空高く響かせるは君の声

レン

文字の大きさ
7 / 7

別れ

しおりを挟む
 それから私たちは最後の2人の時間を夜桜を見てそして思い出話に花を咲かせながら過ごした。
「そういえばあの時、君がさぁ~。」
「え!?私!?そんなことやったっけ!?」
 そんな過去のことなどを思い返しながら話し続けた。
 そしてついにその時は来たのだった。
「ゲホッ!ガハァ!ゴホォ!」
 ショウがいきなり苦しみだしたのだ。
「大丈夫!?ショウ!?」
 私は急いでショウを草むらに横にならせ落ち着くよう言った。
 するとショウが一言だけ言った。
「もう限界かな・・・。」
 きっと自分だからこそ分かるのだろう。
 でも自分の死をこんなにも間近に死を感じているはずなのにショウの声は穏やかだったのだ。
「君と過ごしたこの一年。楽しかったよ。」
「きっと今まで僕が過ごしてきた人生の中で一番楽しく充実していたと思う。」
「最初は僕の勝手な考えから始まった奇妙な関係だったけど時間が経つにつれて笑いあえるようになった。」
「本当にありがとう。僕に生きることを教えてくれ
て・・・。」
「そして僕の最後を看取ってくれて・・・。」
「でも。もう終わりみたいだね。」
 そこでショウがはにかんだ笑顔を浮かべ言った。
「心残りと言ったら君の名前を聞けていなかったことぐらいかな~。」
「でももう無理かな?」
 ハハハと少し渇いた笑みをこぼすショウに私は思い切って言った。
「奈帆。」
「え?」
「蓬莱 奈帆(ほうらい なほ)。」
「それが私の名前だよ。」
 私は自分の名前などあまり他人には言わない。
 その言葉に対してショウは驚きの表情を一瞬、浮かべ今度は先程とは違いとびっきりの笑顔に切り替わった。
「奈帆ちゃんか。良い名前だね。」
「名前も聞けたし心残りはもう無いよ。もう安心して殂ける。」
「君だけでも僕を覚えてくれていたらそれで良いよ。」
 そんなこと言うショウに私は最後の言葉をかけた。
「ふん!お前はキャラが濃すぎて忘れるにも苦労しそうだからな。」
「そんなに言うなら忘れないでいてやるよ。」
 恥ずかしい気持ちを抑え私は言った。
「私がお前がここで生きたと言う証明だからな。」
 その言葉に再度、ショウは驚きそして最後に泣きながら最後の言葉を口にしたのだった。
「これからも強く生きてね。」
「さようなら。そして愛してるよ。奈帆。」
 その言葉を皮切りにショウの腕は重力に従って下に沈むように落ちていった。
 ショウの顔を見ると幸せそうな顔つきをしていた。
 そして私はショウから視線を外し桜の木を眺めながら言った。
「うるさいやつが居なくなって清々したわ。バカ。」
 その時の私は気が付かなかった。
 雨など降っていなかったのに自分の手の甲にポツリと水滴が落ちていたことに・・・。

