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別れ
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それから私たちは最後の2人の時間を夜桜を見てそして思い出話に花を咲かせながら過ごした。
「そういえばあの時、君がさぁ~。」
「え!?私!?そんなことやったっけ!?」
そんな過去のことなどを思い返しながら話し続けた。
そしてついにその時は来たのだった。
「ゲホッ!ガハァ!ゴホォ!」
ショウがいきなり苦しみだしたのだ。
「大丈夫!?ショウ!?」
私は急いでショウを草むらに横にならせ落ち着くよう言った。
するとショウが一言だけ言った。
「もう限界かな・・・。」
きっと自分だからこそ分かるのだろう。
でも自分の死をこんなにも間近に死を感じているはずなのにショウの声は穏やかだったのだ。
「君と過ごしたこの一年。楽しかったよ。」
「きっと今まで僕が過ごしてきた人生の中で一番楽しく充実していたと思う。」
「最初は僕の勝手な考えから始まった奇妙な関係だったけど時間が経つにつれて笑いあえるようになった。」
「本当にありがとう。僕に生きることを教えてくれ
て・・・。」
「そして僕の最後を看取ってくれて・・・。」
「でも。もう終わりみたいだね。」
そこでショウがはにかんだ笑顔を浮かべ言った。
「心残りと言ったら君の名前を聞けていなかったことぐらいかな~。」
「でももう無理かな?」
ハハハと少し渇いた笑みをこぼすショウに私は思い切って言った。
「奈帆。」
「え?」
「蓬莱 奈帆(ほうらい なほ)。」
「それが私の名前だよ。」
私は自分の名前などあまり他人には言わない。
その言葉に対してショウは驚きの表情を一瞬、浮かべ今度は先程とは違いとびっきりの笑顔に切り替わった。
「奈帆ちゃんか。良い名前だね。」
「名前も聞けたし心残りはもう無いよ。もう安心して殂ける。」
「君だけでも僕を覚えてくれていたらそれで良いよ。」
そんなこと言うショウに私は最後の言葉をかけた。
「ふん!お前はキャラが濃すぎて忘れるにも苦労しそうだからな。」
「そんなに言うなら忘れないでいてやるよ。」
恥ずかしい気持ちを抑え私は言った。
「私がお前がここで生きたと言う証明だからな。」
その言葉に再度、ショウは驚きそして最後に泣きながら最後の言葉を口にしたのだった。
「これからも強く生きてね。」
「さようなら。そして愛してるよ。奈帆。」
その言葉を皮切りにショウの腕は重力に従って下に沈むように落ちていった。
ショウの顔を見ると幸せそうな顔つきをしていた。
そして私はショウから視線を外し桜の木を眺めながら言った。
「うるさいやつが居なくなって清々したわ。バカ。」
その時の私は気が付かなかった。
雨など降っていなかったのに自分の手の甲にポツリと水滴が落ちていたことに・・・。
———そうして私は夢から覚めた。
「ふあ~~。今は何時なの?」
起きて見て辺りを見渡してみても暗いのでまだ深夜なのだろう。
「それにしても懐かしい夢を見てしまったわね。」
2年前ぐらいだろうか?とにかく懐かしい。
少し休んだ後、私は立ち上がり目の前に咲いている桜の枝を何本か貰って近くにあるお墓の横に添えた。
これはショウのお墓である。
ショウが死んだ後、私がここにお墓を立てたのだ。
ショウもここがお気に入りの場所だし何より私たちが初めて出会った場所だからね・・・。
そして私はショウの墓石をそっと撫で言った。
「全く。いい気なものよね。」
「私が頑張っているのを貴方は天国で笑いながら見ているのでしょう?」
それから少し愚痴っていると不意にポツンと水滴が落ちる音が聞こえた。
「あら?雨かしら?」
上を見上げるがいつも通り晴れていて雨など降る様子はなかった。
ならどうして?と疑問に思いながら辺りを見渡すと私はやっとそのことに気付いたのだ。
