
「申し訳ございませんが、ミイン様を連れて行く事は出来ません。アキラ様1人で来るのが、ゼロ様の望みですので」
「こっちとしてもこれが最大級の譲歩だ」
「左様でございますか…なら、仕方ありませんね」
その言葉を聞いて、晃は嫌な想像をした。
互いに啀み合っている中「仕方ない」と発言する奴にはどの小説でも、折れてそう言う奴はいない。
「はぁ…私としては、連れて行っても良いと思うんですが…アキラ様、ミイン様が夜中に起きて寝不足になったらどうするんですか?」
「え」
「寝不足は乙女の大敵ですよ。美容にも影響するんです。一部こちらの事情もありますが、条件があり夜中にしか目的は果たせない為、こんな時間になってしまったんです」
「ん?えぇ?」
「…それでもミイン様を起こしますか?」
昼間や今とも違い過ぎるリアに、晃は困惑する。
まさかミインの美容を引き合いに出されるとは思わなかった。いや、どうすればいいんだこれ…ミインの美容と健康…着いて行くリスク……いや、悩むまでも無いな。リスク背負おう。
「分かった…1人で行こう」
「…はい~ご理解頂きありがとうございます」
晃の答えに満足したようで、口調が氷が溶けるように元に戻っていく。
なんだか丸め込まれた?シリアスだっただろ?展開おかしいだろ?知らんな、俺はミインの健康を自分の手で脅かすとか出来ないからな。
*********************************
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書庫に入るとそこにはゼロが1人、席について本を読んでいた。書庫内は複数の魔石灯によって十分な明るさが確保されていて、ゼロは書庫に入った晃にに気が付いてそちらを向いた。
「済まないねこんな夜更けに。リア、下がっていいよ」
「はい…何かあればお呼び下さい」
リアは一礼し、書庫から音を立てずに素早く出て行く。
晃はゼロの向かい側の席に座り、ゼロと話し始める。
「…で、なんでわざわざ夜中なんだよ。前回の事もあるし、俺が警戒する事ぐらい分かるだろ」
「こっちにも事情があってね、そこに扉があるだろう?」
ゼロは本を置き、書庫の奥にある扉を指差す。
ずっと気になってはいたが、あの奥には何があるのだろうか。昼に開けようと思ったが開かなかったし、よく見ると鍵穴の様なものも無いので、開ける方法も分からない。
…その気になればぶっ壊して入れるだろうが、そんな気はさらさら起きないな。
「晃、君に一つ知識を教えてあげよう」
「知識だぁ?」
「魔導具に複雑な術式を組み込む時、目的を満たす為や効果を増やす為に条件が課される時があるんだ」
「いきなり何の話だよ…」
「その条件は何かを縛るもので、目的の内容や難度、効果の上昇幅が大きい程に縛りも大きくなる」
「…魔導具に組み込まない魔術も同じか?」
「そうだよ。基本的には魔術の消費魔力量が増やして効果を高めたりするね…少し脱線したか、実はこの屋敷自体が大きな魔導具みたいなものでね」
「へぇ…まあ、さっきまで無かった場所に急に現れたりする不思議な館だしな」
「それでだ。館を魔導具を使う際に、組み込んだ術式によって制限があるんだ、例えそこの扉は夜の一定時間の間しか開かない」
「成る程、鍵穴が無い訳だ」
晃は説明を聞いて納得する。
魔導具の知識を教えて貰ったが、やはり本とかラプラスを利用して勉強しなきゃダメだな、その内時間を取ろう。
上手くいけば元の世界に戻る方法も分かるかもしれない。
美咲達を迎えに行って、元の世界に戻るのが目標だが…簡単なことでは無いのは確定だ。簡単に異世界転移出来るなら、俺らの事を転移させた奴らは何度も転移をやらせていた筈だし、アグゼルも異世界に送る事は出来るが、戻す事は難しいと言っていたからだ。
…神様が難しいって言う事を成せるかは甚だ疑問だが。
「それで?用事は夜にしか開かないあの扉の奥に行くことか。それなら俺1人だけを呼ぶ必要あるか?」
「ミインはあの奥について知っているんだよ。だから呼ぶ必要は無いんだ。私はミインもついでに連れてきても良いと思ったんだけど…リアに、乙女を不必要に夜に起こさない方が~と言われてね」
「…あ~、成る程な」
あれ、誤魔化しとかじゃなくてガチだったのか。
まあ、俺は有無を言わずそのまま乗ったが…。
「で、あの奥には何があるんだ?」
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