 ———そうして私は夢から覚めた。
「ふあ~~。今は何時なの?」
 起きて見て辺りを見渡してみても暗いのでまだ深夜なのだろう。
「それにしても懐かしい夢を見てしまったわね。」
 2年前ぐらいだろうか?とにかく懐かしい。
 少し休んだ後、私は立ち上がり目の前に咲いている桜の枝を何本か貰って近くにあるお墓の横に添えた。
 これはショウのお墓である。
 ショウが死んだ後、私がここにお墓を立てたのだ。
 ショウもここがお気に入りの場所だし何より私たちが初めて出会った場所だからね・・・。
 そして私はショウの墓石をそっと撫で言った。
「全く。いい気なものよね。」
「私が頑張っているのを貴方は天国で笑いながら見ているのでしょう?」
 それから少し愚痴っていると不意にポツンと水滴が落ちる音が聞こえた。
「あら?雨かしら?」
 上を見上げるがいつも通り晴れていて雨など降る様子はなかった。
 ならどうして?と疑問に思いながら辺りを見渡すと私はやっとそのことに気付いたのだ。
 私が泣いていることに。
 雨だと思っていた水滴は私の涙できっと夢から覚めたその時から泣いていたのだろう。
「え?ちょっ!?止まってよ!」
 私は慌てて涙を拭う。
 けど涙は止まることを知らず次から次へととめどなく溢れてくる。
「何で今更?もう昔のことでしょ!?」
 何度、拭っても止まらない涙に私は消え入りそうな声で言った。
「止まってよ・・・。」
 そして次に私の口から漏れた言葉は先ほどまでとは違うものだった。
「うぅ・・・。あぁ・・・。」
 最初はか細く良く聞こえない小さな声だったが次第にそれは大きく周りに響くようになった。
「あぁ~!!!」
 それは感情の発露だった。
 私は初めて感情を剥き出しにし泣き喚いた。
 もうそこには天邪鬼などと呼ばれ素直になれない女の子の姿など微塵も感じられなかった。
「何で。何で死んじゃうの?」
「どうして私の目の前から消えちゃうの!?」
「嫌だよ!もっとそばに居てよ!抱きしめてよ!」
「好きなの!貴方が世界で一番好きなの!」
 今まで言えなかった本心が滝のように溢れてくる。
 でももう彼はここには居ない。 
 今更、心の内を吐露しても聞いてくれる相手はもう居ないのだ。
 きっとこの綺麗な夜空よりもさらに高いところにいるのだろう。
 貴方は今、笑えているのだろうか?
 それとも共に泣いているのだろうか?
 それは私には分からない。分かる訳がない。
 けれど私はそんなどこよりも遠い場所にいるショウに対して誓うように告げた。
「分かったわよ!アンタがそう言うなら私は強く生きてやるわよ。」
「そうよ。いつか会えるその日まで力強く生き抜いてやるわ!」
「だってアンタと私は・・・・。」
 悲しみが溢れて言葉が詰まる。
 けれど私はしっかりと言った。
「いつまでも恋人同士なんだから・・・。」
 桜咲く春の夜。私の声はまるでシャボン玉のように宙を舞い消えていくのであった。

 出会いと別れ。人はそれを乗り越えた時、何にも代え難い想い出を得るだろう。
 これはそんな物語。
 天邪鬼な彼女とそれさえも愛した男。
 2人の想い出はきっと消えることなどないのだから。






 
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

月影 流詩亜(旧 るしあん)

完結 お疲れ様でした。

近況ボードを見ましたが、ここ数日 忙しくて他の方の物語も読めない状況でした。

他の作者様達も、リアルの仕事や学業が忙しく更新が あまり出来ない事を感想欄や近況ボードに報告していました。


改めて感想ですが、

失くして気づく気持ちの描写が、とても良かったと思います。
最後まで、ツンデレなのは ヒロインらしいですね。

次の新作を楽しみにお待ちします。

2022.01.23 レン

 最後までショウと奈帆の生き様にご付き合い頂きありがとうございます。
 貴方も他の作者様もリアルでの生活を頑張っていらっしゃるみたいですね。
 私も忙しい身でありますゆえ分かります。
 絶対読めだなんて思いません。暇な時やハッと思い出したときに見てやって下さい。

 なんかあの近況ボードを投稿した後だと読んでくれるよう催促したみたいですね。
 ですが再度感謝を・・・。
 ありがとう。
 そしてまた別の作品で会いましょう。
 
 

解除
月影 流詩亜(旧 るしあん)

お気に入り登録しました

とても引き込まれる導入部分ですね

続きを お待ちします



追伸

キャラ文芸大賞が 有りますので 挑戦してみてはどうですか ?

2021.11.17 レン

 お気に入り登録と感想ありがとうございます!
 キャラ文芸大賞にももちろん参加させてもらいます。
 頑張って書くので見ていただけると嬉しいです!
 
 今回は導入部分に力を入れました!

解除

あなたにおすすめの小説

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。