私が泣いていることに。
雨だと思っていた水滴は私の涙できっと夢から覚めたその時から泣いていたのだろう。
「え?ちょっ!?止まってよ!」
私は慌てて涙を拭う。
けど涙は止まることを知らず次から次へととめどなく溢れてくる。
「何で今更?もう昔のことでしょ!?」
何度、拭っても止まらない涙に私は消え入りそうな声で言った。
「止まってよ・・・。」
そして次に私の口から漏れた言葉は先ほどまでとは違うものだった。
「うぅ・・・。あぁ・・・。」
最初はか細く良く聞こえない小さな声だったが次第にそれは大きく周りに響くようになった。
「あぁ~!!!」
それは感情の発露だった。
私は初めて感情を剥き出しにし泣き喚いた。
もうそこには天邪鬼などと呼ばれ素直になれない女の子の姿など微塵も感じられなかった。
「何で。何で死んじゃうの?」
「どうして私の目の前から消えちゃうの!?」
「嫌だよ!もっとそばに居てよ!抱きしめてよ!」
「好きなの!貴方が世界で一番好きなの!」
今まで言えなかった本心が滝のように溢れてくる。
でももう彼はここには居ない。
今更、心の内を吐露しても聞いてくれる相手はもう居ないのだ。
きっとこの綺麗な夜空よりもさらに高いところにいるのだろう。
貴方は今、笑えているのだろうか?
それとも共に泣いているのだろうか?
それは私には分からない。分かる訳がない。
けれど私はそんなどこよりも遠い場所にいるショウに対して誓うように告げた。
「分かったわよ!アンタがそう言うなら私は強く生きてやるわよ。」
「そうよ。いつか会えるその日まで力強く生き抜いてやるわ!」
「だってアンタと私は・・・・。」
悲しみが溢れて言葉が詰まる。
けれど私はしっかりと言った。
「いつまでも恋人同士なんだから・・・。」
桜咲く春の夜。私の声はまるでシャボン玉のように宙を舞い消えていくのであった。
出会いと別れ。人はそれを乗り越えた時、何にも代え難い想い出を得るだろう。
これはそんな物語。
天邪鬼な彼女とそれさえも愛した男。
2人の想い出はきっと消えることなどないのだから。
「そういえばあの時、君がさぁ~。」
「え!?私!?そんなことやったっけ!?」
そんな過去のことなどを思い返しながら話し続けた。
そしてついにその時は来たのだった。
「ゲホッ!ガハァ!ゴホォ!」
ショウがいきなり苦しみだしたのだ。
「大丈夫!?ショウ!?」
私は急いでショウを草むらに横にならせ落ち着くよう言った。
するとショウが一言だけ言った。
「もう限界かな・・・。」
きっと自分だからこそ分かるのだろう。
でも自分の死をこんなにも間近に死を感じているはずなのにショウの声は穏やかだったのだ。
「君と過ごしたこの一年。楽しかったよ。」
「きっと今まで僕が過ごしてきた人生の中で一番楽しく充実していたと思う。」
「最初は僕の勝手な考えから始まった奇妙な関係だったけど時間が経つにつれて笑いあえるようになった。」
「本当にありがとう。僕に生きることを教えてくれ
て・・・。」
「そして僕の最後を看取ってくれて・・・。」
「でも。もう終わりみたいだね。」
そこでショウがはにかんだ笑顔を浮かべ言った。
「心残りと言ったら君の名前を聞けていなかったことぐらいかな~。」
「でももう無理かな?」
ハハハと少し渇いた笑みをこぼすショウに私は思い切って言った。
「奈帆。」
「え?」
「蓬莱 奈帆(ほうらい なほ)。」
「それが私の名前だよ。」
私は自分の名前などあまり他人には言わない。
その言葉に対してショウは驚きの表情を一瞬、浮かべ今度は先程とは違いとびっきりの笑顔に切り替わった。
「奈帆ちゃんか。良い名前だね。」
「名前も聞けたし心残りはもう無いよ。もう安心して殂ける。」
「君だけでも僕を覚えてくれていたらそれで良いよ。」
そんなこと言うショウに私は最後の言葉をかけた。
「ふん!お前はキャラが濃すぎて忘れるにも苦労しそうだからな。」
「そんなに言うなら忘れないでいてやるよ。」
恥ずかしい気持ちを抑え私は言った。
「私がお前がここで生きたと言う証明だからな。」
その言葉に再度、ショウは驚きそして最後に泣きながら最後の言葉を口にしたのだった。
「これからも強く生きてね。」
「さようなら。そして愛してるよ。奈帆。」
その言葉を皮切りにショウの腕は重力に従って下に沈むように落ちていった。
ショウの顔を見ると幸せそうな顔つきをしていた。
そして私はショウから視線を外し桜の木を眺めながら言った。
「うるさいやつが居なくなって清々したわ。バカ。」
その時の私は気が付かなかった。
雨など降っていなかったのに自分の手の甲にポツリと水滴が落ちていたことに・・・。
———そうして私は夢から覚めた。
「ふあ~~。今は何時なの?」
起きて見て辺りを見渡してみても暗いのでまだ深夜なのだろう。
「それにしても懐かしい夢を見てしまったわね。」
2年前ぐらいだろうか?とにかく懐かしい。
少し休んだ後、私は立ち上がり目の前に咲いている桜の枝を何本か貰って近くにあるお墓の横に添えた。
これはショウのお墓である。
ショウが死んだ後、私がここにお墓を立てたのだ。
ショウもここがお気に入りの場所だし何より私たちが初めて出会った場所だからね・・・。
そして私はショウの墓石をそっと撫で言った。
「全く。いい気なものよね。」
「私が頑張っているのを貴方は天国で笑いながら見ているのでしょう?」
それから少し愚痴っていると不意にポツンと水滴が落ちる音が聞こえた。
「あら?雨かしら?」
上を見上げるがいつも通り晴れていて雨など降る様子はなかった。
ならどうして?と疑問に思いながら辺りを見渡すと私はやっとそのことに気付いたのだ。
私が泣いていることに。
雨だと思っていた水滴は私の涙できっと夢から覚めたその時から泣いていたのだろう。
「え?ちょっ!?止まってよ!」
私は慌てて涙を拭う。
けど涙は止まることを知らず次から次へととめどなく溢れてくる。
「何で今更?もう昔のことでしょ!?」
何度、拭っても止まらない涙に私は消え入りそうな声で言った。
「止まってよ・・・。」
そして次に私の口から漏れた言葉は先ほどまでとは違うものだった。
「うぅ・・・。あぁ・・・。」
最初はか細く良く聞こえない小さな声だったが次第にそれは大きく周りに響くようになった。
「あぁ~!!!」
それは感情の発露だった。
私は初めて感情を剥き出しにし泣き喚いた。
もうそこには天邪鬼などと呼ばれ素直になれない女の子の姿など微塵も感じられなかった。
「何で。何で死んじゃうの?」
「どうして私の目の前から消えちゃうの!?」
「嫌だよ!もっとそばに居てよ!抱きしめてよ!」
「好きなの!貴方が世界で一番好きなの!」
今まで言えなかった本心が滝のように溢れてくる。
でももう彼はここには居ない。
今更、心の内を吐露しても聞いてくれる相手はもう居ないのだ。
きっとこの綺麗な夜空よりもさらに高いところにいるのだろう。
貴方は今、笑えているのだろうか?
それとも共に泣いているのだろうか?
それは私には分からない。分かる訳がない。
けれど私はそんなどこよりも遠い場所にいるショウに対して誓うように告げた。
「分かったわよ!アンタがそう言うなら私は強く生きてやるわよ。」
「そうよ。いつか会えるその日まで力強く生き抜いてやるわ!」
「だってアンタと私は・・・・。」
悲しみが溢れて言葉が詰まる。
けれど私はしっかりと言った。
「いつまでも恋人同士なんだから・・・。」
桜咲く春の夜。私の声はまるでシャボン玉のように宙を舞い消えていくのであった。
出会いと別れ。人はそれを乗り越えた時、何にも代え難い想い出を得るだろう。
これはそんな物語。
天邪鬼な彼女とそれさえも愛した男。
2人の想い出はきっと消えることなどないのだから。
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